会社のルールや制度の決め方・考え方

会社のルールや制度の決め方・考え方

Mami Onishi

Mami Onishi

皆さんこんにちは。経営企画室のきゃしーです。

今日は、会社のルールや制度をどうやって決めたらいいの? とお悩みの方のためのお話をしたいと思います。

会社は「組織」ですから、そこで働くさまざまな人が、最大のパフォーマンスを発揮できるためには「統一した決まり」が必要です。もし、個人個人がバラバラのルールで働いていると、上司は部下のマネジメントができなかったり、社員同士で不平不満がおこるなど、不具合が生じます。

また、会社には法律で守らなければいけないたくさんの決まりが存在します。もちろんそれを全部頭のなかに叩き込んでおくことは不可能です。ではどうすればいいか。

それは、会社のルールや制度としてきとんと制定し、社員に周知、そして運用にまで落としこむことです。会社のルールや制度は決めただけでは絵に描いた餅です。それを社内で共有し、運用できてこそ初めて意味をなします。

とはいえ!

まずは会社のルールや制度を決めるところから始めなければいけません。でもゼロから考えるのって大変ですよね? そういうとき、どういう手順で考えたらいいのか、というのが今日のお話です。しかし、決め方に正式な手順があるわけではありません。これはあくまで私がこのような手順で考えている、というお話ですので、ぜひ参考までにお読みいただければと思います。

会社のルール・制度を明文化する必要性

なぜ会社のルールや制度を明文化しておく必要があるのでしょうか。実際、会社にはすでにさまざまなルールや制度が存在している場合が多いです。たとえば「給与規程」がなくても社員に給与を支払っていない会社はありません。ではなぜ給与規程をあえて明文化するのでしょう。

たとえば一人の社員が「私は毎週給与を振り込んでほしい」と会社に申し出たとします。しかし会社のルールは末締め翌月25日の一回払いです。毎週振り込むような対応はしていません。

そういった場合、給与規程に「給与は1日から末日までの分を翌月25日に支給する」と定めておけば、その社員にのみ特別対応をする必要はなくなります。

会社で「こういう統一ルールです」ということを明文化することは、会社を守るためでもありますが、それと同時に社員同士の不平等をなくす意味合いもあります。一人の社員に特別待遇を認めることは、他の社員にも同じことを認めることにもなります。

会社は社員が働きやすいよう制度やルールを柔軟に整えることは大事なことではあります。一方で、特別待遇を次々と認めていてはキリがありません。

仕事がどんどん煩雑になりますし、事務仕事が煩雑になればなるほどミスも起こりやすくなります。会社も社員もみんなが気持ちよく働けるために、ルールは存在するべきです。

ルール・制度の決め方・考え方と手順

私が会社の新しいルールを考えるときの手順は以下の通りです。

 

  1. ネットで大項目の検索キーワードを調べまくる
  2. 調べているうちに出てくる関連キーワードも漏れなく調べまくる
  3. サンプル文書をダウンロード、他社事例を抜粋する
  4. 現在の会社の現状に落とし込んでカスタマイズする
  5. このときに大切なのは「社会通念上問題ない常識的な規程やルールになっているか」
  6. 社内の関係各者に確認してもらい、ルールとしておかしくないか検討する
  7. 作成したものが法律上問題ないか社労士や弁護士にリーガルチェックに出す
  8. 社内告知

まずはとにかく情報リサーチです。インターネットで調べまくります。このとき大事なのはひとつの情報で満足せず、幅広く情報を収集することです。せっかくネット上にさまざまな情報がありますので、活用しない手はありません。会社のルールとしてすでに運用がうまくいっている他社があれば、それのいいとこ取りをするかのごとく、おおいに参考にすればよいと思います。

法律に関わるようなルールを決めるときには、情報元がきちんとしたところを参照します。就業規則であれば厚生労働省のサイトを参照しますし、税務に関することであれば国税庁のサイトを参照します。それをもとに現在社内で運用されているルールがあれば当てはめて明文化し、関係する社員数名でルールとしておかしくないかを検討します。

社内規則、社内ルールですから、社長がひとりで決めたり、一人の社員が決めたりするよりは、何名かの社員で話し合う場を設けるほうがいいでしょう。そして必要であれば社労士や弁護士によるリーガルチェックを受けましょう。

「SNSを個人名で投稿するときのルール」のようなものは、とくに法律上の規則は存在しません。ただし、そのルールに罰則を設けたり、個人の投稿の自由を制限するような場合は、法律上問題ないかの確認はしておいたほうがよいでしょう。

会社のルールや制度の種類

会社のルールや制度を考えるときにいくつかの種類があります。

  • 就業規則: 社員の「就業」について法律で定められたもの
  • 規程: 給与規程、福利厚生規程、接待交際費規程など
  • 制度: 家賃補助制度、資格取得制度、育児休業制度など
  • 社内ルール: 朝の掃除のルール、有給や残業申請の仕方のルールなど

上記には法律で定められたものとそうでないものとがあります。法律で定められたものは法律にのっとった形で制定しなくてはいけませんし、そうでない社内ルールは会社が自由に決めることができます。

ここから先は、就業規則・規程・制度・社内ルールと分け、会社が自由に決めるもの含めて、下記にて考え方をご紹介していきます。

就業規則を決めるときの考え方

就業規則とは、その名の通り社員の「就業」について定めた規則です。会社のルールとして、はじめに取り組むべき大切な取り決めであると言えます。

はじめて就業規則を考えるときのポイントとしては、まずは厚生労働省が発行している「モデル就業規則」を一通り読んでみることです。

このモデル就業規則は、会社が就業規則をイチから考えるために重要なポイントが一緒に記載されています。まずはこれを読んでみて、そして実際の会社の実態に合わせてカスタマイズしてみるといいでしょう。そして最後に社労士や弁護士に内容をチェックしてもらうことが大切です。

