ライター・編集者のみなさんこんにちは。エディターのせぶやです。
メディアが増えているからか、著作権を守れない記事の話をよく聞きます。
なかでも怖いのは、知らないうちに著作権を侵害してしまうこと。たとえば、LIGブログでライターの書いた記事が著作権を侵害していて、それに気付かず公開してしまうようなケース。
ところで、みんなどれくらい著作権について理解しているんでしょう。
- 突然ですがここで質問。YesかNoでお答えください。
-
- 2~3時間ぐらい考えてつけた記事のタイトルは著作権で保護される?
- 「そうだ 京都、行こう。」のコピーは著作権で保護される?
- 画像のトレースって著作権の侵害にあたらない?
・
・
・
すべて分かりましたか?
答えはすべてNOです。
「じゃあ、『そうだ 京都、行こう。』はどんどん使っていいの?」
これも答えはNO。使用すると著作権以外のところで訴えられる可能性があります。
もし著作権を侵害して訴えられたら、メディアも会社もライターも信用を失います。デメリットしかありません。
じつは1年ほど前、タイトルに使った表現を他社メディアに使われたことがあったので、その確認も含め、著作権に詳しい中澤弁護士にお話を伺ってきました。
弁護士法人戸田総合法律事務所 : 代表弁護士 中澤 佑一 IT法務,インターネット関連案件や知財案件を中心に活動。主著『「ブラック企業」と呼ばせない!労務管理・風評対策Q&A』,『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル』 |
ライターや編集者になったばかりの人はチェックですよー!!
著作権を侵害してしまうことで、懲役刑になることも!?
まず自身のウェブサイトで著作権を侵害してしまうことで4つのリスクが考えられます。
- 著作権を侵害してしまったときのリスク
-
- サイトがサーバーから削除される
- Googleのインデックスから削除される
- 損害賠償を支払う
- 懲役刑・罰金刑を課される
懲役刑もあるんですか?
法律では懲役刑も定められていますが、実際に懲役刑が課されるケースはそれほど多いわけではありません。逮捕されたという報道を見ても、海賊版のDVDを販売するとか、漫画や映画を違法にネットで配信して利益を得ていたなど、大規模に行っていた場合が多いようです。
コンテンツの1部を複製しても、著作権の侵害になるケースもある
まずコンテンツを完全に複製することをデッドコピーと言います。これは著作権の侵害になります。
少し改変したり、コンテンツの一部だけを複製したりした場合はどうなりますか?
少し内容を変えても著作権侵害で違法になることがあります。どこまでを複製とするかの線引きも案件により変わってくるので、違法かどうかでいうと、抽象的な言い方しかできません。
著作権侵害に当たるかは3段階で検討します。下の図をみてください。複製する対象を原著作物、コピーしたものを侵害物、などと呼びます。
さいごの著作権を否定する事情があればもちろん著作権の侵害にはなりません。
- ポイント
- 著作権を侵害しているかの判断は、3つの段階を経て判断される
記事タイトルやコピーに著作権は認められない!?
少し前にチームメンバーが青ヶ島を紹介する記事をつくりました。この記事のタイトルには、「選ばれしものだけが上陸可能」という言葉が入っています。このタイトルは時間をかけてつけたタイトルなんですが、この部分を記事の見出しに利用されたんです。これは著作権の侵害になりますか?
このケースでまず問題になるのが、原著作物が著作物として保護されるのかでしょう。「選ばれしものだけが上陸可能」は、著作物と言えるかは微妙なラインです。これを表現するために、どういう単語を選んでいるとか、どう情緒的に書かれているとか、そのあたりが保護される対象なんですけども。
著作権の侵害とは認められない……と。
難しいですね。恐らく認められないと思います。ひとつ裁判例を紹介しますが、スピードラーニングのキャッチフレーズが問題となった事件があります。
著作権が認められなかったキャッチコピー
これはスピードラーニング(株式会社エスプリライン)のキャッチフレーズの著作権を侵害しているとして、株式会社エスプリラインが訴えを起こした裁判です。2015年11月の知的財産高等裁判所の判決で、スピードラーニングの販売に用いられていたキャッチフレーズは著作物にはあたらないと判断されました。
- 被告キャッチフレーズ目録
- 音楽を聞くように英語を流して聞くだけ 英語がどんどん好きになる
- 音楽を聞くように英語を流して聞くことで上達 英語がどんどん好きになる
- ある日突然,英語が口から飛び出した!
- ある日,突然,口から英語が飛び出す! 以上
- 原告(スピードラーニング)キャッチフレーズ
- 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ 英語がどんどん好きになる
- ある日突然,英語が口から飛び出した!
