文章を書くのが苦手なので、ライター・石井恵梨子氏に「文章の極意」を聞いてきた

ケン


文章を書くのが苦手なので、ライター・石井恵梨子氏に「文章の極意」を聞いてきた

みなさん、こんにちは。LIGMOチーム・編集者のケンです。

編集という仕事をしていると、いろいろな文章を目にしたり、文章を修正したり、ときには自分で書いたりします。いざ自分で文章を書こうと思ったときに、僕の場合はいつも書き出しに苦労します。みなさんも「文章を書く」という行為に対して何かしら問題を抱えていたり、書き出せなかったりするときはありませんか? そこで、今回は尊敬してやまない音楽ライター・石井恵梨子さんに「文章の書き方」を伺いました。

DSC_0019 人物紹介:石井 恵梨子(いしい えりこ)
1977年石川県金沢市生まれ。高校卒業後上京し、1997年から「CROSSBEAT」誌への投稿をきっかけにライターとして活動をスタート。洋楽・邦楽問わず、パンク、メタル、ロックなど、ラウドでエッジのあるものをメインに幅広く執筆。現在は「音楽と人」、「週刊SPA!」などに寄稿。著書『東北ライブハウス大作戦〜繋ぐ〜』(A-Works刊)が全国書店やライブハウスなどで発売中。

石井さんは、良いことも悪いこともハッキリと書くライターさんです。石井さんの書く文章は、まとまりがあって、ストレスを感じずスラスラ読むことができます。みなさんの中にも音楽雑誌を読んでいるときに「取材・文=石井恵梨子」という文字を見たことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

石井さんがどうしてライターになったのかを皮切りに、ライターに必要なことは何か、文章を書く上で重要なことなどをお聞きしました。これからライターになりたい人や、ライターとしてさらに上を目指したい人も「石井恵梨子流文章の書き方」を一緒に学びましょう。

きっかけは「X JAPAN」

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1997年、雑誌「CROSSBEAT」(注1)への読者投稿をきっかけにライターになりました。当時「CROSSBEAT」には、ランダムアクセスという読者投稿を受け付けるページがあったんです。一般読者も投稿してるし、同じようにライターさんも書いていて、1アーティストについて好きに語る、みたいなページでした。そこに送った原稿が載って、嬉しくなって、月刊誌なのに月に2本、3本と書いて送っていたら、編集部から「そんなに書きたいならレビューでも書きませんか?」と連絡がきて。

その前に、小野島大さん(注2)の「音楽ライター講座」に通っていたのですが、小野島さんはこの「CROSSBEAT」に繋がりがあったので「今回投稿してきたの、ウチの生徒だよ」みたいに言ってくれてたから、興味を持ってもらえたんでしょうね。「どういうのが書きたいの?」みたいな話をして、最初はレビューを書きました。

初めてインタビューしたのは、専門学校に通ってたときだから19歳ですかね。洋楽のライターとしてスタートしています。「Everclear」という、アメリカではちょっと売れていたオルタナティヴ系ギターポップバンドのギターボーカルに取材しました。通訳さんがいたので言語の心配はありませんでした。

ライターになろうと思ったのは、中学生のとき。すごい早いですよね。思い込んだっていうだけなんですけど。きっかけはロックバンドの「X JAPAN」です(笑)中学生のときに好きになった、はじめて知ったロックバンドです。でも、彼らは私の住んでいた金沢までコンサートをしに来ないので、毎月雑誌を読むしかなくて。

毎月読んでたらYOSHIKIと喋っている人がいるぞ、みたいな。文・構成=◯◯って書いてあって「こいつイイな〜」って(笑)もしかして「文・構成=◯◯」になったら、本人に会えるんじゃないかって。そこでライターになろうって決めちゃったんですよね。

(注1)1988年に創刊されたシンコーミュージックから出版されていた洋楽中心の月刊誌。2013年に惜しまれつつ休刊。

(注2)音楽評論家。主な著書に『音楽配信はどこへ向かう?』(インプレス)『ロックがわかる超名盤100』(音楽之友社)など。さまざまな雑誌やWebサイトに執筆。石井恵梨子さんの師匠。

