今やマーケティング手法として広く用いられるようになったオウンドメディア。始めるハードルが低く、成功すれば強力な集客ツールとなるため、これからオウンドメディアを作ろうと検討している企業も少なくないでしょう。
しかし、様々なメリットが期待できる一方で、デメリットも存在するため、自社にあったマーケティング手法なのかしっかり見極めなければなりません。今回はオウンドメディアのメリット・デメリットから、立ち上げ時に押さえておくべきポイントを紹介します。
オウンドメディアの立ち上げを検討している方は、参考にしてください。
目次
そもそもオウンドメディアとは
オウンドメディアとは、自社が所有している情報発信できる媒体の総称を指します。広義の意味では、自社のホームページ(コーポレートサイト)や、会社案内のパンフレット、SNSなども含まれますが、マーケティング上では集客に繋がるような情報を定期的に情報を発信するWebマガジンを指すことが一般的です。
オウンドメディアという言葉が誕生したのは2011年頃。それまで主流だったマスメディアから、インターネットで情報を検索するようになったという背景から生まれました。ユーザーがインターネットで情報を集めやすい業界から徐々に広がり始め、今ではあらゆる業界でオウンドメディアの成功事例が生まれています。
オウンドメディアを上手に活用することで、集客や問い合わせの獲得、認知拡大といった、さまざまな効果が期待できます。
オウンドメディアを運用するメリット
オウンドメディアを制作・運用することで、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
ブランディングにつながる
ひとつめのメリットは企業のブランディングに繋がること。顧客に自社の商品・サービスを購入・成約してもらうには、まずはどんな商品・サービスなのか認知してもらわなければなりません。オウンドメディアで広く露出することで「〇〇は△△の会社」というブランディングを確立しやすくなるのです。
例えば私たちは、Web制作会社を探している人に役立つコンテンツを発信することにより、「LIGはWeb制作の会社なんだ」と覚えてもらうことができます。加えて、記事の中で自社の強みを打ち出すことで、競合他社との差別化も図っています。
競合他社が多く、一見して差別化ポイントがわかりづらい場合でも、オウンドメディアを通して特徴を打ち出すことで、見込み顧客に比較検討してもらいやすくなります。それにより、自分たちがターゲットとしている顧客層からの問い合わせを増やせるでしょう。
事例:北欧、暮らしの道具店
オウンドメディアによるブランディングに成功した事例が、株式会社クラシコムが運営している「北欧、暮らしの道具店」です。北欧雑貨のECサイトとしてスタートした同メディアですが、現在ではコラムやドキュメンタリー・ドラマ・ポッドキャストなど幅広いコンテンツを配信しています。
コンテンツ自体に根強いファンが存在しており、購入時以外でもサイトに訪問するユーザーが多く、結果的にECの売上に大きく貢献しています。競合が多く差別化の難しい領域でありながら、ブランディングの成功により揺るぎないポジションを確立しました。
顧客との繋がりを強めることができる
オウンドメディアを適切に運用することで、単に商品・サービスを買ってもらうだけでなく、企業のファンになってもらい、より強い繋がりを作れます。
たとえば商品やサービスを選ぶ際、購入後の使い方やどんな効果があるのか気になる方は多いでしょう。オウンドメディアで導入事例を掲載しておけば、表面的な商品やサービスの魅力だけでなく「実際に使ってみてどうか」を強くイメージしてもらえます。
それにより、導入後も積極的に商品やサービスを利用してくれるようになり、継続率を高められるのです。
また、成功事例とオウンドメディアで紹介することで、購入後の顧客とも関係を深められ、アップセル・クロスセルのチャンスにも繋がるでしょう。
事例:SmartHR ガイド
オウンドメディアによって顧客との関係づくりに成功しているのが株式会社SmartHR。「SmartHR ガイド」というオウンドメディアを展開しており、サービスの活用方法や、導入後に役立つ情報を多数発信しています。
さまざまな活用事例を発信することで、単なるサービス紹介では伝わらないリアルな魅力を伝えられるうえに、インタビューを実施した顧客との関係づくりにもなります。これからサービスを利用する顧客と既にサービスを利用している顧客、両方へのアプローチに成功しています。
▼SmartHR社におけるメディア運営のコツについて、過去にLIGでもインタビューしているので、こちらの記事もご覧ください SmartHR社に聞く!社内外の架け橋になるためにインハウスエディターが身につけておきたいスキルとは?
