通勤手当をもらうと社会保険料の負担額も上がる!?賃金規程の作成ポイントを紹介

通勤手当をもらうと社会保険料の負担額も上がる!?賃金規程の作成ポイントを紹介

Mami Onishi

Mami Onishi

こんにちは。人事のきゃしーです。

今日は「賃金規程」をどのように作成したらいいかのお話をします。

まず、賃金規程はそもそも作らないといけないのかですが、労働基準法では、常時10人以上の労働者(従業員)がいる会社に対して、就業規則の作成と届出を義務づけています。

そして、就業規則には必ず明記しなければならない「絶対的必要記載事項」があり、この中には「賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切・支払の時期、昇給に関する事項」というのがあります。

この賃金に関する事項の部分を、就業規則から切り離して別に定めたものが「賃金規程」です。つまり従業員が常時10名以上いる会社では賃金に関する取り決めは絶対に必要で、それは就業規則の中に定めておくことも可能ですが、賃金に関する取り決めは分量も多いため、別の規程として定めていることも多いです。

たとえ10名以下の会社であっても、賃金に関することは非常に重要で、トラブルも多く発生する内容ですから、ぜひ作成を考えていただけるといいかなと思います。

今回は厚生労働省が提供している賃金規程の雛形を使用して、実際の実務を交えて賃金規程についてお話したいと思います。

就業規則とは別に賃金規程を定める場合

上記でお話したとおり、賃金に関する事項は就業規則の中に入れてしまうことも可能です。厚生労働省の出しているモデル就業規則の中にも「第6章 賃金」という項目があります。

賃金規程を就業規則とは別に定める場合には、就業規則に「賃金に関しては別に定める賃金規程によるものとする。」と一筆いれておきます。

賃金の構成

賃金の構成ですが、大きく「基本給」「手当」「割増賃金」の3つで構成されます。

基本給

基本給とは、その名の通りお仕事をするうえでの基本となる給与のことです。

会社によって定め方は自由です。基本給には、月給、日給、日給月給、時間給の4つがあります。

  • 月給
  • 1か月の所定労働時間に対して賃金額が決められているもの。

  • 日給月給
  • 定額賃金制の一形態。月給を定め、欠勤した場合にその日数分だけの賃金を差し引くという形の月給制。

  • 日給
  • 1日の所定労働時間に対して賃金額が決められるもの。

  • 時間給
  • 労働時間1時間単位で賃金額が決められ、業務に従事した労働時間に応じて支給されるもの。

月給と日給月給の違いがやや難しいですが、ハローワークに求人票を提出する時には記載が必要な項目ですのでハローワークへの求人を考える場合は違いを把握しておくと良いでしょう。

基本給を決める際に特に注意が必要なのは「月給制であっても最低賃金法を守らなくてはいけない」点です。

令和3年10月1日の最低賃金は東京ですと1,041円です。アルバイトで時給制の人はこの時給を下回ってはいけないのでわかりやすいですが、月給制の方も時給換算したときに1,041円を下回ってはいけないのです。

月給制で最低賃金法が守られていない例(東京都の場合)
・基本給:150,000円
・1日の所定労働時間:8時間
・年間労働日数:250日
150,000円×12か月÷250日×8時間=900円

上記の例でいくと、基本給15万円の場合は時給に換算すると900円ですので東京都の時給を下回っているので注意が必要です。

手当

手当とは、経費の補てんや福利厚生のために支給する付加的な意味合いのものです。会社が任意で支給できます。手当には毎月固定で支払われるものと臨時で支払われるものがあります。

手当を定めるときの注意点は、「税法上の取扱い」です。以下、例をあげます。

  • 通勤手当
  • 従業員の自宅からオフィスまでの通勤にかかる費用を手当として支給するものです。例えば月々の定期代を定額支給する場合、所得税は非課税となりますが、社会保険料の算定基礎には通勤手当は含まれます。

  • 住宅手当
  • 従業員の住宅に関連する福利厚生制度です。従業員の持ち家ローンの補助や賃貸契約をしている家賃などを補助します。所得税の課税対象、社会保険も算定基礎対象です。

  • 結婚祝金
  • 結婚した従業員に対してお祝いとして臨時で支給する福利厚生制度です。社会通念上相当額であれば非課税です。慶弔見舞金も同様に社会通念上相当額であれば非課税。

