エンジニア採用セミナー
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2020.10.17
#13
LIGちゃんねる

最強のコンテンツとしての「TikTok」、そして人事の仕事で一番大切にすべきこと

中野 慧(ケイ)

こんにちは。エディター兼ディレクターのケイ(@yutorination)です(※アイキャッチの写真は本記事の書き手の僕ではなく、弊社人事のれいこさんです)。LIGではクライアントのWebメディア/サイトの編集・運営サポート、コピーライティング、それとLIGのYouTubeチャンネル「LIGちゃんねる」の制作を担当しています。

毎週土曜日に更新されるこの連載(?)では、一つのコンテンツを取り上げて紹介・批評し、そしてオマケとして、自分がこの会社(=LIG)で制作している動画の紹介をおこなってい……るのですが、書いていて思ったことがあります。

それは、「漫画や映画やドラマだけが『コンテンツ』なのだろうか?」ということです。

我々がふだん接している「コンテンツ」には多種多様なものがあります。TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSもそうですし、究極的には友人・恋人・家族との会話、同僚との飲み会すらも「コンテンツ」だといえるはずです。

以前、この連載でクリストファー・ノーラン監督最新作『テネット』を取り上げましたが、ノーラン作品のように作家1人にフォーカスを当てて分析できるコンテンツは今や希少です。ほとんどの映画作品は監督1人の個性が強く出るものは少なく、どちらかというと共同制作で作られており、「作家性」で語れるものではなくなっているからです。さらにはそこに、情報環境の変化や、お金の流れ(制作体制)なども複雑に絡んできます。

そういった点を踏まえ、今回取り上げてみたいのは中国発のモバイルムービープラットフォーム『TikTok』です。

最近、アメリカのトランプ大統領が利用を禁止したり、その大統領令が裁判所の判断で一時差し止めになったり、米国法人の売却交渉が行われていたりと、政治・経済ニュースでも何かと話題ですよね。

TikTokに抱いていたイメージ

僕はもともとTikTokに対して、多くの大人と同様に、率直に言って

  • 10代の若者中心
  • リア充
  • 流行りの音楽に合わせて歌ってたり踊ってたりする
  • 時間のムダ(!?)

というイメージを持っておりました。

実際にユーザーになってみて思ったのは、上記のイメージはそれほど間違っているわけではないものの、TikTokはそれだけではない、かなりの可能性を秘めたサービスなのではないか、ということでした。

ちなみに最近、LIGブログではTikTokの記事広告を扱っていますが、この記事に関しては広告として書いていません。いちユーザーとして使ってみて感じたこと、また、周辺情報をリサーチして考えたことを書いていきます。

TikTokの何が革新的なのか

ここからは、TikTokの何がすごいのかを、使う前の自分のような知識レベルの人に向けて書いていきます。

アルゴリズムがすごい

たとえばAmazonなどである商品を買うと、「この商品を買った人は他にこんな商品も買っています」とレコメンドされて、それでうっかり(?)買ってしまうことってよくありますよね。

YouTubeでも、僕はしばしばプロ野球の動画を見てしまうのですが、その視聴履歴からYouTube側が別の野球動画をレコメンドしてきたりします。

これは、そのユーザーに合わせたオススメを表示するアルゴリズムをサービス側で組んでいるからですが、TikTokはそのレコメンドシステムが非常に優秀です。

「陽キャでリア充で若者でなければTikTokは楽しめないのではないか?」というとそんなことはなく、見ているうちにTikTok側でオススメされる動画がどんどん変わっていき、たとえば僕だったらパーソナリティとしてはやや陰キャ寄りですが、陰キャ・非リアでも楽しめる、笑える動画がどんどん流れてきます。

また、TikTokを使い始めた当初、僕は野球関連動画など見ていなかったはずなのですが、使っていくうちになぜか野球動画が多く表示されるようになっていきました。それまでの視聴履歴や滞在時間などから類推して「この人はこういうジャンルの動画が好きだろうな」という予測をしているのだと考えられます。

なぜアルゴリズムが優秀なのか?