広告費を削減できる
オウンドメディアは一度作った記事は会社の資産として蓄積できるため、半永久的な広告効果も期待できます。通常、広告を出すとなれば掲載期間が決まっているため、期間が終わる度に何度も広告費が発生してしまいます。
SEO対策をしているオウンドメディアであれば、お金をかけずとも記事への定期的な流入が見込めるため、他の媒体に出していたぶんの広告費を減らせます。オウンドメディアの制作・運用にもコストはかかりますが、定期的に発生する広告費に比べれば大きなコストカットとなるでしょう。
アウトバウンドの営業をしなくても問い合わせがくるようになる
オウンドメディアがしっかりと機能していれば、アウトバウンドの営業をしなくとも新規開拓が可能です。テレアポや飛び込み営業など直接的な営業をせずとも問い合わせがくるため、営業の負担を減らしかつ営業効率を高めることができます。
また、オウンドメディア経由で問い合わせてきた見込み顧客は、アウトバウンドでアプローチした見込み顧客よりも、見込み確度の高い「ホットリード」となります。少なくともサービスについて認知しており、かつ「問い合わせる」というアクションを起こしていることから、成約する確率も高くなるのです。
成約率が高いということは無駄な商談を減らせるということ。テレアポなどの新規アプローチに使っていたリソースも商談準備などに充てられるため、提案の質も高くなり、さらに成約率を高められるでしょう。
事例:LIGブログ
新規開拓の成功事例として紹介するのが、私達LIGが運営している「LIGブログ」。Web制作、システム開発、オウンドメディア、デザインに関するに役立つコンテンツを平日毎日配信しています。
戦略的に良質な記事を掲載していくことで、月100件以上の安定的な問い合わせを生み出すことに成功しています。
採用につながる
オウンドメディアで集客できるのは見込み顧客だけではありません。社員の声や社内の様子を発信することで、自社に興味を持ってくれる候補者からの応募も増え、採用活動にも貢献します。オウンドメディアを見て問い合わせた候補者は、入社後の働き方もイメージしているため、採用後のミスマッチが少ないのもメリットの一つです。
また、オウンドメディア経由で応募があった求職者でなくても、採用フローの途中で記事を読んでもらうことで働くイメージを持ってもらえます。同じ職種、もしくは似たような境遇の社員インタビュー記事を読んでもらうことで、どんなキャリアを築けるのか、どんなやりがいを持って働けるのかイメージできるはずです。
加えて、社員インタビューをしていくことで、それまで知らなかった社員の一面を社内で共有することができ、社員同士の関係値を高めることも期待できるでしょう。じっくり話を聞き記事にすることで、社員のエンゲージメントも高められます。
事例:mercan
採用メディアとして成功している事例が株式会社メルカリのmercan。メルカリの「人」を伝えるをコンセプトにスタートし、グループ内で活躍するメンバーや社内で起きている出来事について、記事を通して発信しています。
メルカリはCtoCマーケットアプリのイメージが強いですが、その他にもUS版メルカリ、そしてスマホ決済サービス「メルペイ」も開発・展開しており、その情報発信にも力を入れています。
時にはサービス終了の決断に踏み切ったメンバーの声も掲載しており、メルカリのリアルな今を覗けるメディアとなっています。
立ち上げ前に要チェック! オウンドメディアのデメリットや注意点
さまざまなメリットのあるオウンドメディアですが、当然デメリットも存在します。それぞれ紹介するので参考にしてください。
成果が出るまでに時間がかかる
オウンドメディアは、他のマーケティング施策と比べても、非常に時間のかかる取り組みです。1ヶ月で効果がでるようなものではなく、成果が出るまで早くても半年、通常なら1年以上はかかります。
成果の上がらない期間がそれだけ続くと、上司から急かされることもありますし、社内からは反対の声が上がる可能性もあるでしょう。そのため、本格的にオウンドメディアを作り始める前に、成果が出るまで時間がかかることについて社内の理解を得なければなりません。
また、社内だけでなく、担当者自身も覚悟を持つ必要があります。頭では理解していても、効果の出ない仕事を続けるのは相当なストレスとプレッシャーがかかるもの。思ったような効果がでないため「本当に自分がやっていることが正しいのか」と不安に押しつぶされそうになるときもあります。
社内の理解を得るのと同時に、自分のモチベーションを維持する方法も考えておきましょう。
初期費用や人件費、外注費がかかる
オウンドメディアは、広告など他のマーケティング施策に比べてコストがかからないと言われていますが、まったくかからないというわけではありません。コンテンツを作るには人件費がかかりますし、検索で上位表示させるためにSEO対策をするためには、それなりのスキルを持った人材が必要です。(オウンドメディアのSEO対策にかかる費用についてはこちら)
また、メディアを作るためのシステムにもコストはかかります。無料、もしくは低額でも利用できるサービスはありますが、早く効果を出すために有料のシステムやオプションを使うのがおすすめです。
上記の通り、いつ効果が出るかわからないオウンドメディアに予算を割いてくれるかどうかは、担当者の説得にかかっています。オウンドメディアが軌道に乗った際に、会社にどれだけのメリットがあるのか、コストに見合ったメリットがあるのか提示しましょう。
自社に知見がないと運用していくのが難しい
