【2024】中国におけるオフショア開発の現状と特徴を解説

Michitoshi Kudo

Michitoshi Kudo

日本におけるIT分野の人手不足を解消する方法として、オフショア開発への関心が高まっており、オフショア開発の黎明期から中国は開発先として長らく親しまれています。

ベトナムとフィリピンにオフショア開発拠点を持つ弊社から見て、「中国のオフショア開発は実際どうなのか」という点を解説していきます。

結論、今の中国でのオフショア開発はコストメリットは少なく、技術力にメリットのある国だと言えるでしょう。

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中国におけるオフショア開発の現状や特徴

中国のオフショア開発の特徴を一言でいうと、「技術力は高いが、そのぶんコストも高い」となります。

IT大国と呼ばれているように技術力は高い傾向にありますが、その分単価も高く、人件費の高騰もあってコスト面でのメリットはほぼ無くなってきています。

また、2000年代前半ごろまでの日本企業は「オフショア開発は中国一択!」というくらい、中国でのオフショア開発を主流にしていましたが、近年ではベトナムやフィリピンなど、その他のアジア諸国にシフトしています。

ですので近年はコストメリットではなく、高い技術力を必要とする案件がある際に重要視されています。

人件費が高騰している

コスト削減を目的として中国でオフショア開発する時代は終わったと考えていいかと思います。

先ほども申し上げた通り中国は今も経済成長を続けており、以前と比較してもオフショア開発にかかる人件費が上昇しております。

また、中国人エンジニアの特徴として、給与が高い企業への転職を積極的におこなう傾向にあり、それが開発費用の高騰にも繋がっている側面があります。

実際の単価を一覧で見てみましょう

人月単価の傾向

人月単価(万円) プログラマー シニアエンジニア ブリッジSE PM
中国の人月単価 50.51(+20.00%) 61.79(+18.68%) 79.29(-6.48%) 92.14(+7.43%)

出典:【2023年最新版】中国オフショア開発の人月単価相場はいくら? ※()内は前年比

中国はその他の主要なオフショア開発先の国と比較しても、単価としては最も高くなっています。

ただ中国の特徴の1つとして国土が広い分地域差があり、上海など沿岸部の都市では日本より高い単価もあれば、内陸部の企業であれば上昇幅もまだゆるやかになっています。

ブリッジSEの単価についてはその国に日本語を話せる技術者がどれだけいるかという点にも左右されますので、バングラディシュなどの方が高くなる傾向になります。

地政学的なリスクが増大している

地政学的リスクとは、特定地域が抱える政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりが、地理的な位置関係によって、その地域や関連地域の経済、世界経済全体の先行きを不透明にしたり、特定の商品の価格を変動させたりするリスクを指します。

出典:SMBC日興証券

米中関係や台湾有事など、中国で考えられる地政学的リスクは影響が大きく、日本にいても注視すべき事柄です。また、仮に尖閣諸島などの国際問題が深刻になった際のリスクも考慮する必要があります。

また、中国は国策として自国産業を優遇しており、日系企業には制約が伴うこともあります。中国のネット検閲は厳しく、情報漏洩などセキュリティのリスクも指摘されています。

経済安全保障推進法の影響も

2024年現在は地政学的な緊張に加え、経済安全保障推進法の成立による影響を受けています。

この法律が生まれた背景は中国の脅威に対しアメリカと足並みを揃えて対抗するためであり、日本の技術や産業を他国から守る内容になっています。

現在日本では金融機関を中心に、中国オフショア開発から撤退や規模を縮小する動きが見られ、日本国内やその他の国への移管する動きが強くなっています。

ベトナムとフィリピンに拠点を持つ弊社にも「中国での開発がNGになったので……」とご相談を受けることが増えてきています。

参考記事:中国オフショアに転機、人件費高騰と地政学リスクで規模縮小の動きも-日経クロステック

開発スキルは非常に高い

一方で他国と比較してもスキルは高く、上流工程の知識や実績も豊富です。

中国は世界第3位の人数となる約328万人のIT技術者がおり、数が多いことから対応の幅も広く、中小案件や大型案件まで様々な開発案件に対応が可能です。

AIなどの最新技術に対応できる技術力を持ったエンジニアも多く、さらに日本語を話せる人材も多いためやり取りで苦労することは少ない傾向にあります。

参考リンク:世界109カ国のITエンジニア数は推計2,680.5万人、前年比13.3%と急増、国別では1位米国、2位インド、3位中国、日本は世界4位を維持するが伸び悩む

