編集者・ライターになるには?そのルートと、キャリアの積み方を考えてみました

編集者・ライターになるには?そのルートと、キャリアの積み方を考えてみました

中野 慧(ケイ)

中野 慧(ケイ)

こんにちは。LIGで編集者として働いているケイ(@yutorination)です。

これまで編集者・ライターとしてさまざまな書籍・雑誌・Webメディアで仕事をしてきましたが、最近は編集ライター志望者向け講座などでレクチャーする機会も増えました。

そこで受講してくださった若者から年配の方まで、色々な方に

  • 「編集者・ライターになるにはどうしたらいいんですか」
  • 「キャリアってどうやって積めばいいんですか」
  • 「フィードバックってどうやって貰えばいいんですか」

といったことを聞かれます。今回はそのことについて、自分の経験を踏まえながら書いてみたいと思います。

ちなみに、この記事の(特に)前半は、10代〜20歳前後の若者向けに書いてます。将来に悩む人たちに、この種の情報が求められていることを感じたからです。

とはいえ編集・ライターは何歳からでも(高いモチベーションさえあれば)なれるものだと思います。人生百年時代とも言われていますし、何も遅いことはありません。今から新しいスキルを身に着けて、キャリアの掛け算を目指していくのもよいと思うのです。

というわけで、後半に行くにつれて全年代向けの内容になっていきますので、この仕事に興味がある方に、ぜひ参考にしていただければ幸いです!

編集・ライティングは誰でもできる?

まず前提として、文章を書いたり直したりというのは、誰でもできることのように思えます。でも、編集者・ライターはそれをやっているだけでお金が貰える……とても不思議なことです。

このLIGブログのなかでも何回か言及されていることですが、編集者・ライターになるためには、資格は必要ありません。そう名乗って名刺でも作ったら、その瞬間に「編集者・ライターです」と言うことができてしまいます。

では肩書き自体は誰でも名乗れるとして、会社に編集・ライターとして採用してもらったり、フリーランスとして仕事を受注してお金を貰うには、どうすればよいのでしょうか。

出版業界で書籍や雑誌をやりたいのか、Web業界でコンテンツを作りたいのかでだいぶ違うのですが、「何らかの実績を積み上げる」ということは共通しています。

まずは出版業界のほうから見ていきましょう。

【Case1】出版業界で仕事をする

まず、編集者・ライターになる一番わかりやすいルートは、大学を出て新卒で出版社に入社することです。一度出版社に入ってしまえば仕事の全体像が掴めて人脈もできるので、フリーランスの編集者orライターとして独立していく人も一定数います。

ただ、出版不況となってからはどんどん狭き門になっており、倍率は数百倍が普通。とある先輩編集者は「新卒で出版社に入れるかどうかは、宝くじみたいなもの」と言っていました。(※1)

(※1)後でも述べますが2019年現在では、出版業界=斜陽産業というイメージが若い人のあいだですっかり定着しており、僕が将来のことを考えていた10年前とは状況が変わってきている側面もあります。しかし出版社の持つコンテンツ力には侮れないものがあり、今のタイミングであれば逆に、「あえて”斜陽産業”に入ってみる」というのも面白いのでは……とも思ったりします。

出版就活のために行っておいたほうがいい大学とか学部ってある?

特に10代で編集者・ライターの仕事に興味を持つと「出版社に入るには学歴って高いほうがいいの?」「どの大学のどの学部に行っておくといいの?」ということが気になるようです。普通に答えるなら、早慶以上の大学に行っていたほうが、まあ楽ではあるんじゃないでしょうか……。

ただ、10年ぐらいこの業界で仕事をしていて思うのは、官僚や大企業の世界と比べると、学歴を気にする人が極めて少ないということです。その意味ではフェアでもあるし、逆に一生懸命受験勉強をしていい大学に入ったとしても、それだけでスタート時点からリードできるなんてこともありません。

ちなみに僕の知っているかぎりでは、出版社への就職を目指している人は、学部単位でいうと東京大学文学部、早稲田大学の文学部or文化構想学部に多かったです(2019年現在、そういった学部の学生のあいだでも、就職先として出版社の人気がどんどん下がっているようですが……)。しかし実際に編集者として活躍している人で言うと、「この大学のこの学部はよさそう」みたいな傾向は正直、見られません。

むしろ大学時代に、出版就職を目指すような文化的に意識の高い人が周りに多くない孤独な環境で、飢餓感を感じながら自分の興味だけで突き進んできた人が、いい仕事をしている気がしています。

文学部など文化的に意識の高い人たちが周りにいる環境に恵まれすぎ、リア充して満足してしまって、「おれはカルチャーシーンになんか爪痕残したる!」みたいな若者らしいイキった気持ちが冷却されていく人が多いように(あくまで僕個人は)感じました。

 

大学時代はどう過ごせばいいの?