就業規則は、定めればどのような取り決めも効力を発揮するというわけではなく、労働基準法を下回っている内容のものは無効です。社会通念上、合理性に欠く内容も無効になる場合があります。せっかく取り決めをしても、いざというときに効力を発揮しない就業規則とならないように注意が必要です。

もし就業規則をイチから考えるのが大変な場合は、最初から社労士や弁護士に相談して作成するのがいいでしょう。会社の実態をヒアリングし、就業規則に落としこんでくれます。

規程を決めるときの考え方

規程にはさまざまな種類が存在します。

【人事関連規程】
  • 給与(賃金)規程
  • 人事考課規程
  • 出張旅費規程
  • 接待交際費規程
  • 福利厚生規程
  • 慶長見舞金規程
  • 在宅勤務規程
  • テレワーク規程 など
【総務庶務関係規程】
  • リスク管理規程
  • 情報セキュリティ規程
  • 個人情報管理規程
  • コンプライアンス規程
  • 健康情報等の取扱規程 など

上記は本当にほんの一部です。この何倍もの規程が存在します。規程が他の制度やルールと大きく違うのは、書式がある程度決まっていることです。

 

例)賃金規程

規程はだいたいこの書式でWordなどドキュメント形式にまとめた形になっています。上記の例にも記載がありますが、規程は就業規則から抜け出して制定している場合もあります。

 

例)就業規則に記載している賃金の欄

上記の例のように、就業規則のほうでは賃金の欄は「賃金規程で定める」という一文にとどめています。この形式のメリットは就業規則が分厚くなりすぎて見にくくなるのを防ぐこと、そして賃金規程の修正が容易になることです。

規程を考えるときの手順としては、まずはインターネット上に「雛形」があるかどうかを探してみます。いろんな方がいろんな雛形をネット上にあげていますから、できる限り信頼できそうな雛形をチョイスするようにしてください。それを社内の内容に合った形に修正し、専門家にみてもらうようにします。もし最初から作成内容に不安がある場合は、たとえば賃金規程であれば社労士が作成のお手伝いをしてくれます。

制度を決めるときの考え方

ここでいう制度とは「社内制度」のことを指しますが、例としてあげると以下のようなものになります。

  • 育児休業制度
  • 介護休業制度
  • 福利厚生制度
  • 人事評価制度
  • 有給休暇制度
  • 家賃補助制度
  • 資格取得制度
  • 副業制度
  • 社内公募制度
  • 社員紹介制度

制度は名前が「制度」になっているだけで、「規程」として文書化したほうがいいものもあれば、社内ルールの位置付けの制度もあります。育児休業・介護休業などは国で定められた制度ですから、就業規則にも記載しますし「育児休業規程」「介護休業規程」のように規程として明文化しても良いでしょう。

規程としては明文化せず、社内制度として取り決めをすることも可能ですが、法律で決められた条件を下回る場合は制定することはできません。資格取得制度などは国の制度ではありませんので、自由に内容を取り決めすることができる社内ルールです。

少し決め方が難しいのが「副業制度」です。副業制度は現在、厚生労働省が「普及を推進」しているに留めている制度で、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を出しています。法律上の規制はない制度ではあるので、会社が自由に決めることは可能です。ですが、勤怠にまつわる部分など、労基法などが関わる部分も存在します。こういう場合は、社労士や弁護士に中身をチェックしてもらいましょう。

社内ルールを決めるときの考え方

意外に難しいのが社内ルールです。就業規則や規程はある程度雛形が存在するため、それを元にカスタマイズが可能です。しかし社内ルールは特に書式も決まりもないため、作成が難しい場合があります。ただ、この場合も、できるかぎり他社事例を参考にするのが近道です。

会社のルールというのは、たいがいがどの会社でもルールとして存在している場合が多く、ネットで調べると出てくることも多いです。いろいろ調べていく中で、自分では想定していなかったルール上の不具合なども投稿されていることもあります。

まずは他社事例がないかを調べてみましょう。そしてそのルールが「社会通念上問題ない程度のルールとなっているか」が大事なポイントです。社内ルールは会社で自由に決めることはできますが、そのルールが世間一般的に常識的かどうかを無視してはいけません。

さいごに

私はLIGで多くの規程やルールを作成してきましたが、一番怠ってはいけないのは「法律上問題ない規程やルールになっているか」を確認し、それをきちんとリーガルチェックできているかだと思っています。

さらにその規則やルールが「社会通念上問題ない程度になっているか」が大きなポイントです。どんな規則やルールでも、やりすぎは法律からも社員からも認められません。もし揉め事になった場合も、常識から逸脱した取り決めは無効となる可能性が高いです。

規則や制度、ルールはあればあるほど堅苦しい組織になってしまいがちですが、しかしそれがあるからこそ守られる会社としての秩序もまた無視できません。

社員が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、みんなが気持ちよく働ける、そんな制度がつくれるといいですね。

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1978年生まれ。新卒で明治安田生命にて一般事務を経験。その後DTPデザイナーに転職。結婚、妊娠、出産を経て税理士法人のバックオフィス業務全般を担う。LIG入社後は人事労務のスペシャリストとして勤怠給与、制度設計、評価報酬、研修など、現在も人事のみに限らず人生経験を活かして幅広く業務を担当している。

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