ラボ契約(ラボ型開発)とは?メリット・デメリットや契約時の注意点

しゅん

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こんにちは! セブ支社ではたらくWebディレクターのしゅんです。

エンジニア不足を解消する手段として注目されているラボ型開発(ラボ契約)ですが、多くのお客様とやりとりするなかで感じることは、ラボ型開発そのものの役割を正しく理解できておらず開発がうまくいっていない企業がまだまだ存在することです。

そこで今回は、ラボ型開発(ラボ契約)ではどのようなことが実現できるのか、ラボ型開発を成功させるためには何が必要なのかといったことについてまとめてみました。

システム開発を検討中の企業さまの参考になれば幸いです。

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編集部注:2023年9月に情報を更新しました。

ラボ型開発(ラボ契約)とは?

ラボ型開発とは、社外に専属の開発チーム(ラボ)をつくって開発を進めることで、「ラボ契約」「オフショア開発センター(ODC)」とも呼ばれます。

開発を外部に依頼するとなった際、従来では請負型が一般的でした。請負型の場合、ソフトウェアやシステム(あるいはその一部)といった成果物単位で契約をするため、成果物が完成したらチームは解散します。

一方でラボ型開発は、開発期間で契約をしてプロジェクトを進めます。一定期間(〜1年程度)人材を確保し、発注者側の指示のもと開発業務を行うため契約期間中であればプロジェクトの進捗状況に応じて開発内容を変更することも可能です。

ラボ型開発には国内と海外の2種類ある

ラボ型開発は、依頼する会社の所在地によって、オフショア開発ニアショア開発の2種類に分けられます。

オフショア開発は海外の子会社や開発会社と開発を進めることで、ニアショア開発は国内の大都市以外の地域にある開発会社とラボ型開発を結ぶ形です。

いずれも都心部より人件費を抑えられることや、IT人材の不足を補う手段として選ばれる開発手段です。

ラボ型開発の契約形態について

続いて、契約形態の視点からラボ型開発の特徴を見ていきましょう。

契約形態を大別すると3種類あるのですが、このうちラボ型開発は準委任契約請負開発は請負契約に該当します。(委任契約は法律行為に関する契約なのでここでは説明を省略)

準委任契約とラボ契約の違い

準委任契約と請負契約は、「外部のエンジニアに仕事を依頼する」という点では同じですが、何を持って契約完了とするかが異なります。具体的な違いについては以下の通りです。(※ここで紹介している内容はあくまで一般的なものであり、契約書の内容によっては説明の限りではない可能性があります。)

準委任契約
(ラボ契約)
「契約期間に仕事を実施」すれば契約完了となる。
請負契約 仕事が完成」すれば契約完了となる。

準委任契約(ラボ契約)は仕事の実施が契約内容であるため、開発業務をおこなっていれば、システムやソフトウェアなどの納品物がなくても契約違反にはなりません。

一方で請負契約は、仕事の完成が契約内容であり、納品物をもって契約完了となります。

つまりラボ型開発は、専属チームとして一定期間・一定数の人材を確保して開発でき、より社員に近い形で開発業務を進められるのです(ただし、直接の指揮命令関係は生じません)。契約期間中であればプロジェクトの進捗状況に応じて開発内容の変更もできるため、柔軟にプロジェクトを進めることができます。

請負契約の場合、システムやソフトウェアなどの納品物を納品することで、契約完了となります。チームはプロジェクト単位で組まれ、プロジェクトが終了(仕事が完成)したらチームは解散するのが一般的です。

