LIG20周年記念サイトができるまで。正解のないプロジェクトに挑んだ、ディレクター・デザイナー・エンジニアの舞台裏。

LIG20周年記念サイトができるまで。正解のないプロジェクトに挑んだ、ディレクター・デザイナー・エンジニアの舞台裏。

Ayano Sajiki

Ayano Sajiki

2025年10月、LIGの20周年を記念した特設サイトが公開されました。

LIG 20YEARS✌️

3D球体のメインビジュアル、ワープで歴史を辿る演出、AIが生み出したBGM——。リリース後は社内外から反響をいただき、ギャラリーサイトへの掲載やクライアントからの声も届きました。

でもその裏側には、「大義を作る」というゼロからのスタート、CTO(のパソコン)が気づかせてくれた致命的な問題など、一筋縄ではいかなかった場面も……。

今回は、20周年記念サイトの制作を担ったディレクター・デザイナー・フロントエンドエンジニアの3人に、プロジェクトのはじまりからリリースまでの舞台裏を語ってもらいました!

ico LIG ディレクター リコグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタート。月刊発行数30万部弱の地域情報誌のディレクターを兼務。その後Webディレクターに転身。制作会社に6年間従事し、業種を問わず数多くのディレクションを担当。2023年3月にLIGへ入社後はブランディング/CI/VIなどの上流工程を経験。コーポ、採用、メディアサイトなどの制作やサイト保守など幅広く担当。明るくて元気。2023年度LIG「元気で賞」受賞。👉️メンバーページ
ico LIG デザイナー なつ2014年に東京の制作会社にてキャリアをスタート。Webサイトデザイン・フロントエンド・ディレクションの経験を積みながら、制作会社を2社経てLIGへジョイン。現在はデザイナーとして様々なサイトのUI設計・デザイン制作をおこなう。👉️メンバーページ
ico LIG フロントエンドエンジニア いとしゅん大学卒業後、アパレル業界へ就職。その後SIerの経験を経て、Webコーダー兼デザイナーへ転身。Webアニメーションやグラフィカルな表現に情熱を注ぎ、デザインとコーディングのスキルを磨く。2023年にフロントエンドエンジニアとしてLIGに入社。アニメとマンガが好き。👉️メンバーページ

きっかけは大山さんの一言「20周年だし、サイト作ろうか」

——そもそも、20周年記念サイトを作ろうとなったきっかけは何だったんですか?

icoリコ(Dir):当時Web制作の事業部長も兼務してた社長の大山さんが、週1のミーティングで「そういえばLIG、20周年だね。記念サイトとか作れたら面白そうだよね」って言ってくれたのがはじまりです。
icoなつ(De):思った以上にラフな「やろうかー」くらいの温度感でしたよね(笑)。

——そこからすぐ動き出した?

icoリコ(Dir):それが……社内プロジェクトあるあるだと思うんですけど、「やろう!」って盛り上がったあと、実際に誰がやるのか、どこの部署が持つのか、みたいな話が固まるまでに2ヶ月くらい空いちゃったんですよね。
icoなつ(De):正直忘れ去られかけてるのかなと思っていました(笑)。
icoリコ(Dir):で、4月になってあらためて「やるぞ」となったんですけど、リリースは10月と決まっていたので、体感的にはけっこうタイトなスタートで。2ヶ月あったはずの助走期間がまるっとなくなった感覚でした。

——チームはどうやって組んだんですか?

icoいとしゅん(FE):僕は当時育休中でした。復帰後にアサイン通知が入っていることに気づいて。
icoなつ(De):いとしゅんがすぐに状況を察して動いてくれたんですよね。
icoリコ(Dir):いとしゅんはフルアサインで確保できたんですが、なつさんは他の案件にも入っていたので、そこのスケジュールを調整しながら、少しずつ周年サイトにリソースを寄せていきました。

——社内プロジェクトだと、リソース確保自体が難しそうですよね。

icoリコ(Dir):そうなんです。社内案件って、どうしてもクライアントワークより優先度が低く見られがちで。油断すると別のタスクがポコポコ乗っかってくるんですよね。だからずっと「いや、ここはブロックさせてください」って守り続けてました。
icoなつ(De):「よろしく頼んだ!」という感じでアサインされたメンバーだったけれど、気づけばこちらからリソース確保をお願いする不思議な構図になっていましたね(笑)。クライアントワークとのバランスを見ながらのリコさんのリソース管理が神業でした!