- ある日突然,英語が口から飛び出した
※引用:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/017/085017_hanrei.pdf
ほとんどそのまま使われているようにも見えますが、著作権の侵害にあたらなかったんですね。
著作物か否かという第1段階で否定されてしまっているので、どんなに似ていても、デッドコピーであっても著作権侵害にはならないのです。著作物性があるかについては、ギリギリのラインなんですけどね。この判決と先ほどの「選ばれしものだけが上陸可能」を比較すると、やはり著作物性は認められず、著作権を侵害しているとも認めらないと思います。
文字数ではなく、一般的に使われやすい言葉だからでしょうか?
文字数もけっこう影響しますが、そのテーマを表現するときに、ほかに表現の仕方がなかったのかも見ています。
青ヶ島はなかなか上陸できないですよね。そう考えると、「選ばれしものだけが上陸可能」という表現に独自性は認められないと思います。
- ポイント
- 一般的に使われやすい表現は著作物として認められづらい
どうしてコピーライターのコピーは著作権で保護されないの?
一般的に使われやすい表現だと、コピーライターが書くコピーも著作物として認められないことの方が多いです。
え! 認められないんですか!?
コピーだとどうしても短くなってしまうので……。著作物として著作権を認めるというのは、その表現を作者に独占させる効果なんです。これを認めてしまうと、日常的に使われそうな表現も使っちゃいけないことになる。
そうなると、著作物として認めるには、かなり個性が発揮された表現で、通常はある程度の文量が必要になっちゃいますよね。
- ポイント
- 一般的な表現で使われやすく、文字数も少ないコピーは、著作物として認められないことが多い
「そうだ 京都、行こう。」は使い放題!?
ひとつ例をだすと、「そうだ 京都、行こう。」ってコピーがありますよね。これも著作物にはならないでしょう。複製しても著作権法としては違法ではありません。
おおお……。では誰でも自由に使ってもいいのでしょうか?
それはダメです。あくまでも著作物として認められていないだけで、使用して商売を取り組むとなると、不正競争防止法などその他の法律の問題があります。
不正競争とは:
他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
不正競争防止法第一章第二条より引用
む、難しい……(笑)。
たとえば、「そうだ 京都、行こう。」って書いてあれば、普通はJRの広告だと思いますよね。
それがJRと違う会社の広告だったら、消費者がJRと勘違いしてお金を支払ってしまう。すると勝手にコピーを使った会社は、JRの知名度を利用して利益を得ることになります。
紛らわしい手法を用いて消費者を惑わし、不当に利益を稼ぐのが不当競争という理解でよいでしょうか?
そうですね。だいたいあっています。
- ポイント
- コピーは著作物ではない。しかし使用すれば不正競争で違法とされる可能性がある
画像のトレースも危険!知らないうちに著作権の侵害に!?
最近怖いなと思うのが画像の扱い方です。ネット上の画像を勝手に使用する場合や、素材集から引っ張ってきている場合でもライセンス表記など条件を守っていないケース。これのトラブルが非常に増えていますね。
それバイラルメディアやキュレーションメディアでよく見ますね。
画像といえば、2チャンネルやネットでトレースが問題になることがあるんですが、トレースは著作権の侵害になるんでしょうか?
著作権侵害になることが多いですね。
10年以上前ですが、「みずみずしいスイカ事件(※)」という事件があったんです。その名の通りみずみずしいスイカを撮影した写真ですが、これと似たような構図で撮影した写真が、著作権を侵害していると。
※参考:シェアしたくなる法律『相談所平成12年に発生した「みずみずしいスイカ写真事件」ってどんな事件?』
※引用:タウンページ・キャラクター事件 みずみずしいスイカ 事件
似ていると言えば似ている気もします。どういう判決になったんでしょうか?
このみずみずしいスイカ事件は、構図などあらゆる要素を考慮した結果、著作物として認められ、著作権侵害だという判決になりました。ただ、このあたりは著作権侵害になるかとてもむずかしく、裁判所でも判断分かれることが多いんです。
このみずみずしいスイカは、構図の類似性が認められたんですね。判断が難しいとはいえ、何気なくトレースしてしまったら大変なことに……。
そうですね。トレースも著作権を侵害する可能性があるので、トレースして作成した画像をウェブサイトで使用するなどは絶対やらないでください。
- ポイント
- 判断は難しいが、写真や画像のトレースも著作権の侵害にあたることがある
自社のコンテンツが盗用されたときの戦い方は?
