好きなボトルはスプリングバンクの10年。御徒町のバー「Whisky STAND」の新店長クマさんにインタビュー

好きなボトルはスプリングバンクの10年。御徒町のバー「Whisky STAND」の新店長クマさんにインタビュー

観音クリエイション

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2021年1月15日追記:当記事でご紹介しておりますWhiskySTANDは、2020年に営業を終了いたしました。今までご愛顧いただきましたお客様に、深く御礼申し上げます。

こんにちは。観音クリエイション(@kannnonn)です。

僕はお酒が飲める良さげなお店やバーを開拓するのが好きなのですが、知らないお店のドアを押す前にいつも脳裏をかすめることがひとつあります。

 
「このお店の店員さんがどんな人か知りたい」
 

入店して着席してノリも話も合わない人だったら地獄じゃないですか。ただでさえ知らないお店で緊張しているのに、苦いビールがいつもより苦くなってしまう。

けど逆に、お店に立ってる人がどんな雰囲気の人なのかあらかじめ知っておくことができれば、席に着いた瞬間からスッと楽しめると思うんですよね。共通点や経歴を事前に知っていれば話もさらに弾むはず。

そこで今回は、LIGが御徒町で運営するバー「Whisky STAND」の新店長に就任したクマさんにインタビューしてきました。

LIGブログの読者の皆さんにクマさんの人となりを少しでも知ってもらって、読んでくれた人が「こういう人がいるならちょっとお店覗いてみようかな」と思っていただくきっかけになれば幸いです。

まずはクマさんの略歴について伺います。飲食業界でのキャリアや、バーテンダーになったきっかけについて教えてください。

クマさん:20歳のときに「あんまりやりたいことないなー」「将来どうしようかなー」って思いながら過ごしていたら、ある日地元の公園でめっちゃおいしそうにパン食べてるおじさんがいたんですよ。本当に幸せそうに食べていて。

それを見て「人がおいしそうにもの食べる顔っていいよなー。あ、こういう顔見ながら仕事できたら最高じゃね?」と思ったのが最初のきっかけですね。それで食に関わる仕事をしようと決めて、その後すぐに家の近くの居酒屋で働き始めました。

 

クマさん:居酒屋での仕事に慣れてきたのが半年経ったぐらいのころ。常連さんの顔や好みのメニューなんかも覚える余裕が出てきました。

これはサービス業あるあるだと思うんですが、常連さんに合わせて自分も先回りして動けるようになるんですよね。あの人は1杯目のビールを2口で飲み干すから早めに次のオーダー聞きにいくぞとか、いつも火曜日に来てくれる4人組のグループはみんなタバコ吸うから多めに灰皿用意しておこうとか。

 

クマさん:働いていた居酒屋の常連さんで、いつも最初にビールと枝豆とししゃもを注文するお客さんがいたんです。そのお客さんのためにあらかじめ枝豆茹でて、ししゃも焼いて準備しておいたことがあったんですよ。ビールと同時に枝豆とししゃもを提供したら「え! なんでわかったの!?」ってすごく喜んでくれて。

実はそのお客さんが近所でバーを経営している人で、「今度うち飲みに来なよ」ってお店に誘ってくれたんです。行ってみたらめちゃくちゃ楽しかったんですよ。味もサービスも居酒屋とはぜんぜん違うのが衝撃で。そこで「俺、これやりたい」と思って、その瞬間からバーテンダーを志しました。

そのあとは人形町のバーで修行させてもらって、一人前になって浅草橋で自分のお店を持って、7年続けました。7年目の2019年にLIGと縁があって、2月からWhisky STANDで働いています。

Whisky STANDで働いてみて、どうですか?

クマさん:LIGっぽさがあるなーと思います。自分でボトルを手にとって選べるとか、ボトルについての感想をお客さんが書き残せるとか。従来のバーの常識にとらわれずに楽しめる場ですね。それだけでなく、品揃えがしっかりしていて詳しい方がさらに知識を深めることができるのも魅力です。

 

クマさん:たとえばWhisky STANDではカナディアンクラブのオフィシャルの20年とかも置いてますけど、こういうボトルって普通のバーだとなかなか取り扱っていないんですよ。

普通20年ものとかだとボトラーズ(ウイスキー蒸溜所から原酒を樽ごと購入して、瓶詰業者が独自に瓶詰したボトル)を置くので。だからこういうオフィシャルの20年ものを飲みたかったら自分でボトルで買って飲むしかない。けど高いからなかなか手が出ない、っていうジレンマがウイスキー好きの間では当たり前だったんです。

でも、うちではハーフショットで200円から飲めますからね。フィリピン産のすごく珍しいものです。

飲むべきものを飲んで次のステップに進んでいける環境なので、ウイスキーの学びの場としても使っていただけると嬉しいです。

「これは絶対必要」という仕事道具を3つ教えてください

クマさん:まず頭に浮かぶのはメジャーカップです。バーテンダーって目切り(目分量で正確に計量すること)がみんなできるんですが、僕はあえてそれをせず、必ずメジャーカップを使うようにしています。

目切りで入れるとどうしても見てくれているお客さんから「さっきより少なくない?」「多くない?」と意識を奪ってしまう可能性があるんですよね。それよりは毎回きっちり同じ量を測って入れて、お客さんには味や会話を楽しむことに意識を使ってもらいたいなと。