  • 在宅手当
  • リモートワークをしている社員に対する通信料などの経費補填の意味合いの手当です。現在、経費としての意味合いが大きいため非課税とする案も検討されていますが、現時点では手当として支給する場合は課税対象です。

このように、手当と一言にいっても税法上の違いがかなりあります。賃金規程にきちんと定めておく場合には税理士に確認すると良いでしょう。

また会社独自の新しい手当を支給する場合にも、税理士に税法の取り扱いについて確認をしましょう。

割増賃金

割増賃金とは、「時間外労働(いわゆる残業)」「休日労働」「深夜労働」をした時に支払われる賃金のことをいいます。以下のように計算されます。

  • 時間外労働
  • 法定労働時間を超えて労働させた場合には2割5分以上の割増率

  • 法定休日
  • (週1回又は4週4日)に労働させた場合には3割5分以上の割増率

  • 深夜労働
  • 深夜(午後10時から午前5時までの間)に労働させた場合には2割5分以上の割増率

  • 上記の条件を重複した労働
  • 時間外労働が深夜に及んだ場合には5割以上、休日労働が深夜に及んだ場合には6割以上の割増率

時間給の場合は、時間額がそのまま1時間当たりの賃金となります。

月給制の割増賃金の計算基礎となる1時間あたりの賃金は、基本給と手当の合計を、1か月における所定労働時間数(ただし、月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1か月の平均所定労働時間数)で割って算出します。

手当については、割増賃金の算定基礎から除外できるものと加えないといけないものにわかれます。割増賃金の算定基礎から除外することができる賃金には以下のようなものがあります。

  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 家族手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 退職金等臨時に支払われた賃金
  • 賞与等1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

ただし、これらの手当を除外するに当たっては、単に名称によるのでなく、その実質によって判断しなければいけないことに注意が必要です。必ず社労士や税理士に確認をしてください。

月60時間を超える時間外労働については、割増賃金率は5割以上とされています。ただし、中小企業については、令和5年3月31日までは、月60時間を超える時間外労働の部分についても2割5分以上とされています。

休暇等の賃金

会社をお休みした時に支払う賃金についての取り決めです。

規程例
第◯条 年次有給休暇の期間は、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支払う。
2 産前産後の休業期間、育児時間、生理休暇、母性健康管理のための休暇、育児・介護休業法に基づく育児休業期間、介護休業期間、子の看護休暇期間及び介護休暇期間、裁判員等のための休暇の期間は無給とする。
引用元:モデル就業規則 厚生労働省労働基準局監督課

年次有給休暇

年次有給休暇を付与した場合は、以下の3通りの中から賃金を支払わないといけません。そしてそれを就業規則や賃金規程に定めることが必要です。

  1. 平均賃金
  2. 所定労働時間働いたときに支払われる通常の賃金
  3. 健康保険法第40条第1項に定める標準報酬月額の30分の1に相当する額(ただし労働者代表との書面による協定が必要です)

規程例では2を採用しています。

アルバイトにも有給休暇が付与されますが、アルバイトの場合は勤務時間や日数が変化するシフト制のことが多いで、過去3ヶ月の平均アルバイト代を計算して支払われることが多いです。

産休・育休など

規程例に記載のある産休・育休などは、国に定められている与えなくてはいけない休暇ではありますが、その期間の給与については有給とすることも無給とすることも可能です。

有給とするか無給とするかはきちんと定めておきましょう。有給とする場合は、例えば「通常の賃金を支払う」、「基本給の○○%を支払う」とするなど、できるだけ具体的に定めておくことが大切です。

臨時休業の賃金

規程例
第◯条  会社側の都合により、所定労働日に労働者を休業させた場合は、休業1日につき労基法第12条に規定する平均賃金の6割を支給する。この場合において、1日のうちの一部を休業させた場合にあっては、その日の賃金については労基法第26条に定めるところにより、平均賃金の6割に相当する賃金を保障する。
引用元:モデル就業規則 厚生労働省労働基準局監督課

