ライターなら取材がうまくなろう!プロがまとめる取材のコツ10

イワタテ


ライターなら取材がうまくなろう!プロがまとめる取材のコツ10
(編集部注*2013年5月16日に公開された記事を再編集したものです。)

こんにちは。子煩悩ライターのイワタテです。

連日夜な夜な原稿と格闘していますが、2歳半の愛娘が隣で『ドラえもん6巻』を音読しています。どうやらパパと一緒に寝たいよアピールのようですが、自分の口では『パパと寝たいよぅ』と言わないところが、いじらしく愛らしい。

さて、自分で言うのも何ですが、僕は取材がウマイと言われます。文章がウマイは年に1回言われれば良い方ですが、取材がウマイは年に5回くらい言われます。そこで今回は調子に乗って、取材がウマくなる10のコツをご紹介したいと思います。

なお、取材といってもその対象は芸能人、文化人、学生……と様々ですが、今回は表記上、企業に所属する方へのインタビュー取材に統一させていただきました。

おそらく、ライター仕事で一番多いのは、企業取材だと思われるためです。他の取材対象がメインという方も、基本は同じですので、適時脳内変換してお読みください。

プロがまとめる取材のコツ10

取材のコツ1:徹底的に下調べ。決算短信まで読み倒す。

企業取材の前は、その企業のウェブサイトを全ページ、読み込みましょう。イワタテは新卒・中途採用ページや、決算短信にも目を通しますし、社名をググって世間の評判や、直近のニュース、過去の取材記事などもチェックします。
おそらく、ここで調べた情報はほとんど、取材現場では直接の話題としては出てこないでしょう。しかし、知っている、という事実が武器になります。情報を、知っていて使わないのと、知らないから使えないのとは、大きな違いなのです。

  • その企業が今、力を入れていることは何か。(トップページやニュースリリース。)
  • 自社のイメージをどう表現したいのか。(コーポレートカラーや社長メッセージ。)
  • 課題は何か。(決算短信や既存のウェブテキスト。)

こうした全体像をあらかじめ把握しておくことで、取材が単なる「情報収集」ではなく、「提案」のレベルにバージョンアップされることを、意識してみましょう。

取材のコツ2:取材の目的や質問案は事前共有を働きかける。

取材の目的や具体的な質問案、取材対象者のプロフィールは、事前に取材する側、される側の双方で共有しておきましょう。
取材の時間は有限です。あらかじめ質問に対する回答を考えてきてもらえれば時間の短縮になりますし、取材対象者のことが少しでも多くわかっていれば、その分、当日くわしく掘り下げるべき話題が想定しやすくなります。
取材対象者が男性か女性かベテランか新人かもわからずに丸腰で現地入りすると、基礎情報の共有に一定の時間を割かなければなりません。結果、取材対象者に「浅い取材だった」、「他の取材のときもまったく同じこと話したよなぁ」……と不満を感じさせることになりかねないのです。

取材前の連絡のやりとりはライターではなく編集者が行うのが一般的かと思います。しかし、ライターも受け身ではなく自ら編集者に「取材対象者のプロフィールを共有してください」とか、「当日の質問項目を考えておきましたので、先方に投げておいてください」などといった風に働きかけていきましょう。

取材のコツ3:想定ゴールを用意しておく。

取材は生もの、いつどんなトラブルが起きるかわかりません。たとえば……

  • 予定していた取材時間が削られた。(60分の予定が10分に短縮されることも。)
  • 取材対象者が何の取材なのかそもそもわかってない。(よくあります。)
  • 取材対象者とどうしても話が噛み合わない。(相性もあります。)

加えて、取材対象者は必ずしも、トークのプロという訳ではありません。ほしい情報、言わせたいキーワードがどうしても引き出せない……これは想定内のリスクです。得られる情報が極端に少なかった場合に備えて、あらかじめ原稿の着地点、想定ゴールを脳内に設定してから取材に臨む習慣を身につけましょう。

大げさに言うと、取材そのものがキャンセルされたとしても一定以上のレベルの原稿を上げる自信。これを現場に持ち込めると、リスクへの対応力が向上するだけでなく、質問の内容もグッと深くなります。事前の情報収集は、想定ゴールの品質を高めるという意味でも、非常に重要です。

取材のコツ4:質問は必須項目3と寄り道7の割合で用意しておく。

とはいえ、わざわざ多数の関係者が時間を調整して取材の場をセッティングするからには取材の場でしか得られない、ライターの予想も及ばなかったような言葉を引き出したいところですね。そういった言葉は、お決まりの質問ではなかなか出てきません。お決まりの質問には、お決まりの答えしか返ってこないのです。

