日本のIT人材不足を補う手段として近年注目されているオフショア開発。開発先として人気な国のひとつが、ベトナムです。
ベトナムにオフショア開発拠点を持つLIGでも、「ベトナムってどうなの?」とご相談いただくことが多くなってきました。
そこで今回は、開発拠点としてのベトナムについて解説します。結論、ベトナムはオフショア開発先として自信を持っておすすめできる国です。その理由についても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
「どの国にオフショア開発を委託すればいいのかわからない」「おすすめの国はどこか知りたい」という方は、以下よりオフショア開発で人気の5カ国とその特徴を無料でダウンロードいただけます。
編集部注:2021年12月に公開された記事を再編集しました。
ベトナムのオフショア開発でおすすめのシステム会社6選
- ベトナムのオフショア開発会社一覧
-
- 株式会社LIG
- 株式会社Sun Asterisk
- 株式会社バイタリフィ
- インディビジュアルシステムズ株式会社
- SHIFT ASIA CO., LTD.
- 株式会社ハイブリッドテクノロジーズ
続いて各社の特徴や得意領域について紹介します。
株式会社LIG
- フィリピンやベトナムの優秀なエンジニアと日本でグローバルチームを結成し、高品質を実現
- 要件定義から実装後の品質保証まで一貫して担当
- 日本で設計・デザインなどの上流工程、海外で開発を行う安心のチーム体制
自社で恐縮ですが弊社でもベトナム拠点でのオフショア開発をおこなっています。Javaを中心にPHP Laravel、Reactなどの開発エンジニアや、IoT開発の経験者も多数在籍しています。
LIGで実績のあるUIUXに加え、日本人コンサルタントやマネージャーとコミュニケーションを取りながらの開発が可能です。
ラボ型開発や、アジャイル型の開発など、開発形態にも柔軟に対応可能です。
開発拠点 | 東京・フィリピン(セブ)・ベトナム(ホーチミン) |
---|---|
設立年 | 2007年 |
従業員数 | 約300名 |
得意分野 | Webサービス開発、アプリ開発 |
代表実績 | Webサービス開発(東京システムハウス株式会社) Webサービス開発(株式会社四月一日企画) |
株式会社Sun Asterisk
日本とベトナムに拠点を持つ東証プライム市場のシステム開発会社で、DX関連の開発実績が豊富です。
アジャイルでの開発アプローチと独自ツールの活用により、素早く顧客のニーズに応えてくれます。
開発拠点 | 東京・ベトナム(ハノイ) |
---|---|
設立年 | 2013年 |
従業員数 | 約1,800名(グループ全体) |
得意分野 | Webサービス開発、アプリ開発 |
代表実績 | 「膝栗毛」アプリの開発(三菱地所株式会社) 寄付仲介プラットフォーム「トドクン」サービスの開発(NPO法人ブリッジフォースマイル) |
株式会社バイタリフィ
ホーチミンとハノイに拠点をもつ、ベトナムのオフショア開発の老舗企業。特にスマートフォンアプリの開発に強みを持っています。
開発拠点 | ベトナム(ホーチミン、ハノイ) |
---|---|
設立年 | 2005年 |
従業員数 | 400名(グループ全体) |
得意分野 | アプリ開発 |
代表実績 | 地域コミュニティアプリの開発(同志社大学) AIを活用した除雪状況のプラットフォーム開発(NTTコミュニケーションズ株式会社) |
インディビジュアルシステムズ株式会社
ベトナム・ホーチミンで2002年に設立されたシステム開発会社。
日本企業向けのオフショア開発およびシステムインテグレーション事業を展開しており、ベトナム日系IT業界の代表ともいえる会社です。
開発拠点 | 東京、大阪、ベトナム(ハノイ、ニャチャン、ホーチミン、カントー) |
---|---|
設立年 | 2002年(2014年1月IVS Co., Ltd.として再設立) |
従業員数 | 280名 |
得意分野 | 業務系システム開発全般 |
代表実績 | 大手人材派遣会社向け基幹システムの開発 私立学校の学校業務全般に関するシステム開発 |
SHIFT ASIA CO., LTD.
出典:トップページ|SHIFT ASIA CO., LTD.