自然言語コミュニケーションも取りやすい

先述の通り日本語能力は比較的高く、日本とのオフショア開発の歴史も長いため理解のある組織もあります。細かい指示や日本独特の言い回しでも、正確に情報を伝えやすい点がメリットとして挙げられます。

英語力の高い人材も豊富なため、コミュニケーションは他国と比較してもうまくいきやすいかと思います。

ただもちろん中国人技術者同士の会話は中国語でおこなわれますため、多少は現地の言葉を理解できるとなお良いでしょう。

日系企業への関心が高いか・どう見えているか

関心は「それほどでもない」というのが実情です。日系であるというだけで、容易に優秀なエンジニアを確保できるとは限りません。

中国でよく利用されている日系企業情報交換サイトにて、多くの中国人が日系企業のマイナス点として挙げるのが「残業」・「低賃金」・「厳しい管理」です。

基本的に与えられた仕事以外はおこなわない国民性であり、また欧米と比較すると賃金が低いことから日経企業を避けるエンジニアも少なからず存在します。

ただ良い点も多く挙げられており、「教育制度の充実」「福利厚生の充実」「友好関係を大切にする」などは高く評価されています。

 

オフショア開発の拠点はタイムゾーンが近しい国の企業が競合するので、日本以外にもオーストラリア、韓国、ベトナムなどの企業がしのぎを削っています。その中で優秀なエンジニアを獲得するのは簡単ではありません。

