GOODTABLE鎌倉オープン
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2015.06.15

【INTERVIEWS】vol.1 btrax -Brandon K. Hillさん

のびすけ

今後のWeb制作業界の2つの可能性について

ーー今後、5年先などはWeb制作業界はどういう状況になっていくとお考えですか?

Brandon

2つの可能性があると思っています。
1つはデザインからソースコードが生成されるなどの色々なツールが出てきて、作業が自動化されるということ。現時点では精度はまだまだかもしれませんが、今後はそういった自動化が進み人間のやることは少なくなっていくと思います。

もう1つは、Webは先進国の人ではなく東南アジアの人たちが作るようになるということ。東南アジアの人たちがすごくWeb制作について勉強しているので、賃金の安い地域の方のスキルが上がってくることで、先進国の人が作るということがなくなると思います。日本で言ったら、都心と地方の関係がそうなっているのかもしれません。

都心→地方から、都心→東南アジアへ

Brandon

基本的に日本人は日本語しか話さないので、現時点では守られているという見方もあります。オフショアは基本的に英語なので、英語圏には東南アジアの人たちがどんどん入り込んできています。
最近は東南アジアの人たちが日本語を勉強してきているので、そういう人が増えてきたら都心から地方への発注よりも、都心から東南アジアへの発注という流れに変わっていくかもしれませんね。

アメリカには「ディレクター」が存在しない

ーーアメリカと日本における、仕事の進め方や組織の作り方の違いを教えていただきたいです。

Brandon

まずは、肩書きが違います。
例えば、日本出身のディレクターがbtraxに応募したときにWebのデザインをお願いしたことがありました。彼が作ってもらったデザインのピクセルがズレていたんですよ。そこで指摘をしたら、

Brandonさん:ディレクターなんでしょ? デザインできるよね?
ディレクター:俺デザインはできないですよ。
Brandonさん:え、ディレクターってデザインできるものじゃないの?
ディレクター:日本で言うWebディレクターって営業みたいな立ち位置なんですよ。
Brandonさん:え、そうなの?!
ディレクター:そうなんですよ?!

と言われて、すごく驚きました。アメリカでいうとデザインディレクターといえば、デザインを極めたプロなので、それを期待していたんです(笑)

Brandonさん:え、デザイナーが成長してディレクターになるんじゃないの?
ディレクター:“お客さんと話をして方向性を決めて、デザイナーにお願いするのがディレクター”で自分でデザインができるとは限らないんですよ。
Brandonさん:そうなんだ……。

と驚き、それで気づいたんですけど、日本で言う「ディレクター」や「SE」といった職種はアメリカで存在しないんです。日本でいうSEという職種がプログラムは書かないと聞いてびっくりしました。

アメリカでは手を動かす人に任される範囲が広い

Brandon

アメリカでは、デザイナー/エンジニア/プログラマと呼ばれる職種がカバーする範囲が非常に大きいです。方向性を決めたり、場合によってはビジネス的な部分まで関わってくるのがデザイナーであり、プロダクトを作るにあたっては、エンジニアがユーザのインタラクションやコンバージョン、グロースのことまで考えて仕事をするものです。
つまり、中間の職種の人がいないんです。

強いて言うならプロジェクトマネージャー(PM)ですが、PMは全体の進行のファシリテートをする人なので、デザインやプログラム関係なく全体のスケジューリングやコミュニケーションをまとめる場作りの人なんです。
そして、その綺麗に整った場でデザイナーやエンジニアが気持ち良く仕事をする感じです。プロデューサーという職種もほとんどありません。
現場主体と言うか、手を動かす人に任される範囲が広いんです。

日本の制作会社は営業センター?

Brandon

あるとしたらUXデザイナーやデザインディレクター、クリエイティブディレクター(CD)、アートディレクター(AD)という人が方向性を決めたりするんですが、 CDやADはデザインを極めた人がなるものなので、いくらでもデザインができる人たちなんです。
そういうところで組織形態が違うだろうなと思います。

CDやADも日本だと広告系の戦略やコンセプトを立てたりしつつ、デザインも考えたりするかもしれません。アメリカでももちろんやるんですが、アメリカだともっとデザインのコア部分までCDやADが関わってきます。必要であれば絵も描くしデザインもするので、現場に近い感じがします。
だからか、日本の制作会社には営業センターみたいな雰囲気を感じます。
中間の職種の人はお客さんとのリレーションシップを中心にコアのビジネスやコンセプトの話を進めて、話が詰まっていたらデザイナーは作業を進めるだけ、みたいな感じですよね。トラブルが起きたら、トラブル対応の別の人がまた話をまとめる、みたいな。

デザイナーにはコミュニケーション能力が必要

Brandon

アメリカなら、デザイナーがデザインもプレゼン資料も自分で作り、自分でお客さんにプレゼンして納得させる。日本のように、間に人(ディレクター)が入っていないので透明性が高いです。
btraxでもデザイナーはプレゼン能力の高さや作ったものをきちんと説明できるかが重要です。デザイナーはプレゼンやコミュニケーション能力がないと、どんなにデザインができてもダメなんです。

日本ではアートとデザインが混合されがち

Brandon

日本からもデザイナーの応募がくるので、スキルを見ていると、デザインをゴリゴリやったことがない人か、イラストレーターのどちらかに振れてるケースが多いです。
そこまでデザインをゴリゴリやったことがないような人というのは、広告系のクリエイティブディレクターみたいなことやっていた人ですね。イラストレーターというのも、絵やキャラクターを描ける人でデザインじゃないんです。
ですから、いわゆる総合的なビジネスを考えて設計したり、ユーザの導線を考えたりできるUI/UXデザイナーと呼ばれるような人からの応募は日本からはきていません。

日本ではデザインの教育がうまくできていない

Brandon

そもそも、日本ではデザインの教育がうまくできていないと思います。
デザイナーで応募してくる日本人の多くが美術大学出身の方なんですが、美術(アート)とデザインは全く逆です。
自己表現を自由にやるのがアート、制限された中で問題解決するのがデザイン。この2つは物の考え方が真逆なので、本当はアーティストになりたいけど、アーティストになれないからデザイナーをやっているという人は、そもそもデザイナーとして厳しいと思います。

最初からデザインしかやりたくない人なら問題ないんですが、本当はアートをやりたいという人がデザイナーになってしまうのは苦しいと思うんです。“僕はこれを表現したいんですよ”という気持ちがあっても、“仕事はデザインだから違うでしょ”ということになります。
つまり、デザイナーとして求められているんだから、あなたの表現ではなく目的を達成する方法をできるだけ多く出してくれということになります。

アートとデザインについては、アメリカだとちゃんと理解されている境目です。
大学でも美術部とデザイン部ははっきり分かれていて、考え方もやり方も仕事内容も求められることも全く違います。その混合が日本では結構あるなと感じました。そして、それが不幸を生んでる気がします。

デザインの手段としてアートを使う

Brandon

ちなみに、僕自身はデザインしか興味ないのでアートをやりたい人やアーティストとは全く話が合わないです(笑)
嫌いではないですけど、アートは仕事として関係ないと思っちゃいます。
デザインの参考にはなるけど、アート的な考え方とやり方は仕事には絶対に取り込まないようにしています。
でも日本では広告が多いので、アーティスティックな部分も求められがちですよね。そこで、また考え方が混合してしまうんだと思います。
デザインの手段としてアートを使うことはあるんですけど、アート主体になってしまうと、それはもうデザインとは全然違うものになってしまいます。