ナイルさまイベント
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#2
花咲く地方創生

Twitterで話題の地方PRサイト「みさとと。」を制作したSHIFTBRAINさんに話を聞いてきた!

花ちゃん

「みさとと。」の三本柱

「みさとと物語」

花ちゃん:「みさとと。」のメインコンテンツは、「みさとと物語」という読みものですよね。

美郷町の日常風景にしっかりとスポットがあたっていて、Webの記事ではなく、昔ながらの紙の雑誌を読んでいるようでした。

山本さん:これは誰でも書ける文章ではなくて、誇張したり必要以上に自虐するような書き方はしていないですし、淡々とドキュメンタリーとして書いているわけでもない。ライターの視点によってイキイキしている文章ですよね。

花ちゃん:どういう方が書いているんでしょうか?

山本さん:HEAPSにお願いしました。実は僕、HEAPS MagazineというWebメディアの大ファンで、その中にドンズバの記事があったんです。いつか仕事をしたいなと思っていたのを、満を持して……。

花ちゃん:あらかじめ、記事のトーンが決まっていたんですね。でも難しいオーダーだったんじゃないですか?

山本さん:誇張と自虐の間をどう書くか……。でも、僕が一番好きだった記事が完全にそういうものだったので、これを書いた人たちだったら大丈夫だと思っていました。

ちょっと洒落ててちょっと泣けちゃう感じの締めを書くのが上手いんですよ。意外と、Webでこういうトーンやクオリティの記事は少ないんじゃないかなと思います。

町の人々からヒントを得た風景

花ちゃん:写真でも町の文化や自然を魅力的に表現していますよね。

山本さん:広告や風景写真を中心に活躍している西部裕介さんという写真家で、この方は地方に行って撮影をしたりしているんですけど、そのスタイルがちょっと独特なんです。

花ちゃん:独特とは……?

山本さん:町の人たちと仲良くなって、こういうのを撮ったらいいよというのを教えてもらってそれを狙うみたいな。

花ちゃん:そういうところに時間をかけないと、こういう写真は撮れないんですね。

山本さん:関係の構築から入る方だったので、見慣れたものが、見る角度によってぜんぜん違うものになるんです。なので、この人じゃなきゃできなかったなって思います。

花ちゃん:すごい! 私もそんな風に言われたいです……!

シンボルとなるイラスト

山本さん:写真もやっぱりすごく大事なんですけど、それだけで差別化って難しいんですよね。いい感じの写真ってこの世にたくさんあるので……。もう少しシンボリックなものをセットで作ったほうがいいということで、イラストはStudio Tipiというカナダのイラストレーターにお願いしました。

花ちゃん:この方も山本さんが?

山本さん:選んだのは、アートディレクターの藤吉ですが、僕は正直理解するのが難しかったです。写真とイラストがどうかみ合うのか。でも藤吉が大丈夫って言っているし、大丈夫なのかなって(笑)。

花ちゃん:完成したものを見るとまったく違和感がないです……! 作風を合わせてもらったりしたんですか?

山本さん:いえ、ある程度のディレクションは藤吉がしてくれていましたが、基本的には、あなたらしく描いてくれたらいいです、と。

花ちゃん:それなのに、こんなに一体感が出るんですね。

山本さん:裏話ですけど、今回作った記事と写真、イラストを誰に依頼するかは、美郷町に初めて行ったときの帰り道から僕の頭の中にもあったし、プロデューサーやアートディレクターの頭にもあったんです。

花ちゃん:かなり早い段階でイメージが固まっていたんですね。

山本さん:それをみんなで出し合ったらあまり矛盾がなかったので、目指すところが見つかるまでがめちゃくちゃ早かったです。あれこれこねくり回さなくても、シンプルに素材のまま調理したらすごく美味かったみたいな感じですね。

「みさとと。」ロゴ話

花ちゃん:ちなみに、ロゴはどの段階で決まっていたんですか? やっぱり最初からイメージできていたんですか?