「大学ではどんな生活を送っていたらいいの?」というのに答えるなら、これもあくまでも僕の感触ですが、いま出版業界で活躍している編集者・ライターで、学生時代に学生新聞やフリーペーパーをサークルで作っていたという人は一定数います。もし一直線に編集者・ライターを目指したいのであれば、そういったサークルに入ってみるのもいいかもしれません。今は高校生のあいだでもそういった活動が盛んですよね。

ちなみに僕の場合は、普通の人よりかなり長めに大学に在籍したのですが、前半は野球とバイトと漫画喫茶をグルグル回る典型的な東京郊外マイルドヤンキーの生活を送り、後半になぜか学問に目覚めてゼミで社会学・政治学の勉強に燃えていました。この件をこないだ個人ブログに書いたら炎上したんですが、でも大学での勉強(というか学問)をするのは、編集・ライターという、知識と思考力が必要な仕事をしていくうえでとても役に立つので、おすすめです。

学ぶ分野も、文学を始めとした人文系だけではなく、法律や経済などの社会科学でもいいし、もちろん理系の分野でもよいと思います。ざっくりとした言い方ですが、体系的に学問をやっておけば何にでも役に立ちます。物事の本質的な構造というのは、何でも多少は似通っているからです。

 

出版業界は新卒文化が希薄で、中途経験者採用がメイン

僕が学生で就活をしていたのは2010年前後でしたが、当時はリーマンショック直後の大不況。それ以前から儲かっていなかった出版社は、新卒採用の門戸をガンガン閉じていました。

そもそも前提として、出版業界全体では新卒文化が非常に希薄です。大手・準大手以上でなければ毎年新卒採用しているケースのほうが少なく、中途での経験者採用がほとんど。そして人材の流動性が非常に高く、転職や独立は当たり前となっています。

「新卒採用をほとんどやってなくて、中途採用も経験者しか採らない」となれば、どっから入るの? って感じになりますよね。

もし出版就活もうまくいかず、どうしても編集・ライターの仕事をやりたい場合は、まずは激務すぎて人が頻繁に「飛んで」しまい常に人手不足な編集プロダクションなどに入る、という手段があります。

ここで「まあ、ブラックなので決してオススメはしませんが」などと防御力の高い書き方をするのは簡単ですが……正直オススメです。

若くて気力・体力があるうちに、ドラゴンボールの「精神と時の部屋」的な場所に入って超絶鍛えておくことは決して無駄にはならないと思います。

ぶっちゃけて言うと僕の知っている範囲では、新卒で大手出版社に入った人のなかでは「会社の価値=自分の価値」であるかのような勘違いを起こしている人が、感覚的には過半数ぐらいはいます。「自分は◯◯社の社員であり、選ばれし民だ」ということで外注スタッフを雑に扱ったりとかですね(逆に、そうでない人はめちゃくちゃ仕事が丁寧で、尊敬できる人たちばかりです。あくまでも個人の感覚ですが)。

その点、会社の名前で勝負できない、実績でしか勝負できない場所にいると、自分の仕事の価値を冷静に見つめる「まとも」な感覚も身に着きやすいのではないか、と思います。

ただし、心身の状態には細心の注意を払い、もしつらくなってきたらいつでも辞められるよう、セーフティーネットを整備しておきましょう。

セーフティーネットの例
・いつでも実家に戻れるように親との関係を修復しておく
・自分が無職になっても養ってくれる、ちゃんと働いてるパートナーを確保しておく

基本的には経験さえ積んでしまえばいいので、どうしても出版社に入りたい場合はそこから中途採用に挑戦していくのがいいのではないでしょうか。前述のとおり、ある程度の実績と人脈があればフリーランスとして仕事をしていくことも可能になります。

