アメリカ大統領選の季節に見てみてほしい映画『オール・ザ・キングスメン』、そして記事広告の作り方について

アメリカ大統領選の季節に見てみてほしい映画『オール・ザ・キングスメン』、そして記事広告の作り方について

中野 慧(ケイ)

中野 慧(ケイ)

こんにちは。エディター兼ディレクターのケイ(@yutorination)です(※アイキャッチの写真は本記事の書き手の僕ではなく、弊社メディアディレクターのころもさんです)。LIGではクライアントのWebメディア/サイトの編集・運営サポート、コピーライティング、それとLIGのYouTubeチャンネル「LIGちゃんねる」の制作を担当しています。

さて来週11月3日は、4年に一度のアメリカ大統領選挙が行われます。共和党の現職・トランプ大統領、そして前のオバマ政権時代に副大統領を務めた民主党・バイデン氏の2人を軸に争われます。アメリカの大統領が誰になるかによって日本の経済・外交政策も大きく左右されるため、毎回日本のメディアでも多くの報道がなされますよね。

そもそもアメリカ大統領選って何? どういう仕組みなの? というか「選挙人」って何? という方も多いかもしれません。今回も各種メディアのWebサイトでわかりやすい解説が掲載されていますので、もしわからない部分があれば、ぜひ見てみてください。

▼Yahoo!ニュースのビジュアル&図説でわかりやすい解説ページ
3分でわかるトランプvs.バイデンの争点——次の4年を占う、70代の頂上決戦 – Yahoo!ニュース
▼NHK NEWS WEBの解説動画
アメリカ大統領選挙2020|NHK NEWS WEB
※特に選挙人制度については「1分でわかるアメリカ大統領選」の動画がわかりやすいのでおすすめです。

さて各種メディアの調査ではバイデン氏の優勢が伝えられていますが、前回4年前の選挙では劣勢が報じられていたトランプ氏が最終的に勝利する結果となりました。コロナ禍や、Black Lives Matterなど人種差別の問題で批判に晒されるトランプ氏ですが、今回も勝敗の行方は蓋を開けてみなければわかりません。

さて今回はそんなアメリカ大統領選を考える上で、ぜひみなさんに見てみてほしい映画作品を1つだけ、紹介したいと思います。

『オール・ザ・キングスメン』とは

今回紹介したいのは、『オール・ザ・キングスメン』という作品です。

20世紀に活躍したアメリカの作家、ロバート・ペン・ウォーレンのピュリッツァー賞小説部門受賞作『すべて王の臣(しん)』を原作とし、1949年にロバート・ロッセン監督のもと映画化され、同年のアカデミー賞では作品賞・主演男優賞・助演女優賞の3部門を受賞しました。

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2006年にはスティーヴン・ザイリアンが監督を務め、再度の映画化がおこなわれています。

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こちらの2006年版は、ショーン・ペン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、アンソニー・ホプキンスなど現代の名優たちが出演しており、カメラワークも多彩なので、名作と名高い1949年版よりも見やすいかもしれません。

 

舞台は1930年代のアメリカ南部、ルイジアナ州。理想に燃える一地方の法律家/活動家にすぎなかったウィリー・スタークが、とあるきっかけで政界進出に成功し、その後あらゆる手段を用いて権力を掌握し、やがてその権力に絡め取られていくさまを、新聞記者ジャック・バーデンの視点で描いています。

主役であるウィリー・スタークのモデルは、実際に1920年代末から30年代にルイジアナ州で知事、そして連邦議会上院議員として独裁的な権力を握り、アメリカ大統領選にも出馬するはずだった実在の政治家ヒューイ・ロングです。この人のことは、現代日本ではあまり知られていないかもしれません。

アメリカといえば「民主主義の国」!?

ルイジアナ州・ニューオーリンズの街並み
▲以前、筆者がルイジアナ州・ニューオーリンズを訪れた際に撮った写真です。かつてのフランス統治時代の面影が残されています。

 

アメリカというと、第二次世界大戦でドイツ・イタリア・日本というファシズムの国に勝利し、世界中に「自由」と「民主主義」の価値を広めた――そんなイメージが強いのではないでしょうか。

しかし『オール・ザ・キングスメン』で描かれるのは、アメリカにもファシズムの芽があったということです。そしてそれは1930年代にかぎらず、現代も同じなのかもしれません。

映画の主役ウィリー・スタークは、当初は「貧しいルイジアナ州の民衆を助けたい」「大企業によるルイジアナ支配を打破したい」という思いで政治活動をスタートします。

ウィリーは当初、市民たちに対して変えるべき現状や、自身が考える税制改革の中身を懇切丁寧に説明しようとします。でも、話が難しすぎるのか、ウィリーの演説はうまくなく、なかなか聴衆は集まってくれません。

そんなウィリーに、新聞記者のジャックはこう言います(これは1949年版にしかないシーンです)

