生成AIの活用事例6選。新規事業や業務効率化の実例を紹介

生成AIの活用事例6選。新規事業や業務効率化の実例を紹介

永松健志

永松健志

Technology部の永松です。

弊社LIGでは「生成AIコンサルティング」事業の立ち上げに伴い、日々生成AI関連の情報収集をおこなっています。

本記事では、実際に生成AIをビジネス(事業)で活用している企業の例や、各企業が社内業務においてどのようにAIを活用しているか実例を紹介します。弊社LIGにおける活用事例もあわせて、計6社分のAI活用事例をまとめました。
※以下をクリックorタップで該当箇所へジャンプします

生成AIを活用した新規ビジネスの事例
社内業務における生成AIの活用事例

そのほか、生成AIを使う際のリスクや注意点についてもまとめていますので、気になる方はぜひご覧ください。

生成AIの活用方法でお困りではないですか?

  • 生成AIってそもそもなに?
  • 自社の業務でどう活用できるかイメージできない
  • ChatGPTを社内に導入したが活用できていない

このようなお悩みは生成AIコンサルティングのプロである弊社LIGにぜひご相談ください。戦略アドバイザーとして10社以上の顧問に従事している弊社の顧問・梶谷建人氏ともコラボレーションし、生成AIを使った業務マニュアル策定など定量的な効率化をサポートいたします。

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生成AIを活用した新規ビジネスの事例

昨今、AIを使ったビジネスがいくつも生まれていますが、私はそれらの多くに共通するのは「AIが超高度な効率化であることを生かしたビジネス」だと感じています。

現時点では、「人力では採算が合わなかった量のタスクをこなす」、「人力では対応できない速度でこなす」、ひいては「ユーザー1人に対して複数人体制の対応者がいるようなタスク量をこなす」というようなサービスが生まれている印象です。

ここではビジネス(事業)においてどのようにAIが活用されているか、3つの実例を紹介します。

ライブドア:AIによる自動ニュース配信「ライブドアニュース24」

出典:ライブドア(https://ldcorp.livedoor.blog/archives/21659277.html)

1つ目のビジネス事例は、ライブドアニュース24です。

“■「ライブドアニュース24」とは
ライブドアニュースの記事を元に、Chat GPTや自動音声などのAI技術を駆使したキャラクターによる24時間ニュース配信サービスです。配信元各社から許諾をいただいているニュース記事をピックアップし、原稿の作成から音声による読み上げ、動画配信までの一連の流れを自動で行い、最新のニュースをユーザーへお届けいたします。VTuber文化が浸透してきた今、人間ではなくキャラクターを用いることで、デジタルネイティブ世代やテクノロジーに関心を持つ新たなユーザー層へアプローチします。β版リリース段階においては、「速見」がニュースキャスターを務めます。

今後は配信元各社や当社が運営している各メディアと連携し、さまざまなジャンルへの展開と、それぞれのユーザーのニーズに応えられる情報を発信してまいります。また、日本だけではなく海外ユーザー向けに、ライブドアニュース24をその国の言語でお届けする予定です。”
(引用:「ライブドアニュース24」β版、公開スタート!

ライブドアニュース24は、上記のようにAIによって記事をピックアップ→原稿作成→Vtuberによる読み上げ→動画配信までを一連でおこない、多言語展開も可能としています。

それにより、下記のようなメリットが考えられるでしょう。

ライブドアニュース24におけるAI活用のメリット

  1. 効率的な情報配信
  2. ライブドアニュース24が提供しているサービスの中核は、ニュースの自動収集・原稿の作成から読み上げ、動画配信までの一連の流れを自動化している点にあります。

    これにより、従来は人のリソースを必要としていた作業が大幅に効率化され、24時間体制でのニュース配信が可能となります。

  3. 個別のユーザーニーズへの対応
  4. AI技術の進化により、ユーザーのニーズに応じたカスタマイズやパーソナライズが容易になっています。今後の展開で、各ユーザーの興味や好みに合わせた情報提供が実現される可能性が考えられます。