これは法令により決まっているもので、規程していてもしていなくても該当する場合には支払いが発生する賃金です。

会社側の都合(使用者の責に帰すべき事由)により、所定労働日に労働者を休業させる場合には規程例のとおりに支払わなければいけません。この「使用者の責に帰すべき事由」というのは、地震や台風などの天災事変などはのぞきます。

具体的には以下の2つの要件を満たすことで、「不可抗力」と認められるとしています。

  1. その原因が事業の外部より発生した事故であること
  2. 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

ただし、使用者として休業回避のための具体的努力などを総合的にみて判断するとしています。

賃金の支払いと控除

規程例
第◯条  賃金は、毎月末日に締め切って計算し、翌月25日に支払う。ただし、支払日が休日に当たる場合は、その前日に繰り上げて支払う。
2 前項の計算期間の中途で採用された労働者又は退職した労働者については、月額の賃金は当該計算期間の所定労働日数を基準に日割計算して支払う

第◯条  賃金は、労働者に対し、通貨で直接その全額を支払う。
2 前項について、労働者が同意した場合は、労働者本人の指定する金融機関の預貯金口座へ振込により賃金を支払う。
3 次に掲げるものは、賃金から控除する。
①源泉所得税
②住民税
③健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の保険料の被保険者負担分
④労働者代表との書面による協定により賃金から控除することとした社宅入居料、財形貯蓄の積立金及び組合費
引用元:モデル就業規則 厚生労働省労働基準局監督課

賃金の支払いと控除については4つの原則があります(労働基準法第24条)。

  1. 通貨払いの原則
  2. 直接払いの原則
  3. 全額払いの原則
  4. 毎月1回以上定期払いの原則

通貨払いの原則

賃金は現金で支払わなければいけない、という決まりがあります。現物(会社の商品など)で払ってはいけません。

労働者の同意を得た場合は、銀行振込みなどの方法によることができます。また、労働協約で定めた場合は通貨ではなく現物支給をすることができます。

直接払いの原則

賃金は「労働者本人」に払わなければなりません。未成年者であっても、親などに代わりに支払うことはできません。

全額払いの原則

賃金は全額を残らず支払われなければなりません。「積立金」などの名目で強制的に賃金の一部を控除(天引き)して支払うことは禁止されています。

ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。それ以外は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる場合は認められます。

毎月1回以上定期払いの原則

賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければいけない決まりです。「今月分は来月に2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められません。

また、支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることも認められません(土日祝日で前倒しするのはOK)。

ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。

昇給

昇給に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項にあたりますので、昇給期間等昇給の条件を定める必要があります。

規程例
第◯条 昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年  月  日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。
2 顕著な業績が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず昇給を行うことがある。
3 昇給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。
引用元:モデル就業規則 厚生労働省労働基準局監督課

賞与

規程例
第◯条 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

2 前項の賞与の額は、会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。
引用元:モデル就業規則 厚生労働省労働基準局監督課

賞与は労基法その他の法律によって設けることが義務付けられているものではありません。

もし賞与を支給する場合は、就業規則に支給対象時期、賞与の算定基準、査定期間、支払方法等を明確にしておくことが必要です。

就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば6月1日や12月1日または賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職して、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能です。

例として、賞与の査定期間が4〜9月の6ヶ月間、賞与支給日が12月25日とします。給与であれば9月に働いた分は9月末に退職しても翌月在籍していなくても支給する必要がありますが、賞与の場合「賞与支給日に在籍している者」と規程しておくことで、11月に退職した方には支給する義務は発生しません。

ただし、上記はきちんと規程しておく必要があります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

重要そうなところを抜粋してお話しましたが、実際、私がLIGの賃金規程を作成するにあたってはもっと細かく定めています。なぜなら、最低限、法律上守らないといけない部分を押さえつつ、実際の会社の実態に合わせて定める必要があるからです。

作成したあとは必ず社労士や税理士にチェックしてもらって会社も従業員も法令も守れる規程になるといいですね。

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1978年生まれ。新卒で明治安田生命にて一般事務を経験。その後DTPデザイナーに転職。結婚、妊娠、出産を経て税理士法人のバックオフィス業務全般を担う。LIG入社後は人事労務のスペシャリストとして勤怠給与、制度設計、評価報酬、研修など、現在も人事のみに限らず人生経験を活かして幅広く業務を担当している。

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