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#12
経営者なら知っておきたい!人事労務の実務ポイント

通信費は会社負担?テレワーク規程を作成する際のポイントを解説

きゃしー大西

こんにちは。人事総務部のきゃしーです。

今日は「在宅勤務(テレワーク)規程」を策定するにあたっての実務ポイントをお話します。LIGはコロナをきっかけに在宅勤務に踏み切った会社です。

ちなみに、在宅勤務にはいろいろな言い方があり、テレワーク、リモートワーク、モバイル勤務、ワーケーション(ワークとバケーションを組み合わせた造語)などもあります。

また、一言に在宅勤務といっても、仕事場所が自宅なのか、サテライトオフィスなのか、カフェなのか、リゾート地なのかなど、いろいろあると思います。在宅勤務には通勤時間を有効に使えるなどのメリットがある反面、今まで会社に出勤していれば考えなくて良かった問題点もあります。

ここでは、厚生労働省が出している「テレワークモデル就業規則」に記載の例文を元にしつつ、それだけでは網羅できない実務のポイントを踏まえてお話しいたします。

なぜ在宅勤務(テレワーク)規程が必要なのか

なぜ在宅勤務(テレワーク)規程をわざわざ策定する必要があるのでしょうか。

コロナ禍になり、規則がないまま在宅勤務に踏み切った会社もあるでしょう。しかし、オフィスに出勤しているのと違い、在宅だからこそ起こりうる問題点もあります。

大きくわけて2点です。

  • 在宅での経費の負担
  • 在宅であっても労働基準関係の法律が適用されること

それぞれ説明します。

1.経費の負担

オフィスに出勤していれば通信費や水道光熱費などはオフィスのものを利用することが可能でしたが、在宅の場合は自分のものを利用しなければいけません。

自宅にネット環境がない場合は会社が負担して環境整備するのか、毎月かかる通信費などの経費は実費を経費精算するのか、それとも在宅手当として支給するのかなど考える必要があります。

2.在宅勤務であっても労働基準関係の法律が適用される

労働基準関係の法律とは具体的には、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などが適用されます。自宅勤務だからといってすべて社員の自己責任というわけではありません。

在宅勤務の問題点は、本当に仕事をしているかわからない(さぼっているのではないか)といった問題もありますが、労務的な問題としては「過重労働」のほうが問題となりやすいです。オフィスに出勤していればオフィスにいる間が勤務時間なので上司の管理もしやすいですが、在宅の場合は目には見えませんから出退勤の管理は非常に難しいと言えます。

また、在宅であっても労災は適用されますので、労務管理は全般的に難しくなると言えるでしょう。規程を定めておくことで、できる限りあいまいな点を残さないようにすることが大切です。

在宅勤務規程を作成する際に押さえるべきポイント

就業規則に在宅勤務のことを明記

まずは就業規則に「在宅勤務」のことを明記する必要があります。今回のように在宅勤務規程を別に策定する場合には、「在宅勤務に関する事項についてはこの規則に定めるもののほか別に定めるところによる」と記載します。

例文
就業規則(適用範囲)
第◯条 この規則は、◯◯株式会社の従業員に適用する。
2パートタイム従業員の就業に関する事項については別に定めるところとする。
3前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。
4従業員の在宅勤務(在宅勤務、サテライトオフィス勤務及びモバイル勤務をいう。)に関する事項については、この規則に定めるもののほか別に定めるところによる。
引用元:厚生労働省|テレワークモデル就業規則

適用範囲

在宅勤務規程の中に、在宅勤務の適用対象者を定めます。

例文
(在宅勤務の対象者)
第◯条 在宅勤務の対象者は、就業規則第◯条に規定する従業員であって次の各号の条件を全て満たした者とする。
(1) 在宅勤務を希望する者
(2) 自宅の執務環境、セキュリティ環境、家族の理解のいずれも適正と認められる者
2 在宅勤務を希望する者は、所定の許可申請書に必要事項を記入の上、1週間前までに所属長から許可を受けなければならない。
3 会社は、業務上その他の事由により、前項による在宅勤務の許可を取り消すことがある。
4 第2項により在宅勤務の許可を受けた者が在宅勤務を行う場合は、前日までに所属長へ利用を届け出ること。
引用元:厚生労働省|テレワークモデル就業規則

