【2024年】オフショア開発の現状と開発先5カ国の最新動向

Koji Murata

Koji Murata

こんにちは、LIGで海外事業を担当している村田です。

海外事業開発の責任者という役割を務める立場として、経営者の方からオフショア開発について相談を受けることがあります。

そこでよく話題にあがるのが「失敗しないコツ」「どの国を選択すればいいか」ということ。

今日は、前職から10年以上に渡って海外ビジネスに注力してきた私の視点で、2023年のオフショア開発における現状や、成功のためのポイント、依頼先を選ぶうえで押さえておきたい国ごとの違いについて、一部データを参照しながら解説します。

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2024年のオフショア開発の動向

オフショア開発の動向を知るためのポイントは、以下の2つです。

  • オフショア開発を依頼する企業の規模・業種の変化
  • オフショア開発をおこなう目的の変化

コロナ禍やロシアウクライナ問題、ハマスによるイスラエル攻撃、長期化する円安など、社会の情勢や経済の目まぐるしい変化に伴い、海外進出する国内企業にも大きな変化が起こっています。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

オフショア開発を依頼する企業の規模・業種の変化

まず、オフショア開発をおこなう企業の規模や業種についてです。

コロナ禍初期まではベンチャー・スタートアップ企業様からの、プロダクト開発に関するご相談が多くありました。2023年ではその傾向は弱まり、逆に中小企業の参入が増えています

これは、コロナ禍をビジネスチャンスと考えて新規事業を立ち上げる動きが落ち着いてきたという見方もできるでしょう。

また、新規システムのや新規事業の開発を社内でおこない、既存システムの開発や運用を外部に委託するという発想も強まっていると感じます。 

新システムや新規事業のプロダクト開発は、“付加価値を生み出す作業”であり、事業の根幹となる部分です。

国境を跨いで発注先とコミュニケーションをとりながら理想的なシステムを一から作り上げることの難しさに気づき、既にあるシステムの運用や保守でオフショア開発を活用する流れになりつつあります。これが日本の「弱み」になってしまっていることは明らかですが。

オフショア開発をおこなう目的の変化

日本企業がオフショア開発を始めたのは1980年代。中国やアジアなど、賃金の安い海外で開発をおこなうことによる「コスト削減」を目的として、国内企業のなかで徐々に浸透していきました。

しかし、昨今では国内のエンジニアが不足しているため、コスト削減よりも「オフショア開発に移行しないとそもそもエンジニアを始めとして技術者の調達が不可能」という状況になりつつあります。

経済産業省の試算によると、2030年には国内で約80万人のIT人材が不足するとされており、今後もさらにリソースの確保を目的としたオフショア開発が進んでいくでしょう。

オフショア開発を成功に導くポイントはPMにある

オフショア開発を進めるうえで、まず「どの国を選べばいいか」という点に着目するご相談は少なくありません。国ごとに特性があるのでもちろん必要な視点ですが、前提としてより重要になるのが「プロジェクトマネージャー(PM)」の人材の質です。

開発においては、スケジュールの遅延やバグの発生など、さまざまな問題が想定されます。そうしたとき、優れたPMによる迅速かつ的確な進行管理がプロジェクト成功の鍵を握るのです。そもそも、どのようなビジネスを展開したいのか、どのような価値をユーザーに提供したいのか、という前提を理解しなければ、本当の意味でプロダクト開発やDXプロジェクトは成功しません。

PMの手配の方法としては、発注者側でPMの役割を社内でアサインして、外部の開発会社に業務指示を直接おこなう、いわゆる「ラボ型開発」と、PMも外部の開発会社に用意してもらい、発注者側のプロジェクトオーナーと現地のPMがやりとりをしながら開発を進めるという2パターンがあります。

発注者側でPMを準備できるのであれば、経営とのコミュニケーションもスムーズにおこなうことができるので、ラボ型開発は理想的といえるでしょう。しかし、先述した通り国内ではIT人材の不足が深刻化しており「お金とアイデアはあるけどプロジェクトを回せるPMの採用ができない」という嘆きの声を本当に多くお聞きします。

一方で、外部の開発会社にPMも用意してもらったところ、コミュニケーションがうまく取れずエンジニアが間違った指示で開発を進めていたり、ソースコードのチェックなどが疎かだったり……。