    将来的には、ユーザーが気になるトピックのニュースだけを取り上げ読んでくれる”自分だけのニュース配信サービス”が誕生するかもしれません。

リスクや懸念点について

一方、別の視点としては、下記のような点にも考えを巡らせる必要があります。

  1. 信頼性と公平性の問題
  2. AIがニュースの選定や原稿の作成を自動でおこなう場合、どのようなアルゴリズムや基準でそれが行われているのかが透明性を持っているかどうかが問題になります。

    特定のトピックや視点が過度に強調されたり、逆に無視される可能性も考えられます。特定の政治主張や事件への見方など、デリケートな分野は特にアウトプットへ配慮する必要があるでしょう。

  3. 情報の深みと質
  4. AIが生成する内容は、インプットのデータソースや生成アルゴリズムに依存します。また、洞察や背景情報、専門家の意見といった要素が欠落する可能性があります。AIで生成させる場合、エビデンスチェックの観点では不確実性が伴うでしょう。

    ただし、ライブドアニュース24に関してはエビデンスを伴った記事をインプットソースとし、要約-読み上げているので、ある程度その点が担保されているように感じます。

  5. 人間の役割
  6. AIがニュースの生成や配信を自動化するなかで、人間の記者やエディターは何をするべきなのかは避けては通れない問題でしょう。人間の役割が縮小するのか、それともより質の高いコンテンツ作成や分析に注力する方向にシフトするのか、その方向性は検討が必要そうです。

    現時点では、専門家の持つ体系だった知識などのAIでの代替は難しいと感じていますが、将来的にはわかりません。

アサヒビール:画像生成AIを活用した体験型プロモーション

出典:アサヒビール(https://www.asahibeer.co.jp/news/2023/0926.html

2つ目のビジネス活用事例は、アサヒビールの広告施策です。

「Create Your DRY CRYSTAL ART」は、テキストと自分の画像をアップロードするとそのシチュエーションの自分がAsahi Dry Crystalを楽しんでるアートが出てくるプロモーションサービスです。

“アサヒビール株式会社(本社 東京、社長 松山一雄)は、生成AI(人工知能)によりオリジナル画像が作成できるサービス「Create Your DRY CRYSTAL ART」を、『アサヒスーパードライ ドライクリスタル』のブランドサイト内で9月26日から展開します。今回のサービスには、Stability AI(スタビリティ・エーアイ)社が提供する世界で最も高性能なツールの一つとされる画像生成AI「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」を採用しており、体験型プロモーションに活用するのは日本初となります。

「Create Your DRY CRYSTAL ART」は、任意のテキストと自身の画像をアップロードするとオリジナル画像が作成されるサービスです。場所やその時の気分などに加えて、「水彩画風に」「アニメ風に」といった指定をすると、アップロードした画像を生成AIが加工してアート化します。満20歳以上であれば誰でも作成可能で、より多くの方の体験を促進することで「スーパードライ ドライクリスタル」の世界観を感じていただき、商品の認知拡大や購入喚起を図ります。”
引用:画像生成AI「Stable Diffusion」の体験型プロモーション活用は日本初「Create Your DRY CRYSTAL ART」

Create Your DRY CRYSTAL ARTにおけるAI活用のメリット

このサービスには下記のようなインパクトがあると考えています。

  1. テクノロジーとアートの融合
  2. 昨今ではAIでのアート生成に広く興味が持たれており、アサヒビールが「Stable Diffusion」という先進的な技術を取り入れたことで、新しい顧客層をターゲットにすることも可能となります。

    また、AI自体がバズワードなのでお祭り感が演出できる点も、プロモーションとしては強みとなるでしょう。

  3. インタラクティブな体験
  4. ユーザーが直接参加できるプロモーションとすることで、ブランドとのコミュニケーションが活発化し、ブランドロイヤリティの向上が期待できます。