請負契約は、管理も含め請負先に一任するため、手をかけずに開発を行える一方、発注後の仕様変更などは困難であり初期の用件定義が成功の鍵となります。

ラボ型開発とSESの違い

ラボ型開発とSESの違い

ラボ型開発は、SES(常駐型開発)とも混同されやすいです。

この2つはどちらも準委任契約に該当しますが、開発する場所に違いがあります

ラボ型開発は開発チーム側のオフィスなどで開発をおこない、SES(常駐型開発)は基本的にクライアント企業の内部に常駐をして開発を進めます。

一般的にラボ型開発は特定のプロジェクトベースでのアプローチ、 SESは長期的に日常的な開発業務やサポートを提供することが多いです。

ラボ型開発を取り巻く状況:なぜ注目されているのか

ラボ型開発が注目される理由の1つは、日本のIT人材が不足していることです。

現代の日常生活においてITは欠かせないものとなっており、今後ますますITエンジニアの需要が高まることが予測されます。しかし日本のITエンジニアは今も既に不足しており、経済産業省の発表では2030年までに40~80万人のITエンジニアが不足するとされています*。(*参考:経済産業省|IT人材育成の状況等について

このような背景から、多くの会社で「ITエンジニアが採用できない」といった悩みを抱えているのが現状です。ラボ型開発は、このような課題を解消する手段のひとつとして注目されています。

また、自社に社員として雇用するのではなく一定期間のみエンジニアチームを組むという方法は、コスト面などにおいてもメリットがあるといえます。

革新を生む開発手法:ラボ型開発の魅力とは?

IT人材の不足が解消できるとして注目されているラボ型開発ですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは改めてラボ型開発の代表的なメリットを解説します。

ラボ型開発のメリット
  • 採用や育成の手間がかからない
  • 優秀な人材を確保できる
  • 追加修正や仕様変更がしやすい
  • ノウハウを蓄積できる

採用や育成の手間がかからない

ラボ型開発のメリットとしてまず挙げられるのはエンジニアの採用や育成の手間をかけずに、即戦力となるIT人材を確保できることです。

前述したように、日本では多くの会社で「ITエンジニアが採用できない」といった悩みを抱えているのが現状です。特に中小企業ではこの傾向が顕著であり、エンジニアの採用はかなり厳しいと感じている企業も多いでしょう。

また、採用ができても教育・育成に時間がかかり、さらに売り手市場であるエンジニア採用では教育がうまくいっても転職してしまうなど、課題はつきません。

必要なスキルセットをもったラボ型開発先に依頼をすれば、このようなエンジニアの採用・教育の課題を時間をかけずに解決することができます。

優秀な人材を確保できる

ラボ型開発は、一定期間海外の優秀な人材を確保できることもメリットです。

経済産業省が発表した「IT人材に関する各国比較調査」によると、日本のITレベルは東南アジア諸国と比較すると若干低い水準になっています。ラボ型開発を委託する国として人気の東南アジア諸国では、IT人材の育成に力を入れており、近年は優秀なエンジニアが多いです。

ラボ型開発をすることで、契約期間中はこのような優秀なエンジニア人材を継続的に確保でき、専属チームとしてより社員に近い形で開発を進めることができます。

追加修正や仕様変更がしやすい

ラボ型開発は、「一定期間一定数の人材を確保して開発業務を行う」契約内容です。

請負契約と違い、契約期間中であればプロジェクトの進捗状況に応じて開発内容の変更が可能ですし、見積もりや契約更新をする必要がないため柔軟に開発を進められます。

また、契約期間内であれば追加費用が発生しないため、請負契約でよくある「納品完了後に修正点が見つかり追加費用が発生してしまった」などの、想定外の出費を防ぐことが可能です。

ノウハウを蓄積できる

また、自社内にノウハウを蓄積できるということも、ラボ型開発のメリットといえます。

ラボ型開発は、1つのプロジェクトが終了したあとも契約期間中は同じメンバーで開発可能です。そのため技術的なノウハウが蓄積でき、より高品質・ハイスピードな開発ができます。また、引き継ぎも不要であることも大きなメリットといえるでしょう。

ラボ型開発のデメリット

ここまでラボ型開発のメリットについて解説しましたが、デメリットがあるのも事実。ここからは、ラボ型開発の代表的なデメリットを紹介します。もしラボ型開発を検討中なら、以下の点に留意して進めてください。