この在宅勤務規程のモデル例では、「在宅勤務を希望する者」そして「環境等が整っている者」としています。この規程例では希望する者すべてにおいて在宅勤務を認めることとしていますが、出社を前提とした職種の方もいると思いますので、その場合は以下のように「出社を前提としない事業部」と定めておくと良いでしょう。

例文
(在宅勤務の対象者)
第◯条 この制度は、業務内容として出社を前提としない事業部に所属している者を対象とする。
2 ただし感染症等の状況が変わり次第、対象者を変更する場合がある。
引用元:厚生労働省|テレワークモデル就業規則

そして、在宅環境が整っているかどうかですが、この規程では会社が環境を整えるというよりは、環境が整っている従業員に対して在宅勤務を認めるとしています。また、コロナの状況により出社義務の有無が変化することも考慮すると良いでしょう。

定義

次に在宅勤務の定義についてです。

例文
(在宅勤務の定義)
第◯条 在宅勤務とは、従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社指定の場所に限る。)において情報通信機器を利用した業務をいう。
(サテライトオフィス勤務の定義)
第◯条 サテライトオフィス勤務とは、会社所有の所属事業場以外の会社専用施設(以下「専用型オフィス」という。)、又は、会社が契約(指定) している他会社所有の共用施設(以下「共用型 オフィス」という。)において情報通信機器を利用した業務をいう。
(モバイル勤務の定義)
第◯条 モバイル勤務とは、在宅勤務及びサテライトオフィス勤務以外で、かつ、社外で情報通信機器を利用した業務をいう。
引用元:厚生労働省|テレワークモデル就業規則

上記のモデル例には、在宅勤務には定義が3つあり、「自宅もしくはそれに準ずる場所」「サテライトオフィス」「それ以外」があります。会社によって決め方は自由です。

自宅もしくはそれに準ずる場所だけを在宅勤務として認めるのも良いと思いますし、ワーケーションなどそれ以外の場所を認めることも可能です。ただ会社には「安全配慮義務」があり、例えば在宅勤務中であっても業務中のやむを得ない事故がおこった場合は労災の対象となり得ます。

また、たとえばワーケーション中の車での移動中であっても「業務中」となる可能性があります。会社通勤であれば電車通勤だけを認めることも可能でしたが、地方勤務やワーケーションを認める場合、車による移動も「業務中の通勤」とみなされる場合がありますので注意が必要です。

在宅場所の自由度を上げれば上げるほど、それが本当に勤務中の事故なのか、会社は判断しにくくなるというデメリットはあるでしょう。自宅以外の場所を在宅場所と定義する場合には、その場所を利用する前に必ず会社に届出をするなどのルールも一緒に決めておくとよいでしょう。

服務規律

在宅勤務中の服務規律です。

例文
(在宅勤務時の服務規律)
第◯条 在宅勤務に従事する者(以下「在宅勤務者」という。)は就業規則及びセキュリティガイドラインに定めるもののほか、次に定める事項を遵守しなければならない。
(1) 在宅勤務の際に所定の手続に従って持ち出した会社の情報及び作成した成果物を第三 者が閲覧、コピー等しないよう最大の注意を払うこと。
(2) 在宅勤務中は業務に専念すること。
(3) 第1号に定める情報及び成果物は紛失、毀損しないように丁寧に取扱い、セキュリティガイドラインに準じた確実な方法で保管・管理しなければならないこと。
(4) 在宅勤務中は自宅以外の場所で業務を行ってはならないこと。
(5) 在宅勤務の実施に当たっては、会社情報の取扱いに関し、セキュリティガイドライン及び 関連規程類を遵守すること。
引用元:厚生労働省|テレワークモデル就業規則

