意外と重要な校正・校閲の手順について考えたことはありますか

意外と重要な校正・校閲の手順について考えたことはありますか

トミエ

トミエ

こんにちは、外部メディアコンテンツ制作チームのエディター、トミエ @hiroyukitomie です。

今回は校正・校閲についてのお話。

エディターの仕事は多岐にわたっていまして、場合によっては執筆や撮影なども自分で対応することがあります。校正・校閲もそのひとつ。

執筆や撮影はそれぞれライター、カメラマンをアサインすることが多いですが、なぜか校正・校閲はエディターの業務になることがほとんど。昔は社内に校正・校閲専門の部署がある会社も多かったものですが(遠い目)、今はだいぶ少なくなっているように思います。フリーの校正者・校閲者に依頼することもあまり多くありません。

なので、校正・校閲は編集者の業務と言い切ってもいいかもしれないですね。

そんな状況もあって、LIGブログでも過去にこんな記事を出しています。主に校正のルールについて書いた記事です。

LIGブログでは、他にも表記ルールについての記事がいくつかあります。また、LIGブログでなくても、「校正」で検索すると「校正とはなにか」「校正と校閲の違い」といった記事が出てきます。

しかし、実際の校正・校閲作業をどんな手順で進めるかについては、言及している記事が意外とないんですよね。表記ルールがあったとして、ではそれをもとにどう校正・校閲の作業を進めていくか、ということはあまり気にされていないような……。

ということで、正解はひとつではないとは思うのですが、今回は私なりの方法をシェアしたいと思います。Webコンテンツ制作において、ライターさんが執筆した原稿を校正するという前提で進めていきます。

1. 構成を確認する

これは校正・校閲というよりも、どちらかといえば編集という業務に入るものかもしれませんが、まずはここから紹介したいと思います。ライターさんに依頼した内容と、実際の原稿を照らし合わせて、問題ないかを確認する作業です。

1-1 アウトライン通りか確認

ライターさんに執筆を依頼する場合、どんな内容をどんな構成で書いてほしいのか、アウトラインという形でまとめます。ライターさんはそれをもとに原稿を執筆。原稿があがってきたら、エディターはまずそれに沿った内容かどうかを確認します。アウトラインと異なっていれば、なぜ異なっているのか、異なっていても問題ないかチェックしましょう。

もちろん、アウトラインが適切ではなかったという場合もありますので、フラットな視点で構成を確認する必要があります。記事の目的は何か、それを解決する構成は何がベストなのかを念頭において確認します。

1-2 文章のテイストを確認

テイストについても、ライターさんに執筆依頼する際に説明します。ですます調なのか、である調なのか。コミカルなのかシリアスなのか。文章のテイストをイメージできる具体的な記事があればそれを提示して執筆してもらいますが、それに合ったテイストで原稿があがってきたかどうかを確認します。

文章の途中でテイストが変わってしまっている場合があるので、ここでもフラットな視点は必要ですね。

1-3 文章の読みやすさを確認

そして、文章の読みやすさについて確認します。今回の記事では詳細については省きますが、主に次のような観点で確認し、読みやすさを向上させます。

  • 主語と述語の関係をはっきりさせる
  • 一文の長さの調整
  • 接続詞の確認
  • 修飾の確認
  • 文章のリズムを整える

2. 記事を整える(校正)

まずは素読みです。ここからが本格的な校正作業と言ってもいいかもしれません。

「素読み」は「すよみ」と読みます。LIGブログ内で「素読み」を検索しても出てこないので、この記事がLIGブログ内で素読みについて言及する最初の記事になりますね。なぜかWeb業界では素読みという言葉をほとんど聞きません。

素読み

とはいえ、素読みという言葉を使うかどうかは問題ではありません。素読みに当たる作業ができていればいいので、その流れについて書いておきます。

なお、素読みとは、原稿と引き合わせずにゲラ(Webで言えばフォーマットに流し込んだプレビューですね)だけを読むこと。内容も確認しつつ、より形式的なところにも注目して校正するということです。

では、素読みとしてどんなことをやるべきかを紹介しましょう。

2-1 誤字脱字の確認

まずは誤字脱字がないか確認します。作業としては文字通りの内容なのですが、以外とここに落とし穴があります。

で、上の文に誤字を仕込んでみたのですが、気づいたでしょうか。

ざっと流して読んでいると、「以外」「意外」の違いに気づかないことがよくあります。なんとなく文章としては読めてしまうのでスルーしがちなのですが、文章の内容に入り込みすぎずにチェックするのがここでの役割です。流し読みをせず、一文ずつ確認しましょう。