ホーチミン、ハノイに拠点を構えています。QAが有名な株式会社SHIFTのオフショア拠点ですが、ソフトウェア開発やPMOサービスも展開。
開発拠点 | ベトナム(ハノイ) |
---|---|
設立年 | 2016年 |
従業員数 | 公式サイトに記載なし |
得意分野 | ソフト開発や、テスト自動化のソリューション |
代表実績 | シェアオフィス予約アプリ ソーシャル録音アプリ |
株式会社ハイブリッドテクノロジーズ
株式会社エアトリのグループ会社で、2016年よりオフショア開発事業を行っています。
対応領域は、社内システムの構築やモバイル・アプリの開発などで、特にウェブに関連する開発、ウェブ上でのユーザー体験をデザインすることに強みをもっています。
開発拠点 | ベトナム |
---|---|
設立年 | 2016年 |
従業員数 | 554名(2022年9月30日時点、100%子会社含む) |
得意分野 | アプリの企画・UXデザイン・開発 |
代表実績 | メルマガ・ニュースをスムーズに閲覧できるアプリの開発(株式会社まぐまぐ) 医師専門のスポット求人マッチング(株式会社ドキットメディカルサービス) |
※関連記事:オフショア開発先を選ぶときの注意点とおすすめ主要7社
ベトナムオフショア開発の現状や特徴
ベトナムは2023年現在も、オフショア開発先として人気の国です。まずはそんなベトナムについて、現状や開発先としての特徴を詳しく解説します。
開発スキル
今から約10年前のオフショア開発ブームの際は、「開発できるといいつつHTMLしかいじれない」という状況が多々ありました。結論、2023年現在はこのようなことはなく、これは昔の話と考えていいでしょう。
弊社メンバーの話を聞いていると、ベトナム国営企業の開発に関わったエンジニアも多いとのこと。駐車場でナンバープレート管理をするIoTシステム構築を作っていたようです。
開発言語の点でいうと、ベトナムでは、ReactやLaravelのようなモダン言語が多いという特徴があります。また、JavaやC#などの人材も多いので、幅広く開発体制の構築が可能です。
自然言語コミュニケーション
英語や日本語を話すエンジニアは一定数いますが、少数です。数を比較するとベトナム語のみを話すエンジニア >>>> 英語・ベトナム語を話すエンジニア >> 日本語・ベトナム語を話すエンジニアといった感覚でしょうか。
なお英語力は上昇傾向であり、英語能力を表すEF EPI英語能力指数を見ると、ベトナムはアジアで24位中7位。ちなみに日本は14位です。
日本語でベトナム人エンジニアと直接やりとりして開発している企業もなくはないですが、市場に多いわけではありません。代わりにITC(Information Technology Communicator)やブリッジSEと呼ばれる職種があり、日本語や英語をベトナム語に翻訳しています。
ITCはベトナムでも人気の職種で、求人すると集まりやすい傾向にあります。ただし日本語スキルは人により差があるので注意が必要です。
人月単価の傾向
人月単価(万円) | プログラマー | シニアエンジニア | ブリッジSE | PM |
---|---|---|---|---|
ベトナム | 31.73(-13.3%) | 39.88(-7.2%) | 51.34(+5.6%) | 57.94(-7.5%) |
出典:【2022年最新版】ベトナムオフショア開発の人月単価相場 ※()内は前年比
上記はベトナムのエンジニアの人月単価です。()内は前年比を表しています。給与上昇のムーブメントは落ち着き、2022年時点では若干減少傾向にあります。複数の人材紹介会社の方のお話によると、数年前より引き抜き合戦による高額年収提示が起きていたのですが、コロナの影響に加えて「採用されても試用期間で切られる」と認知が拡がったために沈静化した、とのことでした。
エンジニアの待遇
代わりに手厚くなっているのが福利厚生面です。家族を大切にするベトナムでは経営者から家族に対する施策が必要になります。
扶養家族にも適用される医療保険のような実利のあるものだけでなく、家族に向けた経営者直筆の感謝の手紙が有効であったり、社員旅行に家族も招待するというのもあるようです。
家族の企業に対する理解や満足度を得られないと家族から転職を勧められることも多いとのことで、従業員満足度以上に従業員家族満足度がポイントになります。
人件費にはこのようなコストも含まれており、「安いからベトナムでオフショア開発をする」という理由で進めるのは危険です。
日系企業はベトナム人から人気?
