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2014.12.17

「ビジネスをデザインする」ディレ協会長 中村健太氏に訊く“ディレクション”とは?

ヨシキ

こんにちは、広報担当のヨシキです。

Web業界にはさまざまな職種がありますが、意外によくわからないのが「Webディレクター」という職種です。

デザイナーやエンジニアなど「○○をおこなう」という専門性が強い職種が多い中、Webディレクターが果たす役割、とは何になるのでしょうか。

営業、進行管理、クライアントとの調整など具体的な業務はいろいろ浮かぶのですが、どれもWebディレクターそのものを説明している言葉ではないように思います。会社によっても求められる役割などは異なってくるのかもしれません。

そこで本日は、Webディレクターとはどういう存在なのかについて、日本ディレクション協会会長の中村健太さんに聞いてみることにしました。

人物紹介:中村健太
日本ディレクション協会の会長にして、Webディレクターズマニュアルの中の人でもある。ディレクションはもちろん、マーケティングやSEO、アクセス解析からライティングまでこなすらしいという何かいろいろやる人。株式会社BITAのCMOでもある。

答えが見えないことは、やはり一番偉いっぽい人に聞いてみるのが最も簡単な解決方法だと思ったからです。

声を上げるために必要だったから勝手に名乗った“肩書き”

ー 本日はよろしくお願いします。まずいきなりですが、『日本ディレクション協会』って何ですか?

 
ざっくり言うと、ディレクション関連の勉強会・イベントの主催、あと本の出版とかやってる団体です。『一般社団法人 日本ディレクション協会』(以下ディレ協)なんて大仰な名前ついてますが、中身はボランティアのメンバー主体のゆるいコミュニティですね。

ー 中村さん自身もディレクターなんですよね? なぜディレ協を立ち上げようと思ったんですか?

 
ディレクターって何やってんのかよく分かんない職種じゃないですか?
これって業界全体にも言える話だと思うんですが、結局「隣の会社のディレクターがどう仕事を切り回してるのかわからない」から、知見や知識がブラックボックス化して“何やってんのかわかんない人たち” 扱いになるんだと思うんです。これじゃスキルアップするためには自力でなんとかしなきゃいけなくなる。だから横のつながりを作りたくなる。なのに、ディレクターのコミュニティは当時(ほぼ)無かった。「じゃあ、自分で作っちゃおう」と。

ー それでいきなり「協会」とは、思い切りましたね。

 
交流したいだけならFacebookのグループとか作ればいいじゃん、と思うかもしれませんが、ああいうのってすぐに過疎化するんですよ。
だから勉強会のようなリアルイベントは定期的に開催しないといけない。だったらもう、なるべく偉そうな名前をつけて目をひこうと思いまして(笑)。現在は設立2年目でコアメンバーは40人くらい、ゆるーくつながったコミュニティメンバーが800人ちょいってとこですか。イベントは月2回くらいのペースでやってるんで、いつもバタバタしてますね。

名前ほど堅くない。ディレ協の実態とその狙い

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ー 勉強会などのイベントは、どのようなルールで運用しているのでしょうか。

 
ルールというか、ディレ協には承認制度自体がほとんどないんです。
やりたい人が声をあげてやるという仕組みで、会長の僕の許可も不要。だから結構えらいことになってるんですけど(笑)、それはそれでいいんです。
ディレクターに限らず、サラリーマンやってるといろいろなルールの関係で時間どおり進まなかったりしますよね。でも、実際イベントの立ち上げなんて承認待ちとかなければ本来1日で終わるんですよ。だったら、そんな面倒なものは無い方がいいかなーって。

ー 承認不要、という仕組みはすごく自由度が高くなりそうですね。

 
まぁ、もちろんそれで回らないケースもいっぱいあるんで一概には言えないかもですが、やっぱコミュニティってそうでないと面白くないじゃないですか。僕はただ何かあったらケツを拭く人ってだけです。偉くなんてないんです。

ー ディレ協としては何をゴールにしてるんでしょう? そもそもゴールはあるんですか?