  5. SNSシェアの促進
  6. 生成されたオリジナルアートはSNSなどでシェアされる可能性が高く、それにより口コミやブランドの認知度の向上が期待できます。

    ただし、一時的な話題性は得られるかもしれませんが、長期的なブランドの強化や、その後の継続的な関わりを持つキャンペーンへの展開に影響が生じる可能性もあります。

リスクや懸念点について

一方、下記の点がプロモーションの懸念点となります。

  1. 生成コンテンツの品質
  2. 本来、このように生成される画像が一貫した品質かどうかはプロモーションとして重要です。ユーザーの期待に応えるものであるかが不明確で、期待を裏切られたり不快になったりすると、ユーザーはブランドに対する信頼を失うかもしれません。

    ただし、現時点ではAIは不確実性が存在することも認識されているので、逆に変な画像が出た方がSNSでバズる……かもしれませんね。

  3. データの取り扱い
  4. データの取り扱いアップロードする画像がデータ保護されるのか、プライバシーに影響ないかなどに懸念をいだくユーザーもいるでしょう。

    また、データの漏洩や不適切な利用があれば、企業のイメージダウンに繋がります。前提として、データが学習されないような設計で作るのが望ましいでしょう。

港区:行政主導の子育て世帯サポート「まちの子育てAIパートナー」

出典:PR Times(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000096169.html
3つ目のビジネス事例は、行政でのAI活用。港区の「まちの子育てAIパートナー」を紹介します。

まちの子育てAIパートナーは、従来の行政サービスをAIで効率化しようというサービスです。

“プレッシャー、孤独、不安、時間的な制約を抱える子育て世帯に対して、行政が講じることができる施策やアイデアを、テクノロジー企業がオンラインサービスとして異次元の速さで実装します。

具体的には、港区LINE公式アカウントに、子育てを一緒に並走してくれる対話型のAI機能を実装し、子育て関連の行政手続きを網羅的にオンラインで受け付けられるよう窓口機能を集中的に実装していきます。月齢やタイミングに応じたスケジュール管理やアラート機能、病院や施設予約などあらゆる手続きが、説明書を必要とせず誰もがすぐに利用できるサービスを目指します。

本取り組みを通して、港区LINE公式アカウントは、子育て世帯全員のパートナーとなり、行政手続のナビゲーターとしてはもちろん、精神面での寄り添いを実現します。相談窓口とも連携し、保育士などの専門家への相談も容易に行えるように機能を構築していく予定です。”
(引用:港区とBot Express、生成AIを用いた「まちの子育てAIパートナー」開発のための連携協力協定を締結

行政がAIを導入するメリット

まちの子育てAIパートナーに見られるような行政のAI導入は、下記のようなメリットが考えられるでしょう。

  1. テクノロジーと行政の連携
  2. 従来、行政はIT技術の利活用への取り組みが遅いと思われがちです。その点からも、行政が積極的にAI技術を活用していく姿勢は評価されるのではないでしょうか。

    一方で、行政が直接関与している点からも、サービスの信頼性や安全性が高いものが求められるでしょう。

  3. 利便性の向上
  4. 港区LINE公式アカウントを通じて、子育て関連の手続きや相談がオンラインで容易におこなえるため、多忙な子育て世帯の利便性が向上します。また、子育てに関する手続きやサポートを一元的に提供できることで、利用者の手間や認識のミスも減るでしょう。

    なお、従来は区民へのサービス提供を心掛ける反面、操作の不明点など手薄になる部分も存在していました。こちらの事例ではAIを活用したQ&Aを設ける予定で、区民に対しての手厚いサポートの提供ができるのではないかと期待されています。

  5. 精神面のサポート
  6. こちらのサービスには子育て世帯に対する精神的サポートや相談機能も組み込まれる予定で、行政としての総合的な支援がおこなえるようになる見込みです。