 
次はバースプーン。カクテルを作るときに混ぜるための道具ですね。特別高価なものではないのですが、いろいろ使ってきて、自分の手に一番馴染んだものを使っています。

これは僕がよくする例え話なのですが、カクテルを作るのって人を起こすのに似ているんですよ。寝てるときに雑にうるさく起こされると嫌じゃないですか。お酒もそれと同じで、雑に混ぜると味にトゲが出て、イラついているような味になります。なのでバースプーンはお酒を優しく起こせる、僕が一番繊細に使いこなせる1本を使い続けています。

 
クマさん愛用のバースプーン。クマさん曰くトゲが出やすいお酒はジン、ブランデー、シェリー樽系のウイスキー。逆に怒らないお酒は? と訊くと、「ウォッカかなぁ。けどウォッカは怒ってないんじゃないじゃなくて表に出さずに静かに怒る感じなんだよなぁ」とのこと。

 

クマさん:3つ目は……うーん、あ、ベストですね。シャツだけだと気が引き締まらないし、ジャケットは一日着ていると疲れちゃう。ベストがちょうどよくていいですね。身なりも綺麗に見えて、動きやすいので好きです。季節問わず年中着てます。

Whisky STANDで一番売れ筋のウイスキーの銘柄はなんですか?

クマさん:断然スプリングバンクの10年ですね。理由は僕が好きだからです(笑)。お客さんにオススメを聞かれたらまずお出しするのがこのボトルで。今のところ1ヶ月に1本ぐらいのペースで空いています。
 

クマさん:もちろん味が好きなんですが、スプリングバンクは歴史がまたいいんですよね。

スプリングバンク蒸留所があるキャンベルタウンという街は、アメリカに対する密輸を中心にウイスキーが栄えたんですよ。当時アメリカでは禁酒法が制定されていたのでウイスキーが高く売れたんです。それが1933年にアメリカの禁酒法が解けて、ウイスキーがそれまでの高い値段では売れなくなります。それでもなんとか売ってやろうとして多くの蒸留所が粗悪品を量産する中、スプリングバンクは妥協せず高品質なウイスキー作り続けて。

かっこよくないですか?
 

クマさん:もともとキャンベルタウンには30以上の蒸留所があったのですが現在は3つしか残っていなくて、そのひとつが僕の好きなスプリングバンクです。Whisky STANDではハーフショットで800円で提供しているので、ぜひ飲んでいただきたいです。本当におすすめです。

ウイスキー初心者向けのメニューはありますか?

クマさん:ウイスキーをストレートで3種類飲み比べできる「ファーストステップセット(1,200円)」というものをご用意しています。

ファーストステップセットは僕がお客さんの好みや経験値に合わせて相談に乗りながら一緒にお選びするもので、銘柄選びに困ったときや、新しい銘柄に挑戦したいときはぜひ試していただきたいですね。必ず1,200円以上の組み合わせになるように選ぶので、お得です。

ウイスキーをストレートで飲めない人向けのメニューもありますか?

クマさん:ハイボールはもちろん、ビールやカクテルもご用意しています。その日の気分やテーマに合わせてオリジナルカクテルを作るのも得意なので、なんでも気軽に注文してください。

ではせっかくなので新しい元号「令和」をテーマに1杯作っていただけますか?

クマさん:「和」という漢字が持つ「あらゆる材料とかけ合わせることができる」という印象からウォッカをベースに、桜のリキュールを使って「令和」の出典となった和歌の梅花をイメージして春っぽく仕上げてみました。
 
飲むと目の前がぱあっと明るくなるような爽やかな味でした。めっちゃうまい。オリジナルカクテルは1,000円〜で注文できるので、ウイスキーが苦手な人はぜひ。

本日はありがとうございました。

自称・星野源似のクマさんは、話してみるととても気さくでユーモアあふれる人でした。飄々としているイメージですが、仕事に対しては真面目でストイック。ウイスキーやお酒に対する知見も深く、気になることがあればわかりやすく説明してくれます。

カジュアルなバーを目指しているということで、ウイスキーやバー初心者の方にもオススメです。

ぜひ一度、お店を覗いてみてはいかがでしょうか?

こんなイベントも近々開催予定だそう。

 

Whisky STAND
  • 店舗名: Whisky STAND
  • 住所: 東京都台東区上野5-16-9 サンエイビルB1F
  • アクセス: JR「御徒町駅」徒歩2分、「上野駅」徒歩9分、東京メトロ「仲御徒町駅」徒歩2分、「上野広小路駅」徒歩5分、都営地下鉄「上野御徒町駅」徒歩5分
  • 電話: 03-6806-0665
  • 営業時間: 月〜木 19:00〜2:00am(ラストオーダー 1:30am)、金・土 19:00〜3:00am(ラストオーダー 2:30am)
  • 定休日: 日曜日・祝日(連休の際は変動あり)
  • Twitter: @whiskystand

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観音クリエイション トラックメイカー / 観音 クリエイション

フリーランスでヒップホップの楽曲を作ったりブログを書いたりしていたらご縁があってLIGに入社してヒップホップの楽曲を作ったりブログを書いたりすることになりました。 好奇心旺盛なので頻繁に旅に出たり写真を撮ったり変なものを食べたり新しいことをやったりしますが向上心がないのでいつもお酒を飲んでいます。

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