ではなぜ、TikTokのアルゴリズムは優秀なのでしょうか。

黄未来(こう・みく)氏の著書『TikTok 最強のSNSは中国から生まれる』(ダイヤモンド社、2019年)にはこうあります。

中国では、個人情報に関する国民の意識が欧米諸国とは大きく異なります。率直な表現をすれば、中国では「便利になるのであれば、個人情報をプラットフォームに明け渡すことに賛成する」といった考えをする人がマジョリティを占めているのです。

(中略)

これは日本を含む中国以外の国、とりわけGDPR(引用者註:EU諸国で施行されている個人情報保護法制のこと)を施行してGAFA(引用者註:アメリカの4大IT企業であるGoogle、Apple、Facebook、Amazonのこと)への警戒心を高める欧州とは正反対の文化的土壌といえるでしょう。

(黄未来『TikTok 最強のSNSは中国から生まれる』(ダイヤモンド社)より)

そう、レコメンドシステムを司るAI(人工知能)の優秀さは、どれだけ大量のデータを細かく集められるかによって大きく変わってくるわけですが、TikTokのアルゴリズムの背景にはこういった中国特有の文化的事情が大きく寄与しているわけです。

前提として、TikTokは中国のバイトダンス社がもともと中国国内で展開していたショートムービープラットフォーム「Douyin(ドゥーイン、抖音)」をもとにしています。その海外展開版がTikTokなわけですが、すでに何億人単位の中国市場でDouyinを通じて得た膨大なデータをもとに、TikTokでのレコメンドシステムをさらに洗練させていっている、ということなのでしょう。

また前述の『TikTok 最強のSNSは中国から生まれる』によれば、運営元のバイトダンス社は創業初期の2010年代前半から、レコメンドに特化した機械学習の技術を磨いてきたそうです。

2000年代以降、Googleの検索技術は長足の進歩を遂げてきました。しかし「検索」という行為には強い能動性が必要とされます。一方で「レコメンド」は受動的でもOKで、現にいま我々はそちらのほうに流れつつあります。バイトダンス社はそうした長期トレンドを踏まえ、「検索ではなくレコメンド」に特化して技術を磨いてきたわけです。これは慧眼というほかありません。

他のSNSと比較したTikTokの優位性

TikTokで100万人以上のフォロワーがいる「りりあ。」さんというシンガーソングライターが、先日公開された「音楽ナタリー」でのインタビュー記事でこう語っていました。

──SNSでネガティブな体験はありましたか?

ここまでたくさん聴いてもらうとアンチというのも増えてくると思うんですけど、私の場合はアンチコメントも本当になくて。メディアで私を新しく知ってくださった方はいろんな意見があるとは思うんですけど、特にTikTokでは応援してくださる方のほうが多いです。

──TikTokはSNSの中でも好意的な人が多いんですね。

ありがたいことにそういう人たちばかりで。コメントを見て嫌な気持ちになることはないです。TikTokは10代がメインだからかな。Twitterだと年齢が上の方が多くて、Twitterのほうが怖いです。TikTokはみんな優しい。

りりあ。が実践する、新しい音楽活動のカタチ | 令和のアーティストとSNS 第3回 – 音楽ナタリーより。太字引用者)

この「Twitterのほうが怖い」という感覚は、20代以下の世代では特に、広く共有されているのではないでしょうか……?

「優しい世界」

少年老い易く学成り難し。私はいま34歳(!)ですが、中学生の頃に2ちゃんねるが生まれ(1999年)、大学に入る頃にはミクシィが登場(2004年)、ニコニコ動画もサービスを開始し(2006年)、そしてTwitterが出てきました(2008年)。

私はTwitterを2009年に使い始めてもう10年になりますが、初期の頃の牧歌的な感じ、広瀬香美さんが「ヒウィッヒヒー」とか言ってたり(※わからない人はググってください。笑)、我々一般ユーザーもオフ会とかを気軽にやっていた感じは2010年代半ばにはかなり薄れていき、いまや「ネット炎上」の主戦場と化してしまった感があります(あ、すごい余談ですが「オフ会って楽しかったよな」と思い出して、最近ちょこちょこやってるんですがやっぱり楽しいです。オフ会重要です)

ちなみにこれは「はてなブックマーク」も似たところがありますね。

Twitterが出たての頃は、ジャーナリストの津田大介さんなどが「動員の革命」などと言っていたりして、SNSを通じて社会が、政治が変わるということが期待されていました。たしかに約10年経った今、Twitterでは政治的なやりとりが多くなされていますが、140字の限られた文字数では、互いに感情的な意見をぶつけあうだけになってしまいがちです。質の高い議論をするには、ある程度の文脈性や複雑性を織り込んだ表現=つまり「長文」でなければ難しいのかもしれません。

SNSの歴史を体感している身からすると、Twitterやはてなブックマークで「炎上」や「不毛な議論」を目撃したあとにTikTokを開くと、「なんて平和な世界なのだろう」と感じてしまいます。楽しい、笑える、誰も傷つかない、「優しい世界」が広がっています。そりゃあ10〜20代はこちらに流れるよなぁ、と思ってしまいました。