「大義」がない!社内プロジェクトならではの壁

——プロジェクトが動き出して、最初にぶつかった壁は何でしたか?

icoリコ(Dir):「なぜこのサイトを作るのか」という大義があいまいだったことですね。クライアントワークだったら、その意図やブランディングの方向性をお客さまと一緒につくっていけるじゃないですか。でも今回は社内プロジェクトだったがゆえに、そこも含めて自分たちに任せられていたんです。
icoなつ(De):「20周年サイト作ろう」という号令はあったんですけど、「何のために? 誰に向けて?」というところも、自分たちで定義するところから始まりました。
icoリコ(Dir):最初は「社内だし、好きにやっちゃえ」と思ってたんですけど、いざ進めると「今のLIGってこう見られてるから、こうしなきゃいけないよね」とか「社内の人を巻き込むなら、こういう進め方じゃないとダメだよね」とか、社内ならではの話がどんどん出てきて……。

——クライアントワークとは違う種類の難しさがあったんですね。

icoなつ(De):当時の管理本部長のNoahさんからは「大義がないと人はついてこないよ」という指摘もいただいて。周りに協力してもらうためにも、自分たち自身が「なぜやるのか」を腹落ちするためにも、まずはそこから固めないといけないねと。
icoリコ(Dir):ただ、その時点ではもう「やる」と決まっちゃってたんですよね。大義があって、じゃあやろう、の順番が自然だと思うんですけど、順番が逆だった(笑)。
icoなつ(De):だから、大義を作るところからのスタートで。プロジェクトの企画書みたいなものをあらためて作って、なぜやるのか、どんな効果が見込めるのか、社内に向けてプレゼンする機会を設けたりしました。

企画書スライド▲プロジェクト企画書の一部

——工数やコスト感も、自分たちで決めないといけなかったんですか?

icoなつ(De):そこも難しかったです。クライアントワークなら「この予算でこのスコープ」と決まっていて、制約の中で考えられる。でも今回は、費やせる時間も使う技術レベルも、基準がない中でのスタートだったので。
icoリコ(Dir):制作会社の周年サイトだから、それなりのクオリティにしなきゃいけない。でもかけすぎると「社内案件にそこまで?」と思われかねない。その見えないライン感をずっと手探りしてた気がします。
icoなつ(De):正直、こだわりたい部分は半分趣味みたいな気持ちで取り組んでたところもあります。もっとリサーチしたい、もっといいアイデアないかな、って。その時間を全部コストとしてつけるのも違うかなという感覚があって、自分の中でバランスを取りながらやっていましたね。

——意思決定のフローも手探りだったと聞きました。

icoリコ(Dir):最初は、社内だからいろんな人に確認しなきゃと思って、あちこちに見せに行ってたんですよ。でも聞けば聞くほど意見が増えて、迷宮入りしていくという……(笑)。
icoなつ(De):みんな優しいんですよね。はっきり「ダメ」とは言わないんだけど、それぞれちょっとずつ違うことを言うので、どこに着地させればいいのかが見えなくなる瞬間がありました。
icoリコ(Dir):今振り返ると、もっと早い段階で意思決定者を一人に絞っておけばよかったなと思います。当時は社内プロジェクトの進め方自体がわかってなかった部分もあって。途中からは「最終判断はこの人」と決めて、他の方には意見をいただく立場として関わってもらう形に切り替えました。そこからはだいぶスムーズになりましたね。