日系企業は人気かと言われるとそうでもなく、日系企業だから楽に優秀なエンジニアを獲得できるわけではありません。
オフショア開発の拠点はタイムゾーンが近しい国の企業が競合する傾向が強いです。ベトナムの場合は日本以外にも、ASEAN地域を統括するオーストラリア、日中韓の各社、FPTに代表されるベトナム企業がしのぎを削っています。
なかには「英語が話せたら欧米系企業に就職する(のだけど英語を勉強する気はない)」と話すベトナム人エンジニアもおり、日本企業が優秀なエンジニアを取得するのは簡単ではありません。
ベトナムがオフショア開発先としておすすめの理由
ここまでベトナムでオフショア開発をする上での現状や特徴について解説しました。ここまできて気になるのは、「ベトナムは他国と比較してどうなのか」という点ではないでしょうか。結論、ベトナムはオフショア開発先としてメリットが多く、おすすめできる国です。その理由について解説します。
おすすめ理由① ベトナム人の国民性
ベトナム人は勤勉で真面目な人が多く、日本人に近いと言われています。
経済産業省が発表している我が国におけるIT人材の動向によると、ベトナムのIT人材の週あたりの平均勉強時間は3.5時間。日本の1.9時間と比較すると約2倍です。
また、ベトナムは歴史的背景からも親日国として知られており、日本の文化についても理解や関心がある人が多いです。そのためコミュニケーションをとりやすく、オフショア開発が進めやすい国といえます。
おすすめ理由② IT人材が豊富
ベトナムはIT教育が盛んで、IT人材も豊富です。Vietnam IT Market Reportsによると、ベトナムのIT人材の人口は2021年時点で90万人。そのうち約55%が20代、約26%が30代と若いエンジニアが多数です。このような背景も相まって、ここ数年はAIやクラウドといった最先端の開発者が増加傾向にあります。
おすすめ理由③ 時差が2時間でコミュニケーションがとりやすい
ベトナムと日本の時差は2時間で、日本の方が2時間進んでいます。また、ベトナムの一般企業のビジネスアワーは8:00〜17:00が基本です。
一方日本は10:00~19:00の企業も多く、この時間であればベトナムのビジネスアワーとピッタリと一致します。
このような背景から、コミュニケーションがとりやすいのもベトナムがオフショア開発先としておすすめできる理由です。
ベトナムのオフショア開発における失敗事例
ここまで紹介してきた企業は、どこもオフショア開発を任せるに十分な実績のある会社ですが、とはいえ全てを開発会社に任せてしまうのはプロジェクト失敗の素です。
以下でオフショア開発で陥りがちな失敗事例を紹介しているので、同じようなことにならないよう対策をおこないましょう。
ブリッジSEの当たり外れがある
オフショア開発を進める場合、日本語を話せるブリッジSEが間に入って開発を進めることになります。
ベトナムは第一外国語として日本語教育をおこなう小学校もあり、日本語検定を持っている人もたくさんいますが、それでもやはり日本語能力には差があります。
ブリッジSEの日本語レベルが低いと、細かなニュアンスが伝わらずに違ったものができあがる、という失敗につながります。
この失敗を防ぐためには、発注前に必ずプロジェクトメンバーとの面談の時間を設け、コミュニケーション能力に問題がないか確認するようにしましょう。
時間にルーズ
日本人と比較すると、ベトナム人は時間に対する意識がそれほど強くありません。
日本では会議が時間ぴったりに始まる、納品期限を守ることが当たり前ですが、ベトナム人は期限を守るという教育は受けていても、時間に対する価値観がそもそも異なり「絶対に守らなければいけない」という意識はあまりないようです。
オフショア開発を進める上でも、このあたりのマネジメントには苦労することになります。
曖昧な指示が伝わらない
日本では、「よしなに」というような曖昧な指示でも、なんとなく伝わってしまうことがあります。これは日本特有の「察する文化」があるからですが、ベトナムに限らず海外でそれは通用しないと考えた方が無難です。
オフショア開発では、曖昧な指示ではなく細かく伝えるようにしないと、イメージと異なったものができあがります。特にプロジェクト発足まもないときは、丁寧なコミュニケーションを心がけるようにしましょう。
※関連記事:オフショア開発で失敗しないためのポイント
まとめ
10年前のベトナムでのオフショア開発は「安かろう悪かろう」の世界でした。しかし今は情報系大学への進学も増え、モダン言語への対応もなされています。「安かろう悪かろう」で海外開発チームと連携するのではなく、かけがえのないパートナーとして文化を理解し、尊重しながら組んでいく必要があります。
弊社はベトナム拠点での開発もお受けしておりますので、実際にどんなものなのかお気軽にお問い合わせください。
関連記事: オフショア法人を設立する流れをメリット・デメリットとあわせて紹介 いま「オフショア開発」に改めて目を向けてほしい理由 2022年のベトナムで感じた、オフショア開発の“変化”の兆し