ラボ型開発のデメリット
  • 仕事がなくてもコストが発生する
  • 人材レベルをきちんと見極める必要がある
  • コミュニケーションの問題
  • チームを構築するまでに時間がかかる

仕事がなくてもコストが発生する

ラボ型開発をした場合、プロジェクトが早くに終了し依頼することがなくなっても、契約期間中はコストが発生してしまいます。仕事がなくとも最低保証分として報酬を支払う必要があります。契約期間内は、しっかりと計画を立てて有効に人材を活用しなければいけません。

人材レベルをきちんと見極める必要がある

契約する際に、システムの開発レベルに合わせた人材を提供してもらえるように、きちんと人材の能力を見極める必要があります。

また、ITスキルだけではなく性格的な面も考慮しましょう。一定期間ともに業務を行うことになるため、互いの意見の交換がスムーズにできることがとても大切です。優秀な人材を得るためには、委託側と受注側が信頼できるよりよい関係を築いておく必要があります。

コミュニケーションの問題

海外に委託するオフショア開発の場合は、現地のエンジニアと日本語でコミュニケーションをとることが難しいです。また、時差の都合でリアルタイムのコミュニケーションが取りにくいこともあります。

そのため、時差の少ない地域のオフショアを選ぶことも検討しましょう。また、契約時には、現地語に詳しい日本人スタッフの存在も確認しておくとよいでしょう。

チームを構築するまでに時間がかかる

ラボ型開発は、チームを作って一緒に開発を進めていく手法です。発注側は依頼した開発会社に対して、チームの一員として指示を出す立場になります。

初めて顔をあわせた人と仕事を進めるのがむずかしいように、ラボ型開発でもチームを構築してスムーズな開発を進めていくまでには一定期間の時間を要します。

プロジェクト開始間もない頃は、「思ったようにうまく進まない」と感じることもあるでしょう。

ラボ型開発に向いているプロジェクトとは?

ここまで紹介したメリット・デメリットなどを踏まえると、ラボ型開発は主に中長期の開発においてその強みを発揮できる開発手段であると言えます。

具体的には次のようなプロジェクトに向いているといえるでしょう。

発注段階ではプロジェクトの方向性が定まっていない

発注段階ではプロジェクトの方向性が決まっておらず、進捗状況を見ながら進行させたいという場合、ラボ型開発が向いています。

プロジェクト完了までのすべてを委託してしまう請負契約と違い、ラボ型開発は制作状況を見ながら随時仕様変更が可能です。

チームメンバーとプロジェクトを推進しながら、方向性を定めていくことができます。

開発とテストを短期間で繰り返したい(アジャイル開発をおこないたい)

開発とテストを短期間で繰り返すようなアジャイル開発をおこないたい場合にも、ラボ型開発は有効です。

アジャイル開発とは、小さい単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていく手法です。例えば新規事業の開発などで、作業途中の変更や改修を前提としている場合に相性がいいとされています。

ラボ型契約は一定期間エンジニアをアサインでき、かつチーム体制が変更になることも基本的にはありません。そのためアジャイル開発をおこないたい場合には、ラボ型開発が向いているといえます。

既存システムの改修・保守運用をまるっと任せたい

「自社のエンジニアのリソースを新規事業の開発にまわしたいけど、既存システムの拡張開発などでリソースが足りない」という課題もよくあります。

このような場合、既存のシステム開発をラボ型開発でおこなう体制を作ることができれば、新規開発に自社エンジニアのリソースを使えるようになります。結果として、会社全体の成長に繋げることができるでしょう。

ここまでの内容をまとめると、以下のとおりです。

ラボ型開発が向いているプロジェクト例
  • 発注段階ではプロジェクトの方向性が定まっていない
  • 開発とテストを短い時間で繰り返したい
  • 開発中に仕様変更が起きる可能性がある
  • 既存システムの開発や保守を任せて、新規事業にリソースを使いたい

