ライター・石井恵梨子さんに相手の本心を引きだす「インタビューの極意」を聞いてきた

ライター・石井恵梨子さんに相手の本心を引きだす「インタビューの極意」を聞いてきた

ケン

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みなさん、こんにちは。エディターのケン(@KenTakahashit)です。

編集者たるもの、取材ができないと話になりません。そんなプレッシャーを感じながらも、インタビュー取材の難しさを感じる今日この頃。読者の知りたい情報や興味をひく内容を聞きだすインタビューは、いったいどのようにしたらできるのでしょうか。僕は「聞きたいことが聞けない」「インタビューでドギマギしてしまう」「沈黙が怖い」など悩みだらけです。
そんな悩みを、前回の「文章を書くのが苦手なので、ライター・石井恵梨子氏に「文章の極意」を聞いてきた」に続き、ライター・石井恵梨子さんに「相手の本心を引きだすインタビューの極意」について聞いてきました。

DSC_0019 人物紹介:石井 恵梨子(いしい えりこ)
1977年石川県金沢市生まれ。高校卒業後上京し、1997年から「CROSSBEAT」誌への投稿をきっかけにライターとして活動をスタート。洋楽・邦楽問わず、パンク、メタル、ロックなど、ラウドでエッジのあるものをメインに幅広く執筆。現在は「音楽と人」、「週刊SPA!」などに寄稿。著書『東北ライブハウス大作戦〜繋ぐ〜』(A-Works刊)が全国書店やライブハウスなどで発売中。

メモは、見るな。

ー インタビューする上で、これだけは押さえておけというポイントはありますか?

なんだろうなぁ? ちゃんと目を見て話しなさいということかなぁ。

 
ー やっぱりそこは重要ですか?

大事です! よくミュージシャンもいうけど、メモ帳やPCを見てインタビューする人の話ってつまらないらしいですよ。
 

ー 取材とはいえ、話をするんだからこっちを見なさいよって思うかもしれませんね。

うん。そのメモ帳やPCって要点をまとめるために作っているんだろうけど、聞き手ってそこから話題がずれたときに困惑しちゃうんですよ。「あ、こんな予定じゃない」って話が止まっちゃう。だったら、メモ帳やPCを見ないで目を見て話すことが大事です。私は、取材のときメモ帳やPCを持たないですからね。

 
ー 本当ですか!?

うん。よほど大事な年表とかだったらお互いに確認する資料として必要ですけど。インタビュー中にメモも取らないし。

 

ー 駆け出しのころは、メモを取っていました?

というか、質問表みたいなものを用意していましたよ。でも、いざやってみるとわかってくるんです。質問表を用意している時点で自分の中に答えがあるんですよね。話の筋書きが。

 
ー なるほど。こういう質問したら、こうやって返ってくるだろうと。

そうです。その流れから離れられないし、実際にできた原稿がその通りでも実は面白くなくなっちゃう。質問と答えがイメージできるってことは、きっとどこかで読んだことがある内容でしょうから。
それよりもその場でふと出てきた発言のほうが大切ですよ。

 
ー でも事前に調べてくる情報ってあると思うんです。メモ帳やPCは、相手の情報をメモしてきて確認のため見ているんですけど、取材する前にすべて頭に入れておくんでしょうか。

入れておきますね。

 
ー 取材中に緊張して忘れちゃうってことはないですか?

さすがにもうないですね(笑)昔は頭が真っ白になることがありましたけど。

 
ー 以前石井さんも人見知りだとおっしゃっていましたが、初対面の方と話をするとなると緊張しませんか?

緊張しますよ。でも、インタビューはコツがないから回数をこなしていけば上手くなっていくと思います。とにかく慣れていくしかないですよね。

 

ー 本当に慣れないんですけど……。

インタビュアーに向いていないんだよ(笑) ははは。

 

どんな状況でも、動じるな。

ー 本当にインタビューは難しいなと思うんです。あたふたしちゃうんですよね。今もあたふたしちゃっていますが(笑)

聞き手の「あたふた感」が見えちゃうと、話すほうがちゃんと答えてくれなくなるんじゃないかな。
私は人見知りですけど、愛想がないぶん、テンションが低いというか態度が偉そうというか(笑)別に動じてなさそうに見えるらしいです。で、人としてどうかは別ですけど、インタビュアーとして、それはデメリットではないんですね。

 
ー 何があっても動じるなと。

うん。動じないっていうのは、態度でも大事だと思います。
あたふたしていると、恐縮しているように見えるから、話し手の立場が上だという図式が成立しちゃう。意外と聞き手が動じないと、話し手は「あれ? なんか僕の話は面白くないですか?」ってなるんですよ(笑)

話し手はだいたい「この話の内容じゃダメなのかな」ってなりますね(笑)「もっといい話しなきゃいけない」と焦りだすこともある。
人間ってそんなもんでしょう。今まで狙ってたつもりはないんだけど、今わかりました。
案外いいかもしれない、この方法。

 
ー 意外に見えますが、動じないっていうのが一番大事かもしれませんね。

ですね。あと、相づちが「なるほど、なるほど」ばかりだと(現に僕もこのインタビュー中に「なるほど」を連発してしまいました)「納得してくれたんだな」と思う以上に「こいつ話聞いているのか?」って嫌になりますから、相づちは必要だけど無駄な相づちはいらないですね。

 

ー 相づちって結構難しいかもしれないです。「うんうん」や「なるほど」をよく使ってしまうので。

「なるほど」を連呼するくらいならオウム返しのほうがいいと思います。話の切れ目で「なるほど」って言っちゃうと、そこで話が終わっちゃうけど、オウム返しをされると相手は話したことに対して説明したくなるから。

 

ー ……なるほどって言いそうになりました(笑)

でも、インタビューの細かいテクニックって多分そういうところですね。

インタビューは、人と人とのコミュニケーション

ー インタビューしている最中は、インタビュー原稿の着地点は見ていますか?