メディアの知識がないまま作り始めても、いつまで経っても成果は出ません。今やあらゆる業界でオウンドメディアが作られており、優れたコンテンツを発信しなければ、サイトに足を運んでもらうことすらできないのです。
そしてメディアの戦略設計や効果測定、コンテンツ制作などをするには、コンテンツマーケティングの知見がなければ難しいでしょう。もしも社内にメディアのノウハウを持っている人がいないなら、外部に依頼するのがおすすめです。
たとえばメディアの舵取りをする編集長や、SEOの専門知識を持ったSEOコンサルタント、SEOの観点を持って記事を作れるSEOライターなど。通常はそれらの人材を一人ずつ探していくものですが、時間と手間がかかります。
早く成果を出したいのであれば、運用代行会社、コンサルティング会社に依頼するのもおすすめです。社内に様々なマーケティングの知見を持っている会社なら、条件に応じた人材をアサインしてくれるでしょう。
オウンドメディア立ち上げ時のポイント
オウンドメディアを立ち上げる時に、知っておきたいポイントをまとめました。
コンテンツの内容や更新頻度について
オウンドメディアを始める人が、最初に考えるのが「どんなコンテンツを発信したらいいだろう」という疑問です。結論から言うと「読者が欲しい情報を得られるコンテンツ」を発信するようにしましょう。
では、読者がどんな情報を欲しいと思っているのか。それを知るには他のメディアを参考にするのが一番です。オウンドメディアを作る目的は様々ですが、自分たちと近しい目的で、かつ成功しているメディアを見てみましょう。
たとえば採用目的でオウンドメディアを作るのであれば、先に紹介したmercanをはじめ、採用メディアとして実績のあるメディアを参考にしてください。どんな企画があるのか、どんなビジュアルを使っているのか、1記事のボリュームはどれくらいか。自社で可能な範囲で検討してみましょう。
そして、他社コンテンツを参考にしつつも、「自社メディアでしか出せないコンテンツはなんだろう」とオリジナリティを出すのも重要です。
また、記事の質とともに重要なのが量です。更新頻度の低いメディアより、高いメディアの方が人は集まります。定期的にコンテンツを制作・発信できる体制を整えましょう。理想は1日1記事の更新ですが、スピードを維持するために記事の質を落としては意味がありません。質を担保しながら、可能な更新頻度を設定しましょう。
必要な運用体制は?
オウンドメディアを運用していくにはどんな編集チームを組めばいいのでしょうか。理想的な体制は以下のとおりです。
- 記事制作担当:編集長、エディター(編集)、ライター、カメラマン、デザイナー
マーケ担当:マーケター、データアナリスト
コンサルティング:必要に応じて
しかし、いきなり上記のような編集体制を組むのは、予算的に難しい会社がほとんどでしょう。最低限揃えておきたいのは編集長とライターです。コンテンツを発信するということは、そのクオリティに対して責任を持つ人が必要であり、それが編集長です。
また、質と量を担保してコンテンツを発信するにはライターも欠かせません。できればエディター、欲を言えばインハウスエディター(社内の編集者)もいたほうがいいでしょう。外部に依頼することもできますが、社内の事情に詳しい人間が一人もいないと、会社と編集チームの意思疎通が難しくなるからです。
他の職種についても、メディアを運用しながら必要に応じて拡充していくことで、より質の高いメディアに仕上がっています。
▼運用体制について、より詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください オウンドメディアの運用に必要な編集体制とは?長く続けるコツも解説 オウンドメディアの記事、内製する?外注する?【徹底比較】
どれぐらいのコストがかかる?
外部の編集長やライターに委託する場合、当然ながら業務委託費が発生します。一般的にライターは文字単価、記事単価で費用を設定するのが一般的です。その費用はピンキリですが、信頼できるライターに依頼するなら文字単価2~3円はかかります。取材やインタビューなど、ライティング以外の業務が発生するなら記事単価2~3万円というのが一般的です。
また、制作会社に依頼するとなれば記事単価数万円~十数万円はかかります。加えて、制作会社の場合は初期費用がかかる場合もあるので留意しておきましょう。
一方で編集者やマーケターなどは、業務単位で費用を換算するのが難しいため、時給や月額で依頼するのが一般的です。業務範囲や稼働日数に応じて、料金も大きく異なります。
さいごに
多くの人がインターネットで情報を集める今の時代、オウンドメディアは多くの企業にとって欠かせないマーケティング施策となっています。多くのメリットがある一方で、デメリットの存在も無視できませんが、事前に把握しておくことで対策しながら運用していくことができるでしょう。
問題はいかに編集チームを作るか。今やフリーの編集者やライター、マーケターがいるので、SNSやクラウドソーシングサイトを使って探すのは難しくありません。しかし、信頼できる相手を探し、面接で選ぶのは非常に手間のかかる作業です。
編集チームの組成に時間や手間をかけたくないのであれば、外部に一任するのもおすすめです。LIGではメディアサイト制作からオウンドメディアのコンサルティングまで、一気通貫で支援しています。メディアに関する悩みに幅広く対応しています。
オウンドメディアでお悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。