山本さん:ロゴはプロジェクトの後期でできました。記事もあらかた見えてきたし、写真も撮ったし、イラストもあがってきたというタイミングで、あらためてそれらを俯瞰で見て、そこからムードを掴み取ったような作り方をしています。

花ちゃん:コンセプトはなんですか?

山本さん:一言では言えないんですけど、ロゴがすごく派手でそこを起点に何かが変わっていくようなことではなくて、このプロジェクトを通じて、ふと美郷町に惚れ直した人の小さな誇らしさのシンボルとして、そばにあるような……。

花ちゃん:小さな誇らしさのシンボルっていう言葉がかっこよすぎます。「みさとと。」っていうネーミングはどなたのアイディアですか?

山本さん:これは僕です。音から入ったんですけど、みさととって「と」が最後に続くちょっと幼い可愛らしさと、言ってみたくなる感じや、口に出したときの気持ち良さを考えて、この「みさとと。」にしました。

花ちゃん:「。」をつけたのには何か意味があるんですか?

山本さん:丸があると4文字をこういう風に組んだときに読む向きがわかるからですね。

花ちゃん:あああああああ! (やられた……)

山本さん:それに「と」が付くだけで、どんな場所にも顔を出せるポテンシャルが出ると思って作りました。


▲美郷 “と” 生きてきた人々(at)、美郷 “と” 育った特産物(made in)、美郷 “と” 誰かが一緒に(with)といった意味が込められている

花ちゃん:いろいろな意味が込められますね。

山本さん:本当に最初の直感はそこだけでした。ネーミングをいろいろ考えている段階で、めちゃめちゃたくさん紙に書きましたけど、これは文字の組み方まで決まっていましたね。改行されていました、ちゃんと(笑)。

花ちゃん:最初から!?

山本さん:これ、横一列に組むと急に面白くないんです。改行ありきのネーミングでしたね。

Webサイトを作ることで生まれた副産物

花ちゃん:今回、Webサイトの公開に合わせて、写真展を開催されたそうですね。

山本さん:思っていたより会場も混み合って、取材でお世話になった方とご挨拶をしていたらまた他の方を紹介してくださったりして、いろいろとお話ができました。

花ちゃん:本当に理想的な関係を築かれていて、うらやましいです……。

山本さん:そのほかにも役場職員の名刺制作、町内全戸に新聞の配布が、今回見える成果物なのですが、実はイラストと写真に関しては、町の人たちが役場で手続きをすると、ぜんぶのデータがもらえるようになっています。

▲役場職員の名刺

▲タブロイド判の新聞

花ちゃん:作って終わり、ではないんですね……!

山本さん:ずっと町に残っていく資産になりますよね。このプロジェクトはそういう視点がすごく多かったです。

花ちゃん:みなさんどういう風に使ってらっしゃるんですか? SNSに投稿したりとか?

山本さん:そういう方もいらっしゃいますし、町の中で事業をされている方や商品のプロモーションでチラシ作ろうというときに使用されるみたいです。

花ちゃん:たしかに素材はいくらあっても足りないです。

山本さん:「みさとと。」のロゴも同様で、さっそく役場では「みさとと。」の缶バッチを作って、皆さんでつけてくださっています。

花ちゃん:しっかりと想いが繋がっていっているんですね。新聞はどうして作ったのですか?

山本さん:Webサイトだけだと、この地域でご覧になられない方もいらっしゃるので、なんとかこのプロジェクトを知ってもらって、自分ごとにしてもらうために、全戸に対してくまなく行き渡る何かが必要だと思ったんです。そして、一番コンパクトにできたのが、新聞でした。

花ちゃん:なるほど……。紙の媒体なら、パソコンやネット環境がなくても見られますよね。

山本さん:そうなんです。配布した新聞を題材にして感想文を書くというのが小学校の宿題になったそうで、喜んでもらえているんだなっていう実感が湧いたエピソードですね。

花ちゃん:ほかにも美郷町内での効果や反響はあったんですか?

