「誰が読むか」をイメージする
ただ書くって言っても、やっぱりお題がないと書けないですよね。いざ自由に書けって言われても何も書けないと思います。だから自分でお題を決めちゃうしかないだろうし、それを誰かに読んでもらうっていう前提が絶対に必要です。
また、誰が読むのかをイメージしていないとダメですね。そのバンドをみんなが知っている前提なのか、知らない人に向けてバンドの紹介をしたいのか、ファンと共有したいのかで書くことが違ってくる。その枠を自分で作らないと書き始められないと思いますね。コアなファンに読んでほしかったら、本当にマニアックなことだけを書き続けることにも意味があると思うけど、ダラダラとマニア自慢をしても仕方がない。やっぱり読み手を意識しなきゃ。
私が書くときは、一度バーっと書いてから削っていきます。今からライターをやる人っていうのはネットが主流でしょうから、文字数は3000字を目安にするのが一般的でしょうか。
「bounce」(注3)の人から聞きかじった話なんですけど、3000字を越えるとネットでは長いと思われるらしいんです。なんとなく読んでいても、3000字を越えたあたりから長いと感じる。そこは注意したほうがいいかもしれないですね。インタビュー原稿は長くなりがちだけど、削ったら5000字くらいになるもんですよ。1万字あって、「いい話がいっぱいだからこれを全部読ませたい」っていうのは、聞き手のエゴだから(笑)
ライターとしての「強み」をもつ
19歳で書き始めたから就活はしてません。大人になって生活を考えながら「どうする? 転職先としてライターはアリか?」って思ったら、そんな怖いことできない。19だからできたんです(笑)。とりあえず親に頭下げて二年間だけ家賃を払ってもらいましたけど、専門学校卒業と同時に仕事は増えましたね。若いから出版社も面白がって使ってくれるんですよ。そこはすごくラッキーだったと思いますね。当時ライターは30代〜40代が中心で、10代っていうのはいなかったんですよね。いやらしい言い方だけど、女でパンクやヘビーロックに強いというのも珍しがられるポイントでした。
とにかくライブハウスに通い続けていたことも大きいです。そこにいる子たちの感性だとか、リアルタイムの出来事を見ていられました。当時は、なんでこのバンドはこんなに人が入るのかとか、説明できるのが私しかいなかったので、そこはすごい強みだったと思います。音楽史をとうとうと語るならベテランライターに敵わないけど、「今ピンポイントでここのシーンが熱い」と言えるのは、たぶん現場(=ライブハウス)にいる人にしかわからないと思うので。
強みとして、専門分野がないとライターはやっていけないと思います。よく、「ライターに必要なものは何か」という質問で「興味をいっぱい持つこと」という答えを聞きますが、アレって嘘だと思うんですよね。なんでもかんでも浅く広く追いかけるっていうのは、片手間じゃできないですよ。好きだったらそれだけを追いかけたほうが、書き手としては強いと思います。もちろん「ドイツのこのバンドだけが好きだ」という狭すぎる分野も需要はないと思うけど(笑)