 
ディレ協のテーマ自体は、先ほど説明したようなディレクター同士の交流や勉強になるんですが、裏テーマとして「ディレクターの価値向上」をうたっています。「この日からこの日までで終わらせる」っていういわゆる進行管理部分だけをディレクターの職域とせず、ディレクション領域そのもののあり方を、上流設計やグロースを含めたあたりまで拡張する。そうすることで、それができる人(ディレクター)の価値自体を向上させる!みたいな感じですね。

ー かなり壮大な目標ですね。つまりそれを実現するためのディレ協だと。

 
ですね。我ながらずいぶん大仰なことを言ったもんだと思ってます。
で、当たり前なんですがこういう大仰なテーマって、いわゆる「普通の人」が現場から叫んでも、誰も聞いてくれないんですよ。ヘタすると意識高めの痛い人扱いになっちゃう。
でも、なんか偉いっぽい人が言ってたら「なるほど」って耳を貸してくれる人も増えるんじゃなかろうか?と、そんな風に考えて、自分自身に多少ムリヤリにでも権威付けしようとしてみた結果が「日本ディレクション協会 会長」っていう肩書きだったんです。メンバーがたった数名しかいないころから勝手に名乗ってましたからね(笑)

変えなければいけないのは、Webディレクターという職種の概念そのもの

ー 何でもできるイメージの強い中村さんですが、普段から意識していることはありますか。

 
完全にイメージ戦略です(笑)
苦手なこと多いですし、実際なんでもできる訳ないじゃないですか。偉そうに見せたかった…ってのもあって多少「何でもできる風」に見せようと頑張った部分はあるかも知れませんが。

ー ディレクターには「何でもできる風」な演出が必要なんですか?

 
いや、僕の場合やりたいことが大仰だったんでちょっと特殊かもしれないですが、それでも多少は必要かな?と思います。ディレクションって超広域の業務ですし、決めなきゃいけないこと多いんです。コンテンツライティング、導線設計、成功基準設定、工数計算など、もろもろ理解した上でやらなければ、あとで本当にヤバいことになりますしね。
少なくとも全領域に興味を持って、自分自身は分からなくても知ってる人を知っているという状態にしなければ多分うまくいかないかなと。逆に「俺はディレクターだから○○分かんない」と自信満々で言い切っちゃうような人は不要になってしまうだろうな、とは感じてます。

ー そういう意識のディレクター自体が不要だと?

 
多少暴論ですが、言い切ってしまえばそういうことだと思います。
デザインの指示1つとっても「ここはパッて明るい感じで!」とか僕もたまにやっちゃいますが、それが具体的に“どんな感じを指しているか” は、お互いに知っている人同士じゃないと通じない。何より、いろんなことが分かっている人でなければ、相手を上手く褒められない。つまりモチベートできないんですよ。「それいいね!」だけじゃなく、できるだけ具体的なポイントで褒めてモチベートできないと、下手すりゃ逆に嫌がられちゃいますし。

ー なるほど……。求められるハードルは相当高そうですね。

 
全域に対してスペシャリストである必要はないですが、とりあえずひと通りはわかる存在でなければならないと思います。
昔はガチガチに納期を切ってスタッフのケツを叩くことがディレクションみたいに思われてた部分もありましたが、今はそうじゃない。というかそれじゃやっていけないんじゃないかなと。
願わくば、ディレクションとはビジネスをデザインする仕事であってほしいですね。

本来ディレクターに求められる価値とは

ー ディレクターという職種の概念自体を変えていきたいということでしょうか?

