2024年8月、Google検索で「AIによる概要」(以下、AI Overview)がリリースされました。AI Overviewは10億人以上のユーザーが利用*1しており、米国では約18%の検索キーワードでAI Overviewが出現しているという調査*2もあります。
「AIが回答をまとめてくれるなら、もうWebサイトを見る必要がないのでは?」
「SEO対策は意味がなくなる?」
「サイトへのアクセスが減ってしまうのでは?」
サイト運営に関わる方はこんな疑問や不安を感じているかもしれません。しかし、Googleはあくまで「検索」の一部として設計しているため、目的や仕組みを正しく理解することで、取るべき対策も自然と絞られてくるでしょう。
この記事では、Googleの最新公式情報や各社の調査結果をもとに、AI Overviewの基本や仕組み、WebサイトやSEOへの具体的な影響(メリット・デメリット)、対策について解説します。
- 💡この記事でわかること
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- 2025年4月時点のAI Overviewの仕組みと目的
- AI Overviewがもたらしうるメリットとデメリット
- SEOへの影響と対策
- 新機能「AI Mode」について
*1 出典:Google「AI Overviews and the AI Mode experiment in Search」
*2 出典:https://seranking.com/blog/ai-overviews/
目次
AI Overviewとは?
AI Overview(AIによる概要)とは、ユーザーが検索したキーワードに対して関連性の高いページの情報をAIが要約し、検索結果に表示する機能です。日本では2024年8月に導入され、2025年4月現在、試験運用中となっています。
GoogleはAI Overviewの特徴について、以下のように述べています。
- AI Overviewはユーザーが複雑なテーマを理解し、Webサイトを探索するための「出発点」として機能する
- 回答に引用したページのリンクが必ず添付される
- 複数のWebサイトを巡ることなく、素早く情報の概要を掴める
- カスタマイズされたGeminiモデルを使用し、コアウェブランキングシステムなど既存の検索システムと連携して動作している
※参考:Google「AI Overviews and the AI Mode experiment in Search」
要するに、AI Overviewはあくまでも検索という体験の一部として設計されたシステムと言えます。
【最新動向】2025年3月のコアアップデートでAI Overviewが急増
2025年3月13日開始、3月28日にロールアウトされたGoogleコアアップデート中から、AI Overviewが表示されるクエリが急増しています。
こちらはLIGドメインのページが出る検索クエリの内、AI Overviewが表示されるクエリの数を表したグラフです(Ahrefsより引用)。2月28日時点ではAI Overviewが表示されるクエリは15個しかありませんでしたが、3月28日時点で4,642個と、約300倍に急増しており、検索結果全般においてAI Overviewの表示が拡大していることがわかります。
さらに、キーワードの傾向や表示方法にも変化が見られます。これまでは「Webサイトとは」「Web制作 流れ」のような情報収集型クエリで表示される場合が目立っていましたが、「Web制作会社 おすすめ」「dx 支援会社」などの比較・検討型クエリ、「ユニバ 料金」「東京 桜 穴場」などの購入・行動型クエリでの表示が増加していました。
表示位置に関しても、SEPRs(検索結果)の一番最初だけではなく、2位以下の位置やPAA(よくある質問)に表示されたり、さらに強調スニペットとAI Overviewが同時に出現したりとさまざまなパターンが見られるようになっています。
▲PAA(よくある質問)でAI Overviewが出現しているパターン
▲AI Overviewの直後に強調スニペットが出ているパターン
AI Overviewの表示条件や回答生成の仕組み
AI Overviewの表示条件や回答生成の仕組みについても、さきほどと同様Google公式のドキュメントで説明されていましたので、要約させていただきます。
📋 表示条件
- すべての検索結果に表示されるわけではない
- 通常の検索結果より価値を提供できると判断され、かつ高品質な回答を生成できる確信度が高い場合に表示される
- たとえば複雑な質問や、複数回の検索が必要でさまざまなソースの情報を効率的に理解したい場合が当てはまる
⚠️ 表示されにくい・されない場合
