こんにちは、デザイナーの花ちゃんです! 地方創生に関する連載「花咲く地方創生」をしています。
前回は、地方PRサイト「みさとと。」を制作したSHIFTBRAIN(シフトブレイン)さんにお話を伺いました。
Twitterで話題の地方PRサイト「みさとと。」を制作したSHIFTBRAINさんに話を聞いてきた!
第3回は、地方で働く3名のクリエイターに「地方で働くことの楽しさや難しさ、また東京との関わり方」について、私同様、地方創生に興味があるディレクターのなべちゃんと一緒に座談会形式で聞いてきました!
本当は現地に行って実際にお会いしたかったのですが、こんなご時世ですので、オンラインで……。
目次
自己紹介
本日はよろしくお願いします! 最初に、本日の座談会のテーマをご説明させてください! 私は大学生のとき、授業の一環で秋田県の限界集落を訪ねたことから、デザイナーとして働くようになった今でも地方創生というテーマにずっと関心をもっており、LIGブログで「地方創生×デザイン」について考える連載をしています。
今回は、実際に地方で働いている方々に、地方で働くことの楽しさやメリット、またもし困難を感じることがあるとしたら、それに対してどのようなアプローチを行なっているのかをお聞きしたいと思い、みなさんにお集まりいただきました。
さっそくですが、みなさん普段どんなお仕事をされているんですか?
Kenさん
おもにアプリのUI/UXデザインをしています。スタートアップに5年ほど所属していましたが、2021年の春からフリーランスになり、「旅するUI/UXデザイナー」として活動しています。
ちなみに今はどちらにいらっしゃるんですか?
長野県の白馬村にいます。8月はLIGさんが運営している、ゲストハウスLAMP壱岐に滞在していました。
ええええ!!! ありがとうございます!!
今はこうやって旅をしながら、デザイン関係のお仕事やデイトラというWebのオンラインスクールの講師とメンターをやらせていただいたり、オフラインでの講義を合宿形式で行ったり、ちょっとずつ活動の幅を広げていっている感じですね。
中山 雄太さん
僕はもともとは熊本県出身ですが、今は宮崎県の新富町で地域おこし協力隊をしながら、副業でフリーランスのカメラマンとして働いています。
普段は農家さんや事業者さんの発信をサポートするための写真や動画を撮るなど、新富町の魅力をレンズを通して伝える仕事をしています。
どうして協力隊になったんですか?
1単位……!!
やっちゃった〜! と思いましたね(笑)。冬の集中講義を取り忘れていて、たった4日間のために、あともう1年間大学に行くことになりました。それで内定も取り消しに……。
せっかくだから、今できることってなんだろう? と考え方を変えて、バイトもいいけど、思い切り環境を変えたいと思い、協力隊の制度を使って移住しようと決意しました。なので、キャリアのスタートは協力隊からです!!
東 成実さん
私は佐賀県出身なのですが、佐賀で雇われというかたちでデザインの仕事をすることに限界を感じて、2年弱くらい前に福岡に引っ越してきました。今は福岡のデザイン事務所で働いています。佐賀に住んでいたときに2年くらいかけて、ほそぼそと地元の商店街を取材したり(自主制作本『呉服元町商店街』)、個人でいろいろ制作物を作成していました。
つい先日は佐賀発の、クラフトコーラを商品化するクラウドファンディングではじめてモデルをやったり……もう、呼ばれたらどこでも行きますね(笑)。
めっちゃいい……。デザインが統一されていると、いいもの+αみたいな感じで、それだけで全然違って見えますし応援したくたりますよね。
地方で重宝されるスキル
みなさん職種もいろいろですが、地方でお仕事をするうえで、重宝されるスキルってありますか?
そうなると、「写真が撮れるんだったら、それに文字をつけられる?」みたいに依頼されることもあるので、その点ではライティングですかね。
あとは、こういう仕事をしているとやっぱり町の人からは、なんでもできる人って思われているんですよね(笑)。ポスターやパンフレットだけでなく、Webサイトの制作を依頼されることもあります。
僕も飲食店のメニューデザインをお願いされたことがあります。そのご依頼は受けましたが、専門ではないので……。
特に私の会社は、お客さまの困りごとはなんでも解決してあげたいというスタンスなので、チラシやパンフレットなどの印刷物だけでなく、Webデザインもやりますし。もともとイベントの企画や運営もしていたので、イベントの企画制作から関連する印刷物までトータルでお引き受けすることもあります。
私自身、専門じゃないことでも勉強しながらお客さまにご提案することがあるので、会社単位で「なんでも屋さん」になりつつありますね。これは地方のデザイン会社の宿命のような気もします。
僕もそう思います。
なるほど……。幅広くスキルを身につけたほうが重宝される傾向にあるんですね。
地方に拠点を置くメリット
みなさんは都会ではなく、あえて地方で働くことを選択されているわけですが、地方に拠点を置くメリットはどんな点ですか?
