経営・労務担当者必見!育児休業制度を実施するときに確認したい6つのポイント

経営・労務担当者必見!育児休業制度を実施するときに確認したい6つのポイント

Mami Onishi

Mami Onishi

こんにちは。きゃしーです。

今日は「育児休業制度」を実際に会社が制度化するにあたっての実務ポイントをお話しいたします。

育児休業制度とは「子を養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業制度」のことをいいます。令和3年6月に法律が改正され、国や都道府県の助成金、奨励金も数多く用意され、女性のみならず男性の育児休業取得促進のための制度も充実してきています。

LIGでも現在、育休から復帰した社員、現在育休中の社員、これから育休を取得する社員がおりますが、令和3年10月には男性初の育休取得社員も誕生します。今や女性も男性も、育児に関わりながら仕事をするのが当たり前の世の中になってきていますね。

会社を経営する側も、法律がどのように整備され、そしてどのように社員のサポートをしたらいいのか、しっかり押さえておく必要があります。

ここでは、厚生労働省がサイトに用意している「育児・介護休業等に関する規則の規定例」をもとに、どのように育児に関する規定を整備したらいいのか、そのポイントをお話します。ぜひ参考にしてみてください。

就業規則がないのに社員から育児休業を求められたら?

育児休業制度は本来、就業規則に盛り込むべき制度です。就業規則は、「常時10人以上の労働者を使用する場合に作成・届出義務が生じるもの」です。

しかし、仮に就業規則の作成の義務がない会社であっても、育児休業はすべての事業所に対して義務化されているため、労働者から申し出があった場合、必ず取得させなければならない制度です。申し出があれば拒むことはできません。

就業規則があって、その就業規則の中に育児休業制度の記載がない場合でも同様です。育児休業制度の記載があるが、それが現在の法律を下回るような内容の場合も、現在施行されている法律が優先されます。

つまり、育児休業制度は会社に規定があるなしにかかわらず、従業員から申し出があった場合は取得させなければいけない、ということです。

しかし、育児休業はどんな場合であっても取得させなければいけないわけではありません。たとえば、一定範囲の有期契約労働者や、入社1年未満の労働者などを、育児休業の対象から除外する規定を作成することも可能です。

ただし、これも育児休業の規定が会社に整備されている場合に限ります

極端な例ですが、もし会社に育児休業規定がない状態で、入社数日の労働者から育児休業を申し出られた場合、会社はそれを拒むことはできません。それでは会社も困りますが、一緒に働く従業員からも不満の声があがるでしょう。

就業規則や育児休業規定をきちんと整備することは、一緒に働く従業員を守ると同時に、会社を守るためのものでもあるのです。

ここからは、実際に厚生労働省がサイトに用意している「育児・介護休業等に関する規則の規定例」をもとにお話しいたします。

育児休業の対象者の決め方

まずは育児休業の「対象者」の決め方です。ポイントは3つあります。

  1. 有期契約労働者のすべてを育児休業の対象とする例
  2. 法に基づき一定範囲の有期契約労働者を育児休業の対象から除外する例
  3. 法に基づき一定範囲の有期契約労働者と労使協定の締結により除外可能な者を除外する例

順番にお話しします。

ケース①-有期契約労働者のすべてを育児休業の対象とする例

例文
(育児休業の対象者)
1 育児のために休業することを希望する従業員(日雇従業員を除く)であって、1歳に満たない子と同居し、養育する者は、この規則に定めるところにより育児休業をすることができる。
引用元:育児・介護休業等に関する規則の規定例