- YMYL領域(お金・健康に関するトピック)で、情報の正確性が極めて重要な場合。とくに信頼できる情報源からの裏付けが不十分なとき
- センシティブ、ヘイト、危険なトピックに関するクエリ
- 最新性が非常に重要な、発生中のニュース速報や時事問題
- その他、検索クエリに対して信頼できる高品質な情報が十分に存在しない場合
⚙️ 回答生成の仕組み
- 検索用にカスタマイズされたGeminiモデルを使用
- 既存のランキングシステムやGoogleナレッジグラフと連携して機能することで、要約を生成
- Webからの高品質な結果によって裏付けられた情報のみを表示(とくにYMYL領域ではその基準が高い)
- 生成された回答は既存の品質保証システムやSafeSearchなどを通過し、有害なコンテンツはフィルタリングされる
- トピックの要点とソースとなるページへのリンクを含む回答が提示され、ユーザーに対して包括的な情報を効率的に提供
- 複数のフィルタリングを通すことで、対話型AIでよく見られる「ハルシネーション」(虚偽の回答)を防止
こうして見ると、AI Overviewでも既存の検索システムと連携しながら、信頼性の低いページやユーザーの役に立たないページはきちんと除外される仕組みになっていることがわかります。
つまり、現状のSEOで重要なE-E-A-Tや、ユーザーニーズを満たしたコンテンツを作っていくことこそが、そのままAI Overview対策につながるといっても過言ではないでしょう。
Search Console(サーチコンソール)におけるAI Overviewの計測について
AI Overview経由のクリックや表示回数はSearch Consoleでもカウントされます。
Google Search Consoleでの公式ヘルプページによると、AI Overview経由の各指標のカウントは以下のように定義づけられています。
クリック数:AIによる概要で外部ページへのリンクをクリックすると、クリック数としてカウントされます。
表示回数:標準の表示回数ルールが適用されます。リンクが表示回数としてカウントされるには、スクロールまたは開けば見える状態になっている必要があります。
掲載順位:AI による概要に付与される掲載順位は検索結果内で 1 つのみです。AI による概要内のすべてのリンクに同じ掲載順位が割り当てられるということです。
出典:表示回数、掲載順位、クリック数とは – Serach Console ヘルプ
また、Search Console上では、オーガニックの掲載順位よりもAI Overviewの掲載順位が優先的に反映されます。AI Overiviewに自社のぺージが引用元として表示されている場合の順位には注意が必要です。
たとえばオーガニックでは15位に掲載されているページがAI Overviewに引用されて検索結果の最初に表示されている場合、そのクエリにおけるページの掲載順位は1位としてみなされるということです。Search Console上で順位が急激に上昇したのに、実際の検索結果には表示されていない場合は、AI Overviewに反映されているかどうかチェックしてみるとよいでしょう。
なお、2025年4月時点では、Search Console上でAI Overviewからの流入かどうかを判別する方法はありません(そう遠くないうちに実装されるのでは……という個人的願望が叶うことに期待してます)。
トラフィックは減少する?AI Overviewのデメリット・メリット
ユーザー目線で見ると「これだけちゃんとした仕組みならめっちゃ便利じゃん」としか思えないAI Overviewですが、サイト運営者にとってはメリットとデメリットの両面があるのも事実です。まずはみなさんが気にされると思う、デメリットからご紹介します。
デメリット①:トラフィック減少の可能性
サイト運営者にとってもっとも大きな懸念は、やはりトラフィックの減少ですよね。AI Overviewが検索結果画面内でユーザーの疑問を解決してしまうことで、ユーザーがWebサイトをクリックせずに検索を終えてしまう「ゼロクリック検索」が増加する可能性は、以前から危惧されています。
しかし、Googleの製品・技術情報ブログ「The Keyword」の記事では以下のように述べられています。
With AI Overviews, people are visiting a greater diversity of websites for help with more complex questions. And we see that the links included in AI Overviews get more clicks than if the page had appeared as a traditional web listing for that query.