ちなみに僕の場合はかなり特殊で、当時まだ同人誌だった雑誌で雑用係を始めつつ、自分で電子書籍のオーサリングを勉強してできるようになったのでそれを売ったらめっちゃ売れて書籍化もされ、以来ブックライターをやるようになり、片手間でドキュメンタリー動画を作ったりしているうちに、雑用していた雑誌が出版社/デジタルコンテンツ制作会社になったのでそこに入り、Webマガジンや書籍の編集をやり、動画や生放送・電子書籍などのコンテンツ制作やSNS運用なども全部やった、という感じです。正直とても大変でしたが、面白いこと、勉強や経験になることが非常に多かったです。

なお、稼げるようになるまでしばらくは実家に住んでました。親孝行も重要です。

▼「実家に住む」というアイデアは、大槻ケンヂさんが『サブカルで食う』という本でも書いてました。この本は「好きなことを仕事にする」を考える上でとても参考になります。

 

【コラム1】青島刑事と室井管理官

さて、ここで謎のコラムです。

みなさんは、『踊る大捜査線』をご覧になったことがありますでしょうか?

90年代後半に放映され人気を博した、警察を舞台にしたドタバタコメディ的な刑事ドラマです。当時ドラマを観ていてとても印象に残ったのが、織田裕二演じる主人公「青島刑事」と、柳葉敏郎演じるサブ主人公「室井管理官」の関係です。青島刑事は交番勤務から始めた叩き上げで、現場感覚を持っていて直感に優れているけれどもトラブルメーカー。

一方、室井管理官は国家公務員一種試験をパスしたエリート、いわゆるキャリア組で、非常に実直ながらも、どうしても警察内部の権力関係に絡め取られてしまう。

二人は心の底では理解しあいながらも、立場の違いからうまく連携できず、そこからいろんなドラマが生まれるわけです。(あとから理解したのですが、『踊る大捜査線』は、押井守監督のアニメシリーズ『機動警察パトレイバー』から強い影響を受けているんですね)

何が言いたいかというと、すでに述べた「新卒で大手出版社に入った人」はまさに、室井管理官のような存在です。一方、僕は子どもの頃から、おそらく『踊る〜』などのフィクションをたくさん浴びることによって、「室井管理官よりも青島刑事のほうがカッコイイ」というイデオロギーを潜在的に刷り込まれていたのでした。したがってこの記事の内容は、そういったバイアスのもとに書かれている点は、注意が必要かと思います。

【Case2】Webコンテンツ業界で仕事をする

出版業界で仕事をする上では「新卒か中途か」という議論が成り立ちますが、Webの世界ではわざわざ企業体でなくてもできることがたくさんあります。

「お金を稼ぐ」という意味では、電子書籍やnoteでコンテンツを販売してもいいし、アフィリエイトブログをやってもいいわけです。

そもそも「表現をしたい」「なにか作ってみたい」という欲求があるのであれば、テキストコンテンツにこだわらずにYouTuberになったり、InstagramやTwitterなどのSNSを頑張ったりと、届ける手段(コンテナ)はいろいろあります。昔と比べて写真もデザインも動画もアニメーションも、そこまでの専門知識がなくても比較的簡単にできるようになってきています。

したがってWeb編集者やWebライターは、テキストをメインにしつつも、いろんなコンテナを常に視野に入れておき、「コンテンツを作る力」そのものを伸ばしていくことが必要なんじゃないか、と僕は思っております。

 

ポートフォリオサイトは作ったほうがいい気がします

とはいえ、もしコンテンツ制作を業務として行っている会社に入りたいのであれば、自分の制作実績や自己紹介をまとめておく「ポートフォリオ」が必要です。

LIGに入って初めて知ったのですが、エンジニアやWebデザイナーなどWeb制作の世界では、就職活動やフリーで仕事を受注するためにポートフォリオサイトを作ったりするのが当たり前になっているんですね。Web制作業界の、「何ができるのか」を判断する文化はフェアでいいなと思います。

一般に、大学生の新卒採用は「コミュニケーション能力」とか「ポテンシャル」とか「素直さ」のように曖昧模糊としたものが評価の対象になります。それに比べると、実績をもとに判断するのは公正だと感じるのです。

しかし……LIGで編集者・ライターの面接に出て思ったのですが、

ポートフォリオサイトを持っている人が圧倒的に少ない!

