まだできあがっていないにも関わらず、世間の注目を集める飲食店がある。それがフィリピン、セブ島にオープンする予定の「MOTOKEYS」だ。当ブログでは数回のシリーズに渡り、MOTOKEYSを作り上げているアーティスト、モトキウエダ氏の動向を追いかけてきた。今回はそんなモトキウエダ氏に、飲食店を設計する上で必ず押さえておきたい5大要素についてインタビューを試みた。
前回までのインタビューはこちらから↓
MOTOKEYS建設現場でモトキウエダ緊急インタビュー。「全て計算」の真意とは
モトキウエダがセブ島で飲食店を始める理由。新たなる挑戦「MOTOKEYS」の野望
日差しや雨から店を守る。唯一無二の存在
――こんにちは。なんだかお店がすごい状態のようですが…
ふふ。そうなんです。天井や梁がシロアリにやられててボロボロで…。
――シロアリがそんなにいたんですか?
ええ。もう凄まじい量のシロアリで。「この建物よく立ってたな」ってくらいにボロボロでした。
――それで、こうなっちゃった、と。
そういうことです。気がついたら屋根がなくなっていました。
――屋根がないことのメリットを教えてください。
ふふ。強いて言えば南国のビーチにいると思うことで、意外と快適というか、逆に爽快なんですよね。開放されたという感じでしょうか。
――青空に手が届きそう、ということでしょうか。
ええ。青空に手が届きそうということです。
――逆に、屋根がないことによるデメリットは何がありますか?
それが意外とたくさんあって。
――意外とたくさんあるんですね。
はい。まずエアコンがまったく効きませんので死ぬほど暑いです。なのでお客さんが熱中症で死ぬリスクが高いです。カフェなのに熱中症で死ぬとか逆に斬新なのかもしれませんが、僕はそれを経営上のリスクだと考えています。
――それ以外にはありますか?
スタッフも死にます。
――以上でしょうか。
あと、雨が降ると全部濡れます。全部というのは、店内にある床や机、椅子、厨房機器、そしてスタッフがすべて水没します。マリンスポーツをやっていると考えればそれは大した問題ではないのですが、ここはカフェなので僕はそれを経営上の課題だと捉えています。
――解決する方法はあるのでしょうか。
ですので、屋根を作るように指示しています。
壁や窓の存在をはじめて意識した
――窓や壁の必要性も感じたとのことですが。
そうですね。はじめは窓も壁もないほうが開放感があるし建築費も安くすむからいいかな、って考えていたんですが、やはり壁や窓がないとエアコンが効かないんですね。
――エアコンが効かないとそんなに問題なのでしょうか。
フィリピンではエアコンが効かないと厨房を中心に店内の温度が上がりすぎてしまうので、まず厨房スタッフが死にます。厨房スタッフが死ぬと料理が出せなくなるので必然的にお店も死にます。なので、壁や窓はしっかりとしたものを作りたいんですよね。ふふ。スタッフの健康を気遣いすぎですかね……(笑)。
二階へ上がる”階段”という名のアート
――二階部分へ上がるために画期的なシステムを導入されたとか。
ふふ。これはフィリピンの伝統的な建築手法で作られた「階段」という装置なんですが非常に良くできているんです。仕組みは簡単で、等間隔に高さをずらした箱を並べて少しずつ上の階に上がっていけるようにできているんです。
――単純なようで、よく考えられていますね。
真の芸術だと思います。シンプルで機能的。説明書が入っていないApple製品に通じるものがありますね。僕も幼少期に初めて見た階段をすぐに使うことができた。
つまり「そうデザインされている」んです。僕がつくるアートがどこまでもシンプルなのは、この「階段」という発明へのオマージュでもあるんです。
床がない建築は存在しない!?
――今回、MOTOKEYSでは床にも相当こだわったとか。
そうですね。僕は建築の5大要素(屋根、壁、窓、階段、床)の中では、床が一番重要だと思っていて。他の要素は最悪なくてもなんとか建築としては存在できるとは思うんですが、床だけはないと話にならない。床がないってことは、それは一般的には「穴」なんじゃないかなって思うんです。
――だから床を採用していると。
ですね。床がないとカフェじゃなくて「穴」になっちゃうので。
まとめ
――貴重なお話をありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。今回、僕としても始めて飲食店をプロデュースしてみて感じたことを話させていただきましたが、やはり店舗設計をする上で、「屋根」「窓」「壁」「階段」「床」は必須なんだなというのがわかりました。
これらのどの要素が抜けても、MOTOKEYSはできない。
それがわかっただけでも、またひとつ前に進めたんじゃないかなと思っています。
MOTOKEYSは2018年7月中にはプレオープンをして、8月頃より本格的に営業を開始します。
某有名私立大学の建築学部で建築を学んでいた僕が15年ぶりに本気を出して作っているお店なので、すごいものができあがると思います。ご期待ください。
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今回、水平線画家としてだけでなく建築プロデューサーとしての顔をもつモトキウエダ氏に、建築の五大要素について話を伺い、氏の建築に対しての並々ならぬこだわりをうかがい知ることができた。
彼が異国の地、セブでどのような建築を作り上げるのか。今後もその動向を追いかけたいと思う。
モトキウエダ氏の記事
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