どうして宮崎県の新富町を選んだんですか?
動画クリエイターとしての募集だったんですね。動画を作ったことはあったんですか?
すごい! 新しい分野に挑戦しようと思ったんですね!
チャレンジを応援してくれる町だと面白い方がたくさん集まってきそうですね。新富町には定住するんですか?
それでいうと、僕も旅をしながら日本各地を転々としていて、旅先で仕事をするというのを1年くらいやっています。移動中の車の中で仕事をすることもありますが、もう慣れましたし、ネガティブには捉えていないですね。最近は「バンライフ」といって、車で旅をしながら仕事をするライフスタイルも流行っています。
Wi-Fi問題は大丈夫なんですか?
基本的には、モバイルWi-Fiと電源さえあればあればどこでも大丈夫です。あとは、テザリングで対応したり、スマホの電波すら入らない山奥に行ったりするときは、打ち合わせを入れないなどの工夫は必要ですね。
1年前までは都内に住んでいたんですが、コロナ禍で勤めていたスタートアップの事業がストップして、オフィスもなくなってしまったんです……。もう都内にいる必要がなくなったのと、地方を旅したい気持ちもあったので、そのタイミングで家を解約しました。
やっぱり、人とのつながりですね。「こういう仕事を一緒にやりませんか?」というお誘いをいただいたり、パートナーがフリーランスの料理人なので、パートナーが滞在先のレストランで働いている間、僕はデザインの合宿をやるといった具合に、ピースがうまくはまる場所に行くという。
あとは、滞在先のオーナーや支配人のノリがよかったり、話が合うと、そこから新しい企画が生まれたりしますね。だから、ご縁が大事だなと思います。
都内でもいいのかもしれないですが、地方のほうが宿やスペース代を抑えられますし、人数を絞ってやることで、関係性も築きやすくいろいろなことができるようになりますね。
最近はリモートワークが普及して、地方に移住する人も増えていると思いますが、町の方の反応はどうですか?
小さい町の人って、意外と外から来る新しい人が好きなんですよね。外の人だからこそ気づく、その町の面白さってあるじゃないですか。外の人から見て「この町のこんなところが面白いんですよ〜」って説明すると「へぇ〜そうなんや!!」と興味を持ってくださる方が多いです。
地方に興味があって移住してくる人たちって、たいがい人が好きという方が多いので、コミュニケーションに困ることは全然ないと思いますよ。
移住前提じゃなく、スポットで仕事をしに来た人に対しても同じですか?
地方で働くことについて
地方で働く楽しさと難しさ
地方で働いていて楽しいな・難しいなと思ったエピソードはありますか?
楽しいこと嬉しいことばっかりです。今のところ、お仕事もさまざまな業種の方からいただけているので、本当にありがたいかぎりです。写真や動画を気に入ってもらえると、「あの人に撮ってもらうといいよ」というクチコミから新しい仕事につながったりもします。
難しいなと感じるところは、いい意味でも悪い意味でも噂などがすぐに広まってしまうところじゃないでしょうか。
あとは田舎ってすごくお酒を飲む機会が多いんですが、そういう場を楽しめる人はやっぱりコミュニティになじむのも早いですね。
僕の場合は、地方のお仕事自体はそこまでやってなくて、東京の会社の仕事を地方でリモートワークしている感じですね。個人的には、地方創生につながるアプリのデザインなどで、コラボできたら嬉しいですね。
そういったお仕事はどのように取っているんですか?
あとは、イベントの企画や運営もしているので、イベントに出演していただいた方やそこで知り合った方からお仕事がきたりすることもあります。
柔軟でいいですね。
プライベートと仕事の境界線
みなさんのお話を聞いて、地方で楽しく働くために大切なのはやっぱり上手なコミュニケーションや人づきあいのようですね。先ほど副業というお話も出ましたが、プライベートと仕事の境界線が曖昧になりやすいということはありますか?
僕は最近は分けてないですかね。なるべく午前中におもな仕事を終わらせて、午後はそのエリアを楽しむというスタイルでやっています。空き時間に仕事をするくらいの感覚で、プライベートの用事やイベントがあれば、そちらを優先します。
週にどれくらい稼働しているんですか?
できるタイミングに仕事をしているので、ならせば週3日くらいになります。集中してやる日もあれば何もしない日もあるということを、あらかじめお客さまに伝えて理解していただいたうえで、うまくコミュニケーションを取りながら進めています。あとは、締切がカツカツな仕事は受けないようにしています。
それを許してもらえる関係性はどのように構築したんですか?