「LIGらしさ」って何?コンセプトの迷走と発見

——大義が定まって、いよいよコンセプト作りに入っていったわけですね。

icoなつ(De):はい、ここがまた大変で……。まず「LIGらしさ」って何だろう? というところから始めたんですけど、これがメンバーによってぜんぜん違うんですよ。
icoリコ(Dir):LIGって、遊び心が強い会社だと思ってる人もいれば、「遊びだけじゃダメなんだよ」と強く感じてる人もいて。その両方がいるのがLIGらしさでもあるんですけど、コンセプトとして一言にまとめようとすると、どっちかを潰しちゃう怖さがありましたね。
icoなつ(De):そうなんです。私が「LIGらしさってこうです」と代表して語ってしまうことへの違和感がすごくあって。みんなが思うそれぞれの「らしさ」があって、それが集まってるからこそのLIGだと思ってたので、それを塗りつぶすようなコンセプトにはしたくなかった。

みんなの「らしさ」に寄り添いつつ、でもちゃんと引っ張っていけるだけの方向性は示さないといけない。そのバランスがすごく難しかったです。

——最終的にはどんな要素を軸にしたんですか?

コンセプトスライド▲「LIGらしさ」3つの柱

icoなつ(De):チームで話し合って、大きく3つの柱に整理しました。1つ目が「プロとしてのこだわりと遊び心の二面性」。これはどちらか一方じゃなく、両方あってこそのLIGだよねと。
icoリコ(Dir):この「遊び心」の定義もけっこう議論しましたよね。ただ「ふざける」遊びじゃなくて、「ウィット」というか「粋さ」みたいなもの。上質な遊び心じゃないと”今の”LIGらしくないよね、っていう話はだいぶしました。
icoなつ(De):2つ目が「変化し続けていること」。LIGって創業から何度も変化を遂げてきた会社で、今もまだ途中なんですよね。3つ目はLIGブログを通じて成長してきた「発信型」のDNAも大事にしたくて。周年サイトとブログの取り組みをうまく絡めていきたいという思いもありました。

——そして最終的にこちらのコンセプトに決まったわけですね! 固まるまで、どれくらいかかりましたか?

最終コンセプトスライド▲最終的に決まったコンセプト

icoリコ(Dir):コンセプトを固めていくところだけで、かなりの時間がかかりましたね。なつさんに作ってもらって、私からフィードバックして、また練り直して、今度は社内に確認して……というのを何周もしてました。

大きなダメ出しがあったわけじゃないんですけど、見せるたびに「ここの言い回しはちょっと違うかな」とか、少しずつ違う角度の意見が返ってくるので、ブラッシュアップの回数が多かった。最終的には全社の朝会で共有するところまでもっていきました。

——今振り返って、コンセプトの進め方で「こうすればよかった」と思うことはありますか?

icoなつ(De):今だったら社内全体の意見を吸い上げたりまとめたりするのにAIを使いたいですね! たとえばアンケートツールでメンバーの意見を集約して、それをAIで分析して……みたいなことができたら、「みんなはこう思ってる」というファクトをベースにコンセプトが作れたかもしれない。当時はまだそこまでAI活用できていなかったので、今後同じような機会があればぜひ試してみたいです。
icoリコ(Dir):あとはさっきの話とつながりますけど、各部署からメンバーを集めたワークショップをもう一度やれたらよかったなと。時間的にも体制的にも難しかったんですが、社員を巻き込んでいく設計は最初にちゃんとやっておくべきだったなと感じます。

デザインから実装へ。「チーム」で作り上げたビジュアル

——コンセプトが固まって、いよいよデザインに入っていったんですね。

icoなつ(De):はい。ただ、今回すごく良かったなと思うのが、デザインの段階からいとしゅんに入ってもらえたことなんです。
icoリコ(Dir):ふだんのクライアントワークだと、エンジニアさんのアサイン時期って予算やリソースの都合でデザインが見えてきてからになりがちで。でも今回は社内プロジェクトだからこそ、最初から3人で一緒に考えられた

