【INTERVIEWS】vol.5 ピースオブケイク 代表取締役CEO 加藤 貞顕さん(後編)

せぶや


【INTERVIEWS】vol.5 ピースオブケイク 代表取締役CEO 加藤 貞顕さん(後編)

株式会社ピースオブケイクの代表取締役CEO 加藤 貞顕氏にインタビューするこの企画。後編は理想的なデジタルコンテンツと今後のメディアについて。

DMMがデジタルコンテンツ究極の理想型

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― cakesもnoteもどういう世界観でやっていきたいのかを教えていただけますか?

加藤
社内でよく、やっぱりDMMってすごいねという話をしてるんです。

― え、DMMですか?

加藤
DMMは、デジタルコンテンツ販売の最終型に近いんじゃないかと思うんです。
インターネットの黎明期から、課金の仕組みをいろんな人たちが始めた。で、最初売れる物ってやっぱりアダルトなもので、ものすごい数のサイトができては消えていって、いろんな合従連衡があって、最後にあそこに行き着いたんです。

― 行き着いた先……。

加藤
DMMの課金の仕組みってやっぱり相当合理的なものだなと思っていて、まず、あらゆる種類の課金があるんです。まず無料があって、ワンショットで新作を売る仕組みもあるし、従量課金も継続課金もある。継続課金でも、ジャンルで切る継続課金もあればレーベルで切る継続課金もある。

― そっか。レーベルでも切れるんですね。

加藤
最初、cakesをつくるときに、どういうふうに設計をしたらいいかなと話をして、「ちょっと待って。DMMはどうなってたっけ?」とかいって、DMMを開いたりしてました。

― 課金の仕組みが競争力になるんですね。

加藤
なりますね。あと、AVだけでなくて、音楽でもアニメでもファッションでもなんでもそうなんですけど、人の趣味って、ものすごく細かく分かれるじゃないですか? みんな少しずつ好きなものが違う。ネットになってさらにそれが加速している。

― はい。

加藤
つまり、人の素直な欲求を解放するとそうなるんだろうなと思っていて。アダルトコンテンツの20年くらいかけた最終型がDMMで、それはきっと正しいんだろうなと思ってますね。
それと、さっき本人で宣伝するのが一番パワーがあるという話をしましたけど、やっぱりメディアも個人や作品を中心に人を集めるようになっていく。そうなったときに、どういう仕組みが必要なのかを考えていたんです。cakesは一見雑誌みたいな集合的に課金する形態ですが、あくまでひとつの課金形態だと思っています。noteではワンショット課金と継続課金を採用してますし。やっぱりいろいろあったほうがいいですよ。

― なるほど。

加藤
cakesだと、内容の構成も考えてるところがあって、まずメディアにカラーがないんですよね。これはあえてやっています。いろんなコンテンツがあり、それぞれがとがっていればいいんだろうなと。ビジネス系しか読まない人もいて、カルチャー系しか読まない人もいて、腐女子系しか読まない人もいる。データを見ると、だいたい1人2〜3種類ぐらい読んでいます。

― 読んでるんですね。

加藤
僕らはユーザーのクラスター分析をしているんですが、だいたいそういう読み方をされています。そういうところを考えつつ、こういう設計にしてるんです。

― 加藤さん的には作るより、広げるとか場所を作る思想が強いんですか?

加藤
そうですね。編集者といっても、ひたすら作家の横にいて作り上げる人もいるし、マーケティング的な側面が強い人もいる。僕はどっちかというと後者かもしれないですね。

― 心が折れそうになったときあります?

加藤
もっと気軽に150円払って欲しいです(笑)。

― ははははは(笑)。立ち上げから一番大変だったことってなんですか?

加藤
最初は何もない状態で、色々な人たちに書いてもらう必要があるので大変でしたね。何十人にも会って話をしました。

― どうやって口説いたんですか?

加藤
いや、普通に説明するだけですよ(笑)。著者さんに関して言うと、普通にこういうこと始めようと思うんで原稿書いてくれませんか? と、会って一人ずつ言いました。いつもやってる仕事ではあるんですけど、なにしろ数が多かったので、さすがに大変でしたね。

― いまクリエイターの数は累計で500人以上いますよね? ブレイクスルーのタイミングとかありましたか?

加藤
いやあ、どうなんでしょうね。ただ、cakesは版元さんがコンテンツを出す場として使ってくれるようにしようと思って始めたんです。
最初は古巣のアスキーやダイヤモンド社から始まって、角川さん・講談社さんとかがコンテンツをだしてくれるようになって、そうなると自分たちのコンテンツだけじゃなくなるじゃないですか?

― いつぐらいからですか?

加藤
最初から、こういうこと始めるんで協力してくれないかと話をしていたんです。だからそれはわりとすぐでしたね。とてもありがたかったです。いまは50社以上の出版社の方々に使っていただいてます。

パブリッシャーとプラットフォームの両面を合わせもつことはできるのか

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― 個人的な質問になっちゃうんですけど、少し前にパブリッシャーとプラットフォームの両面を持つのが今後のメディアに必要だ。みたいなこと言われていたじゃないですか? それについてどう思いますか?