または、発注側が日本の企業に依頼するような感覚で、信頼して丸投げした結果、責任者不在のような状態で品質や納期の管理がなされていなかったりというのが、オフショア開発の典型的な失敗例です。最近では、コスト削減を重要視した現地企業に発注するケースがあり、多くの遅延やプロジェクトの炎上につながってしまっていると聞きます。

しかし、プロジェクトオーナーとエンジニアの間に立つPMのコミュニケーションが円滑で、指示出しが明確・的確であれば、エンジニアの国籍にかかわらず一定品質を保つことができるとも言えるでしょう。

自社でPMの採用が難しいという前提に立って、オフショア会社にPMのアサインも依頼する場合、PMが使える言語のレベルや、マネージメントおよびエンジニアリングのスキル、業務実績などを細かく確認しておくことがとても大切です。

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オフショア開発国を選ぶうえで知っておきたい国の特徴

PM選びが重要になることを踏まえたうえで、オフショア開発国によって、言語やスキル、文化、平均的な賃金などの違いを知っておく必要があります。

私自身、前職で2013年にベトナムで最大手の求人メディアを買収後、現地に赴任し、その後インドに渡った経験があります。また、LIGでもホーチミンとセブ島に開発拠点を構えており、さまざまな国の違いを現地で感じてきました。

ここからはオフショア開発国のなかでも注目される5カ国の特徴を紹介します。

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※賃金(単価)に関する内容はこちらを参考にしています。
参考:オフショア開発白書2022年度版/株式会社Resorz

ベトナム

オフショア開発国のなかでも昨今、圧倒的に人気が高いのがベトナム。2022年の日本貿易振興機構JETRO「海外進出日系企業実態調査|アジア・オセアニア編」によると、約1,800社もの日本企業が進出しています。

人気の理由は、なんといっても開発の進めやすさです。第一外国語として日本語教育をおこなう小学校もあり、日本語検定を持っている人もたくさんいます。我々にとって、母国語でコミュニケーションが取れるという点は非常に大きなメリットです。ただ、日本語のレベルは人によるため、人材の見極めに注意が必要です。

ホーチミンやハノイから離れた第3・第4の都市にいくと、比較的に給与水準は低くなりますが、日本語能力が高いエンジニアや、Web3や仮想通貨、NFT領域の開発経験者のなどスキルを持った人材の給与水準は高まる一方です。IT教育も盛んで若いエンジニアが次々に市場に出ているため、一般的な技術領域であれば、安定的な人材の確保が可能です。

高い技術力を背景に高い給与を稼げるITの仕事の人気が高く、国としても教育に力を入れているため、若い世代の優秀なエンジニアが豊富に育っている国と言えます。

また、歴史的背景から親日国として知られるベトナムは、日本のドラマが国営放送で流れていたり、「進撃の巨人」や「ワンピース」、「鬼滅の刃」などの日本のアニメも浸透していたりと、日本の文化についても理解や関心があります。

食事も醤油ベースで日本の味に似ているため、経営者や日本人PMが現地に赴いても、長く快適に滞在できます。

もっと詳しく:ベトナムでおすすめのオフショア開発先と国の現状

中国

中国は日本のオフショア開発において先駆けとなった国。まだ中国の給与水準が低かった時代に、日本の仕事を獲得するために日本語を習得する人が多くいたため、ベトナムと同様、言語のハードルは低いと言えます。

エンジニアの技術力はオフショア開発の先進国として世界トップレベルを誇り、それと同時に単価も高騰しています。コストが高くても超優秀な人材を採用したいと考える場合、中国という選択肢もありですが、コスト削減を目指すのであれば難しいでしょう。

また、台湾問題や米中の関係の悪化といった社会情勢により、日本に支社を構えるアメリカの法人企業においては軒並み中国から撤退する動きが顕著です。

もっと詳しく:中国のオフショア開発の現状まとめ【2024】

フィリピン

フィリピンは先に紹介した2ヵ国と異なり、日本語が話せる人があまりいません。しかし、法律で母国語をフィリピン語(タガログ語)と英語の2カ国語と定めているため、英語の語学力は非常に高く、ビジネスレベルの会話は問題なくおこなえます。