山本さん:今回、取り上げさせてもらった、お弁当を売っている小さな商店では、「ホームページを見た」と言って町外から買いに来てくれた方がいたというのは聞きました。あとは、町にとって直接的な利益にはなっていないと思いますけど……たくさん賞を取れたこととTwitterで少しバズったことですかね。それはぜんぜん狙っていなくて、たまたま起きたっていうだけですけど。

花ちゃん:私も「みさとと。」を知ったのはTwitterがきっかけでした! リツイートもしました!

山本さん:そのおかげで美郷町のことを聞いたこともなかった人たち見てもらえたでしょうし、ツイートのサムネイルで表示されていたイラストは、けっこう強い印象を残せたんじゃないかなと思います。

地域を元気にする武器を渡す

花ちゃん:今後、地方創生の案件に積極的に関わっていくためには、何が必要だと思いますか?

山本さん:地方の問題ってどこも独特だし簡単じゃないはずなので、汎用的なスキルというよりは、何かユニークなことをやり続けているほうが、もしかしたら目に止まるかもしれないですね。

花ちゃん:今、LIGでは地方創生事業のひとつとして、毎月1回、長野県の信濃町でライター養成講座というものをやっているんです。「ありえない、いなかまち。」という信濃町のオウンドメディアで記事を書いてもらうために町民をライターに育てています。

山本さん:それ、すごくいいですね。今回僕らがやったこともそうですけど、やっぱり、町にいる一人ひとりがメディアなんだっていうことが最強なんだと思います。

花ちゃん:そうなんです。私たちが東京から行っているだけでなく、主体的に参加してくれる方が増えないとなかなか定着しないので……。

山本さん:メディアとしての力を強めるために、ライティングという武器を渡そうとされているんだと思うんですけど、それはすごく共感しますね。

花ちゃん:武器……。

山本さん:あなたたち一人ひとりが語り手になるんですよ、メディアになるんですよ、という意識を持ってもらいたかったっていうのもありますし、武器を渡さなくてはいけなかった。僕らの場合はそれが写真やイラストだったんですね。

花ちゃん:いざ何かをはじめようと思ったときに、使える武器があるって強いです。

山本さん:意識を変えることと、変えて行動に移したときにそれを助けてあげられるツールというのは美郷町に限らず、どこの場所でやるにしても重要なことだと思いますね。

第二の故郷に

花ちゃん:今回のプロジェクトはクライアントワークの理想像のような感じがしました。

山本さん:本当に関係性が最高で、仕事の関係ではありますけど、心の中ではお互いそれを超えていますよねっていう話をしているくらいです。家族っていう言葉は違いますけど、仲間っていう感覚ですね。しばらく行ってないと、そわそわしてきますよ。

花ちゃん:もう第二の故郷になっていますか?

山本さん:なっていますね。自分が住んでいるところや地元以外でこんなに一つの場所に何回も行く機会って実はそんなにないと思います。

しかも、それが普通に生きていたら絶対に出会うことのなかった場所なので、僕の心の中では特別な場所だし、人たちですね。そういう関係性の中で仕事ができることが本当に幸せなことだなと思っています。

花ちゃん:お互いに信頼し合って、一緒にクリエイティブを作り上げていく……私もそんな最高の関係で仕事ができるように、これからも精進します!

おわりに

2時間みっちりお話を伺ってしまいました。山本さん、本当にありがとうございます。

地方の課題は「作って終わり」ではなく、長期的に見て解決策を考えることが重要だとあたらめて感じました。その土地の人が自分ごととして考え、一歩踏み出したときに武器があるかどうか……。いつかその武器を私から渡せる日を夢見て……。

それでは、花ちゃんでした!

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