パワポやKeynoteでポートフォリオを作ってる人はいますが、ポートフォリオ「サイト」はほとんどないです。逆に売れっ子のライターさんは何かしらポートフォリオサイトを持ってる人が多いです。WordPress等のCMSを使って本格的に作らなくても、たとえばnoteの1ページにまとめておいて随時更新していく、とかでもよいと思います。

こんな感じの内容が載っていればよいと思います。

  • 自己紹介・自己PR
  • 簡単な経歴
  • 実績紹介(書籍であれば表紙、雑誌やWeb記事であれば版元や運営会社の許可を取った上で一部ページの画像を掲載し、タイトルと自分がどんなことを担当したか、企画意図などをコンパクトな文字数でまとめる)

編集・ライターであれば、ポートフォリオを作る際にも何らかの編集視点を入れて編集されていると、よいアピールになると思います。ただ、「盛って」アピールするのはダメで、きちんと中身が伴っていることが重要。なかなか難しいですね。そのあたりの匙加減も、センスの見せどころだと思って取り組むのがよいのではないでしょうか。

 

どうやってポートフォリオに載せる実績を作るの?

いろんな手段が考えられます。僕がやったのは、自分がたまたま誘われて運営スタッフとして参加したイベントの内容がめっちゃ面白く、盛り上がったので、「この内容を文字起こしして電子書籍にしよう!」と提案→数人の無職系男子で集まってプロジェクトチームを結成、完成させて販売したらめっちゃ売れ、KADOKAWAさんから書籍化もされた、というやつです。

▼この本です。内容が過激だということでいろんな人から怒られました。

その他にもいろいろやってはいましたが、編集経験もライティング経験もほとんどなく、会社員経験すらない20代半ばの若者が、フリーランス編集者として大手出版社で一冊の書籍を作ったというのは、実績としてはまあまあのインパクトになります。

そんな感じで「無から有を生み出す」実行力と巻き込み力を発揮してプロジェクトを完遂し、それを繰り返して実績を積み上げ、ポートフォリオサイトに蓄積していけば、少なくともWeb系のコンテンツ制作会社の面接に行けるぐらいにはなるのではないでしょうか。

 

有料講座や編集系オンラインサロンに行くのはあり?

さて、とはいえここまでの話でハードルの高さを感じてしまう方もいるかもしれません。一般論として、自信のあるなしとその人の制作物のクオリティの高低って、あんまり相関関係がないと思うのですが、もし自信がなければ編集・ライター講座や編集系オンラインサロンなどにお金を払って行ってみるのもよいかもしれません。(学生向けには「マスコミ就活塾」みたいなものもありますよね)

僕の周囲では、株式会社宣伝会議の「編集ライター養成講座」、株式会社ほぼ日の「ほぼ日の塾」の評判がいいです(ちなみに「ほぼ日の塾」は無料ですが、いつ開催されているかは「ほぼ日」をチェックしてないとわかりません)。

また、最近は編集系オンラインサロンも多くなっています。正直、この記事で「どのオンラインサロンがいい」ということを言い切るのは難しいです。ただ、いくつかのオンラインサロンの参加者に話を聞いたかぎりでは、オンラインサロンの活動が楽しくなりすぎて、「よいコンテンツを作ることにコミットし、自らの経験にする」という当初の目的がぼやけてしまう方が多いようです(もちろん「楽しくやる」ことが目的であれば、それもよいとは思うのですが)。

また、運営側にとって、サロン参加者はあくまで「お客様」なので、自分から「鍛えてください」とガンガン言わないかぎりは「鍛えよう」というふうには接してくれない、という点も注意が必要です。

ちなみにコンテンツ業界内の玄人たちからは「編集やライティングなんて、お金払って教わるものじゃなくない?」という声は根強いです。僕以上の世代の人たちは基本的に、若いときにかなり苦労して、働きながらスキルを積み上げた人がほとんどだからだと思います。

とはいえ、いくら修行だと思って激務の会社に入っても、貰えるお金があまりに低い状況が続くと、辛くなっていってしまいます。

であれば「お金を払って教わりに行く」というのは、自分の納得感を確保する上で、選択肢として十分「あり」だと僕は思います。

給料が貰えていても学ばない人はいるわけですし、「お金を払っているんだからちゃんと学ぼう」という意欲が生まれるのであれば、それはそれでいいことなのではないかと思うのです。

ちなみに編集系オンラインサロンに行っていたことが就職・転職の上でプラスになるかというと、「行っていただけ」ではプラスにはならないでしょう。しかし、「そこで作った成果物」に対してきちんと自分の言葉で語ることができれば、プラスに評価してもらえることはありうると思います。

 

【コラム2】面接では何を喋るべき?

