こんにちは、ジョンです。
突然ですが放送作家・脚本家の小山薫堂さんという方をご存じでしょうか。テレビ番組『料理の鉄人』や映画『おくりびと』などを生み出した、とにかくすごい方。プロジェクトの仕掛け人としても有名で、熊本県のPRキャラクター「くまモン」の生みの親でもあります。
その小山さんが主宰の、プランニング・プロデュースを手がける会社「オレンジ・アンド・パートナーズ」には、ぼくの親友が勤めています。
最近会ってないなぁと思い久々に連絡してみたら、後日オフィスにお邪魔させてもらうことになりました(実は行ってみたかった)。
昔話もしつつ、お互いの近況報告をしていたのですが、彼からすごくためになる話を聞かせてもらったので、ぜひブログで紹介させてほしい!とお願いをしたところ、快くオッケーをいただきました。
さっそく本題にいきたいところですが、その前に少しだけ。
親友・林 潤一郎くんについて
まずは親友について紹介をさせてください。
(林 潤一郎 / オレンジ・アンド・パートナーズ所属、クリエイティブディレクター)
かつての職場の同僚で、求人雑誌の小さなスペースのキャッチコピーで天下を取ろうとお互い息巻き、青臭い時代をともに過ごしました。林くんは、空いた時間はいつでも「コピー年鑑」を写経するほどの“コピーバカ”です。
誰よりも言葉に情熱を傾けていた彼はすぐに頭角を現し、日本で特に権威のある賞を獲得しました。某警備会社の、警備員募集のコピーです。
発見のあるコピーですよね。
受賞の知らせが届いた日、たしか彼は過労による自律神経失調症で入院をしていました。ライバルの大躍進に不思議と悔しさはなく、心から受賞を喜べたことを今でも覚えています。きっと、神様が処方箋を出してくれたんでしょうね。
そしてお互い別々の道を歩むことになるのですが、彼の転職エピソードもなかなか面白くて。
小山薫堂さんの著書を読んで元々ファンだったらしく、いきなり履歴書を送り付けて、熱いPR文を添えて、なんとか面接にこぎ着けたそうです。
「言葉も宗教も文化も関係ない、世界で楽しまれるテレビ番組の企画を作りなさい」という宿題が出て、一週間でなんと100案も作ったとか。
他にも胸が熱くなるような運命的な話もあったりするのですが、それはぜひ、彼に仕事の依頼をして、お会いした際にでも聞いてあげてください。
ファンをつくるプランニング
「企画の原点は誕生日プレゼントである」
こちらは小山さんの流儀だそうです。
社内ではいつも、スタッフの誕生日には皆が企画をしてサプライズを行うのだそう。そんなDNAが、実際の仕事ではどのように反映されているのでしょうか。
ウチの場合、瞬間的に話題になって、溶けて無くなるようなプランニングはご法度で。「クライアントの大切なお金を預かって何をする?」っていうときに、ぼくらはクライアントのファンをつくることを大事にしているから、そのときしか話題にならないものよりも、ずっと残っていくものを目指したい。
小山は「もったいない」が口癖なんだけど、まさにそういうことだと思ってて。あと、「一人の熱狂的なファンをつくれ」とも言われる。誰が喜ぶかをイメージできないのに、企画なんかするなって。
一人の熱狂的なファンは、たとえキャンペーンが終わったとしても周囲に勧めてくれたりするじゃない。そこから広がって、残っていくんだと思う。
たしかにこういう視点で仕事をすると、クライアントとは長く良好なお付き合いができるような気がします。
毎年コンペでパートナーを変えることは、違う大人が子ども育てるようなものですからね。それじゃあ、子どもは不幸ですもんね。
ファンをつくる事例:グリコ「SANTA EXPRESS」
クリスマスにサンタの格好をしたバイク便がオフィスや自宅などにビスコを届けてくれる企画「SANTA EXPRESS」。
その裏側には、どんな意図が込められていたのでしょうか。
日本以外の国だと、クリスマスは感謝の日なんだって。
子どもがクリスマスの夜に枕元にサンタさんへ感謝の手紙と、ミルクとクッキー、ビスケットを置いて眠るっていう習慣があることを聞いてさ。
それ知らなくて、聞いたときにすごい素敵だなと思って。ビスコのブランドってこういうコミュニケーションがピッタリだなぁと。それにクリスマスって、チキンとケーキはあるけど、お菓子ってないでしょ? あったとしても、ぜんぶ長靴に詰め込まれちゃってる。だから、ビスコはこのポジションを狙っていきたかった。「クリスマスのお菓子といえばビスコ!」っていうポジションをね。
幸い、ウチの会社はグリーンランド国際サンタクロース協会ともつながりがあるから、このコネクションも活かさない手はないな、と思って。そんな背景があって考えた企画のテーマは「メリークリスマスのきっかけ」。「メリークリスマス」と同時にありがとうの気持ちを伝えるのって、すごくかわいいなと思って。
最近思ってるのが、画面や誌面を通しての見る・聞くだけじゃ人は動かないなってことで。今は何でも情報が手に入るけど、そこで終わっちゃってるような気がしていて。