文章をとにかく読む

Stack of magazines on chair, close up

私、本当に暇だったからなのか、暗かったからなのか、読む時間がハンパなかったと思います。好きなバンドも、そうじゃないバンドも載っているのが雑誌だから、全ページ全文字読むんですよ。誰が書いているかをじっと読んで、編集後記まで読む。全部読んで、また読み返すみたいな。

当時はお金もなくて月に2冊しか買えなかったので、そればっかり読んでましたね。どのライターさんの文章が好きだとか、このバンドの発言はこっちの雑誌の発言とどう違うかとか、すごく細かい違いまで気にしながら読んでました。

あと、「インタビューってどのくらいの時間でやるんだろう」って思って、書いてある会話を全部自分で口に出してみたことがあります。5000字の原稿だと10分ぐらいで終わるんです。でも、実際はインタビューって1時間くらい取材するでしょう? 知らないけど編集後記にそう書いてあるんだから(笑)、その他の時間は何を喋ってたんだろうとか。本当に気持ち悪いね(笑)そういう中高生でした。

文章をひたすら読むこと以外には、ワープロを習いました。今で言えば、パソコンですね。日本語入力で練習したので、文字を打つスピードは早いです。それは役立っていると思いますね。でも、実際に書いたことはなかったので、ただただ好きで「この世界に行きたい」っていう憧れでやってた真似事に近いですね。ライター講座に通うようになってから、初めて好きな音楽について書くようになりました。

「誰が読むか」をイメージする

Find out in the English-Japanese dictionary.

ただ書くって言っても、やっぱりお題がないと書けないですよね。いざ自由に書けって言われても何も書けないと思います。だから自分でお題を決めちゃうしかないだろうし、それを誰かに読んでもらうっていう前提が絶対に必要です。

また、誰が読むのかをイメージしていないとダメですね。そのバンドをみんなが知っている前提なのか、知らない人に向けてバンドの紹介をしたいのか、ファンと共有したいのかで書くことが違ってくる。その枠を自分で作らないと書き始められないと思いますね。コアなファンに読んでほしかったら、本当にマニアックなことだけを書き続けることにも意味があると思うけど、ダラダラとマニア自慢をしても仕方がない。やっぱり読み手を意識しなきゃ。

私が書くときは、一度バーっと書いてから削っていきます。今からライターをやる人っていうのはネットが主流でしょうから、文字数は3000字を目安にするのが一般的でしょうか。

「bounce」(注3)の人から聞きかじった話なんですけど、3000字を越えるとネットでは長いと思われるらしいんです。なんとなく読んでいても、3000字を越えたあたりから長いと感じる。そこは注意したほうがいいかもしれないですね。インタビュー原稿は長くなりがちだけど、削ったら5000字くらいになるもんですよ。1万字あって、「いい話がいっぱいだからこれを全部読ませたい」っていうのは、聞き手のエゴだから(笑)

(注3)タワーレコードが発行するフリーペーパー。

ライターとしての「強み」をもつ

young woman sitting near window and writing. retro filtered image. photograph with natural window light . selective focus

19歳で書き始めたから就活はしてません。大人になって生活を考えながら「どうする? 転職先としてライターはアリか?」って思ったら、そんな怖いことできない。19だからできたんです(笑)。とりあえず親に頭下げて二年間だけ家賃を払ってもらいましたけど、専門学校卒業と同時に仕事は増えましたね。若いから出版社も面白がって使ってくれるんですよ。そこはすごくラッキーだったと思いますね。当時ライターは30代〜40代が中心で、10代っていうのはいなかったんですよね。いやらしい言い方だけど、女でパンクやヘビーロックに強いというのも珍しがられるポイントでした。

とにかくライブハウスに通い続けていたことも大きいです。そこにいる子たちの感性だとか、リアルタイムの出来事を見ていられました。当時は、なんでこのバンドはこんなに人が入るのかとか、説明できるのが私しかいなかったので、そこはすごい強みだったと思います。音楽史をとうとうと語るならベテランライターに敵わないけど、「今ピンポイントでここのシーンが熱い」と言えるのは、たぶん現場(=ライブハウス)にいる人にしかわからないと思うので。

