オウンドメディアの適切なKPIの設定方法は?具体例とともに紹介

オウンドメディアの適切なKPIの設定方法は?具体例とともに紹介

Mako Saito

Mako Saito

みなさんこんにちは、LIGブログ編集長のまこりーぬです。

当オウンドメディア「LIGブログ」で培ったノウハウを活かし、私たちはお客様のオウンドメディア運営をお手伝いしています。

日々さまざまなお問い合わせをいただくのですが、立ち上げ初期にとくに多いご相談は「KPI設定」についてです。

  • どういう基準でKPIを設定したらいいのかさっぱりわからない
  • CV(コンバージョン)をKPIに設定したけどまったく増えない
  • PVをKPIに設定したけどまったく増えない
  • PVをKPIに設定したけど成果につながっているかわかっていない
  • そもそもKPIがないのでなにに注力したらいいのかわからない

などなど、みなさんかなりお悩みが深い印象で……。

この状態でオウンドメディアを運営してしまうと、社長や上司から突然「どれほど成果につながっているの?」と詰められたり、最悪の場合「成果につながっていないならやめよう」と閉鎖に追い込まれたりしてしまいます。

なにより、どこを目指して運営しているのか、自分の取り組みがちゃんと成果につながっているのかわからないままだと気持ちよく業務に向き合えないですよね(涙)。

ということで今回はオウンドメディアのKPI設定方法を紹介します! 成果を出すためにやるべきことが明確になり、みなさんが気持ちよくオウンドメディア運営に取り組める一つのきっかけとなれば幸いです。

オウンドメディアの正しいKPIがわからない方へ

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編集部注:2023年1月に更新しました

そもそもKPIとは?

本編に入る前に「KPI」とはなんなのかを、必ずセットでついてくる「KGI」と合わせておさらいしましょう。

「KGI」はKey Goal Indicaterの略であり、プロジェクトの最終ゴールのこと。「KPI」とはKey Performance Indicatorの略であり、KGIを達成するためにチェックする中間数値指標のことです。

例えば、「東京大学に合格する」というゴール・KGIを設定したとき、大学入学共通テスト(旧センター試験)では何点とらなくてはいけない、二次試験では何点とらなければいけない、そのためには各科目何点とらなければいけないという中間目標が生まれます。さらに、その点数をとるためには、いつの模試までに何点とれるようにする、そのために問題集をいつまでに終わらせるなどの目標が生まれますね。

「東京大学に合格する」というKGIに対し、「各科目何点取る」という成果目標や、「問題集を終わらせる」という行動目標が中間指標のKPIです。

「東京大学に合格する」というゴールを変えることはなくても、共通テストの点数が悪かったから二次試験でカバーできるよう対策する、模試で数学の点数が低かったから数学に時間をかけるようにする、など予定変更があると思います。1つのゴールに対しても、達成する方法はさまざまなのです。このようにKPIは定期的に見直しながら、ゴールに向けて今なんの目標を追うのがいいのかを判断します。

オウンドメディアにおけるKPIの重要性

KPIを適切に設定することで、KGIを達成するために注力すべきポイントが可視化され、施策の効果測定・軌道修正がしやすくなります。

また、オウンドメディアは、効果がでるまで時間がかかるものです。仮にKPIを設定しなければそもそも何から手をつければいいのかわからないですし、なんとなくで決めた施策で動き出してしまえば、本当に効果があるのか納得度が低く、運営メンバーはモチベーションを維持するのが難しくなります。

また、効果測定もできないので、結果的にKGIを達成できなかったし、達成できなかった理由もわからないとなってしまう可能性が高いのです。

オウンドメディアのKPIを設定する前に知っておきたいこと

ポイントや具体例の紹介に入る前に、あらかじめ知っておきたいオウンドメディアならではのKPI設定の特徴をお話しします。心構えとしてご覧ください。

KGIは企業によってさまざま

オウンドメディアを立ち上げる目的は企業によってさまざまです。売上を創出したいケースもあれば、求職者とのミスマッチを減らしたいケース、自社のブランド認知を変えたいケースもあります。(オウンドメディアの目的について詳しくはこちら

KGIが企業によって異なるため、当然ながら適切なKPIもバラバラです。一概に「PVを追いかけましょう!」「CVを追いかけましょう!」とは提唱できないのです。

あなたの企業ではどんな目的でオウンドメディアを立ち上げたのでしょうか? その目的が達成できているかどうか測る指標として適切なものはなんでしょうか? ……こればかりは各企業で整理して考えるしかありません。