——それは大きな違いでしたか?

icoなつ(De):ぜんぜん違いました。私から「形が変化し続ける表現がほしい」「LIGの変遷を立体的にたどれるようにしたい」みたいなコンセプト側のリクエストを出して、いとしゅんが「だったらこういう技術で実現できるかも」と返してくれて。その往復を何度もやりながらアイデアを広げていけたんです。
icoいとしゅん(FE):デザインのトレンドは追ってるけど、じゃあ実装面で今どういう技術があるの? みたいな話をお互いに持ち寄って。こんなのもできるし、このアイデアだったらこの技術と掛け合わせてこういう表現もできますよ、みたいなブレストをけっこうやりましたね。
icoリコ(Dir):私はそこに一歩引いた目線で「でもそれってユーザーから見るとこう感じるかも」みたいなフィードバックを入れる役回りでした。3者それぞれの視点があったからこそ、広げるだけじゃなくちゃんと着地できたと思います。

——最初からこのビジュアルだったんですか?

初期デザイン案▲初期のファンシーなデザイン

icoなつ(De):実は、初期のデザインはぜんぜん違う方向性だったんです。ピンクや薄紫を使った、けっこうファンシーで華やかな雰囲気のものを作ってて。球体をメインにしつつも、夢空間みたいなイメージで。
icoリコ(Dir):それがめちゃくちゃ可愛かったんですけど、率直に「ここまでやっちゃうと、LIGのサイトってわからなくなるかも」って伝えました。
icoなつ(De):たしかに、って思って。じゃあLIGっぽさって何だろうと立ち返ったときに、みんなが日常的に触れてるのってコーポレートサイトや提案資料の世界観なんですよね。そこを思い出すと……やっぱり黒ベースかな、と。
icoリコ(Dir):コーポレートカラーやカラフルな差し色は踏襲しつつ、軸はスタイリッシュに。なつさんの方で何パターンか作っていただいてチューニングしながら、みんなで「こっちだね」と決めていきました。

——「見たことあるもの」にはしたくなかった、という話もありましたよね。

icoなつ(De):それはずっと言ってましたね。アニメーションのアイデアを持ち寄って「あ、これいいね」ってなっても、「……でもちょっと見たことあるな」「ほら、あのサイトと似てない?」って。じゃあやめよう、の繰り返しで(笑)。
icoいとしゅん(FE):僕も周年サイトの事例はかなりの数を見てたので、「これ見たことある」の引き出しだけは豊富でした(笑)。

——メインビジュアルの球体には、どんな意味が込められているんですか?

▲球体が歴史をたどるストーリーになっている

icoなつ(De):あの球体は「LIGそのもの」という位置づけなんです。内側にいろんな歴史や思い出が詰まっていて、それ自体が変化し続けている。サイト全体を通して、最初にドーンと現れる球体が歴史の一点一点をたどりながら移動して、最後にまた現れて、また新しい変化に向かっていく……というストーリーを描きたかったんです。
icoいとしゅん(FE):なつさんから「球体の中に各年代の写真を入れたい」「ただ球体を消すんじゃなくて、変化するように見せたい」といった、表現に関するリクエストがたくさんあって。球体の中の粒子もすべて歴史の一部ということを表現したいんだったらパーティクルがいいんじゃないか……みたいな提案をしたりしてました。
icoリコ(Dir):あるとき私が「(最初に出てくる)球体が20周年ロゴなら、沿革のセクションの最後に着地しないとストーリーとしてはまらなくない?」ってポロッと言ったら、2人が「あー……!」ってなって(笑)。
icoなつ(De):それ、ちょうど球体の見せ方で散々悩んだ直後だったんですよね(笑)。でもその指摘は的確で。最初に目に入るのが「現在のLIG」だとしたら、この球体になるまでにどんな球体だったのかを見せて、最終的にこの球体になる、っていう順番のほうが人間の思考としては自然だよね……みたいな裏設定の話をずっとしてました。

——メインビジュアル下のヒュ〜って過去にワープする演出のところですよね?