この規定例は、正社員や契約社員、アルバイトなど、雇用形態にかかわらず申し出のあった社員すべてに対して育児休業を認める例です。

ケース②-法に基づき一定範囲の有期契約労働者を育児休業の対象から除外する例

例文
(育児休業の対象者)
1 育児のために休業することを希望する従業員(日雇従業員を除く)であって、1歳に満たない子と同居し、養育する者は、この規則に定めるところにより育児休業をすることができる。ただし、有期契約従業員にあっては、本条第2項に定める者に限り、育児休業をすることができる。
2 育児休業ができる有期契約従業員は、申出時点において、次のいずれにも該当する者とする。
イ 入社1年以上であること。
口 子が1歳6か月(本条第5項の申出にあっては2歳)に達する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。
引用元:育児・介護休業等に関する規則の規定例

この規定例は、入社してからの期間が浅かったり、育休中に契約期間が終わってしまう有期契約従業員を除外する規定となっています。

有期契約従業員とは、その名の通り、契約期間が定められた従業員のことです。具体的には、アルバイト、パートタイム、契約社員、嘱託、などと呼ばれています。

この場合呼び名は関係なく、契約期間が定められた従業員が上記イとロに該当した場合は育休対象から除外されることになります。

ケース③-法に基づき一定範囲の有期契約労働者と労使協定の締結により除外可能な者を除外する例

例文
(育児休業の対象者)
1 育児のために休業することを希望する従業員(日雇従業員を除く)であって、1歳に満たない子と同居し、養育する者は、この規則に定めるところにより育児休業をすることができる。ただし、有期契約従業員にあっては、申出時点において、次のいずれにも該当する者に限り育児休業をすることができる。
イ 入社1年以上であること。
ロ 子が1歳6か月(本条第5項の申出にあっては2歳)に達する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。
2 本条第1項、第3項、第4項、第5項にかかわらず、労使協定により除外された次の従業員からの休業の申出は拒むことができる。
一 入社1年未満の従業員
二 申出の日から1年(本条第4項及び第5項の申出にあっては6か月)以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
三 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
引用元:育児・介護休業等に関する規則の規定例

ケース③ではさらに「労使協定」の締結により除外可能な者の範囲が増えています。労使協定とは、労働者(社員)と使用者(会社)間で取り交わされる協定です。

会社に労働組合がある場合は労働組合と、労働組合がない場合は「従業員代表(労働者の過半数を代表する者)」と会社は労使協定を結びます。労使協定を結ぶことによって特別に、規定例一〜三を除外することが可能となります。

ただしこの労使協定を結べばもっといろいろな条件を付け加えることができるかといえばそうではなく、上記3つだけが特別に除外を認められています。

規定例一の「入社1年未満の従業員」とは正社員も含まれます。新卒から中途社員まで、入社1年未満の従業員はこの規定があると除外対象となります。

規定例三の「1週間の所定労働日数が2日以下の従業員」は無期契約のアルバイトも除外対象となります。

育休後も引き続き勤務する意志があることを取得対象の条件にすることはできるのか?

会社としては育休後も会社に復帰する意思があるのかないのか、いつ頃復帰を考えているのか、経営判断として重要な要素となります。育休中の穴を埋めるための人員確保、復帰のための準備、ポストの用意、復帰後の仕事環境の配慮など、それなりに負担がかかります。

しかし現実的には、要因はさまざまあれど、復帰せずそのまま退職となるケースも少なくありません。法的には、育児休業後の職場復帰については、取得対象者の条件にすることはできません

もちろん育児休業は、職場に復帰して勤務を継続することを予定しているものではありますが、それを取得時に強要することはできません。

育児休業の期間

例文
(育児休業の期間等)
1 育児休業の期間は、原則として、子が1歳に達するまで(略)を限度として育児休業申出書(社内様式1)に記載された期間とする。
(略)
3(略)子が1歳から1歳6か月に達するまで及び1歳6か月から2歳に達するまでの期間内で、それぞれ1回、育児休業終了予定日の繰り下げ変更を行うことができる。
引用元:育児・介護休業等に関する規則の規定例

育児休業の期間は、1歳、1歳半、2歳と3段階あります。

それぞれ保育所等に入所を希望していても入れない場合、または子供を養育する予定だった配偶者が、死亡、傷病、疾病、婚姻解消による別居、産前産後の期間中のいずれかの場合には、育児休業を延長することできます。