KPIの達成方法もさまざま

多くのオウンドメディアにおいて「PV」をKPIの一つに設定するケースは総じて多いでしょう。しかしPVを増やす方法もさまざまなのが厄介な点です。

検索流入を増やすのか、SNS流入を増やすのか、はたまたメールで送ってダイレクト流入を増やすのか。さらにどれくらいの頻度で記事を公開できるのかは体制や予算によって大きく異なります。

KPIの種類も達成方法も、とにかくバリエーションが多いのです。悩ましくて当然ですよね。

KGI/KPIの達成に時間がかかる

さらにもう一つ欠かせない特徴として「達成に時間がかかる」という点が挙げられます。

KGIが売上創出系の場合、まずはオウンドメディアに一定数のユーザーを呼び込む必要があります。しかし顧客情報のリストやSNSのフォロワーを保有していない企業の場合、短期的に集客するのはかなり至難の業です。

あるいはKGIが認知獲得系の場合であっても、たった1回の接点でブランドイメージが変わる! なんてことは起きません。情報発信を継続せずに達成することは難しいでしょう。

オウンドメディアのKGI/KPI達成は1日してならず、です。

KPI設定ポイントは「SMART」

KPI設定のポイントは一般的に以下の5つであり、頭文字をとって「SMART」と呼ばれています。

Specific(具体的な)
Measurable(計測可能な)
Achievable(達成可能な)
Relevant(関連した)
Time-bounded(期限を定めた)

指標である以上、具体的で計測できて期限が明確であることは当然のことながら、達成が見込めること、KGIとの関連性が明確であることがミソですね。

これらの基礎知識を踏まえた上で、さっそく本題に入っていきましょう!

KPIの設定方法

上記の前提知識を入れたうえで、さっそくKPIを設定しましょう!

KGIを決める・KPIツリーを作る

まずは、最終目標であるKGIを設定します。先ほどもお伝えしましたがここはオウンドメディアの目的によって各社異なります。

KGIを設定したら、KPIツリーを作りましょう。

KPIツリーの例

KGIを達成するためのKPIをツリー上にぶら下げたものを「KPIツリー」と呼びます。

例えば、「オウンドメディア経由の問い合わせから売上1,000万円創出」というKGIを立てた場合、そこからどのぐらいの顧客単価でいくつ受注すればいいのか、さらに目標に設定した受注率を達成するためには、受注率からどれだけの商談数が必要なのか、というようにブレイクダウンして考えます。

さらに、問い合わせを一定数獲得するためにはCV率から逆算してメディア全体でどれぐらいのPVが必要なのか、そのためにはどの記事でどれぐらいのPVが必要なのか、細分化し、これを適切なフェーズでKPIとして設定します。

最低1年、極力2〜3年はプロジェクト期間を確保する

KGIやKPIを設定したら、最低1年、極力2〜3年はプロジェクト期間を確保するようにしましょう。

立ち上げて半年でKGIを達成してほしい、あるいはKGIが達成できるかどうか見極めてほしい……と経営者の要望もわかりますが、オウンドメディアに携わったことがある人なら誰しも「半年で確実に成果を出すのは難しい」と断言するでしょう。

現に「オウンドメディアで成果が出るまでこれだけ時間がかかった」という調査データもあります。

引用元:コンテンツマーケティングで成果を上げる企業の共通点とは?ブログ・記事メディアの運営体制に関するアンケート調査結果|WACUL TECHNOLOGY & MARKETING LAB

時間がかかるプロジェクトであることを全員が共通理解した上で、“まずはじめに追いかけるKPI” を絞ることが重要です。

フェーズごとにKPIを柔軟に見直す

変数がさまざまかつ中長期的なプロジェクトであるオウンドメディアにおいては、フェーズによって柔軟に変えていくのがおすすめです。ここでもう一度先ほどの例を出しましょう。

KPIツリーの例

KGIを達成するために主要な指標はやはり商談数あたりです。しかしゼロからオウンドメディアを立ち上げ記事を公開していった場合、1件目の商談を獲得できるのはいったい何ヶ月後でしょうか? うまくいけば初月に獲得できるかもしれませんが、3ヶ月後、半年後、あるいは1年後になる可能性だってあります。

仮にオウンドメディア運営が「なかなかKPIを達成できないプロジェクト」と化してしまった場合、冒頭に申し上げたとおりいつ経営者や上司からSTOPがかかってもおかしくありません。なおかつ明らかにプロジェクトメンバーの士気が下がります。中長期的に取り組まなければならないオウンドメディアにおいて、このモチベーションの低下は非常に由々しき事態です。