中国でのオフショア開発をされる際は、こういった背景を踏まえて実績のある会社を選ぶことをおすすめいたします。

他国へのシフトが加速

以上のことから、日本企業では中国ではなく他のアジア諸国へオフショア開発先をシフトする動きがあります。

各国の特徴を簡単に紹介いたします。

ベトナム

コストは平均的に安価であり、技術力の面でもベトナムは国策としてIT教育を盛んにおこなっているため、若いIT人材が供給されやすい構図になっています。

時差は2時間で勤勉な国民性もあり、日本に合っています。歴史的背景からも親日国として知られており、日本の文化についても理解や関心がある人が多くいます。

そのためコミュニケーションをとりやすく、オフショア開発の拠点として人気が高まっています。

💡もっと詳しく→【2024】ベトナムのオフショア開発の現状-スキルや単価、選ばれる理由

フィリピン

コストとしては中国に次ぐ水準であり、日本語に熟練した人材が非常に少ないためブリッジSEのコストが高い傾向にあります。

ベトナム同様親日国であり時差が1時間のため日本企業からも人気がありますが、公用語が英語(+タガログ語)なので英語圏からのオフショア開発拠点として人気です。

💡もっと詳しく→フィリピンにおけるオフショア開発の実情を現地スタッフが解説

インド

コストは中国と変わらぬくらいに高額ですが、IT教育が盛んなため技術力に定評があります。

英語人材も豊富で大規模なシステム開発の案件なども対応可能なため、技術力で選ばれることの多い国です。

データサイエンティストとAIエンジニアの単価が高騰しているため、英語でのオペレーションに加えてラボ型開発ができないとコストが増大する傾向があります。

また日本との時差が3時間半あるため、プロジェクトの進行におけるコミュニケーションには配慮が必要になります。

バングラデシュ

ミャンマーなどとともに「ポストベトナム」と言われる開発国の1つです。

単価はかなり安い部類ですが技術面ではやや発展途上のため、バングラデシュでは下流工程のみを開発し、上流工程は別の国でおこなう企業もあります。

日本語人材がかなり希少なためブリッジSEの単価が高く、2024年現在バングラディシュに進出している日本企業の事例があまり多くないのも実情です。

もし依頼する場合は、ラボ型開発で英語に長けたPMを国内で採用するのが良いと思います。

参考記事:ラボ契約(ラボ型開発)とは?メリット・デメリットや契約時の注意点

中国のオフショア開発におけるメリット

以上のことからメリットをまとめると

・最新トレンドにも対応できる技術力
・時差が1時間である
・日本語+英語で対応でき、言語の壁が低い
・人材が豊富なため、優秀な人材の確保が比較的しやすい

などが挙げられます。

中国のオフショア開発におけるデメリット

人件費の高騰はお伝えの通りで、単純なプログラミングやHTMLコーディングなどではコスト感が合わないケースが多くなっています。

また、ビジネス感覚の違いや政府による情報規制の可能性も頭に入れておくべきでしょう。

ビジネス感覚の違い

基本的に「頼まれたこと以外はやらない」くらいに考えていただくといいかと思います。

成果主義であり、過程ではなく結果を非常に重視します。

例えば日本人のプログラマーであれば気づいて少し修正するような項目があったとしても、特に気にせず指示書の通りにおこないます。

日本の感覚で「気が利かない」と思うことは間違いで、そういった国民性であると認識しておくことが大切であり、仕様書や設計書を徹底的に細かく記載するなどが対策の1つとなります。

政府による情報規制の可能性

中国では政府によるインターネットの検閲が日常的におこなわれており、情報規制によって社内情報漏洩のリスク、監査による開発の妨げなどのリスクが考えられます。

情報規制そのものを回避することは困難なので、そういったことがある可能性を考慮したスケジュール調整が必要となります。

中国オフショア開発の実績が豊富な企業

トランスコスモス株式会社

画像引用:https://www.trans-cosmos.co.jp/

1985年設立。本社は東京都豊島区にあり、日本各地にも支社を持ちます。

中国オフショアの開発子会社「宇宙信息創造(中国)有限公司」は、ISO27001およびソフトウェア開発のプロセス改善の国際基準であるCMMIRの最高レベル5を取得しており、特に高い品質のソリューションを提供しています。

対応領域も非常に多岐に渡ります、また、窓口は日本語対応のため連携のコミュニケーションコストもかかりません。

社名 トランスコスモス株式会社
所在地 本社:〒170-6016 東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60
中国拠点:大宇宙信息創造(中国)有限公司 天津市新技術産業園区華苑産業区開華道9号
※その他、アジア圏に73拠点あり
URL https://www.trans-cosmos.co.jp/
費用 要問い合わせ

株式会社ケネス

画像引用:https://www.kenes.co.jp/index.html

2004年設立のIT企業で東京都千代田区に本社を持ち、中国大連に支社を持ちます。Webシステム開発やアプリ開発を得意としており、比較的短納期で開発をおこなえる点も特徴。

現地に日本語の得意なスタッフも多く、連絡ルールが明確化されており、見積もり・発注・契約なども全て日本式で、コミュニケーションの不安を解消するような仕組みが整備されています。

社名 株式会社ケネス
所在地 本社:〒101-0032 東京都千代田区岩本町2丁目4番1号 神田岩本町プラザビル8階
中国拠点:大連市高新園区黄浦路541号网絡産業大厦2F 201室
URL https://www.kenes.co.jp/index.html
費用 要問い合わせ

株式会社J&Cカンパニー

画像引用:https://www.jcc-ltd.com/

2015年設立の岡山に本社をもつシステム開発会社。2社の中国法人を持ち、短納期での開発を可能としています。

日本向け案件を長く取り扱っており、1000件以上の日本開発プロジェクトの実績を持ちます。

現地法人を運営しているからこそのリアルな実情なども得られます。

社名 株式会社J&Cカンパニー
所在地 本社:〒101-0032 東京都千代田区岩本町2丁目4番1号 神田岩本町プラザビル8階
中国拠点:大連市高新園区黄浦路541号网絡産業大厦2F 201室
URL https://www.jcc-ltd.com/
費用 要問い合わせ

まとめ

日本では古くからオフショア開発の拠点として馴染みがある中国でしたが、その目的はコストカットから高い技術力へとシフトしています。

コストを見極めつつ高い技術を狙う場合は有効な選択肢となりますが、コストを目的とする場合は他の国に軍配があがります。これらの情報を踏まえた上で、安心して任せられる企業を選択することが肝要です。

弊社LIGではベトナム・フィリピンにてオフショア開発拠点を運営しております。お客様の課題に寄り添った提案をさせていただきますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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アクセンチュア株式会社にて、スクラッチ・パッケージ開発のデリバリー部隊に所属。100人規模のSIプロジェクトを多数経験。SI経験15年以上。経験領域はアプリ、IF、データ基盤、インフラ。クライアントファーストを信条にソリューションの提案からデリバリーまで幅広く実施。

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