    子育てに対して不安や孤独感を感じる子育て世帯に寄り添うことで、よりよい行政サービスを実現できるのではないでしょうか。

デメリット、リスクについて

一方、下記が懸念点となります。

サービスの持続性とアップデート
AIはまだまだ発展途上の技術であり、技術的な問題や予算の制約などにより、サービスの持続や定期的なアップデートが難しくなる可能性があります。

これはどのIT技術でも同じではありますが、AIは特に水物の印象が強い技術です。サービスを導入する際は現状のみならず、今後の動向へ思いを巡らせる必要があるでしょう。

とくに行政などのインフラに近い部分での提供サービスの破綻は、住民にとってリスクとなるため、慎重な検討が必要となります。

プライバシーとセキュリティ
行政がおこなうサービスである以上、個人情報の取り扱いやデータの保護に関して高いセキュリティを維持する責任があります。当然ながら、情報流出やセキュリティの脆弱性があると、行政の信頼性が大きく損なわれます。

実際のサービス提供の質
今回のサービスは、実験的な側面があるとは思いますが、現時点ではAIが提供する情報やサポートが、実際の子育ての現場で役立つものであるかどうかは未知数です。とくに、一部のユーザーにとっては、AIの応答が不適切や不快に感じられる場合もあるでしょう。

間違った情報の提供や対応が思わぬ事象を生じる可能性もありますので、作って終わりではなく、実態を確認していかなければいけません。

AI活用新規ビジネス事例のまとめ

ここまで紹介した「ライブドアニュース24」「Create Your DRY CRYSTAL ART」「まちの子育てAIパートナ」の3つの事例を見てみると、AIを活用した新規ビジネスには下記のようなメリットや注意点があることがわかります。

AIをビジネスに活用するメリット

  1. 効率的なサービス提供
  2. AIは大量のデータを迅速に分析し、個別のユーザーの要求に合わせた情報やサービスを提供可能。今までのような「特定ターゲット層へのサービス」の枠を超えて、「あなたのためのサービス」を展開できるようになるポテンシャルを秘めている。

  3. 手間の削減
  4. 行政手続きのような煩雑な作業も、AIを活用することでスムーズに進行させることが可能。

  5. 新しいモデルのサービス提供
  6. AIを使うことで、個人へのアートの生成や、1:1の対話型サービスなど、従来の方法では実現しづらかった新しい体験をユーザーに提供できる。

AI導入の際の注意点

  1. データの取り扱い
  2. 個人情報の保護やデータのセキュリティは非常に重要。データの不適切な取り扱いは法的リスクやブランドの信頼性低下を引き起こす可能性がある。

  3. 過度な期待
  4. AIが万能ではないため、過度な期待を持たせることは避ける必要がある。ユーザーのニーズや課題解決に真摯に取り組む姿勢が求められる。また、エビデンスやファクトに基づくデータであるか、正しい対応であるかなども、精査される必要がありそうです。

これらのメリットや注意点を踏まえ、AI系新規ビジネスを展開する際には、ユーザーのニーズや課題解決を中心に、継続的な技術のアップデートやデータの適切な管理、そして社会的・倫理的な側面も考慮して事業を進める必要があります。

社内業務における生成AIの活用事例

ここまではビジネスやサービスにおけるAI活用事例について紹介してきましたが、次に社内業務効率化を目的としたAIの導入事例も2つ紹介します。

AIによる業務効率化がおこなわれれば、本質的なタスクに集中することができるようになると期待されており、近年はAIを使ったシステムやSaaSなどを導入する企業も増えています。実際にどのように使われているか、事例をご紹介します。

AIを使ったシステム開発をおこないたい方は、こちらのページで紹介しているAIシステム開発が得意な会社一覧もぜひご覧ください!