▲いとしゅんさん渾身のワープ表現

icoいとしゅん(FE):そうです。メインビジュアルの球体と沿革セクションをどうつなげるかは永遠に悩みました(笑)。実はリリースの2〜3週間前にようやく解決したんです。すべての要素をシームレスにつなげるのが本当に大変で……。
icoなつ(De):球体がLIGそのものだから、パッと消えちゃうとストーリーが途切れるんですよね。球体がワープして過去へ飛んでいく、そこから歴史の一点一点をたどっていく、という流れに意味を持たせたかった。だから「ワープで繋げばいいんだ!」ってなったときは、みんなでちょっと興奮しました(笑)。3人で行ったり来たりしながら、本当にみんなで作り上げた感覚があります

Three.jsと戦った日々。づやさんのパソコンが教えてくれたこと

——ここからは技術面の話を聞いていきたいです。あの3D表現は何を使って作っているんですか?

icoいとしゅん(FE):Three.jsというWebブラウザ上で3D表現をするためのライブラリを使っています。見た目はすごく綺麗だしかっこよくなるんですけど、サイト自体がめちゃくちゃ重くなるというデメリットがあって。それもあって使わない人も多い技術なんです。

——それをあえて選んだ理由は?

icoいとしゅん(FE):やっぱり歴史を「空間的にたどれる」表現をやりたかったので。ただ2Dで年表を並べるだけじゃなく、立体的に、奥行きを感じながら遡っていけるような体験にしたかった。それにはThree.jsが最適でした。
icoなつ(De):私からは「見たことのない技術を使いたい」というリクエストも出してて。LIGが作るんだったら、アクセスしたときにまず「おっ」と思わせるレベル感じゃないとダメだよねっていうのは、チームの共通認識としてありました。

——技術的にこだわったポイントがあれば教えてください。

icoいとしゅん(FE):どの端末でもちゃんと見られるように、端末ごとに処理を変えるようにしました。高スペックな端末だと屈折表現がしっかり反映されて、線の本数も多い、リッチな見え方になるんですけど、スペックが低い端末だと粒子の数を減らしたり、屈折処理を画像に差し替えたりして、ちゃんと動くようにしてます。

——画像に差し替えてるっていうのは、どういうことなんですか?

▲複数の屈折処理がされているリッチバージョン

icoいとしゅん(FE):もともとはどの端末で見たときでも、Three.jsで屈折レンズみたいな処理をリアルタイムでかけてたんです。球体の表面が光の加減で変わるような、すごくリッチな表現で。

ただ、それがとにかく重くて。複数の屈折処理を同時に走らせるとスペックの低い端末ではサイトが止まるレベルだったので、途中で処理を追加して、端末によっては屈折した状態の球体をそのまま画像として書き出して、平面に貼り付けて立体風に回してるんです。

——(スペック低めの自PCを見ながら)え、これ画像なんですか? ぜんぜんわからない……

icoなつ(De):言われなきゃ絶対わからないですよね。
icoいとしゅん(FE):そうなんです。ぱっと見はぜんぜんわからない。こういう「見た目を損なわずに軽くする」工夫は本当にたくさんやりました。

——他にもパフォーマンスのための工夫はあるんですか?

icoいとしゅん(FE):各セクションにアニメーションが入ってるんですけど、画面に映っていないセクションは全部停止させてます。全部同時に動かすとサイトが平気で止まるので。スクロールに合わせて一個ずつ起動して、通り過ぎたらちゃんと止めて、という制御を全セクションでやっています。