原則として事業主が育児休業期間を指定することはできません。従業員から保育園に入れないという証明を提出された場合は延長することになります。

子の看護休暇

子の看護休暇とは、労働者が子の看護を目的として休暇を取得できる制度です。子の看護休暇は労働者からの申し出があったときは拒むことができない制度のため、規定に加えておく必要があります。

ただし、子の看護休暇の有給・無給は、会社が自由に定めることができます。有給・無給の取り扱いについては就業規則への記載が必要となります。

労働者のすべてを対象とする例
(子の看護休暇)
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話をするために、又は当該子に予防接種や健康診断を受けさせるために、就業規則第◯条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき 10 日を限度として、子の看護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月 31 日までの期間とする。
2 子の看護休暇は、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる。
3 取得しようとする者は、原則として、子の看護休暇申出書(社内様式7)を事前に人事部労務課に申し出るものとする。
4 本制度の適用を受ける間の給与については、別途定める給与規定に基づく労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した額を支給する。
5 賞与については、その算定対象期間に本制度の適用を受ける期間がある場合においては、労務提供のなかった時間に対応する賞与は支給しない。
6 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間を通常の勤務をしているものとみなす。
引用元:育児・介護休業等に関する規則の規定例

子の看護休暇は2021年1月からは時間単位の取得が可能となりました。

規定のなかには月給のみならず、賞与や定期昇給などの算定についても記載があります。賞与や定期昇給の算定に入れるかなどは見落としがちですので規定しておくと良いでしょう。

規定例は無給とする場合ですが、たとえば上記のうち、3日だけ有給とするなど、会社は従業員有利な制度であれば自由に定めることができます。

所定外労働・時間外労働の制限

例文
(育児・介護のための所定外労働の制限)
1 3歳に満たない子を養育する従業員(日雇従業員を除く)が当該子を養育するため、又は要介護状態にある家族を介護する従業員(日雇従業員を除く)が当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。
引用元:育児・介護休業等に関する規則の規定例

例文
(育児・介護のための時間外労働の制限)
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員が当該子を養育するため又は要介護状態にある家族を介護する従業員が当該家族を介護するために請求した場合には、就業規則第◯条の規定及び時間外労働に関する協定にかかわらず、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、1か月について 24 時間、1年について 150 時間を超えて時間外労働をさせることはない。
引用元:育児・介護休業等に関する規則の規定例

「所定外労働」と「時間外労働」という言葉が出てきました。

この違いを簡単に説明すると、「会社が決めた労働時間」と、「法律で決まっている労働時間」のことです。所定労働は、会社が決めた労働時間のことです。法的には1日の労働時間は8時間と定められていて、これを法定労働といいます。

会社は法定労働の8時間を超えなければ1日の労働時間を自由に決めることができますので、たとえば1日の労働時間を7時間や7時間半にすることも可能です。

仮に1日の所定労働を7時間として、法定労働である8時間までの1時間が「所定外労働」、8時間を超えた労働時間を「時間外労働」といいます。

規定例を見ると、時間外労働については「1か月について24時間、1年について150時間を超えて時間外労働をさせることはない。」とありますので、会社は労働者から求められた場合は、これを超えて残業させることはできませんので注意が必要です。

深夜業の制限

例文
(育児・介護のための深夜業の制限)
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員が当該子を養育するため又は要介護状態にある家族を介護する従業員が当該家族を介護するために請求した場合には、就業規則第◯条の規定にかかわらず、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、午後 10 時から午前5時までの間(以下「深夜」という。)に労働させることはない。
引用元:育児・介護休業等に関する規則の規定例

深夜残業とは、午後10時から午前5時までの間に就労した時間をいいます。深夜残業代は、通常の賃金の50%が加算された割増賃金が支払われることになります。

従業員から求められた場合は深夜残業をさせることはできません

育児短時間勤務

育児短時間勤務は、3歳未満の子供がいる労働者の1日の所定労働時間を原則として6時間とすることが企業に義務付けられています。従業員からの申し出があった場合には拒むことはできません。