金持ち連中を倒すと言うんだ。税の話は後回しだ。

大衆を泣かせろ。笑わせろ。そして怒らせろ。
彼らの感情を刺激するんだ。彼らを教育しようとするな。

そこからやがて、ウィリーは「覚醒」していきます。

 

「田舎者諸君、あなた方は役人からバカにされている!」

「君たちから道路や橋や学校や食べ物を奪う者は、一人残らず叩き潰せ!」

 

というような、扇情的なフレーズや話し方を演説で用い、聴衆の「感情」を動員していきます。さらには当時まだ新しかったマスメディアである「ラジオ」を用いて、自分の声を多くの人に届けていくわけです。

この選挙戦略が功を奏してルイジアナ州知事の座を射止めたウィリー・スタークは、賄賂や脅迫などあらゆる手段を用いて政敵を排除し、独裁権力を掌中におさめていきます。

その一方、教育の充実や貧困層の支援、官僚・大企業による支配の打破、道路整備や大病院の建設など、様々な改革を断行していくことで民衆から熱狂的な支持を得ていくわけです。

フランクリン・ローズヴェルト大統領も恐れた男

ニューオーリンズのストリートミュージシャン
▲ニューオーリンズのストリートミュージシャンたち。かなり本格的です。ルイジアナ州の文化・経済の中心地はニューオーリンズですが、政治の中心はニューオーリンズから130キロほど北西にある州都バトンルージュです。(筆者撮影)

 

映画のウィリー・スタークと、実際の30年代のルイジアナ州におけるヒューイ・ロングはほぼ同じ軌跡を辿ります。大衆の声に耳を傾け、彼らの要求を叶えつつ、自分に逆らうものは徹底的に排除して独裁を固め、民衆がそれを熱狂的に支持していく、という構図です。

そう、今ではすっかりファシズムの代表格とされるヒトラーのナチス・ドイツも、当初は民主主義的な手続きに則って合法的に政権を掌握しました。第一次大戦で敗戦国となったドイツは戦勝国からの過大な賠償金要求に苦しみ、さらに1929年の世界恐慌の影響で国の経済状況はどん底へと落ちていきます(失業率はなんと40%(!)にも達したとのこと)。そのなかで国民のあいだで強力なリーダーシップが待ち望まれ、熱狂的な支持のもとヒトラー政権が誕生したわけです。

実はこの状況はアメリカにも共通していて、1929年の世界恐慌以降、アメリカ経済は不況に苦しみ、「大企業や特権階級だけが得をしている」という民衆感情が高まり、それを背景に支持を拡大していったのがヒューイ・ロングなわけです。

当時のアメリカ大統領は、第二次世界大戦の戦争指導で強力なリーダーシップを発揮したことで有名なフランクリン・ローズヴェルト(以前は「ルーズベルト」と表記されることが多かったですが)です。ローズヴェルトは現在もアメリカでは大変尊敬されている大統領で、今となっては戦前・戦中期のアメリカでのローズヴェルト人気は盤石だったようにも思えます。

しかし、ヒューイ・ロングが州知事から連邦議会上院議員になり、中央政界に進出して以降、ローズヴェルトの政策にたびたび干渉していきます(ロングとローズヴェルトは同じ民主党所属です)。さらに、強固な支持基盤を持つロングのもと独裁化が進むルイジアナ州は、ローズヴェルト率いる連邦政府から遊離してしだいに「独立政体」の様相を呈していき、ロングは大統領選に打って出ることを計画します。

ロングの影響力拡大を恐れたローズヴェルトは連邦の人事権を握っていることを背景に、ロングの周辺を反ロング派で固め、追い落としを図ります。

そう――これはまさに、ロングがやっていたことを、ローズヴェルトも同じようにやっていた、ということです。ロングのファシズム的手法に、ローズヴェルトもファシズム的手法で対抗していたわけです。しかも、それだけではロングの影響力拡大を止められなかったローズヴェルトは、ルイジアナへの軍事介入すら検討していました。

しかし……ロングは1935年、ルイジアナ州の州都バトンルージュの州会議事堂で凶弾に倒れます。ここに、ロングが起こしたアメリカにおける「ファシズムの波」は、一旦止むことになります。

ファシズムと民主主義

『オール・ザ・キングスメン』のウィリー・スターク=ヒューイ・ロングがやったことは、虐げられた者たちの痛みを知り、そこに寄り添い、そして「感情」を動員する、ということでした。これはまさに、本質的な意味での「民主主義」にほかなりません。

ウィリー・スターク=ヒューイ・ロングは、「善」なる目的のために、敵を徹底的に排除し、自らの独裁権力を強化していた――「ファシズム」と「民主主義」は相反するもののように見えますが、実はコインの裏表のようなものなのかもしれません。