加藤
いや、正しいと思いますよ。でも、それってけっこう大変なんですよね。コンテンツが得意なところはプラットフォームが苦手だったりしますし。逆もそうだし。

― パブリッシャーとプラットフォームは両面必要だっていうことですよね。

加藤
両方をひとつの事業体でできている所って本当に希有で、日本だとドワンゴと任天堂ぐらいですよね。任天堂はプラットフォームであると同時に最強のコンテンツ配信元でもあるという。

新しいプラットフォームを作っていくときに、そのなかで最適なコンテンツを作れるのはプラットフォームを作った人たちだと思うんです。少なくとも最初は。

だから任天堂は、一番最初は純正のアプリケーションがまず出て、それをまわりのベンダーとかが見て学んで作るようになる。3〜5年くらいかけて、そのプラットフォームの限界を出し尽くしたようなアプリケーションが出る流れがゲームだと起きてるんですよね。そこで市場が飽和してその次の業態にうつる。

noteをクリエイターの核にしたい

― 正直cakesからnoteが出たのって意外だったんです。あれってどういう関わりがあったんですか?

加藤
さっきのDMMの話が関係しているんですけど、いろんな課金がいろんな形態でできるのがいいだろうと思っています。

cakesはまとまったコンテンツ全体に集合的に課金していく場所で、雑誌に使いですよね。それで、集まったお金は、見られた分に応じてクリエイターに配分する仕組みになっています。

ただクリエイター単位でコンテンツを配信して、それで課金する仕組みも当然必要になりますよね。それがnoteです。さきほどcakesは雑誌に近いと言いましたが、noteは本に近いものと思っています。

― cakesは雑誌でnoteは本。

加藤
言い換えると、個人のメディアということですね。cakesのクリエイターページには、著者の名前を入れると、著者のプロフィールと、著者のコンテンツが出てきますが、noteでやっていることを、最初はここでやろうかと思ってたんです。でも、選べれたクリエイターだけじゃなくて、プロもアマも区別なく、だれでもコンテンツを発表できるほうがもっといいなと思って、別々のサービスにしました。

とにかくやりたいことは、ネットにクリエイターの本拠地となる場所をつくる、ということなんですよね。

― ネットに本拠地。

加藤
はい。いま、ものを作って発表するひとはみんな、今すごく面倒なことになっていますよね?

― いろんなアカウント持ってますからね。

加藤
Twitterやって、公式Webサイトやって、ブログやって、Facebookページやって、Facebookの個人アカウントもやって、Instagramもやって、モノが出たらAmazonで売って……でも、どこにも核がないんです。

― その核になるためにやっているわけですね。

ビジョンとマーケティング

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― 紙は先がないからWebに移っていく話がありましたけど、そこでもう一回cakesさんで紙の続きを出そうとしているじゃないですか。それはどうしてですか?

加藤
先がないというのはちょっと言い過ぎですよね。先細ってはいるんですが、まだ市場としては大きい場所なんです。

僕らのやることはコンテンツを広げることなので、クリエイターが一番儲かるのが本ならば、Webでもやるし本でもやります。

― 雑誌からデジタルに移っていく中で、出版社とWebのコンテンツメーカーってどういうふうに付き合うべきなんでしょうか。

加藤
いま紙での一番の課題は雑誌ですよね。紙の雑誌はいつまで作り続けられるのかというのは、かなり課題感がある状態です。

少し前に週刊アスキーもデジタル化しましたけど、デジタル化の流れはこれから数年で急速にすすみます。

出版社はWebサイトを作ったり雑誌を作ったりしていますが、いまはまだ売りたい本や雑誌の宣伝という目的で作っています。だけどこれからは、“サイトを作る、運用する、サイトを広げる、ビジネスにする”といった部分を、みんながやらなきゃいけなくなるはずなんですよ。

― 今までやれてこれなかったと……。

加藤
今までもウェブなどデジタルはやってたんですよ。でも、そこが本業ではなかったんですよね。あくまでもメインの用途は宣伝で。でもこれからは、もっと攻める必要がある。ソーシャルの活用はもちろんだし、スマートニュースのような外部のサイトと連携も必要だし、広告をいれたり、ネイティブアドを作ったり、物販をしたり、そして課金もあるでしょう。

主戦場でやるとしたら、宣伝のためではなく、設ける場、ビジネスとしてやらなきゃいけなくなりますよね。

― それヘビーですよね。今までその土壌がないわけですから。

加藤
我々はもう何年もそこをやってきているので、システムやノウハウは提供できるんじゃないかと思っています。事業としても、法人向けのメディアビジネスの運営サポートはやっていきます。

― 最後にLIGに対しての意見とか感想っていうか。

加藤
え、とくに意見とかないんですけど(笑)、前から気になっていたことがひとつあって、社長の岩上さんの笑顔がすごいなと。

写真撮るときだけ笑顔なのかなって思っていたんですが、お会いしてみたら、本当にずっと笑顔なんですね。

注目してたんですよ。この人の笑顔は本物なのかって(笑)。

いや、LIGのメディアすごいと思いますよ。これからも楽しみにしてます。

― ありがとうございます。本日はお忙しい中ありがとうございました!

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