たとえば、同じ企業に所属する若手10人に、「会社のどんなところが好きですか?」と聞いたら、「オープンなところ、若手にチャンスを与えてくれるところ」……などと、同じ回答ばかり返ってきて書き分けに困る、ということがあります。
想定ゴールにたどり着くために最低限欠かせない必須の質問は確かに重要ですが、できれば、必須の質問は3割くらいの割合におさえて、残りの7割は取材対象者側が予想していなかった質問(みなさんオープンオープン言いますけど◯◯さんはそこまでオープンとは思ってないですよねぇ?とか)を投げるようにしましょう。不意をつかれた人間は、本心や素の言葉を思わず口にします。いわば、あらかじめこう言おうと取り繕っていたガードが崩れた状態になります。その人ならではの言葉が出てくるのは、そこからです。

編集者や先方担当者があらかじめ用意してくれる質問票は、必須質問である場合がほとんどです。想定ゴールを超える原稿を書きたいのであれば、取材対象者を良い意味でオモシロがるための予想外な質問をライター独自に用意しておきましょう。

取材のコツ5:取材時間の1時間前には現地に到着する。

僕には取材の1時間前には現地に到着して、近くの喫茶店に入る習慣があります。

落ち着いた気持ちでコーヒーを読みながら取材の資料や質問リストを眺めていると、その日の取材の流れが自然と脳内にシミュレーションされます。これをやっておくと、取材は本当にスムーズ。多少のトラブルにも動じません。セットで行われる写真撮影のバリエーション、構図などにも頭を巡らすと、成功イメージがどんどん膨らんでいきます。

取材時間1時間前という、程よい緊張感が良いのだと思います。オフィスや移動中の電車で資料を読んでも、なかなかこうはいきません。

集合時間ギリギリに慌てて現地入りしているライターの方は、ぜひ試してみてください。取材のデキが目に見えて違ってきます。もちろん、交通機関に多少の遅延があっても、遅刻の心配はありません。

取材のコツ6:取材メモはとらない。

ライターには、手書きメモ派と録音派がいます。手書きメモ派は、一応録音もするけど、後でテープ起こしするのが手間だからほとんど手書きのメモだけで原稿を書くよ。と言います。

確かに、取材時間の2倍の時間がかかると言われるテープ起こしの作業は面倒です。しかし、僕は断然、録音派です。以前は手書きメモ派でしたが、現在、取材中にメモをとることはほとんどありません。なぜなら、取材中のメモという行為には、結構なリスクがあると気づいたからです。

まず、メモを書く早さより、取材対象者が話す早さの方が早いこと。(どんなに早く書いても!)メモが遅れると、取材対象者はライターが手を止めるのを待つために話を休止します。メモのたびに会話のテンポが乱れ、たがいに「で、何の話だっけ?」と流れを見失うこともしばしばでした。

そうすると手書き派は、極力、会話を停滞させないために単語ベースでメモをとることになります。が、単語ベースのメモは、後から読んでみて、要領を得ない場合がほとんどです。文脈がわかりませんし、その取材対象者ならではの言葉の調子、クセが、読み取れません。なぜそれをメモしたのか、思い出せないことさえあります。記憶に頼ると、どうしても誤解や脚色が増えていきます。

何より、取材対象者と目を合わせて会話することができません。限られた時間の中で取材対象者の本質を探ろうという取材で、コミュニケーションの基本中の基本を捨てるのは相当なリスクです。

メモをとるのは絶対ダメ!とは言いませんが、メモをとる、という行為がリスキーであることも理解した上で、メモをとってほしいと思います。

取材のコツ7:取材メモを有効活用する。

いやいや、取材メモはとらないと言ったばかりなのに、お前は一体何なんだ?と怒られそうですが、取材メモの有効な使い方、というものも存在します。

ひとつは、会話を盛り上げるためのメモ。ライターがなるほど!と強く相槌を打ちながら熱心にメモをとり出すと、取材対象者はとてもイカスことを言っているような良い気分になってついつい口が滑るようです。特にくわしく掘り下げたい、重要度の高い質問をする際などは、この技はとても有効です。なんなら、「今からめっちゃメモ取りますよ!」と宣言するのも良いと思います。

もうひとつは、取材中に新たに浮かんだ質問を忘れないためのメモ。会話が盛り上がって脱線していくと、「事前に想定していなかったけれど実は重要度の高そうな質問」が見つかったりもします。これをメモっておかないと後になって「アレ、何か大切なことを聞こうとしてたな、なんだっけ」とパニクります。気まずい沈黙を流さないためにも、質問メモは大切です。