——この軽量化の裏には、づやさんのそれはそれは厳しいレビューがあったと聞きましたが……。

icoなつ(De):そうなんです。づやさんにレビューしてもらったら、まずサイトにアクセスしてもメインビジュアルが出てこない。「そもそも見られてないんだけど」って(笑)。
icoリコ(Dir):づやさんのパソコンがIntel Macで、けっこうスペックが低かったんですよね。

——CTOなのに(笑)。

icoなつ(De):最初は「づやさんのパソコンだから」って思ったんですけど、冷静に考えたら、私たちのMacのスペックが良すぎただけで。実際にいろいろな端末で試してみたら重くて、そこで一回「これ、詰んだかも」ってなりました。

——ここまで作って、詰んだと。

icoいとしゅん(FE):づやさんからも「これだけ表現してるけど、何か削らないと難しいと思う」っていうフィードバックがあって。中途半端に表現を削ったメインビジュアルをなつさんに見せたら「これはダメ、これは違う」って(笑)。そんなやり取りを何度もしました。
icoなつ(De):ここまで作ったのに諦めたくなかったんですよ。何かデザインを削る? いや削りたくない……って。
icoリコ(Dir):そんな2人が悩みまくってるところにリフレッシュされた私の目が急に入ってきたりして(笑)。正直、どこかのセクションやアニメーションを諦めるしかないのかなと思ってたんですけど、いとしゅんが削るんじゃなく、見た目を保ったまま軽くする方向で頑張ってくれました。

——またサイトを見る目が変わりますね……! でもリリース前に気づけてよかったのかも。づやさんのパソコンに感謝ですね(笑)。

もったいないから、みんなで作りたい

——サイトにBGMが入っていますが、あれはどういう経緯で?

icoなつ(De):私がやりたかったんです(笑)。こういう機会じゃないとできないから、音も入れたいって。もともと雑談の中で「サイト開いたときに今日の気分を選んだら、それに合わせてBGMが流れたら面白くない?」みたいな話をしていて。そこから「じゃあBGM自体をAIで作ろう」という流れになりました。

——AIで作曲したんですか?

icoなつ(De):はい、社内のAIスペシャリストのかけるさんにお願いして、ElevenLabsというツールで制作してもらいました。最初に社内メンバーから集めた「LIGっぽさ」を表すキーワードを入れて生成してもらったら、けっこうハードコアなロックが出てきちゃって(笑)。
icoリコ(Dir):英単語を拾っちゃうから、AIが勝手にロックな解釈をしたんですよね(笑)。そこからコンセプトの文章を読ませて、さらになつさんのほうで細かくイメージを伝えていって。

——イメージの指定というと?

icoなつ(De):音楽の専門用語を自分で調べて、「前半はこういう音を多めに」「後半はこの音を切ってもっとこっち寄りの雰囲気に」みたいなフィードバックを何度もさせてもらいました。かけるさんにはかなりお付き合いいただきましたね。
プロンプト
ループ可能なインストゥルメンタル曲。コンセプトは「2010年代の宇宙叙事詩的な映画音楽の、現代的で技術的な再解釈」。
荘厳なパイプオルガンのようなシンセサイザー、宇宙の真空を思わせる深いドローン、そして広大で空気感のあるリバーブがサウンドの核となる。

曲は以下の構成で展開する:

・序盤 (0:00~): 静寂の中から、荘厳なオルガン風パッドと、低く響く宇宙的なドローン(ドゥォオ〜ン)だけで静かに始まる。
・展開 (0:20~): 希望を感じさせるミニマルなピアノのメロディーと、薄く漂うエモーショナルなストリングス(ヒュォーーン)が加わる。
・推進 (0:45~): 90BPM前後の、クリーンでミニマルなエレクトロニック・ビートが入り、穏やかな前進感を生み出す。
・遊び心 (1:10~): シンセの断片を細かくカットアップした、機械的でリズミカルなスタッターエディット(トゥルルルトポポポポプププ)を隠し味として加える。壮大さを壊さないよう、洗練された音色で控えめに。
・高揚 (1:35~): ドローンとストリングスのレイヤーを増やし、圧倒的なスケール感と品位のある高揚感を演出。ただし音数を増やしすぎず、空間を保つ。
・ループへ: ビートとカットアップ要素が静かにフェードアウトし、パッドとドローンの残響が次のループへとシームレスに繋がる。