「じゃあ本当にそのお店行ったの?」「じゃあそれ本当に試したの?」と聞かれると、実際に行動に移した人って少ないんじゃないかなぁ……と。
だから今は、体験させることがすごく大事だと思ってる。見る・聞くよりも、伝わる量が違うから。今回はイベント当日、集まってくれた人たちに伝票を書いてもらって、サンタのバイク便が届けに行ってくれる企画なんだけど、実は伝票の裏がクリスマスカードになっていて。
そこに普段は言えない感謝の気持ちを書いてもらうという流れで。TwitterもFacebookも盛り上がったし、広告換算でいうと6~7倍くらいあって。当然、1年やそこらで何とかなる話ではないから、クライアントと一緒になって、ずっとこのブランドを育てていきたい。
すでに次回の企画も始まってるから、楽しみにしててほしいと思います。
コピーを活かした「この指とまれ!」の企画
ナショナルクライアントとの取引も多いため、彼の手がけるコミュニケーションは予算も規模も大きめ。グラフィックやWeb、映像、イベントなど多岐に渡るので、多くの外部パートナーと協働していかなければなりません。
「林くんが企画をするときに大切にしてるのって何?」と、だいぶざっくりとした質問に、彼は丁寧に答えてくれました。
イベント会社のプロデューサーに「100人が動く企画つくってよ」って言われたことがあって。
「林さんがつくった企画が楽しくないと、みんな動かないよ」って。
たしかにそうなんだよね。プランニングとプロデュースが仕事だから、一人じゃ何も生まれなくて。いろんな人たちの協力があって、初めてかたちになっていく。ぼくはその起点として、みんなが「楽しそう!」とか「やりたい!」とか前のめりになる企画をしないといけない。もちろんクライアントも含めてね。
だからぼくのつくる企画は、「この指とまれ!」じゃないといけないんだなってことに気づいたときがあって。
「その企画書をつくるとき、コピーが活きてるなぁって思うことはある?」とぼく。
ある。それはすごく感じる。
企画書の冒頭ではいつも、どんな想いがぼくらの原点にあるのか、なぜこの企画に思いたったのかを、手紙みたいにしちゃう。100人が動くか動かないかは、ここで決まるといっても過言ではないんじゃないかな。
ぼく「言葉で100人を動かすコツって?」
ここで1人目の師匠(クリエイティブディレクター / コピーライターの山本高史さん)の教えが活きてくるんだけど、「受け手の言ってほしいことを言ってあげる」に尽きる。
受け手は自分にベネフィットがないと動かないから、自分のやりたいことと受け手のやりたいことの共感の接点を見つけて言葉にするようにしてて。
この基礎がなかったら、今の仕事は回ってないかもね。
・・・なにそれ超かっこいい。
この指とまれ!と思わせるために
そこでぼくが気になったのは、どのように「この指とまれ!」を考えているのか、です。
まずは自分がやってみたい!とか面白そう!とか思えないとダメだから、普段から探すようにしていて。
街を歩きながら、「これってもっとこうだったらいいのに」を考えるクセをつけて、どんどんストックするようにしてる。あと、大事なのは、こういう仕事の裏側とかをまったく知らない人に聞いてみること。「何それ面白くない」って言われたら、怒りを抑えながらボツにしたり(笑)
これのいいところは2つあって、一人の熱狂的なファンづくりのための尺度になることと、もう1つは説明を繰り返すうちにプレゼンスキルが自然と上がっていくこと。
前者は、ターゲットの生の声が聞ける。後者は、多くのスタッフに説明するときにかなり有効。スマホをいじりながら聞いてくる人とかもいるからね(笑)みんな、長い話はキライみたい。・・・いま、ふと思ったこと言っていい?
昔は企画って生み出す・作り出すってイメージだったんだけど、今は探し出す・見つけ出すのほうが近いかもれない。ベタだけど、モノづくりじゃなくてコトづくりなのかなって。
これからは体験も含めた、総合的なブランディングを手掛けていきたいな。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
規模も幅も大きい案件を手掛けているだけあって、さすがに視野が広いなぁと感心しきりの時間でした。SNSで彼の仕事ぶりはわかっていたつもりですが、やっぱり会って話すと深度がまったく違います。
まさに彼の言う「画面や誌面を通しての見る・聞く」だけではなく「体験する」なのかなぁと。今後、仕事をしていくうえでのヒントを得られたような気がしました。
みなさんも、「そういえばあの人元気かなぁ?」と思い出した人には、ぜひ会いに行くことをオススメします!
何かしらの発見があるはずです。
さいごに、林くん、オレンジ・アンド・パートナーズさん、素敵な時間をどうもありがとうございました^ ^
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