ソフトバンク:セキュリティを担保した社内向けAIチャットの導入

1つ目の社内活用事例は、ソフトバンクでの社内チャットボットの導入です。

“ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、生成系AI(人工知能)を活用したソフトバンク版AIチャットを社内向けのサービスとして構築し、全従業員約2万人を対象に2023年5月29日から利用を開始しましたのでお知らせします。

ソフトバンクは、2023年2月ごろから生成系AIの業務利用を開始するなど、業務効率の向上などをはじめ、広く生成系AIの利用を推進してきました。このたび構築したソフトバンク版AIチャットは、ソフトバンクの全従業員が生成系AIをより積極的かつ安全・安心に業務で活用することを目的に、セキュアな環境で構築された社内向けAIサービスです。ソフトバンクの従業員は、このAIサービスを安全な環境で最大限に活用することで、文章の作成や翻訳などの既存業務の効率化や生産性の向上につなげることができる他、営業・マーケティング領域での企画・アイデアの立案やサービス開発における各種プログラミングのサポート、コールセンターの業務など、あらゆる業務に応用することを目指しています。”(引用:ソフトバンク版AIチャットの利用を開始~全従業員約2万人を対象に、セキュアな環境で生成系AIの業務利用を促進~ | 企業・IR

ソフトバンクのみならず、社内向けAIを導入している事例はほかにも耳にします。社員の業務効率化は利益に直結しうるので、重要な視点です。

AIチャット導入のメリット

社内向けチャットAIの提供は、下記のようなメリットが考えられるでしょう

  1. 効率化と生産性の向上
  2. まず単純に、文章の作成や翻訳といった既存業務の効率化が可能となります。

    コールセンターや営業・マーケティング領域でのアイデア立案、サービス開発のプログラミングサポートなど、多岐にわたる業務で適用が可能です。もはやAIの影響を受けない範囲はほとんどないでしょう。

  3. 業務レベルの標準化
  4. 普通、会社では知識や経験など様々な要素の影響もあって、社員一人一人の習熟度や能力に差があります。AIに相談することで、アウトプットのレベルを一定に保つことが可能になります。

    人力だとどうしても取りこぼす点を考えると、一人一人が個人で活用できるチャットボットは非常にインパクトがあります(みんなにOJTがつくようなものです)。

  5. 安全・安心な業務利用
  6. 社内システムとしてAIを導入しない場合、社員がその便利さに勝手にChatGPTを契約して使う……そしてデータが漏れるなんてことが発生するかもしれません。

    もちろんセキュリティの厳しい環境ではそのようなことはないかもしれませんが、AI活用自体を制限するくらいなら、社内でセキュアな環境を提供し、活用を促進するのがいいかもしれません。

リスクや懸念点について

  1. AIの倫理的・ガバナンスの問題
  2. 社内でAIを使うのであれば、コンプライアンスへの配慮が必要です。入れていいデータや入れてはいけないデータの規定、使っていい業務など、会社としての方針を定める必要があります。

  3. 業務の過度な依存
  4. AIは有効、しかしながら万能ではないので、業務に過度に依存することは望ましくありません。

    属人化ならぬ属AI化してブラックボックス化したり、従業員のスキルや知識の低下が生じる可能性があるので、気を配る必要性がありそうです。

東京都:ChatGPTの全部局での導入

出典:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230715/k10014130661000.html

2つ目の社内活用事例は、東京都での社内チャットボットの導入です。

“東京都は、8月にも生成AIをすべての部局で導入し、資料づくりの参考などに活用していくことにしています。

利用者の求めに応じて文章や画像などを自動的に作り出す生成AIについて、都はプロジェクトチームを立ち上げ、業務に活用できるか検証作業を進めています。

こうした中、都は対話式AIの「ChatGPT」について、8月にも職員が安全に利用できるネット環境を整備した上で、全ての部局で導入し利用を始める方針です。”
(引用:東京都 生成AI「ChatGPT」 8月にも全部局で導入し利用開始へ | NHK | AI(人工知能))