禁止事項: ボーカル、派手なEDMドロップ、トラップ風のハイハット、コミカルな効果音、急な展開や停止は含めないこと。

▲かけるさんと一緒に、こんなプロンプトを何度も何度も考えていたそう。トゥルルルトポポポポプププが気になる。

 

——ロゴのコンペも社内で実施したそうですね。あれはどういう意図で?

20周年ロゴ

icoリコ(Dir):リソースの都合もあったんですけど、それ以上に、もっとみんなにこのプロジェクトに関わってほしいという気持ちが大きかったですね。
icoなつ(De):私たちだけで作りきっちゃうのはもったいないなって思っていて。気にしてくれてるメンバーもいて、「何かあったらお手伝いするので言ってくださいね」ってこっそりリコさんに言ってくれてる人もいたりしたので、何かみんなに問いかけたいよねって話はしてたんです。
icoリコ(Dir):コンペ形式なら気軽に参加してもらえるかなって。一人にお願いすると、その人にプレッシャーがかかっちゃうかもしれないけど、コンペならチャレンジしやすいですよね。

リリースの瞬間。づやさんのねぎらいと見守り会

——いよいよリリース。づやさんの最終レビューはどうでしたか?

icoリコ(Dir):その頃づやさんがものすごく忙しくて、レビューの30分すら取れないような状態で。どうやって捕まえようかって、づやさんと同じ部署のかけるさんに相談したら「犬の散歩に一緒に行ったりしてましたね」って言われて(笑)。
icoなつ(De):明け方に犬を散歩させてるらしくて、そこに耳だけ参加させてもらおうかみたいな話まで出て(笑)。

——プライベートに割り込む勢い(笑)。それくらい忙しい中で、レビューの反応はどうでしたか?

icoリコ(Dir):1回目のレビューで「すごいよくここまでやったね」って言葉が出てきて。それまで私たち、社内案件にリソースを使って申し訳ないなっていうマインドになってた部分があったんですけど、その一言で救われましたね。
icoなつ(De):づやさんに褒められるのやっぱ嬉しいねーって、みんなで言ってました(笑)。

——大山さんのレビューもあったそうですね。どんな反応でした?

icoリコ(Dir):大山さんはデザインの段階で見てもらったんですが、全体的にはポジティブで。ただ一点だけ、「パーティクルの表現、ちょっと古く見えないように気をつけてね」って言われて。
icoなつ(De):パーティクルって数年前に一回トレンドが来て、もう落ち着いてる表現なんですよね。それをちゃんと見抜いてくれてて、意外と感度高いなと思いました(笑)。
icoリコ(Dir):今回のプロジェクトきっかけに、LIGの変遷とか経営の苦労みたいな話も聞かせてもらえて。大山さんってこういうことを考えてたんだって、ちょっと心の距離が近づいた気がしましたね。社内プロジェクトならではの体験だったかもしれません。

——そしてリリース当日。どんな気持ちでしたか?

icoなつ(De):実はリリースのときチームで通話を繋いでたんです。「いったん繋いどこう」って言って、ドキドキしながらみんなの反応を見守ってました。
icoリコ(Dir):Slackの反応を一緒に見守る会ですね(笑)。スタンプはもちろん嬉しいんですけど、「これみんな本当はどう思ってるのかな」ってソワソワしてて。
icoなつ(De):そしたらけっこうみんなすごいねって言ってくれて。日報にも書いてくれてる人がいたり、クライアントからも「本気を感じました」って反応があったり。ギャラリーサイトにも載せてもらえてすごく嬉しかったですね。

▲リリースのお知らせについたSlackのスタンプ。社内からもたくさんのうれしい反応がありました!

