こんにちは、ディレクターのモトキです。
実は最近、僕の生き方について取材を受ける機会がありました。今回はそのときの内容をお伝えしたいと思います。
モトキ・ウエダさんと、絵の話を。
ウェブ業界は広しといえども、「画家」もやっているのはこの人だけじゃないでしょうか。モトキ・ウエダさん。普段は株式会社LIGに所属するウェブディレクターで、会社勤めをしながら「水平線」をテーマに作品を発表しています。
今回はそんなモトキさんに、絵について話していただきました。そこで出てきたのはどれも意外な言葉で……。
人物紹介:モトキ・ウエダ 前職ではデザイナーとしてキャリアを積んだあと、現在はLIGでディレクター職。「Motoki Ueda」の名前ではDJとしても活動している。 |
絵を描くなんて思わなかった。
──今日はよろしくお願いします。モトキさんは何歳から絵を?
ふふ(笑)。実はついこの前まで絵なんてまったく描いたことなかったんですよ。
──え? どういうことでしょうか。
画家向けに作品の保管・レンタル・販売を代行する「renTarT」というサービスをLIGでPRすることになって。「見た目が画家っぽいから」という理由で僕に白羽の矢が立ったんです。
「モトキ、絵を描いたことは?」って聞かれて、「ないです」って。そしたら「思ったように描けばいいから」って言われて。それが絵を始めたきっかけですね。「導かれた」ってやつですか。
──それで水平線の絵を描いてみたと。
僕にも描けそうだなって思って。水平線ってシンプルじゃないですか。線一本で。でも、すごく深いなとも思っていて。
不思議ですよね。空も海も青いのに、決して交わることがない。その儚さっていうか、優しさのブルー。切ないんです。水平線って、空と海を「切」るものなので、つまり切なさの象徴なんですよ。
──元々、水平線に興味はあったんですか?
前職はウェブデザイナーをやっていたんですが、ちょっと限界が見えちゃって、精神的に参っていた時期があるんです。「自分探し」って言うんですか、海外に行ってみようと思って。すべてを捨てて、逃げるようにカナダ行きの飛行機に乗ったんです。
エコノミーの硬い背もたれに揺られているときに、ふと窓の下を見たら、一面の海。はるか先に、一本の水平線。すごく感動したのを覚えていますね。「あ、俺ってちっぽけだったな」って。その瞬間に、何だか救われたんです。青に。
──だから水平線を題材に選ばれたんですね。
いえ、簡単そうだからです。
あえて、こだわらない。
──画家としてのこだわりを教えてください。
それっぽく、自分が画家っぽく見えているかに細心の注意を払っています。本当は画家じゃないので。
いち早く画家っぽくなるために、カタチから入りました。この無精ヒゲなんかも、計算して生やしています。「制作に集中していて剃る時間がありませんでした」的な雰囲気と言いますか。
──画家っぽくあることで注意していることは?
長髪ですね。なんかアーティストっぽいので。「アートとは何か?」って自分なりに分析してみたんですが、アーティスティックな人は全員ロン毛だなって気づいて。例えばジョン・レノンさんやジョージ・ハリスンさん。みんなロン毛です。
それで普段は髪をまとめているんですが、久しぶりに下ろしました。鏡で見たら「新しい自分、発見」って感じで、新鮮でしたね。偽物の自分なんですが。
──そこまで伸ばすには時間が掛かると思うのですが。
僕の好きなスティーブ・ジョブズさんのエピソードにこんなものがありまして。ジョブズさんが住んでいる部屋って、家具がほとんどなかったそうなんです。それは本当に気に入ったものしか買わなかったからだって話で。
僕はカナダに一年間いたんですが、お気に入りの美容室を見つけられなかったんですね。髪型のオーダーって、英語でどうやるか分からないじゃないですか。妥協するぐらいなら切らない、そう決意したんです。
納得できるまで家具を買わなかったジョブズさんと、オーダーができないから髪を切らなかった僕。無意識のうちにアーティスト的な選択をしていたってことになりますね。
──では、これからも長髪でいきますか?
今週末に切る予定です。
常に真っ直ぐに、ブレない。
──水平線を描くときに気をつけていることは?