在宅勤務において、どうしても必要なものは会社から持ち出すこともあるかと思いますが、それが会社の機密事項である場合もありますので、もしそういったものを持ち出す場合は所定の手続きに従って持ち出すようにしておくと良いでしょう。

持ち出す場合は紛失の可能性も高まることも在宅勤務のデメリットのひとつです。また在宅の場合は機密情報が見える範囲に家族がいたりもしますから、外部に漏れてはいけない情報などについては取り扱いに注意が必要です。

サテライトオフィスなど自宅以外を勤務場所にしている場合はミーティングなどで外部に声が聞こえてしまう場合もあります。服務規律で定める他にも、マナー研修などの実施など、場合によっては必要になります。

労働時間

在宅勤務時の労働時間や休憩、休日についてです。

例文
(在宅勤務時の労働時間)
第◯条 在宅勤務時の労働時間については、就業規則第の定めるところによる。
2 前項にかかわらず、会社の承認を受けて始業時刻、終業時刻及び休憩時間の変更をすることができる。
(休憩時間)
第◯条 在宅勤務者の休憩時間については、就業規則の定めるところによる。
(所定休日)
第◯条 在宅勤務者の休日については、就業規則の定めるところによる。
(時間外及び休日労働等)
第◯条 在宅勤務者が時間外労働、休日労働及び深夜労働をする場合は所定の手続を経て所属長の許可を受けなければならない。
2 時間外及び休日労働について必要な事項は就業規則の定めるところによる。
3 時間外、休日及び深夜の労働については、給与規程に基づき、時間外勤務手当、休日勤務手当及び深夜勤務手当を支給する。
(欠勤等)
第◯条 在宅勤務者が、欠勤をし、又は勤務時間中に私用のために勤務を一部中断する場合は、事前に申し出て許可を得なくてはならない。ただし、やむを得ない事情で事前に申し出ることができなかった場合は、事後速やかに届け出なければならない。
2 前項の欠勤、私用外出の賃金については給与規程の定めるところによる。
引用元:厚生労働省|テレワークモデル就業規則

在宅勤務時の労働時間や休憩、休日についてですが、基本的にはオフィスに出勤しているときと何も変わりません。在宅であっても就業規則に定められた労働時間、休日で労働します。

もし在宅勤務にすることにより始業や就業、休日を自由に決められるようにするには、在宅勤務規程とは別にフレックス制やシフト勤務などの制度を導入する必要があります。在宅だからといって自由にいつでも働いていいわけではありません。

なぜなら会社には従業員の勤怠を管理する責任があるからです。たとえば従業員が勝手に木金をお休みにして土日に勤務していた場合でも、土日を会社が休日と定めていた場合は「休日出勤手当」の支給が必要となる場合があります。

在宅勤務規程はあくまで「在宅で仕事をする場合のルール決め」であり、それ以外の勤務の自由度をあげる取り決めは別に行う必要があり、それは慎重に行う必要があります。

勤務方法

在宅勤務時の勤務の方法についてです。

例文
(業務の開始及び終了の報告)
第◯条 在宅勤務者は就業規則の定めにかかわらず、勤務の開始及び終了について次のいずれかの方法により報告しなければならない。
(1)電話 (2)電子メール (3)勤怠管理ツール(4)その他会社が定めたテレワークツール
(業務報告)
第◯条 在宅勤務者は、定期的又は必要に応じて、電話又は電子メール等で所属長に対し、所要の業務報告をしなくてはならない。
(在宅勤務時の連絡体制)
第◯条 在宅勤務時における連絡体制は次のとおりとする。
(1) 事故・トラブル発生時には所属長に連絡すること。なお、所属長が不在時の場合は所属長が指名した代理の者に連絡すること。
(2) 前号の所属長又は代理の者に連絡がとれない場合は、○○課担当まで連絡すること。
(3) 社内における従業員への緊急連絡事項が生じた場合、在宅勤務者へは所属長が連絡をすること。なお、在宅勤務者は不測の事態が生じた場合に確実に連絡がとれる方法をあらかじめ所属長に連絡しておくこと。
(4) 情報通信機器に不具合が生じ、緊急を要する場合は○○課へ連絡をとり指示を受けること。なお、○○課へ連絡する暇がないときは 会社と契約しているサポート会社へ連絡すること。いずれの場合においても事後速やかに所属長に報告すること。
(5) 前各号以外の緊急連絡の必要が生じた場合は、前各号に準じて判断し対応すること。
2 社内報、部署内回覧物であらかじめランク付けされた重要度に応じ至急でないものは在宅勤務者の個人メール箱に入れ、重要と思われるものは電子メール等で在宅勤務者へ連絡すること。なお、 情報連絡の担当者はあらかじめ部署内で決めておくこと。
引用元:厚生労働省|テレワークモデル就業規則