そもそも「旅するデザイナー」を名乗っていて、そんな僕に依頼してくださるお客さまなので、その時点で割と許容してくれる方々なのかもしれないです(笑)。
なるほど「旅するデザイナー」だから、作業できるのは旅のあいだの限られた時間だけですよ、ということですね。羨ましいです(笑)。
ただ、なるべくオンラインにはいるように意識しています。オンラインスクールで生徒さんから質問がくることもあるので、そこはあまりラグがなく返事ができるように、電波があるところにいるようにしています。
僕の場合は、平日はおもに協力隊の仕事をしていて、町のイベントやネタになるものがあったら、撮りに行っていますね。
基本的に地域おこし協力隊は月曜〜日曜までの間に週35時間働くという働き方なので、土日に業務が入ってしまったら、平日のどこかで代わりのお休みが取れます。そういった時間に副業を入れて調整しています。
なんだか、ずっと働いていませんか……?
コロナ禍における働き方や案件の変化
みなさんそのようなお仕事のスタイルなんですね。コロナになったことによって、そのスタイルは変化しましたか?
案件でいえば、コロナの影響でイベントや結婚式での撮影が中止や延期になってしまったり……というのはありますが、大きな変化というとあまりないですね。
地域おこし協力隊として仕事をしていて、お給料はきちんと出るので、そこは安心でした。ただ、協力隊の任期は3年なので、「今後を見据えて働きなさい」ということはよく言われます。コロナであろうがなかろうが、協力隊を卒業したあと、自分の力や事業で仕事を取っていくためにどうしたらいいかということを常に考えています。
なるほど……。独立を視野に入れた動きを今からしないといけないんですね。
私も最初の緊急事態宣言のときはリモートワークになりましたが、働き方が変わったか変わってないかでいうと変わっていないですね。
ただ案件自体は結構変わった気がします。それまではイベントのチラシなどのグラフィックが多かったんですけど、コロナ禍になってWeb系が増えてきて、その流れでTwitterやInstagramの運用のご依頼も増えました。
地方にいるからこそ、WebやSNSを上手に活用したいですよね。お客さんとの打ち合わせは基本的にオンラインですか?
でも、やっぱり現地に行くこともあります。新規のお客さまで会社から遠くないところだったり、長期のブランディング的な案件でその場所に行かないとわからないときは行きますね。
あとは、社長がコピーライターで文章メインの案件もあるので、そういう取材のときは出向いていることがほとんどです。そこはコロナ前と変わっていないかもしれないです。
コロナ禍で仕事で行くとなると、気にされる方はいらっしゃいますか?
東京と地方の理想的な関わり方とは
クリエイター同士の横のつながり
やっぱりクリエイター同士、友達や知り合いからつながったりすることが多いんですか?
すごい偶然とつながりですね……!!
カメラマンが佐賀の方で、ディレクターさんや企画の発起人、デザイナーさんが東京の方で、いい感じに融合していましたね。佐賀のよさも東京のよさももみんなで話し合いながら、生産所を回ったり。チームワークも本当によくて、理想的なかたちだなと思いました。
どこでどんな出会いがあるかわからないものですね。私もそんなチームで働きたいです……。
地方のクリエイターの未来
たしかに、デザイナーとして会社に務めたい場合は、東京のほうが選択肢が多いですよね。
コロナ禍以降、「東京(都会)に住む必要はないよね」って考え始める人も増えていますし、そういう人が地方に移住しやすい環境がもう少し整ってくれるといいですね。
あとは、今は東京から地方にクリエイターさんを呼ぶようなかたちですけど、逆のことがあったらいいなと思いますね。
やっぱり、東京で評価されている人を評価するというような風潮は少なからずあるので、地元にクリエイターがいるのにまた東京のクリエイターさんか!! みたいな気持ちになることもありました(笑)。
地方の人たちがもっと東京の仕事を取っていけたら、お客さまからしても、地元にこんなクリエイターがいるんだ! という気づきになりますし、九州の中でもできるんだっていうのが広まっていけばいいなと。
そのために、地元のクリエイターたちはもっと頑張らないといけないと思うんです。「え!?これあの人!?あの会社!?」って言われるくらいに。なので、みんなで頑張ってやっていきましょう。「やっていこう!!」という強い気持ちが大事ですね!!
本当に!! このつながりでなにかやっていきましょう!!!
おわりに
Kenさん、雄太さん、成実さん、貴重なお時間をいただきありがとうございました。三者三様で、それぞれ違った角度からお話を伺うことができました。みんな違って、みんないい!!
私としては、もっともっと活動の範囲を広げていかなくてはならないと改めて感じました。地方のクリエイターさんと協業したり、存在を知ってもらうためにも、まずはこちらから発信をして露出の機会を増やしたり、これからは積極的なアプローチをしていこうと思います。
人に会いづらい今だからこそ、つながりに感謝して……。
それでは、花ちゃんでした!
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