青の表情。一口に「水平線」と言っても怒っていたり、泣いていたりと様々です。わずかな色で描き分けなきゃいけません。
あとは余計なものを足さないこと。海を描くとイルカや太陽、虹などを描いてしまいがち。そういうアーティストもいますが、僕はそこをグッと抑える。自分では「引き算の美学」って呼んでいます。
シンプルの向こう側にある「ピュア」を目指して、一本の線に全身全霊を込めているんです。
──なるほど、奥が深いですね。では、水平線を描くコツを教えてください。
真っ直ぐ筆を走らせることですね。曲がってしまうと、水平ではなくなるので。
モトキ・ウエダの作品集
それでは、モトキさんに今までの作品を見せてもらいましょう。
おだやかな水平
以前から福沢諭吉に怒りを覚えていました。「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と言うけれど、所詮は理想論じゃないかと。社会は上下だらけです。でも、水平線は違います。ただ真っ直ぐにそこにあるだけ。上も下もありません。そんな水平線を眺めていると、すぅーっと嫌な記憶が溶けていきます。ほんと、小中高といろいろあった。水平線は何もありません。
消えゆく境界線
ウェブディレクターの仕事が詰まっていた時、仕事をすべて放り出して海に出かけたんですね。会社から電話とかガンガン鳴ってたんですけど、全部無視して一日中海を眺めてたんです。そうやってずっと水平線を見ていたら、空と海の境界線がふっと消えたんですね。馴染んだ、と言いますか。頭の中で何かがパーンとはじけたと言いますか。その時の記憶をたよりに描いたのがこの絵なんです。
はてしない道
水平線って、どこまでも続く一本の道のようです。実は「このまま水平線だけで良いのか」と悩んだ時期があって。技巧が増すにつれて、他の絵が描きたいという誘惑に駆られるようになってきた。
そんなときにたまたま箱根の彫刻の森美術館でピカソを見たんです。彼もキュビズムという一本の道をひたすら進んで、あの境地に達しました。僕も水平線という道を歩み続けよう、と思ったんです。この絵はその決意表明。僕のマニフェストですね。
青色LED開発に寄せて
ピカソを見た帰り、ふと顔をあげると目の前に信号機。青く光るLEDが「進め」と言っていました。まるで僕を後押ししているかのように。その後、青色LEDを開発した赤崎勇さんの著書を読んで、すごく感銘を受けて。同じ「青」にこだわる人間としてすごく勇気をもらったんです。その衝動を忘れないように、描き殴ったのがこの絵。モトキ史上で一番の荒々しい筆致になりました。
海、そして空
これは僕の新境地。ファンからは「モトキ、終わったな」と思われるかもしれませんが、アーティストは変わり続ける生き物なので。このまま革新性を追求していきたいですね。わかる人にはわかる、そんな一枚です。
作品をレンタル・購入するならrenTarT(レンタルト)で。
──ウェブギャラリーを開設されたと聞いたのですが。
ああ。それが冒頭で紹介した、寺田倉庫さんが提供するrenTarT(レンタルト)というサービスです。
僕はインスピレーションさえ湧けば、いくらでも描けるタイプなんです。書き終わってから「あれ、俺徹夜してたんだ」「飯3日食ってねえや」って(笑)。一つだけネックなのが、そうやって出来上がった作品を、どこで保管するかなんです。場所はもちろん、空調はどうするか、管理はどうやるのか……。
それらの問題を全て解決してくれたのが「renTarT」でした。
──どういうサービスなのでしょうか。
アーティスト向けの作品の保管サービスです。しかも、預けた作品をウェブ上でギャラリーにできて、そこから作品をレンタル・販売することもできるんです。作品を「どうやって保管するか」「どこで販売するか」は若手アーティストに共通する悩みです。それを一気に解決するサービスなので飛びつきました。
これのおかげで家が広くなったので、さらに作品が生み出せそうです。ウェブを通じて色んな人に見てもらえるので、世界も広がるなって。水平線って、国籍や人種に縛られないテーマなので色んな人に楽しんでほしいですね。
──モトキさんの作品がすべて購入・レンタルできるんですね。
ウェブで眺めてくれるだけでも良いんです。僕の作品はディティールを楽しむもの。こうやって一覧になると、それぞれの個性が際立って楽しいですね。
renTarTは、誰でも出展可能で作品も常時募集しているサービスなので、興味のある方はぜひご利用ください。
※『おだやかな水平』のみ、renTarTのサイズ規定(上限:高さ+幅=150cmまで)を超過した作品のため、レンタル・購入はできません。
インタビューを終えて
──今日はありがとうございました。初めてのインタビューはどうでしたか?
この企画をいただいてから、「画家っぽさ」について試行錯誤する毎日でした。なにせ、自分自身は画家では無いので、いかにしてそれっぽく、本物の画家に見せるかが重要でした。
僕を見て、画家を志す人が少しでも増えてくれたら嬉しく思います。
■renTarT (レンタルト) | アート作品の保管・レンタル・販売サービス
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