個人個人が投票などの政治参加をおこなう際、自分の意志を決定するためにはしっかりと情報収集する必要があります。しかし、そうして手間をかけて意思決定し投票したとしても、その1票に意味があるかというと、はなはだ実感が薄いもの。私自身、毎回選挙の際に投票には行っていますが、「自分が行っても行かなくても一緒だろうな」と感じますし、それゆえしばしば問題になる「若者の投票率が低い」ということも仕方のないことなのかなと思います。

でも、こういった作品をきっかけに、政治や社会について、そして外国について「知る」ということは、とても面白いことだと感じます。「知る」ことを通じて自分の考え方が変化していくことは楽しく、また、それが「コンテンツ」というものの1つの役割なのではないかとも思います。

というわけでぜひ『オール・ザ・キングスメン』、興味がある方はぜひ見てみてください! おすすめはまずカラーの2006年版を見ること、そのあとまだ興味が持続していたらモノクロの1949年版を見て、見比べてみるのも面白いです。また本稿では触れませんでしたが、強烈なNTR要素もあります(NTRとは何かについて知りたい方は、やや下ネタ注意であることを念頭にググってみてください)

(参考文献)
村田晃嗣『大統領とハリウッド  アメリカ政治と映画の百年』中公新書、2019年。
三宅昭良『アメリカン・ファシズム ロングとローズヴェルト』講談社選書メチエ、1997年。

では、今週LIGちゃんねるで公開した動画3本を紹介していきたいと思います!

そして本文とは全然関係ありませんが、実は僕が担当している会社のYouTubeチャンネル「LIGちゃんねる」では週3本、月水金の朝8時に動画を更新しています! 

週替りでLIG社員に登場してもらい、1つのテーマを決めてショートインタビュー&LT(ライトニングトーク)形式で話してもらうというものです。では今週出した3本を紹介していきます!

LIG記事広告のつくりかた:ころも(メディアディレクター)

今週登場するのは、記事広告の制作を担当するメディアディレクターのころもさんです。LIGのコンテンツのなかでも特に力を入れているのがLIGブログの記事広告なのですが、この動画では基本編として具体的な工程と、特に気をつけるべきポイントを教えてもらいました。

写真多め&ストーリー仕立てのリッチな記事の制作方法:ころも(メディアディレクター)

LIGブログの記事広告はツッコミどころの多い写真や、ストーリー性を入れ込んでいる点が特徴です。特に重要な「記事内写真」を撮るためにどのような準備をすべきか、具体的な「構成案の作り方」と「時短のためのポイント」を話してもらいました。

企画立案のためのインプット法〜そしてNizi Projectについて〜:ころも(メディアディレクター)

企画を考えるにはインプットが重要ですが、ころもさんが普段どんなコンテンツに接しているか、そして最近一番面白かったコンテンツ「Nizi Project」について、なぜヒットしているのかの分析を披露してもらいました。

まとめ:オール・ザ・キングスメン、その後

今週のLIGちゃんねるには、記事広告の制作を担当するころもさんに登場してもらいました。スケジュール管理能力が高く、ガッツがあって、新しいことに貪欲にチャレンジする姿勢はいつもすごいなぁと思っています。

そして今回のコラム部分では『オール・ザ・キングスメン』について紹介しました。これまでは実は、自分が強烈に好きなものはあまり取り上げてこなかったのですが、この作品は正直かなり好きでして、アメリカ大統領選の季節にかこつけて紹介してみた次第です。

そしてウィリー・スターク=ヒューイ・ロングのことを知って、トランプ大統領のことを連想した方も多いのではないかと思います。かつてヒューイ・ロングという政治家が大衆の支持を得ていたことを踏まえると、トランプ氏のような政治家がアメリカで人気を得ることもまた、歴史の必然のような気がしてきますね。

ちなみに1949年版『オール・ザ・キングスメン』の監督であるロバート・ロッセンは、1950年代にアメリカで吹き荒れた「赤狩り=マッカーシズム(共産党員やその同調者を社会の要職から追放しようという運動のこと)」によりハリウッドを追われました。でも今のハリウッドセレブたちのほとんどは逆に、ヒューイ・ロング的な側面を持つトランプ大統領に批判的だったりします。歴史は移り変わる、ということなのでしょうか。

というわけで(……?)、引き続き、LIGのYouTubeチャンネル「LIGちゃんねる」、生暖かい目で見守っていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

「LIGちゃんねる」はこちらから
(チャンネル登録、ぜひお願いします!🙇‍)

また毎週土曜日に、今回のような謎の記事が引き続き更新されていく予定です!

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エディターのケイです。 これまでWebや書籍の編集・ライティングをやってきました。 政治・宗教・野球の話が得意です。 アイドルと一緒にネット番組に出たこともあります。 現在は「暴力」というものについて、 理論的な理解を深めるべく日々研究しています。 知識欲や考える力の強い人たちとチームを作って、 よいコンテンツを世の中に出していく仕事をしたいと思っています。

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