だからこそ、こんなKPI設定の方法もおすすめです。

第一フェーズ(半年未満) 行動量を追う(公開本数など)
第二フェーズ(半年〜1年) 流入数を追う(PVやUUなど)
第三フェーズ(1年〜) リード数を追う(資料DL数や問い合わせ数など)

このようにフェーズを区切り、達成可能なKPIを立てることによってチームを盛り上げながら、きちんとプロジェクトを前進させていきましょう

オウンドメディアのKPI設定例

自社のKPI設定のイメージ、湧いてきましたか? ここでさらに具体的な例をご紹介します。BtoB企業が運営するオウンドメディアのような「売上/問い合わせ獲得系」と、採用目的で運営するオウンドメディアのような「ブランド認知系」の2つに分けて見ていきましょう。

売上/問い合わせ獲得系(BtoBなど)

KPI例 ※初期フェーズにおすすめなKPIから順に記載
  • 公開本数
  • 検索順位
  • 検索流入数
  • リード獲得数
  • 商談数

こちらは総じて「広告に頼らず自社で集客する基盤を作ろう!」とオウンドメディアを立ち上げているパターンが多いため、安定して集客するためにもSEO流入を伸ばすKPIを設定するとよいでしょう。

また、実際に検索流入が増えてきたらリード獲得数、リードの数がとれ始めたらリードの質と、商談を増やす方向にKPIをスライドさせていくのがおすすめです。

なお、BtoBの場合はお問い合わせに直結するキーワード数・検索ボリュームに限りがあるため、「質の高いリード獲得数が青天井で伸び続ける」ということはまずあり得ません。ノウハウ系のキーワードまで対象を広げ、ホワイトペーパーでリードを広く集めながら、インサイドセールスやメールマーケティングで見込客と接点を持ち続け、いざニーズが生まれたときに一番に声をかけてもらうポジションをとる……というのが王道の勝ちパターンでしょう。

ブランド認知系(採用など)

KPI例 ※初期フェーズにおすすめなKPIから順に記載
  • 取材数
  • シェア数
  • 記事送付数
  • 読了数
  • 認知変化(アンケート調査)

より多くの人に、あるいは求職者に適切に認知してほしい……という目的のオウンドメディアの場合、なかなか定量的な測定が難しいところですが、アンケート調査などを実施してしっかりとKGI達成につながっているかどうかをゆくゆくは見ていきましょう。

認知拡大目的であれば著名人を取材する、採用目的であれば既存社員を取材するコンテンツを作って、人づてに広げていくパターンが多いため、初期フェーズは取材数(≒公開本数)やSNSのシェア数を追っていくのがおすすめです。

また、PVよりも読了数を見て、「きちんとコンテンツが読まれているか」を評価していくのもよいでしょう。採用オウンドメディアの場合、インタビュー記事を「面接前に求職者へ必ず送付する」という行動目標を立てている企業様もいらっしゃいます。

フェーズに合ったKPI設定:LIGブログの場合

ちなみに当LIGブログは、それはもうその時々によってKPIを柔軟に変更しながらあの手この手で運営しています。

2021年の6月にCI(コーポレート・アイデンティティ)を変更し、LIGブログ自体もリニューアルしました。リニューアルしてから半年間は新しい基準に沿った記事を作る体制から整える必要があったため、まずはそれぞれの事業部から出る記事の本数をKPIに設定しました。

体制が整ってからは、お問い合わせ数をチームのKPIにし、それを獲得するためのPV、さらにそのPVを獲得するためのSEOの順位を個人の目標として追っています。

企業の柱となるためにはいまどの指標に注力すべきなのか? をつねに考えながら、社員やパートナー企業の力を借りつつ日々もがいている最中です。

KPI設定のよくある失敗

こうした心構えをきちんと踏まえていないが故に、オウンドメディアのKPI設定では以下のような失敗がよく見受けられます。

どういう基準でKPIを設定したらいいのかさっぱりわからない

変数が多すぎるため、どうやって設定したらいいのかさっぱりわからないものですよね。当記事が少しでも参考となれば幸いです。

CVをKPIに設定したけどまったく増えない

KPIの細分化が足りず、そもそも流入数が足りないのか、CV率が低いのかを見定められていないときに起こりがちです。

ちなみに「CV数が伸びない」とお悩みの企業様のオウンドメディアを見てみると、ノウハウ記事からいきなりお問い合わせや購入に向かわせようとしているケースが大半を占めます。つまりCV率が低いコンテンツで流入を獲得しているからCV数が増えないんです。