(AI Overviewにより、人々はより複雑な質問を解決するために多様なWebサイトを訪問するようになっています。また、AI Overviewに含まれるリンクは、従来の検索結果として表示された場合よりも多くのクリックを獲得していることがわかっています。
とはいえ公式の見解と異なり、「AI Overviewの影響でトラフィックが下がった・上がった」と、現時点ではさまざまな調査や意見が出ています。まずはサイトの現状や業種業態によって異なるという認識を前提に置きつつ、自社サイトの状況を調べてみるとよいでしょう。
ちなみにLIGブログの各ページ状況を調査した結果、以下のような傾向がみられました。すべてのサイトに当てはまるわけではありませんが、参考までに紹介します。
トラフィックが減少したページ | トラフィックが増加したページ |
---|---|
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- 調査対象ページ、条件
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- コアアップデート前後で、主要な対策クエリにおける順位変動がほぼないページ(±1位以下)
- Ahrefsの機能でAI Overviewが表示されるのを確認できたクエリ
- アップデート前後12日間(3/1-3/12、3/13-3/24)で、クエリのクリック数、表示回数などをサーチコンソールで計測して比較
AI Overviewが表示されているページは、アプデ前後で平均5%〜10%ほどオーガニックでの流入が減少している場合が多かったです。まだクリティカルな影響は出ていないものの、とあるサービス比較系のクエリでは掲載順位に変動はないのに、クリック数が半減したものもありました。
SERPsを見ると、本来は複数社を比較すべきなのに特定の企業のサービスをおすすめするようなAI Overviewが表示されおり、おそらくこれが要因かと思われます。よくも悪くも影響の大きさを感じられました。
デメリット②:情報の信頼性がまだ低い
SGE(AI Overviewの前身として登場した機能)と比較して、AI Overviewはハルシネーションが少なくなったと僕自身も実感しています。とはいえ、まだまだ誤った回答が出現することも少なくありません。
たとえばこちらは「日本一小さい家」と検索したときに表示されるAI Overviewです。約9年前のLIGブログの記事をソースとして引用していますが、「日本一小さい」という根拠が一切提示されていないページをあたかも正しい情報として表示してしまっています。

わずか二坪。日本最小の住宅で暮らすことになりました。本当にありがとうございました。
また、あるサービスに関連するクエリで検索したときには、記事広告などのPRコンテンツで紹介している内容を一般消費者からの口コミ・評判のように引用しているケースも確認できました。おそらくすぐ修正されるかとは思いますが、こうした評判を利用したハックも登場しそうだなと感じた次第です。
メリット①:下位のページでも認知獲得につながる可能性あり
AI Overviewでは、基本的に上位表示されているページが回答に引用されやすい傾向にあるようです。SEO研究チャンネルの調査によると、AI Overviewに表示されるURLの約60.9%が、自然検索で20位以内に表示されているとのことです。
出典:「AIに載るサイト」は何が違う? 1.7万キーワードから浮かび上がった3つの傾向 – SEO研究チャンネル
逆にいえば約40%は20位未満のページから引用されているため、下位のページでもAI Overviewに表示される可能性は大いにあるということです。
大手メディアや専門性の高いサイトが検索上位を独占しているようなクエリでは、新規参入のサイトが上位表示を狙うには長い時間と労力が必要となります。AI Overview枠にURLが表示されれば、自社サイトの認知・流入につながる可能性も十分あるといえるでしょう。
メリット②:クリックの質が高まる
Googleによると、AI Overviewを経由してサイトに流入したユーザーは、サイト滞在時間が多くなる可能性が高まることが示唆されています。
We’ve found that people who use AI Overviews actually use Search more and are more satisfied with their results. And when people click from search result pages with AI Overviews, these clicks are higher quality, where users are more likely to spend more time on the site, because we’ve done a better job of finding the right info and website for them.
(AI Overviewを使用する人々は実際に検索をより多く使用し、結果にさらに満足していることがわかりました。そして、AI Overviewのある検索結果ページからクリックすると、これらのクリックはより質が高く、ユーザーがサイトでより多くの時間を過ごす可能性が高くなります。なぜなら、私たちが正しい情報とウェブサイトを見つけるのにより良い仕事をしているからです)
出典:https://search.google/pdf/google-about-AI-overviews-AI-Mode.pdf
ただし、先述の通り、AI Overviewの影響についてはさまざまな調査や意見が出ています。AI Overviewに表示されても、必ずしもトラフィックやサイト滞在時間の増加につながるわけではないという点に注意しましょう。
AI Overviewに表示されるための対策
前提として、広告やアフィリエイトなどトラフィックの増減=収益の増減となるようなメディア以外では、AI Overviewに絞ってなにか対策を行う必要性はまだ薄そうというのが所感です。
AI Overviewの回答は既存のコアウェブバイタルシステムなど検索ランキングシステムとの結びつきが明言されています。したがって、これまで継続してきたSEO対策がひいてはAI Overview対策につながると、多くの識者の間でも考えられています。
その事実を踏まえた上で対策を考えるとすれば、以下のようなことが挙げられるでしょう。
- とにかくユーザーファースト!
- 構成や文章の構造化を見直す
- 圏外のページも必要に応じてメンテナンスを
とにかくユーザーファースト!