東京都はChatGPTの導入に際し、生成AI活用ガイドも示しています。生成AIの活用を検討する際は、ガイドラインも併せて考えていきましょう。

文章生成AI利活用ガイドライン

さきほども行政がAIを使うメリットをあげましたが、従来のITへの取り組み事情を考えると、行政のAIへの取り組み速度は例がないほど早いと感じます。

これらは行政や政府がいかにAIに期待しているかの裏返しと言ってよいでしょう。

また、東京都という大きな行政主体が先に活用事例やガイドラインを出したことで、ほかの行政も追随し、日本の行政システムは大きな転換点を迎えるかもしれません。

生成AIの社内活用事例のまとめ

「ソフトバンク」「東京都」の2つの事例を見てみると、AI活用事例には下記のようなメリットがあることがわかります。

社内業務にAIを活用するメリット

  1. 業務効率の向上
  2. 文章の作成、翻訳、有識者会議の報告書の要約など、多岐にわたる業務の効率化が期待される。

  3. 新しいアイディアやサービスの創出
  4. 営業・マーケティング領域での企画・アイデア立案やサービス開発にAIを利用することで、新しい取り組みやイノベーションが生まれやすくなる。

※デメリットに関してはおおむねビジネス活用と同じとなるため、割愛させていただきます。

LIGにおける生成AIの活用事例

さて、これまでは社外での事例を挙げてきましたが、当然弊社LIGでもChatGPTをはじめとしたAIを活用としています。どのような使い方をしているかをざっとまとめました。

各種ヒアリング項目の洗い出し(ディレクション)

通常、案件を進める際には様々な項目で決め事がありますが、AIを活用することでその設問項目のたたき台を作ることが可能です。

例:新規システム開発案件で、AWSとAzureのどちらを採用すべきかを判断するため、クライアントへの設問項目を作成。

スライドやプレゼン資料に使う画像作成(ディレクション)

▲DALL·E 3を活用してUbarEatsのようなフードデリバリーのサービス体験を示す一貫したストーリーボードを作成した例

従来はフリー画像やイラストを検索して探すか、デザイナーに発注するしかありませんでした。生成AIによる画像作成は、現時点では融通が利かない部分もありますが、ディレクターが自分で画像を用意できることは、かなりの利点があると私は考えています。

デザイン案の案出し(デザイン)

▲midjourneyに花屋のサービスのイメージを作成してもらった例

AIはデザイントレンド、色彩理論を基にした、多様なデザイン案を生成することができます。

アイデアをそのまま使うことは難しいかもしれませんが、様々な方針を検討することや、自分があまり得意でないテイストなどでも案出しに使えるのが魅力的です。インスピレーションを得るためにはかなり有効ではないでしょうか。

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画像生成AI「Midjourney」の始め方・使い方をデザイナーが丁寧に解説
画像生成AIで思い通りの画像を生成するプロンプトのコツ

カンプの作成(デザイン)

デザインの方向性やイメージを示す参考画像としてカンプを作成してもらうことが可能です。上記の画像は「採用募集用の写真」の撮影時に、参考画像として用意するカンプを、midjourneyで作成したものとなります。

コーディングや設計への活用(開発)

AIはコーディングの自動化、コードの最適化、あるいは設計の最適化の提案をおこなえます。

▼活用例
  • コーディングに行き詰ったときに、AIに設計を相談
  • GitHub Copilotを導入して効率的なコーディングを実施
  • ChatGPT-4Vを使い、AWSの要件を伝えて、対応するクラウドフォーメーションのyamlを書いた

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ChatGPTを使ったクリーンなプログラミングを実践してみた

テスト設計書の検討(開発)

AIを使用して、設計などに対して効果的なテストケース生成や、パターンの網羅的な洗い出しなども可能です。また、改修に伴う影響範囲の分析と必要なテスト項目の作成などもできます。

▼活用例
  • ログイン時の入力フォームのエラーパターンの洗い出しをおこない、テストケースを作成
  • 設計書をインプットして、対応するテストケースを作成

※関連記事
AIを使ったJestテストコードの書き方

データ分析(マーケティング)

AIは数字を扱うのが得意で、データ分析も可能です。データを入れるだけでAIに観点を考えてもらい、グラフ化することもできます。

▼活用例
  • Code Interpreterを使った、データ分析、可視化
  • NarrativeBIを使った、AIによるGAのデータ分析

そもそも生成AIとは?