ノウハウ記事からリードを獲得したいのならば、ホワイトペーパーダウンロードやセミナー予約など、CVのハードルを下げるしかありません。お問い合わせを獲得したいのならば、ノウハウ記事ではなく商品サービスの比較検討記事に流入させるしかないのです。

PVをKPIに設定したけどまったく増えない

こちらはどういう流入元からPVを増やすのか、設計が不足しているときに起こりがちです。

とくに情報発信経験があまりない企業様の場合、「とりあえず記事を公開すればある程度PVは増えるだろう」と考えがちですが、インターネットはそれほど甘くありません。情報爆発と呼ばれる昨今、届ける努力をしなければ、コンテンツは驚くほど手にとってもらえません。

安定してPVを伸ばしていきたいなら、SEO流入の獲得に尽力するしかないでしょう。SNS流入はコンテンツによっては短期的に大きく流入数を伸ばすことができますが、再現性が極めて低くあまり推奨できません。

PVをKPIに設定したけど成果につながっているかわかっていない

とりあえずベーシックな指標としてPVを追いかけているものの、KGIである売上につながっているかどうかわからない……というお悩みもよく聞きます。この場合はまずKPIツリーをきちんと作り、地道に数字を当てはめていきながら現状を評価するしかありません。

そもそもKPIがないのでなにに注力したらいいのかわからない

オウンドメディアブームが到来した時期は「とりあえず流行りにのっかってオウンドメディアを作っちゃいました!」という企業様もたくさんいらっしゃいました。こうしたオウンドメディアのほとんどはいつの間にか更新が止まり、自然消滅していったことは言うまでもないでしょう。

企業としてコストを割く以上、KGI/KPIがなく成果がでているかどうかわからないオウンドメディアは遅かれ早かれクローズする運命にあります。

具体的な数値の算出方法

最後に、指標は決まったものの数値目標をどう設定するかお悩みのみなさんへ、算出を手助ける方法をご紹介します。実際に運営し始めてみると「思ったより数字が伸びた/伸びなかった」という誤差があるはずなので、定期的に見直してみてください。

1.ベンチマークしているサイトのPV数をチェックする

もっともシンプルな方法は、ベンチマークしているサイトのPV数をリサーチしちゃうことです。いまは無料の競合分析ツールでURLを叩けば簡単にPVや流入元の推定値が調べられるので、まずはここからスタートしてみましょう。

2.狙う検索ボリュームをチェックする

SEO流入をメインとする場合、狙うキーワードによってPVの伸びしろは変わります。無料ツールを活用し、キーワードの検索ボリュームから推定流入数を算出しましょう。

なお、検索流入数は検索ボリューム×クリック率で決まります。クリック率は順位によって相場が異なり、1位は約25%、2位は約12%、3位は約7%です。順位が1つ上がるだけで大きく流入数が増えることがわかります。

参考:Google Organic CTR History – Advanced Web Ranking

3.商談率やCV率は相場を出しておく/チェックする

商談率やCV率はまず現状の社内の数値がどれくらいか知ることから始めましょう。

ちなみに世間一般的な相場でいくとざっくりWebサイトのCV率は1%程度だと言われています。どういう購買意欲のユーザーがどういうアクションを起こすのかによって異なるためあくまで超ざっくりした目安ですが、サイト訪問者100人程度でCVが50件とれることはまずないことはわかります。

目安となる数値を把握しておくことで、奇想天外なKPI設定を防ぎましょう。

さいごに

オウンドメディアの立ち上げ期は大変なことが多く、いざ始めてみてもなかなか成果が見えずしんどいものですが(涙)、一度積み上げることができれば、そう簡単には崩れない屈強な基盤になり得ます。

この記事が少しでもオウンドメディア運営のヒントとなれば幸いです!

LIGは自社メディア「LIGブログ」で培ってきた経験をもとに、オウンドメディア立ち上げ初期の企業様のお手伝いをすることができます。オウンドメディア運用でお悩みの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
 

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Mako Saito
Mako Saito LIGブログ編集長 / 人事部長 / 齊藤 麻子

1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。2023年にLIGブログ編集長、2024年に人事部長に就任し、現在は自社のマーケティング・人事業務を担う。副業ではライターとして活動中。あだ名は「まこりーぬ」。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)

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