強みとして、専門分野がないとライターはやっていけないと思います。よく、「ライターに必要なものは何か」という質問で「興味をいっぱい持つこと」という答えを聞きますが、アレって嘘だと思うんですよね。なんでもかんでも浅く広く追いかけるっていうのは、片手間じゃできないですよ。好きだったらそれだけを追いかけたほうが、書き手としては強いと思います。もちろん「ドイツのこのバンドだけが好きだ」という狭すぎる分野も需要はないと思うけど(笑)

一番重要なのは「語りたい! 語らせろ!」

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何かが好きならばそれを突き詰めたほうが言葉にも説得力があると思うんです。私の文章を支持してくれる人がいるのは、たぶん知識があるからじゃなくて、熱があるからだと思うんですよ。どんな書き方にしても、そこには愛があるんですよ(笑)それがちゃんと伝わるから仕事になるんだと思うんです。だから、文字を書く上で一番重要なのは「熱量」だと思っています。

「ライターになりたい」より、「これを書きたい」という気持ちのほうが先ですよね。そして、「これを語りたい! 語らせろ!」みたいな、何を書きたいのかをハッキリ言えない人はライターになれないと思います。もちろん幅広く台湾の文化を紹介していくライターさんとかだったらいろいろ好奇心があったほうがいいとは思うんだけれど、こと音楽の話だったら一つでいいと思います。

文章の基礎は学校で習いますし、自分で声を出してちゃんと読んでみれば、それなりの文章は誰でも書けます。ただ、上手い下手っていうのは言葉のテンポなど技術的な問題もあるし、あと大きいのは、面白いか否か、でしょう。何が面白いかは人それぞれ。アカデミックに解説されたものが面白いという人もいるだろうけど、私はそうじゃない。面白いと思える文章って、その人自身を語っているものだと思う。書いている人が見えてくる、伝わる。語っているのは別の対象だし、語り手も自分を出したくて書いたわけじゃないんだけれども、最終的にはその語り手が見えてこないと面白くないかなって思います。

たとえば、何か嫌いなものを「好意的に受け取れない向きもあるかもしれない」と、ボンヤリとした話にしちゃう人もいますよね。そうじゃなくて、「私はここが嫌だ」って書いちゃう人のほうが私は面白いと思う。一般論にしちゃうと書き手がぼやけますから。もちろん、そういう文章がすべての媒体に求められているわけではないです。どっちが良い悪いじゃないけど、私はハッキリというほうが面白いと思うし、そういう書き手になりたかったんです。

フリーランスは1日にして成らず

three students walking together in the city center - people and lifestyle concept

私は初めからずっとフリーランスですけど、知り合いは会社を辞めて独立するフリーランスのライターが増えていきますね。フリーランスになると人脈は重要です。スケジュールが空いてないけどこの人ならできるかもって紹介したりもします。それでお仕事として依頼される媒体が増えていく感じです。

私の場合は、フリーランスの人たちと出会ったのは、ライブハウスでしたね。ライブを見て「ご飯でも行きますか!」って。それが編集者であれば、ライターさんを何人か紹介してくれますし、仲良いライターさんが、また別のライターさんを連れてきて飲んだり。酒ですよね。ライブハウスと酒っていう(笑)

結局家の中で書いていても人脈も広がらないですよね。人脈を作ろうと思って外に出ても作れない。そのライブが見たい! そのあと語りたい! 書きたい! っていうのがあって、現場に足を運ぶわけだから。「ライブ良かったね! ちょっと飲もうよ!」っていうだけの話です。だから人脈づくりのためって誰も思ってないんじゃないかなって思います。

18ffe47ae091488567f5b7bacfbe9db74 【取材を終えて】
やっぱり文章は熱量が大切! 次回は、インタビューの極意を聞きます
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この記事を書いた人
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LAMP豊後大野 支配人

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