生成AI(Generative AI)とは、原義としてはデータを基に新しいコンテンツや情報を自動的に生成する能力を持つ技術のことを指します。

2022年にOpenAIのChatGPTmidjourneyといった革命的なサービスが誕生しています。近年でも、もっとも注目の技術体系でしょう。

Microsoftのビル・ゲイツさん、ソフトバンクの孫正義さんなど、ビックテックの方も強い興味をしめしており、この流れはさらに加速していくと思われます。

生成AIの得意分野

生成AIの得意分野としては下記があげられます。

  1. 内容生成
  2. 生成AIは、テキスト、画像、音楽、動画などのマルチメディアコンテンツを自動的に生成することができます。例えば、ユーザーの入力に応じて文章を作成する、または特定のテーマやスタイルに基づいて画像や音楽を生成することが可能です。

  3. 業務効率化
  4. 事前に学習したデータやパターンをもとに、資料の作成、レポートの要約、市場調査の分析など、多くの業務プロセスを自動化し、効率的におこなえます。

  5. 対話型サービス
  6. Chatbotや対話型AIとして、ユーザーとのコミュニケーションを円滑に行い、必要な情報提供やサポートをおこなえます。

生成AIはこれらの多岐にわたる機能を持ち、業務の質や効率を向上させるだけでなく、新しいビジネスのチャンスやクリエイティブな活動を支援する強力なツールとなっています。

生成AIの利用に伴うリスク

生成AIの利用には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのリスクも伴います。概ね、下記があげられます。

  1. 情報の正確性と信頼性
  2. 生成された情報が必ずしも正確であるとは限らず、誤った情報や偏見を含む可能性があります。

  3. プライバシーの侵害や情報漏洩
  4. 不適切なデータ収集や利用により、個人のプライバシーが侵害される恐れがあります。とくに、個人を特定できるデータが含まれる場合には注意が必要です。機密情報や業務上重要な情報がAIを通じて外部に漏れる可能性があります。

  5. 倫理的・法的問題
  6. AIが生成したコンテンツが、著作権や他の法的な問題を引き起こす可能性があります。

これらのリスクを管理・軽減するためには方針やガイドラインの策定、社内教育が必要となります。AI導入の際は、さきほどの東京都の文章生成ガイドラインをはじめ、いくつかのガイドラインに目を通すのがよいでしょう。

▼参考資料

さいごに

弊社含め、さまざまな企業の生成AI活用事例を紹介しました。

生成AIの活用を検討している場合、潜在的なリスクや、実際にどのようにサービスに活用するか、システムへの実装、社内への導入や社内教育など、総合的に考える必要があります。ときには生成AI活用を専門とする外部パートナーやコンサルタントに頼りつつ、導入を進めていくとよいでしょう。

生成AIの活用方法をプロに相談してみませんか?

社内で生成AI活用を検討したいとお困りなら、生成AIコンサルティングのプロであるLIGにご相談ください。

  • 10社以上の顧問をつとめる生成AIのエキスパート・梶谷建人氏などパートナーとコラボ
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「マニュアル策定を相談したい」「活用事例を聞きたい」など、どんなご相談でもお気軽にご連絡ください。

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UXデザイン/サービスデザイン/デザイン思考などに専門を持ちつつ、LIGでは大型開発案件での要件定義や開発工程のディレクターなどを横断的に経験。プロジェクトの際はいかにユーザーに寄り添えるかを重視し、現象学や文化人類学への知見も取り入れながらUXデザインを行う。最近は、「最高のUX」を実現しうる方法としてAI活用にも興味津々。UXへの知識とAIを使った効率化の二軸で戦う。

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