例文
(育児短時間勤務)
1 3歳に満たない子を養育する従業員は、申し出ることにより、就業規則第◯条の所定労働時間について、以下のように変更することができる。
所定労働時間を午前9時から午後4時まで(うち休憩時間は、午前 12 時から午後1時までの1時間とする。)の6時間とする(1歳に満たない子を育てる女性従業員は更に別途 30 分ずつ2回の育児時間を請求することができる。)。
2 本条第1項にかかわらず、日雇従業員及び1日の所定労働時間が6時間以下である従業員からの育児短時間勤務の申出は拒むことができる。
3 申出をしようとする者は、1回につき、1か月以上1年以内の期間について、短縮を開始しようとする日及び短縮を終了しようとする日を明らかにして、原則として、短縮開始予定日の1か月前までに、育児短時間勤務申出書(社内様式 11)により人事部労務課に申し出なければならない。申出書が提出されたときは、会社は速やかに申出者に対し、育児短時間勤務取扱通知書(社内様式 13)を交付する。その他適用のための手続等については、第3条から第5条までの規定(第3条第2項及び第4条第3項を除く。)を準用する。
4 本制度の適用を受ける間の給与については、別途定める給与規定に基づく労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した基本給と諸手当の全額を支給する。
5 賞与については、その算定対象期間に本制度の適用を受ける期間がある場合においては、短縮した時間に対応する賞与は支給しない。
6 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間は通常の勤務をしているものとみなす。
引用元:育児・介護休業等に関する規則の規定例

労使協定の締結により除外可能な者を除外する例
2 本条第1項にかかわらず、次のいずれかに該当する従業員からの育児短時間勤務の申出は拒むことができる。
一 日雇従業員
二 1日の所定労働時間が6時間以下である従業員
三 労使協定によって除外された次の従業員
(ア) 入社1年未満の従業員
(イ) 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
3 ~6 (略)
引用元:育児・介護休業等に関する規則の規定例

規定例のように、労使協定により対象外とすることは可能ではありますが、その場合、「代替措置」も同時に規定する必要があります。どのような処置かというと、就業時間は短縮できないものの、時差出勤を認めて、始業と終業を早めるなどです。

また、育児短時間勤務を規定する場合には、上記以外にも「有給休暇の時間の取扱」についても新たに規定しておきましょう。

短時間ではなく8時間勤務だったころに付与された有給休暇を、短時間勤務で使用する場合は、使用時の労働時間で換算するよう規定が必要です。

半休を認める場合にも、何時から何時までとするのか、こちらも8時間勤務者とは変わってくるかと思います。上記の規定例では賞与について時短分は賞与の査定に組み込まないことが規定されてはおりますが、短時間勤務者の評価はそれとは別に査定されることになります。

著しく不当な評価とならないよう注意が必要です。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

育児休業を社員が取得することは社内外にむけてワークライフバランスや社員の働きやすさなどメリットとしても大きいと思います。特に現在、男性の育児休業の助成金は、育児休業制度を整備し、5日間取得すればもらえる助成金となっています(中小企業は5日以上、中小企業以外は14日以上)。

上記で記載しているとおり、育児休業制度は会社に規則があってもなくても、社員からの申し出があれば必ず取得させないといけない制度です。

会社を守るためにも、従業員のためにも、きちんと整備し、どうせなら助成金ももらってメリットの大きい制度にしたいですね。

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1978年生まれ。新卒で明治安田生命にて一般事務を経験。その後DTPデザイナーに転職。結婚、妊娠、出産を経て税理士法人のバックオフィス業務全般を担う。LIG入社後は人事労務のスペシャリストとして勤怠給与、制度設計、評価報酬、研修など、現在も人事のみに限らず人生経験を活かして幅広く業務を担当している。

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