オフィスに出社していれば勤務の状況はオフィスにいればわかりやすかったですが、在宅の場合はいつから開始し、いつ終了しているかもわかりません。これは正しい勤怠管理の意味合いからもその連絡方法を定めておく必要があります。

また在宅勤務が可能な従業員であっても、その日にその従業員が在宅なのかオフィスに出勤しているのかを把握しておく必要があります。それは上記の規程例にあるように、災害などの緊急時に会社はその安否確認をしないといけないからです。

いつ誰がどこで仕事をしているのか、緊急時にその安否確認の方法を含めて対応を決めておきましょう。

給与や手当

在宅勤務時の給与や経費についてです。

例文
(給与)
第◯条 在宅勤務者の給与については、就業規則の定めるところによる。
2 前項の規定にかかわらず、在宅勤務(在宅勤務を終日行った場合に限る。)が週に4日以上の場合の通勤手当については、毎月定額の通勤手当は支給せず実際に通勤に要する往復運賃の実費を給与支給日に支給するものとする。
(費用の負担)
第◯条 会社が貸与する情報通信機器を利用する場合の通信費は会社負担とする。
2 在宅勤務に伴って発生する水道光熱費は在宅勤務者の負担とする。
3 業務に必要な郵送費、事務用品費、消耗品費その他会社が認めた費用は会社負担とする。
4 その他の費用については在宅勤務者の負担とする。
(情報通信機器・ソフトウェア等の貸与等)
第◯条 会社は、在宅勤務者が業務に必要とするパソコン、プリンタ等の情報通信機器、ソフトウェア及びこれらに類する物を貸与する。なお、当該パソコンに会社の許可を受けずにソフトウェアをインストールしてはならない。
2 会社は、在宅勤務者が所有する機器を利用させることができる。この場合、セキュリティガイドラインを満たした場合に限るものとし、費用については話し合いの上決定するものとする。
引用元:厚生労働省|テレワークモデル就業規則

この規程例では在宅時の実費精算を以下のようにしています。

  • 在宅勤務が週4日以上の場合は定期代を支給せずに通勤費実費を経費精算
  • 通信費や郵送費、消耗品費は会社負担
  • 水道光熱費は自己負担

この規程例では「在宅手当」を支給せず、実費を経費精算にしています。この場合のメリットは、かかった分を「経費」としているため社員個人の給与加算にならないこと、かかった分をかかっただけ費用負担できることです。

在宅手当は、性質上は在宅時にかかる費用の補填ではありますが、現時点の税務上の判断では給与加算となります。しかし実費負担のデメリットとしては、実費の経費精算は社員本人の処理負担もありますし、経理側の処理負担も大きいことです。

在宅時の費用は在宅手当でまかなうのか、実費を精算するのか、どちらにもメリットデメリットがあります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

在宅勤務は通勤の時間を有効に使えますし、特に育児中の社員はお迎えや病院に簡単に行けるなどメリットも大きい制度です。しかしその反面、社員同士のコミュニケーション不足や上司の管理のしにくさなど、問題点も浮き彫りになってきました。

メリットデメリットをしっかり把握したうえで、適切な管理ができるよう、規程をしっかり整えておきたいですね。