着地点があればいいなと思いますけど、インタビュー中は考えてないかもしれないです。話した内容のすべてが原稿になるかといったら絶対にそうならないし、しないです。
だから、話の一番盛り上がったところが着地点になれば、あとは文章の構成次第で調整できますから。

 
ー たしかにそれはありますね。文章構成のたて方もインタビュー原稿の重要な要素のひとつです。

そうなんですよ。むしろその文章構成のほうが重要で。それこそが、ライターの本番、腕の見せどころですよ。インタビューは原稿のための素材集めだから、相手が気持ちよくいろんな素材を出してくれれば、その場の会話を楽しめばいいんです。
そのまとめられた1時間という取材の中で、会話という音楽を、DJ(=書き手)としてどう切っていくか、どこにピークをつくるか、どうカットアップするか。インタビュー中に原稿の着地点について考えなくても良いと思います。

 

ー 自分が聞きたいことを相手に聞けばいいんだと。

そうですね。例えば、食べ物の話で盛り上がってもいいと思うんです。そこで出てきた意見が、その人の音楽だったり、考え方にバシっと合致することがあります。

結局インタビューは、人と人とのコミュニケーションってことだと思います。

 
ー 普段生活している感性が、その人の作品なり考えている思考と繋がってくることが、インタビュー中の会話にあるということなんですね。

そうです。もちろんアルバムのインタビューなら、目の前にアルバムがあってそれが題材にはなるけど、書かれている歌詞の背景だったり、例えばメンバーとのケンカの話のほうが大事だったりすることがあるので、それにまつわることは興味の赴くままに聞いていくってことです。

言葉より顔は正直だ。その本質を見極めよう。

ー インタビューをしている中でどうしても会話が途切れるときがあるんですけど、そういうときはどうしていますか? こちらも聞こうとしていることを考えていて、話し手も話すことを整理していて沈黙してしまうことがあると思うんですが。

しばらく待って、何も返ってこなかったら「以上ですか?」って聞くようにしています。

 

ー 沈黙の見極めって、経験してこないとわからないものですか?

うん。あとね、人に言われて知ったんですけど、私は沈黙が怖くないらしいです。普通の人が泡食ってしまうところをジーっと待っているみたいです。

 
ー 取材で石井さんとご一緒したときに、同じことを思いました。沈黙が結構長いなって(笑)その取材のときも、きっと話し手が考えていたと思うんです。でも僕の場合は、その沈黙が怖かったりします。

嫌な沈黙っていうのは、目を見ればわかりますよ。しっかり話したいから言葉を選んで考えているときはどこか一点を見ているし、「話すことないな」って沈黙が続いているときは目が泳ぎますから。

 

ー 石井さんには何もかも見透かされているようで怖いです(笑)

目を見ましょう(笑)
みんなそうですけど、言葉よりも顔は正直ですよ。もちろん人の目を見るのって勇気いるじゃないですか。それでも私はインタビューの間はずっと見続けます。メモを取るためにうつむいたときにさりげなく言った言葉が、何より重要だった、なんてこともあるかもしれないんですよ。その目や表情次第でインタビュー記事の良し悪しが決まるし、どんどん素材が出てくるんですから。メモらずに、一語一句の会話を楽しめばいい。

 
ー あとから聞いて“こんなこと言っていたか!”って発見もありますもんね。

そうそうそう。取材のときに良いと思っていたことが、あとで音声を聞きなおしてみたら別のところのほうが強い発言だったなっていうことがあるので。

とにかく目を見続けるのは、1時間だけですから。終わったら、お互いに目をそらせばいいんです(笑)

あー、疲れたって言ってね(笑)

私のインタビューが怖いって一部で言われるのは、目を逸らさないからだと思います。じーっと見ますから。だからといって、特別な質問はしていないですよ。

 

ー インタビューに入る前に雰囲気を和ませるとか必要ですか?

アーティストによりますけど、必要な場合は和ませる気遣いはします。
もっと言うと、自分の作った作品が好きってわかった人じゃないと話す気にならない人もいますから。「今回の作品は、すごい良かったです」と当たり前のような褒め言葉を話した方が取材しやすい場合もあるし、それは相手次第じゃないかな。

 
ー いま話をしたことって、そのアーティストの人柄がわかっているときだと思うんです。初対面のアーティストを取材するとなったとき、どうされていますか?

それはもう出たとこ勝負ですよね。
「初めまして!」のときに、この場を楽しんでいるかどうかっていうのを見て判断しています。嫌そうじゃないなら普通に話しますし、緊張しているなら和ませます。余裕すぎるほどの態度なら意外な方面から質問を切り出したりもします。そのときに「自分は緊張してますから察してください……」という態度が一番ダメなんじゃないかな。
 
ー 人見知りは捨てなさいと。

そうですね。取材の1時間でいいから人見知りは捨てなさい、ですね。

あとは、なんとかなります(笑)

(おわり)

18ffe47ae091488567f5b7bacfbe9db732 【取材を終えて】
インタビューとは、人と人とのコミュニケーション。今回の僕の金言です。

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LAMP豊後大野 支配人・エディターのケンです。 日本人とのハーフの日本人です。オカルトと柔術が好きです。 好きな食べ物は、チャーハンです。 目標は、フリーメイソンに認定されることです。

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