AI Overviewでは検索上位に表示されているページの内容が引用されやすい特性があります。ユーザーが必要としているであろう答えをAIが均質的に生成している以上、これまでよりも的確にユーザーニーズを捉えることが求められるはずです。ユーザーの検索意図を深く理解し、E-E-A-Tを意識しつつ価値あるコンテンツを提供していく従来の姿勢こそが、ひいてはAI Overviewに引用される可能性を高めるといえるでしょう。
構成や文章の構造化を見直す
AI Overviewはページ内の情報を引用して回答を生成しているため、ユーザーが回答を見つけやすいように構成を整えることも重要といえます(AIファーストではなくあくまでもユーザーファーストなのが重要かと)。
実際にAI Overviewに引用されているLIGブログのページを見てみると、見出しのすぐ下にユーザーが求めているであろう答えを書いている箇所が引用されやすい傾向にあるようです。
また、リストや表がAI Overviewで表示されることもあるため、文章が適切に構造化されているか見直すのもよいでしょう。
圏外のページも必要に応じてメンテナンスを
上位に掲載されているページだけでなく、20位以下のページからもAI Overviewに引用される可能性は十分にあります。競合が大手サイトばかりでオーガニックでは上位獲得が難しい場合も、AI Overviewに引用されれば認知獲得や流入につながる可能性が高くなるといえるでしょう。
新機能AI ModeとAI Overviewとの違い
AI Overviewが一般ユーザー向けに展開される一方で、Googleはさらに進んだAI検索体験の実験も開始しています。それが「AI Mode」です。
AI ModeはAI Overviewをさらに発展させ、より高度な推論、思考、マルチモーダル機能を備えた検索体験を提供することを目指しています。2025年4月時点では、Google Labsを通じたオプトイン(希望者のみが利用できる)形式の実験として提供されています。
AI ModeとAI Overviewとの違いは以下の通りです。
特徴 | AI Overview | AI Mode |
---|---|---|
基盤モデル | カスタマイズされたGeminiモデル | Gemini 2.0のカスタム版 |
情報アクセス | 主にトップWeb結果に基づく | Query fan-out技術を使用 |
回答範囲 | 特定の条件下で表示 | より広範なクエリでAIの回答を生成 |
会話機能 | 限定的 | フォローアップ質問でのコンテキスト維持機能が強化 |
入力形式 | 主にテキスト | マルチモーダル対応 (テキスト、音声、画像) |
応答とリンク表示 | 比較的シンプルな要約と厳選されたリンク | より包括的な応答と、より多様なリンクが表示される可能性 |
※参考:Google「AI Overviews and the AI Mode experiment in Search」
とくに注目すべきは、Query fan-out技術です。一つの質問に対して関連する複数のクエリを同時に生成し、Web、ナレッジグラフ、ショッピング情報など、さまざまなデータソースから情報を並行して収集・統合する、Google独自の技術を指します。
この技術により、一度の質問でユーザーが求める回答が網羅的に生成されたり、フォローアップする質問も生成されたりするため、自分自身で何度も検索する手間を省くことが期待できます。ただし、現状は実験段階のため、AI Overview同様に注意点も少なくありません。Googleから発表されているAI Modeの注意点を以下にまとめました。
- AI Modeの注意点
-
- ハルシネーション: 事実性向上のためにさまざまな技術やシステムを導入しているが、必ずしも正しい答えが生成されるわけではない
- 奇妙な応答(Odd Responses): 珍しい、あるいは不条理な検索に対して、予期せぬ応答が返ってくることがある
- 誤った等価性 (False Equivalence): 比較を求められた際に、本来同等ではないものを同等であるかのように扱ってしまう可能性がある
- コンテキスト維持の限界: フォローアップ質問で文脈を引き継ぐが、複数回のやり取りの後や、意図が大きく変わる質問では、文脈が失われたり誤解されることがある
- トリガー制御: AI Overviewよりも広範なクエリで応答を試みますが、不適切・危険なコンテンツ、最新性が極めて重要なトピックなどについては、AI応答ではなく従来の検索結果やリンクを表示するように、慎重な制御(トリガーリング)が行われます。
※参考:Google「AI Overviews and the AI Mode experiment in Search」
まとめ
AI OverviewやAI Modeのポイントをご紹介しました。この記事のポイントをあらためて整理しましょう。
- AI Overviewは、ユーザーの検索体験を向上させるための機能であり、既存の検索システムと連携して動作する
- トラフィック減少のリスクがある一方、質の高い情報を提供することで下位ページでも認知獲得につながる可能性がある
- 現在重視されているSEO対策は、AI Overviewで表示されるための対策にもつながる
- AI OverviewとAI Modeは異なる機能であり、AI Modeではさらに高度なAI検索体験が可能
AI OverviewやAI Modeの登場で、検索を取り巻く環境は急速に変化する可能性があります。しかし結局のところ、AI検索の時代においてもユーザーを深く理解してニーズに応える、信頼性の高い独自のコンテンツを提供し続けることが重要です。小手先のテクニックではなく、本質的な価値提供こそが、変化の激しい時代を生き抜くために求められ続けるはずです。
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