僕は大学時代、特にやりたいことがありませんでした。就職活動の時期になって周囲に流されて就活を始めても、特に行きたい会社もなく、「働きたくないでござる……絶対に働きたくないでござる」という思いが募るばかり。

そんなとき、思いつきでとある出版社のエントリーシートを書いてみたら、なぜかすらすら書けたんですね。結局そのエントリーシートは期限に間に合わずに提出できませんでしたが(このあたり非常に社会性が低いです)、「この仕事だったらできそうだな」と感じたのです。

冷静に考えてみると、子どもの頃から本や雑誌・新聞を読むことが「呼吸をする」レベルで習慣化されていました。活字が好きだったのに、「それを仕事にしよう」と考えたことがなかったのです。

そんな感じで出版就活を始めたのですが、ときは2000年代末。雑誌不況・出版不況が叫ばれ、僕の目から見ても、90年代〜2000年代前半の熱気がだんだんなくなっていくようでした。そんなときに面接の場で「この雑誌のこういうところが面白くて〜」みたいな嘘もつけない。本当は「昔のほうが面白かったですよね!」「なんでもっとネットでガンガンやらないんですか!」と言いたいわけですが、「それは失礼なんじゃないか……」という遠慮がありました。

いま面接に出るようになって思うのは、もしその媒体が今つまらないと思っていたら、ちゃんとそのことを言っていいということです。

我々は今つくっているものには全然満足できていなくて、「昔のほうが面白かった」と言われたとして、僕であれば「すまん、そうかもしれん」と思います。もちろん面接官も人間なので失礼すぎる言葉を投げたら印象が悪くなる可能性はありますが、「自分がなぜ今のものを面白くないと思っているのか」という理由、「自分だったらこうする」という代案を丁寧に伝えれば、きちんとした面接官であればそのことを受け取ってくれるはずです。

たいていの場合、その代案は現実的にはできなかったりすることも多いのですが、

「単なるダメ出しではなく自分なりの代案を出す」
「そういうことがなぜできなくなっているかの想像力を働かせる」

という姿勢を見せるのは、(どんな仕事もそうかもしれませんが)とても重要なことだと思います。

逆にダメなのは「ただのファン」。ファンだからダメというのではなく、ただのファン目線の企画って、昔の何かの劣化コピーになってしまい、決して面白くはならないのです。

コンテンツ制作には、常に読者の期待を裏切る意識が必要です。読者の期待通りのことをやったら読者数が維持できるわけではなく、むしろ予定調和が続くとだんだん読者が減っていってしまいます。「どうやって新しいものをつくるか」「変わり続けるにはどうしたらいいか」という思考がメディアには必要なのです。それは「作り手目線」とも言い換えられるでしょう。

▼このあたりの話は、僕がやってきたインタビュー記事に詳しく出てくるので、時間があればぜひ読んでみてください。

一人前になる最短距離はある?

先日、社内研修で僕がスピーカーになったときに、事前にスライドを弊社マネージャーのよすけさんに見せたら、「一人前の編集になるための最短距離ってないんですか?」と問われました。(まあ僕が編集者として一人前かはよくわかりませんが……)

で、どうなんでしょうねぇ……できるだけ最短距離で行けたらいいと思うのですが、「とにかく情報強者になって、丁寧に教えてもらえる場所で丁寧に教えてもらえば、最短ルートを行けるはず」とはいかない気がします。

僕がやっていてよかったと思うことは、こんな感じです。

  • 新卒カードを使って就職せず、そのときに周囲の目を気にしないようにした
  • 自分が心の底から「ここは面白い」と思う場所に潜り込んだ
  • 「何でもやります!」と言って雑用から始めた。焦らずひとつずつ、目の前の仕事に取り組んで実績をつくった
  • 先輩たちにフルボッコにされ、そのたびに岡本真夜の「TOMORROW」を聞きながら涙の数だけ強くなった
  • 動画や写真、プログラミングなど必要だと思ったことは自分で勉強した

