7. AC 公共広告機構
エイズ検査の促進を目的に書かれたコピーです。
THE 脅迫といった印象の言い回しですが、このコピーも、背景には受け手への思いやりが詰まっているとぼくは思っています。デリケートな話題なだけに、直接的な表現は難しい。それに「検査しましょう」で検査してくれる人なんていない。かといって美辞麗句を並べるのも違う……。
そんな制約の中で出てきた、最高の脅迫になっているコピーだと感じました。
8. セコム
あなたの家に、空き巣が入りますよ。なんて言えないじゃないですか。でも、防犯のためにも、セコムと契約するに越したことはないわけです。
このコピーは、実際に空き巣に入られたであろう人の気持ちが、これでもかというほどのリアリティで表現されています。内容こそネガティブですが、こんな思いをしないように防犯をするよう呼びかけているので、やはり受け手の幸せを想って書かれていますよね。
9. 民主党青年局
ヤダ、そんなこわいこと言わないで。と、お母さんを立ち止まらせる力があるコピーですよね。実際のデザインとセットで見ていただくとわかりやすいのですが、生活者の声(本音)がたくさん並んでいるビジュアルで、声を集めれば、政策が生まれる。という押さえのコピーが入っています。
そう、生活者からの共感の獲得を目的として書かれたコピーなので、やはりこのコピーも受け手をただ脅したくて書かれたものではないことがわかります。かつ、「もっとどうしよう」という言い方が新しく、かつ深層心理に迫るリアリティがあるので、より刺さる表現に仕上がっているのでしょう。
10. 日本ペットフード
ちょっと生々しい話ですが、日本ペットフードさんとしては、そもそもペットを飼う人が増えないとビジネスになりません。
このコピーが世に出た当時の時代背景は定かではないのですが、もしかするとオリエンシートに【ペットを飼う人の減少】といった課題が書かれていたのかもしれません。ペット飼おうよ! ペットかわいいじゃん!と声を大にして叫びたいでしょうが、それだと一方的なコミュニケーションです。企業としての強い思いを、本当に素晴らしい表現に落とし込んでくれています。
ちなみにこちら、ボディコピー(キャッチコピーに続く文章)もすごく素敵なので、全文で紹介させてください。
なお、コピーライターの方への敬意を込めて、改行は実際の広告のとおりにさせていただきました。ブラウザ向きの改行ではないかもしれませんが、ご容赦ください。
死ぬのが恐いから飼わないなんて、言わないで欲しい。
おうちを汚すから飼わないというなら、
犬はお行儀を身につけることができる。
留守がちだから飼わないというなら、
犬はけなげにも、孤独と向き合おうと努力する
かもしれない。貧乏だから飼わないというなら、
犬はきっといっしょに貧乏を楽しんでくれる。だけど・・・死ぬのが恐いからって言われたら、
犬はもうお手上げだ。すべての犬は、永遠じゃない。
いつかはいなくなる。でもそれまでは、
すごく生きている。すごく生きているよ。
だぶん今日も、日本中の犬たちはすごく生きていて、
飼い主たちは、大変であつくるしくって、
幸せな時間を共有してるはず。飼いたいけど飼わないという人がいたら、
伝えて欲しい。犬たちは、
あなたを悲しませるためにやっては来ない。
あなたを微笑ませるためだけにやってくるのだと。
どこかの神様から、ムクムクしたあったかい命を
預かってみるのは、人に与えられた、
素朴であって高尚な楽しみでありますよと。
……グっときませんか?
「すごく生きているよ」で涙腺が緩んだのは、ぼくだけではないと思います。
広告は、死ぬのが恐いから飼わないなんて、言わないで欲しい。で画像検索して見てみてください。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
受け手としての感覚に差異があることは当然理解していますが、いずれも単なる脅迫ではないことを感じ取っていただけたら幸いです。
受け手からの反応を気にしすぎて当たり障りのない表現になるくらいであれば、いっそのこと脅迫をしてしまったほうが効果的な場面は数多くあると思っています。ただ、そんな表現に挑戦する際は、「これ、ただ人を不快にするだけじゃない?」と一考すると良いのかもしれません。
ともあれ大切なのは、前提として受け手の幸せを想うことだと思います。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
結局、ラブが人を動かすのでしょうね。
【キャッチコピー、書いてみたくなりましたか?】
※ 事例から学ぶ、優れたキャッチコピー10選。 第一回「コピーされるコピー」
※ 事例から学ぶ、優れたキャッチコピー10選。第二回「衝撃の事実があるコピー」
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