歴史的にフィリピンでは、英語を使ったBPO(コールセンターなど)の領域で成長してきた背景があり、技術スペックの幅はこれからといった印象ですが、英語が得意な人材が多く、平均年齢も若いため、英語でのオペレーションが可能であれば優秀な人材を確保できる可能性が高いです。

ベトナム同様、親日国としても知られ国交も良好。また、日本との時差がわずか1時間であることも開発のしやすさに繋がります。

言語の壁はあるものの、企業がグローバル展開を押し進めるというトレンドにおいては今後さらに注目される有望なオフショア開発国と言えるでしょう。

もっと詳しく:フィリピンでおすすめのオフショア開発先と国の現状

インド

インドはフィリピンと同様、日本語を話せる人は非常に少なく、英語を得意としています。公用語がヒンディー語と英語であるため、英語でのコミュニケーションには困りません。ただし、ヒングリッシュと呼ばれるように、ヒンディー語と英語が混ざって聞き取りが難しいところには注意が必要です。

インドは今回紹介する5ヵ国のなかで、中国に続いて2番目に高い給与水準です。2010年頃から世界最高峰の技術大学・インド工科大学(IIT)が注目され、新卒社員に対して数千万円のオファーが出るようになってから、現在は幅広い人材の給与水準が上がっています。現在では、IITは23校にまで増えており、日本で言うと東大が23個もあるような状態なので、優秀な人材がたくさんいるのは間違いないですね。

特に、データサイエンティストやAIエンジニアの人材の単価が高騰しているため、英語でのオペレーションとラボ型開発ができないとコストが大きくなる傾向があります。

また、英語人材が多いことを背景に、日本企業よりも欧米企業を相手にビジネスをしている企業が多いというのもインドの特徴。先述したように中国から撤退したアメリカの企業がインドにオフショア開発を移行する動きもあるようです。

日本との時差が3時間半あるため、プロジェクトの進行でコミュニケーションを取る際は配慮が必要です。特に、大量のデータを扱うプロジェクトや、英語でのオペレーションであれば成功確率が高い国と言えるでしょう。

グローバルの開発ニーズに応えるうえで重要なオフショア開発国のひとつですが、日本においては英語でプロジェクトを進行する場合、仕事の進め方やコミュニケーションの点でもフィリピンの方が現実的と言えるでしょう。

バングラデシュ

バングラデシュは、ミャンマーなどとともに“ポストベトナム”と言われるオフショア開発国のひとつ。今回紹介した5ヵ国のなかでもっとも単価が安く、特にPMに至っては中国やインドの5割程度の単価感です。

隣国のインドとともに英語が得意で、やはりアメリカ企業の需要を取り込んでいる傾向が強くあります。技術面では発展途上のため、上流工程をインドで開発し、下流工程をバングラデシュで開発する企業もあるようです。

ただし、日本の企業でバングラデシュに進出をしているという事例はあまり多くないようです。バングラデシュに依頼する場合、ラボ型開発で英語が使えるPMを国内採用するのがよいでしょう。

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さいごに

オフショア開発において、短期間で結果を出そうとすることは非常に難しいもの。プロジェクトチームを立ち上げてからさまざまな課題を乗り越え、安定運営できるようになってから初めて成果が出てきます

一度トライして「無理だった!」と諦めるのではなく、長期的な視野で取り組んでみてください。その取り組みは、日本が向き合わなければいけない「IT人材のリソース不足」という大きな壁を打破する一歩になるはずです。ボーダーを気にせず、作りたいものを作れる環境を用意するのが我々の仕事だと思っています。

我々LIGでは、ベトナムのホーチミンとフィリピンのセブ島にも拠点をもち、オフショア開発を推進する企業さまを支援しています。ご興味ある方はぜひLIGのオフショア開発支援についてご一読ください。

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Koji Murata
Koji Murata 海外事業部部長 / CODY CEO / LTV Chairman / 村田 浩二

新卒で入社したエン・ジャパン株式会社にて、事業責任者を歴任後、ベトナムで最大手の求人メディアを買収後赴任し、戦略的な事業管理をおこない、新規事業開発・APACでの事業開発後、インドへ赴任。買収した子会社のPMIを実施しながら、4000名規模のIT企業の買収の成功。2020年にGOKIGEN株式会社を創業。2021年よりLIGに参画。2021年10月より現職。

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