自分でも「わがまま」だと思うのです。

大学生が新卒採用で入れる会社でやるような仕事はしたくない、コンテンツを作る仕事がやりたい、しかし経験はまったくない。

世の中に、そういう夢見がちな大学出たての若造に最初からポンと給料20万円くれる気前のいい会社なんてほとんどないです。

任せてもらえることからやるしかないですし、リクルート創業者の江副浩正さんの言うように「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という気概を持って、自分で自分の仕事を作り出していくことも必要なのだと思います。

イチローも「遠回りすることが一番の近道」と言っていましたが、「最短ルートがある」なんて思わずに、まずは一見無駄にも思える道を通っていくというのは、けっこう大事な気がします。そのときは「無駄」に見えているだけで、後から振り返ると「あれやっててよかったな」と思うことって、いっぱいあります。むしろ初学者は「何が意義があって、何が無駄なのか」なんて基本的には見抜けないものだと思っていたほうがいいのではないか、と思うのです

これは「想像力」という話ですね、「自分がわからないことがこの世にはいっぱいある」「自分の視点なんてすごく狭い」という謙虚なモノの見方というか。

まとめとちゃぶ台返し

ちなみに、ここまで書いてきて

『フォレスト・ガンプ』みたいでイヤだな

と思いました。

あの映画ってすごい感動的ではあるんですけど、「とにかく実直にやっていくことがアメリカンドリーム」みたいな話なわけですよね。でも現実のアメリカは、あの映画でめちゃくちゃ不幸になるヒッピーみたいな人たちがむしろカリフォルニアとかの西海岸でIT企業作ってウェーイ、みたいな世界だと思うのです(偏見)。(※2)

(※2)このあたりの話が気になる方は池田純一さんの『ウェブ×ソーシャル×アメリカ』を読んでみてください。

『フォレスト・ガンプ』は「勤勉」「実直」をキレイに描きすぎかなというのはあります。僕もときにはヒッピー的に自由を追求して生きていたいな〜と思うわけで。

冒頭の「フィードバックってどうやって貰えばいいんですか」という疑問に答えるなら、まずどこかの編集部に潜り込むか、講座やオンラインサロンに行ってみて、自分のつくったものをフルボッコにされる、これが一番早いです。今の時代だと、自分から言い出さないとそういう環境はなかなか得られないと思います。

編集者・ライターってなりたい人がとても多い(しかも、たぶん志望者が増えてる)ので、希少価値が低くて、正直、賃金が上がりづらいです。そこはアニメーター薄給問題とちょっと似てますが、アニメーターと違って絵が描けなくてもいい、文章という誰でもできそうなことをやっている(ように見える)から、ライトな志望者もたくさんいます。

編集者・ライターの仕事はかなり思考力が必要です。そういうことができるのであれば、他の仕事をしたほうがはるかに稼げるはずです。でも「そんなことはわかっているけど、この仕事がしたい!」という(良くも悪くも)ワガママな人たちの集まりなんじゃないかと思います。

ここまで書いてきたことは、要は「インディペンデント魂」というようなものだと思います。そしてその大事さは、自分で気づいて、身に着けていかないといけない。

僕が以前、仕事で取材した学者さんが言っていて本当にそうだなと思ったんですが、「自主的になれ!」って言われて「はい! 自主的になります!」って言ったらその時点で自主的じゃないわけですよね。「鍵のかかった箱の中の鍵」なんだから、自分で内側から鍵を開けないといけない、ということだと思います。

おわりに

今回は、つれづれなるままに僕がふだん話していることをまとめてみました。

最近いろいろ炎上しているけれど間違いなく編集者のレジェンドの一人である見城徹さんの著書に、こんなタイトルのものがあります。

『人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない』

過剰に他人の目線を気にせず、継続していくことしかないのかな〜と思います。非常に精神論的ですが、実際この仕事は、そういう側面はかなりあります。同じく見城さんの本に『編集者 魂の戦士』というものがありますが、これも言い得て妙だなと思うのです。

編集者・ライターの仕事は本当に奥深く、その価値がわかりやすく計測できないうえに、魑魅魍魎が跋扈しているけれど、面白いですね。今後もこういうものは、たまに書いてみたいと思います。

それではまた。

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エディターのケイです。 これまでWebや書籍の編集・ライティングをやってきました。 政治・宗教・野球の話が得意です。 アイドルと一緒にネット番組に出たこともあります。 現在は「暴力」というものについて、 理論的な理解を深めるべく日々研究しています。 知識欲や考える力の強い人たちとチームを作って、 よいコンテンツを世の中に出していく仕事をしたいと思っています。

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