 

——リリースを終えての率直な気持ちは?

icoなつ(De):達成感がエグかったです。コンセプト作りの段階からどこかにずっと迷いがあったんですよ。これで大丈夫かな、間違ってないかなって。振り返ると、かなりプレッシャーだったんだろうなと思います。でもリリースして、ちゃんと反応が返ってきて、「間違ってなかったんだな」って思えた。すごくホッとしたのが一番大きいですね。
icoいとしゅん(FE):僕もホッとしたのが一番大きいです。エンジニアなので実装の粗を探されないかめちゃくちゃ怖くて(笑)。でもだいたいの反応を見てそういうのはほぼなかったので、やっと世に出せるサイトができたなって。
icoリコ(Dir):すごい勉強になったプロジェクトでした。進め方の反省もありつつ、これだけ熱量高く、チームのみんなのやりたいことを尊重できるプロジェクトってなかなかないので。社内プロジェクトだからこそリリースも少し融通が効いたし、やれてよかったなって思います。

——周年記念プロジェクトはまだ続いていると思うので、ぜひ今後の展開についても教えてください!

icoリコ(Dir):LIGの創立記念日が2007年6月なので、ちょうど20歳になるタイミングでお祝いページみたいなものを作りたいと思ってます。10月までの間にいろんなコンテンツを出せたらいいなと。1年間かけてお祝いできたらと思ってます。
icoなつ(De):グッズの制作や、レジェンド対談みたいな企画も考えていて。まだ社内調整中のものもあるんですけど、いろいろ仕込んでます。
icoリコ(Dir):AI推進事業部の方にも声をかけて何か面白いことできないかなとか、YouTubeと絡められないかなとか。盛りだくさんですけど、この座談会記事もその一つですね。20周年を、みんなで楽しめる1年にしたいです!

——ちなみに、この座談会の内容をさらに深掘りするイベントもあるとか?

icoリコ(Dir):そうなんです。LIGの「夜のお茶会」というイベントで、20周年サイト制作をテーマにお話しします。今回の座談会では触れきれなかった、デザイナーとエンジニアの具体的なやりとりや、「やりたい」と「できる」をどうすり合わせたかみたいな話を、もう少し踏み込んでお伝えできればと。
icoなつ(De):記事を読んで気になった方は、ぜひ気軽に覗きにきてくださいね。

さいごに

社内プロジェクトの舞台裏には、クライアントワークとはまた違うリアルがありました。大義がないところからのスタート、見えないコスト感との戦い、「LIGらしさ」をめぐる迷走——。それでも3人が口を揃えて言っていたのは、「このチームだったからやれた」ということ。

妥協せず意見を言い合えたこと、熱量が全員同じだったこと、そしてそれぞれの専門性を信頼し合っていたこと。完成したサイトの裏側には、そんなチームの姿がありました。

周年サイトをあらためて眺めてみると、球体ひとつ、ワープ演出ひとつに込められた意味が見えてきて、きっと少し違った体験になるはずです。

LIG 20周年記念サイトはこちら

20周年サイト記念「夜のお茶会」開催します!

この座談会の内容をさらに深掘りするオンラインイベント「夜のお茶会」を3月25日(水)に開催します。リコさん、なつさん、いとしゅんさんが登壇者となって、記事では話せなかった裏話もたくさんお話しいただく予定です! 仕事終わりにふらっと、ぜひご参加ください!

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渋谷の荒ぶるベンチャーにて採用人事として揉まれたのち、「文章が得意そう」という理由でスタートアップにライターとしてジョイン。メディアのノウハウを「LIGブログ」で学ぶ。読者でなく運営として携わりたいと考え、LIGへ入社。現在はLIGブログの企画、ライティング、編集を担当している。どんな記事でもそれっぽく仕上げるWordPress芸に定評がある。

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