取材のコツ8:取材対象者を楽しませる。あわよくば友だちになる。

参加してくれた相手(取材対象者)や、同席者(先方の担当者や編集者)を楽しませるのも、ライターの仕事の一部です。
原稿さえ良ければ……と淡々とした取材に終始するライターもいますが、経験上、取材現場が盛り上がったときの原稿は、取材対象者の満足度が全然違います。ノーチェックで原稿が通る確率も段違いです。

なぜなら、盛り上がった取材現場では、取材対象者が饒舌になるので、他のライターでは出てこなかったような重要な情報が引き出しやすくなるから。また、その様子を見て、先方担当者や編集者も安心してくれるからです。

参加している面々が気分よく過ごすと、一緒に何かをつくっているという一体感、チーム感が湧き上がってきます。こうなると、多少のムリも通りますし、多少のミスも怒られません。僕は取材中、同席者にもよく声をかけますし、取材対象者が固いと感じれば、昨晩の夕御飯の話を5分も10分も続けたりします。

取材現場に集まった面々を、その場限りの関係と割り切るのは得策ではありません。同じ目的を達成する仲間。協力し合う関係。あわよくば、このライターと一緒に飲みに行きたい。そう思わせた取材では、その後のやりとりがスムーズ。トラブルも激減します。

取材のコツ9:交通整理しながら取材進行する。

取材は情報を引き出す場であると同時に、使う情報と使わない情報を整理する場でもあります。重要度の低い話題を長引かせても時間のムダ。随時、取材対象者や先方担当者に、「この情報、書いても良いですか?」、「御社がプッシュするとしたらこの部分ですよね?」と確認をとりながら、取材を進行させましょう。

脱線が不必要に長引いたときは「本筋に戻しましょう」と言うべきですし、キメゼリフが期待はずれだったら「もう一度お願いします、他の方には言えない表現で」と要求すべきです。反対に、相手方にどうしても文章に起こしてほしい情報があれば、それもフォローしておくのが親切でしょう。

取材現場で情報の交通整理ができれば、同席者の間で原稿の完成イメージはかなり近いものになります。そうすると、提出した原稿がNGと判断される可能性も最小限に抑えられます。ハッキリと、トラブルの確率が減ります。

良いものをつくりたいという共通認識さえあれば、ライター側から何かを要求することは少しも失礼なことではありません。

取材のコツ10:脚色の許可を得る。

取材対象者がどうしても口ベタで、思うような情報を引き出せない場合もあります。そんなときは、ライターが推測して、提案するしかありません。

「先ほど◯◯と仰いましたが、◯◯さんが◯◯という行動をとって◯◯に導いたのですね?」という具合です。

イエスかノーかで答えてもらえれば原稿が成立するように導くのも、想定ゴールを誰よりも具体的にイメージしているはずのライターの仕事です。あらかじめ想定していたゴールが正しいかどうか、間違っているとしたらどこをどう直せば良いか。その答え合わせをすることは、どんなに口ベタな取材対象者でも可能です。

取材の終わりに必ず僕は、決まり文句として「ちょっと脚色が入るかもしれません。イケメンになりすぎたらゴメンナサイ!」と断りを入れることにしています。

もちろん、嘘をでっちあげて好き勝手に書くということではありません。言葉の前後を入れ替えたり、語尾を調整したり、ほんの少し口調を勇ましくしたり。ライターのちょっとした一手間で、取材対象者の魅力がグッと増幅しますよと、そのことのお約束というのが建前で……。本当に脚色を入れないと、どうにもこうにも原稿が書けないという状況もあり得ます。

上手に話せなかった取材対象者の方も、信頼関係を築くことができていると、ほとんどの方が「イイ感じにお願いします」とか「モテちゃうな」なんて、笑ってくださいます。

まとめ

取材は、スポーツの試合のようなものだとよく思います。

試合時間は60分、真剣勝負です。

万全の準備で会場に入って、相手の動きを見極めて、スキを見せたら攻めこんで、針の穴を通すような鋭いパスを通して……1試合が終わる頃にはクタクタです。想定通りの結果が出ることもありますし、どうも噛み合わずにズルズル負けた、という心境で終わることもあります。

それでも、自分の中にここで紹介した「コツ」のようなものがあれば、向上すると思うんですね。今回はこれができた、次回はこれができるようになろう。つぎは勝とう。その繰り返しで。
逆に、こうした基準がないまま、ぼんやりと取材をしても全然疲れません。

このコラムが、取材力向上の参考になると幸いです。

マジメなことを書きすぎて疲れたので、今夜はゆっくり愛娘と一緒に寝たいと思います。
明日も愛娘と一緒に寝たいです。
いつまで一緒に寝られるかな……。

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