 
多分もう普通にやってる人のほうが多いのかも知れないですが、ディレクターってやっぱり事業にコミットするべきだと思うんです。「つくったモノを売る」ではなく「事業の目的達成のためのツールをつくるプロジェクトを回す」みたいな。
「作業を終わらせよう」って意識だけで仕事したら辛くなるだけで、やってらんなくなっちゃいますしね。

ー クライアントに利益をもたらすことを忘れてはいけないってことですね。

 
そうですね。デザインや納期も大切ですけど、「で、儲かるの?」という感覚があるかどうか、事業感覚を持てるかどうかは非常に重要だと思います。
自分が儲けるだけなら「とにかく頑張って売る」でいいかもしれません。でも、依頼主の事業をうまくいかせるためには、常に変化するマーケットに対応できるだけの知識がないと割とすぐに困ったことになってしまうんです。
そこを履き違えてしまうと、いよいよ「ディレクターっていらなくね」って話になってしまうんじゃないかなと。だって極論、もろもろできるデザイナーやエンジニアがいたら、「モノづくり」ってフィールドでは完全にいらない人になりますからね。

ー では、これからのWebディレクターはどうあるべきだと思いますか。

 
今ってコンサルやプロデュース寄りのディレクターと、プロマネ寄りのディレクターの2通りがいて、割とキレイに分かれちゃってると思うんですよ。で、それだとなんか上手くいかないねってのを皆が感じ始めてる。
だからこれからは「両方を期待される」ようになると思いますし、「両方できるディレクター」に対する評価がものすごく上がっていくような気がしています。そっちの方が絶対効率いいですし、なによりそうじゃないとモメやすいですからね。

ー ディレクションの領域はもっと広がっていく、ということでしょうか。

 
ですね。今後はコンテンツの手配だけじゃなく、品質管理なんかもディレクターが手がけるようになるかもしれません。ターゲットに刺さるコンテンツを作るのに「ライターに丸投げしとこう」では上手くいかないって皆が実感してきてますから。
あくまでサイトの完成ではなくビジネス上のゴールを目標として設定し、設計段階からきちんと逆算した進行管理ができ、どんなユーザーにどんなタイミングでどんな気持ちになってほしいかを考えた上でコンテンツの設計ができる人。自分で言ってて「無理じゃね?」とも思ってしまいますが、そんな感じの格好いい仕事になっていったら……そしてその変化に多少なりとも貢献できたら……。やっぱり嬉しいかなぁー。なんて考えて、まぁなんか色々やってます。

まとめ

今回のインタビューを通して中村さんから感じられたのは、「自分がWebディレクターの地位を向上させるんだ」という強い使命感でした。

「いいコンテンツを作ろう」というのは誰もが考えることですが、そこから「稼ぐ」という考えが抜けていては、どれだけいいクリエイティブであってもクライアントにとってはいいコンテンツとは言えません。

「クライアントの事業に対してコミットしよう」というのは、ビジネスにおいては最も大切な姿勢です。当然ながら、それができる人材こそが市場価値が高い人材です。

Webにおいては全体を統括するディレクターこそがその立場にあるべき、というのが中村さんの考えの根本にあるのだと思いました。

そしてそれこそが、「Webディレクターとはどんな存在か?」という僕の疑問への答えなのだと感じることができた有意義なインタビューとなりました。

最後に本日の御礼として、中村さんのために僕が選んだ一冊の本をプレゼントすることにしました。

健太さんに贈る一冊

『絶望ノート』です。

『葉桜の季節に君を想うということ』や『密室殺人ゲーム王手飛車取り』などで有名な推理小説家・歌野晶午さんの名作です。

学校でいじめに遭っている主人公が自身の絶望的な状況をノートに書き綴っていく中、「死んでほしい」と書いた相手が本当に死んでいくというざっくりいえば『DEATH NOTE』みたいな状況となります。

(もちろん実際にはアッと驚く展開が待っており、決して新世界の神を目指したり、姿勢がおかしい天才捜査官が登場したりするわけではありません。)

有言実行をモットーとする中村さんも、このようにいろいろ思うことをノートに書いていくことでますますアイディアの実現スピードが加速していくのではないでしょうか。

というわけで、これからも引き続きいろいろな人の話を聞きながら、Web業界のことについて学んでいきたいと思いました。

それでは、また。

 

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