リアルのソーシャルグラフから切り離される

FacebookやTwitterなどでは「リアルの知人」とつながっていることも多いかなと思います。いわゆる「ソーシャルグラフ」というやつですが、TikTokは別にリアルの知人と繋がる必要はなく、ホーム画面のオススメに表示される動画を見ているだけでも十分楽しめます。

特にこれはFacebookに顕著だと思いますが、リアルの知人とたくさんつながるほど自分から発信しづらくなったりします。結婚や転職、子供が生まれたなどの重大なライフイベントを知ることができるのは利点ですが、どうでもいい自慢(!)などを目にしたりするとちょっと嫌な気分にもなったりします。

そしてTwitterのほうは、誰かが何かに批判的なことを抽象的な文体でつぶやいているのを見たりすると、「これ私のこと言われてるのかな?」と無駄に思い悩んだりもしてしまいます(いわゆるエアリプというやつですね)

これまでのSNSは地縁・血縁といいますか、昔ながらのリアルの関係性を強化する方向に行っていた(結果的に行ってしまっていた)わけですが、TikTokはソーシャルグラフなしで十分楽しめるので、従来のSNSにあった「息苦しさ」がほぼ存在しません。

インフルエンサーに偏重しない設計

逆に「見る側」ではなく「投稿する側」の立場からすると、TikTokはなかなか有望なプラットフォームです。どういうことかというと、Twitterなどはフォロワーが0の状態で何かつぶやいたとしても、そのツイートは基本的に(検索などされないかぎり)ほとんど誰の目にも触れず、またリツイートなどで拡散されることもありません。

しかしTikTokの場合、初めて投稿したとしても誰かしらのレコメンドに表示されて数百回程度は見られるため、新規参入がしやすいというところがあります。

そこで動画が面白ければ、さらにその動画はTikTokのAIによって多くの人の目に触れ、伸びていく機会が得られるというわけです。

現在はYouTubeもTwitterもInstagramも、多数のフォロワーを抱える「インフルエンサー」が極めて強い力を持っていますが、TikTokの場合はユーザーのアテンションが既存のインフルエンサーに偏重しない設計になっているわけです。

かつてニコニコ動画やはてなブックマークには「新着コンテンツを見張っている、何者でもないけど目利きの人」が必ずいて、彼ら彼女らを発火点に面白いコンテンツが自然発生的に盛り上がっていく光景が見られましたが、そういった「文化生成」の仕組みを、TikTokは人工知能によって代替しているとも言えます。

さらに言ってしまえば、今はインフルエンサー(またはその志望者)どうしでフォロワーの時間の奪い合い、囲い込みが起こっていて、新規のファン獲得がYouTubeなどのプラットフォーム単体では難しくなりつつあります。しかしTikTokは上記のような特性があるため、ここで新規ファンとのタッチポイントを作り、YouTubeなどのマネタイズが容易なプラットフォームに流すという使われ方もされ始めています。

能動的に「時間のムダ」をしにいく

スマホにSNSのアプリを入れていると、ついつい暇なときにそれを開いて見てしまい、さらに上記のように「暇つぶしのはずがなぜかSNSで落ち込んでしまう」というようなことも起こります。

なぜ我々は手持ち無沙汰のときにSNSアプリを開いてしまうかというと、「何か重要なニュース(社会的なものだけでなく知人に関するニュースも含む)があるかも」とか、「役に立つ情報に出会えるかもしれない」といった予期を持っているからではないでしょうか。

しかし、TikTokのアプリを開くときは、能動的に「時間をムダにしよう」と思って開くため、同じ「時間のムダ」で、同じように40分そこで過ごしてしまったとしても、満足感が違います。ある意味、「健康的な時間のムダ」だと思える――これもTikTokの良い点です。

ここ5年ほど、SNSだけでなくNetflixなどのサブスクリプションなども含め、世の中の多くのサービスが「可処分時間の奪い合いをしている」と言われています。TikTokはこの可処分時間をユーザーに消費させることがバツグンにうまく、そして時間を使ってしまったことに対する罪悪感をユーザーに感じさせない設計になっているわけです。

というのも、基本的に動画の尺は15秒以内で、つまらない動画を見たとしても15秒に収まっているので「時間を無駄にした感」をそこまで感じずに済むからです。また、冒頭を見て興味を持てなければチャッとスワイプするだけなのも気軽ですね。