万が一、自社のコンテンツが複製されたらどう戦えばいいでしょうか?
どこまでやるかですが、損害賠償請求までやるのがいちばん強い対応で、再発の防止にもつながると思います。ただ費用も時間もかかってしまうので、損害賠償請求をしないのであれば削除依頼をサーバーに出すとか、Googleに削除依頼をだすのが一般的です。
Googleに削除依頼を出すとインデックスから消えるんですか?
そうです。アメリカの法律が著作権にどんどん厳しくなっていて、著作権を侵害しているコンテンツがあればデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づいて検索インデックスから削除してくれます。そのフォームがこちらにありますので、複製したコンテンツが見つかったらここから申請するとよいでしょう。消されると検索結果に影響が出るので相手にとってはかなりのペナルティですね。
損害賠償請求をする場合になにか気をつけるべきことはありますか?
損害賠償請求をする場合、著作権者が戦わなくてはいけないので、外部のライターを使っているなら注意が必要です。書いた記事の著作権をライターが持つのか、編集部側に譲渡されているかで、戦う人間が変わります。この辺りの権利関係の処理は最初にやっておかなければいけません。
たしかに外部のライターが書いた原稿の著作権ってふわふわしているところが多いと思います。編集部側で責任をもつなら、ライターと交わす契約書に「納品した原稿の著作権は編集部側に譲渡されます」みたいな記載が必要ということですね。
そうです。ただ、その契約書の書き方ですと著作権法27条28条との関係で問題が。このような細かい話もありますので、著作権関係の契約書については専門家のアドバイスをもらっておいた方が安全です。
- ポイント
- 自社のコンテンツが複製されたら、まずはサーバーやGoogleに削除依頼をだす。もし損害賠償請求するつもりなら、該当するコンテンツの著作権者を確認しよう
まとめ:編集者は、会社やライターを守るためにも著作権を知るべき
中澤弁護士から著作権についてお話を伺いましたが、ぼく自身もライターから複製したコンテンツをもらったことがあります。そのときは別の編集者が気づいて公開することはありませんでしたが、誰も気づかなかったら、いまごろは裁判中だったかもしれません。
僕は運が良かったのですが、訴えられていたらもう手遅れ。自分自身、会社、メディア、ライター、クライアントの信用は無くなるところでした。
今でも某バイラルメディアや某キュレーションメディアのコンテンツ盗用問題、引用の範疇を超えた引用(引用とは言わない)はよく耳にします。これは100%編集部の責任です。ライターが多すぎて教育も管理も行き届いていないのでしょうが、著作権を違反したコンテンツは自分たちやライターたちの首を締めるだけです。
自分たちの身を守るためにも、著作権についてもう一度勉強したいですね。
著作権侵害対策サービスの決定版『Shinobi(シノビ)ファインダー』
さいごに紹介するShinobiファインダーは、重複されたコンテンツをネットから探せるツールです。URLを入力すると、10営業日ほどで重複されたコンテンツをピックアップしてくれます。重複と判断されたコンテンツは、重複している文字数やメディアごとにソートできます。
この画像は、LIGブログの記事のURLを使い、重複したコンテンツをチェックした結果の一部です。表示されているメディアは、LIGブログの記事を配信しているメディアなので重複ではありません。外部の配信先など、検索結果に表示させたくないメディアは、あらかじめ検索結果から外したり、ラベルをつけて管理できたりします。シンプルなUIなので、使い方は非常にかんたんです。
- Shinobiファインダーに関するお問い合わせ
-
会社名 : CROCO株式会社
担当 : 河島・坂本
電話 : 03-4405-9236
URL :https://finder.biz-samurai.com/
お問い合わせフォーム :
実際にShinobiファインダーを使ってみて、無断転載されたコンテンツがひとつ見つかりました。どこのメディアか公表しませんが、海外のメディアとだけ。
このツールは、たくさんのライターを抱えているようなCGM型のメディアや、更新本数が多いメディアに向いていると思います。たとえばCGM型のメディアでは、執筆するハードルが低く、たくさんの記事を更新できます。しかし増え過ぎたライターの管理や教育が問題になっています。
ライターへの教育が行き届かないのであれば、更新された記事を定期的にチェックしてはどうでしょうか。定期的にツールを使って重複されているかを確認する。万が一重複したコンテンツが見つかればすぐに取り下げます。
繰り返しますが、著作権を侵害する重複コンテンツは、企業にとってリスク以外のなにものでもありません。Shinobiファインダーは、健全なメディアであり続けるための対策にならないでしょうか。