ラボ契約をする前に確認したいポイント

実際にラボ型開発を契約する際に、確認したいポイントを解説します。

コミュニケーションが取れる体制かを確認する

海外の子会社や開発会社とラボ契約を結ぶオフショア開発の場合、コミュニケーションは基本的に英語でおこなうことになります。

英語ができない場合、日本語でのコミュニケーションができる開発先を探さなくてはなりません。

日本語OKの開発先は、ブリッジSEと呼ばれる橋渡し役のエンジニアが間に入ります。開発をスムーズに進めるには、このブリッジSEの技量が重要です。発注前にスキルをしっかりと確認しておくようにしましょう。

また、現地のスタッフとのコミュニケーションは、どのようなルートで行われるのか、どのようなツールを使うのかなども確認しておくと安心です。

定期的にミーティングし情報共有する

ラボ型開発の場合、依頼する仕事がなくてもコストが発生してしまいます。費用を無駄にしないためには、定期的にミーティングを行うなどし、稼働状況を確認することが大切です。ミーティングでは、作業内容の説明・スケジュールの共有・成果物の確認などもしっかりと確認しましょう。

実績のある開発会社を選ぶ

オフショア開発をする場合は、日本企業との開発実績があるオフショア開発会社を選ぶことが大切です。国をまたいでのやり取りには想定外の出来事がつきもの。日本企業を理解してくれていれば、システム開発は確実に進めやすくなります。オフショア開発をする際には、下記の点に注意して選ぶことをおすすめします。

オフショア開発会社を選ぶポイント
  • 日本企業との開発実績の有無
  • 自社が必要とするスキルはあるのか
  • 得意分野は何か
  • 所属しているエンジニアの質
  • 日本語が通じるスタッフがいるのか
  • セキュリティ対策は万全か

▼オフショア開発先を決める時のポイントは以下記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください!

ラボ契約でシステム開発ができる会社

以下ではラボ型開発(準委任契約)ができるシステム開発会社・オフショア開発会社を紹介します。

株式会社LIG

出典:テクノロジー|株式会社LIG

上流工程から設計・実装・QA(品質保証)までの一気通貫のサポートと、長年のWeb制作事業で培ってきたUI/UXデザインのノウハウが強みのシステム開発会社。

海外のエンジニア人材とともに、柔軟かつスピーディーにチーム体制を整え、サービス開発やアプリ開発、パッケージ導入(CRM・CMS・SFA)、AWSクラウド構築、データ収集・分析の開発サポートをします。

アジャイル開発や請負など、企業課題に応じて柔軟に対応可能です。

開発拠点 東京・フィリピン・ベトナム
設立年 2007年
従業員数 約300名
得意分野 Webサービス開発、アプリ開発
契約形態 準委任契約、請負契約
代表実績 Webサービス開発(東京システムハウス株式会社)
Webサービス開発(株式会社四月一日企画)

※LIGのシステム開発の強みはこちらの記事でまとめているので、あわせてご覧ください。

株式会社ハイブリッドテクノロジーズ

ハイブリッドテクノロジーズのトップページ出典:株式会社ハイブリッドテクノロジーズ

設立は2016年ですが、親会社である株式会社エボラブルアジアが2006年から行っていたラボ型のオフショア開発事業を引き継いでいます。ベトナムのオフショア開発業界では老舗中の老舗で、実績多数です。

ITオフショア開発事業に強みを持ち、システム開発事業、ゲームアプリ開発・運用事業、マーケティング事業など、幅広く対応しています。

開発拠点 ベトナム・日本
設立年 2016年
従業員数 554名(2022年9月30日時点、100%子会社含む)
得意分野 アプリの企画・開発、UXデザイン、システム開発事業、マーケティング事業
契約形態 準委任契約、請負契約

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新卒で入った鉄鋼商社を辞めてLIGにジョインしました。 学生時代はフィリピンで働いたり、カンボジアでボランティアをしたりしていました。 よろしくお願いします!!

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