というわけで今回はTikTokを取り上げて書いてみました。単純に「コンテンツ」として見たとき、既存のSNSよりも楽しく、かつ1本15秒という縛りがあるため時間を消費している感覚が薄くなる点でも優れたサービスだと感じます。

TikTokに慣れると、YouTubeですら「長い」と感じてしまいます。YouTubeはスマホを縦に持っていると画面が小さく表示されてしまい、でもいちいちスマホを横にするのは面倒くさい、というのもデメリットとしてはありますね。

一方で侮れないなと思うのは、TikTokには意外と勉強系の動画も多いということ。英会話やデザイン、写真などのちょっとしたTipsを15秒で短くまとめて発信している人もたくさんいます。

また、これはInstagramなどにも言えることですが、日本に限らずグローバルな流行がダイレクトに入ってくるので、「異文化に触れやすい、親しみやすい」という利点もあります。

いずれにしても、「短尺だから視野が狭くなる」とか「複雑な思考に耐えられなくなる」とかそういうわけでもなく、最初に「楽しい」がベースにあるので、物事の入り口、自分の興味を発見する場所としてとても優秀なのではないかと思います。

では、今週LIGちゃんねるで公開した動画3本を紹介していきたいと思います!

そして本文とは全然関係ありませんが、実は僕が担当している会社のYouTubeチャンネル「LIGちゃんねる」では週3本、月水金の朝8時に動画を更新しています! 

週替りでLIG社員に登場してもらい、1つのテーマを決めてショートインタビュー&LT(ライトニングトーク)形式で話してもらうというものです。では今週出した3本を紹介していきます!

採用に「カルチャーフィット」って重要?LIGに合う人って?:れいこ(人事)

今週登場するのは、人事のれいこさんです。最近の人事・採用界隈では「カルチャーフィット(カルチャーマッチ)が重要」とよく言われているそうですが、それに対してLIGはどう考えているのかについて話してもらいました。

人事の仕事で一番大切にすべきことは?:れいこ(人事)

僕は編集者やWebディレクター、デザイナーなどであれば、仕事において一番大事にすべきことってなんとなく想像がつくのですが、人事などのバックオフィスの仕事に対してはなかなか想像が及んでいません。そこで、れいこさんが仕事でこだわっていることを聞いてみています。同僚がどんな価値観や思いを持って働いているのかを知るのはいつも面白いな、と思っています。

ヨガをやると本当にマインドフルネスになれるの?:れいこ(人事)

最近、ビジネスマンのあいだでも注目されているヨガ。長年ヨガをやっているれいこさんに、ヨガが仕事に与える身体面・精神面での効能について聞きました。

このチャンネルは毎週月水金に更新しているのですが、金曜日更新分は週末ということでややゆるめの話題のものを出しています。

まとめ:自分の時間をつくる

今週のLIGちゃんねるには、人事のれいこさんに登場してもらいました。

TikTokはスキマ時間を潰すものとしては大変優秀で、「自分の知らない世界と出会う場所」としても魅力的です。一方、これはTikTokに限らずですが、たくさんのサービスが私たちの可処分時間を少しでも奪おうと鎬(しのぎ)を削っている状況は日を追うごとに加速しています。

そうなっていくと今度は、「自分の時間をつくる」ということがとても大事になっていくと考えられます。れいこさんの言うヨガもそうですし、散歩や運動などで「自分の時間」を過ごすことの大切さが見直されるフェーズに入っていくのではないかと思います。

最近、『時間術大全――人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』という本を読みました。まさに「自分の時間をつくる(Make Time)」ための工夫がたくさん掲載されている本です。

この本のなかで、

  • 「スマホからSNSやメールのアプリを削除する」
  • 「ホーム画面をできるだけシンプルにする」

ということがオススメされていたんですね。

その結果、僕のiPhoneのホーム画面はこうなりました。

手持ち無沙汰な時間があっても「読む(Kindle)」「書く(Googleドキュメント)」以外はするなよ、というメッセージです。あとはGoogleカレンダーとPayPay、音楽は必須なので残しています。SNSやメールは、アプリとしてスマホに入っていると無意識に見てしまうので、見たいときに主体的にPCで見るようにしました。(あ、もちろんTikTokは、スマホ前提のサービスなのでiPhone内には残してますが2ページ目です!)

というわけで(……?)、引き続き、LIGのYouTubeチャンネル「LIGちゃんねる」、生暖かい目で見守っていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

「LIGちゃんねる」はこちらから
(チャンネル登録、ぜひお願いします!🙇‍)

また毎週土曜日に、今回のような謎の記事が引き続き更新されていく予定です!

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