2-2 表現の誤りの確認

自分では正しいと思っていても、間違って覚えている表現も多いものです。特に、ことわざや慣用句、熟語があったら要注意。

たとえば、「情けは人のためならず」ということわざの意味をご存知でしょうか。本来の意味は「情けは人のためにするものではなく、いずれ巡り巡って自分に返ってくるもの」なのですが、「人に情けをかけるとその人のためにはならない」と思っている人も同じくらいの割合でいるのです。

参考:情けは人の為ならず

もちろん、ことわざ、慣用句、熟語は要注意というだけであって、どんな言葉に対しても同様の注意をはらいます。知っている言葉であっても、「本当にその言葉の意味は合っているのか?」と自分を疑うのです。極端かもしれませんが、自分の頭の中の情報はすべて間違っているという前提で素読みすることも。

実際、そうやって間違いを見つけると、これまで自分が間違った意味で使ってきたことを思い出し、死ぬほど恥ずかしくなったりしますので、ぜひやってみてください。

2-3 用字用語の確認

用字用語の確認とは、表記をどう統一するかの話ですね。長く続いているメディアや雑誌、新聞の多くは、その媒体独自の表記統一を持っています。

表記統一ルールがなければ、共同通信の『記者ハンドブック』に沿って対応するといいかもしれません。漢字にしたらいいか、ひらがなにしたほうがいいか、といったことを、共同通信ではこのようなルールで表記しますよ、というものです。


ただ、『記者ハンドブック』を使用する際の注意点としては、版によって表記が異なる表現もあるということがひとつ。例えば、「すべて」という言葉は、以前はひらがなで「すべて」とされていたのですが、現在最新の13版では「全て」と漢字にしています(LIGブログでは「すべて」としています)。

また、『記者ハンドブック』は縦書きを基準にしていると思われるので、すべてその通りにしていると、横書き中心のWebでは読みにくくなる場合もあります。たとえば、「ひとり」「ひとつ」については、『記者ハンドブック』では「一人」「一つ」と表記しますが、ご覧の通り横書きでは漢数字の「一」と音引きの「ー」の区別がつきにくいのです。

なので、Webでは「ひとり」「ひとつ」については、ひらがな表記がベストなのではないかと、個人的には考えています。『記者ハンドブック』を基本としながらも、媒体に合った表記ルールを作るといいかもしれませんね。それを頭の中に置きながら素読みをするのがこの段階です。

2-4 形式的な矛盾解決

形式的な矛盾とは、たとえば、目次と見出しが合っていないとか、リンク先が間違っているとか、記事内容にはあまり関係のない形式としての誤りです。しかし、記事内容が素晴らしいものであっても、こういったミスがあると信頼性が損なわれるので、しっかり確認しておきましょう。

ここまでが校正です。次は校閲に移ります。

3. 記事内容の事実確認をする(校閲)

校閲と校正の違いは、ざっくり言うと、記事内容にまで踏み込むかどうかです。文字としての誤りを正すのが校正、記事内容の誤りを正すのが校閲、といった感じで覚えておけばよいかと思います。

3-1 記事内容の矛盾解決

記事内容の矛盾とは、登場人物の設定がバラバラになっていたり、前半と後半では主張が異なっていたり、といった記事内容の信憑性を損なう誤りです。

これについては、「1. 構成を確認する」の部分でも確認することではありますが、改めてこの段階でもチェックします。

3-2 固有名詞の確認

かなり重要です。何があっても固有名詞は間違ってはいけません。インタビュー相手の名前を間違えるとか、会社名を間違えるとか、あってはならないことですがそれでも間違いは起こり得ます。

なぜ起こるのかというと、思い込みです。

前述しましたが、確実に知っていると思っていても、間違っていることは多々あります。単に知らないということもあります。なので、細かいところまでしっかりチェックする必要があるのです。

有名な事例ではありますが、下記の会社名はどこが間違っているかわかるでしょうか。

  • キャノン株式会社
  • 富士フィルム株式会社
  • キューピー株式会社

それぞれ正解は「キヤノン株式会社」「富士フイルム株式会社」「キユーピー株式会社」です。発音としては「キャノン」なので「キャノン」という表記で大丈夫だろうと思ってしまいがちですが、大丈夫だと思っても改めて確認することで間違いを防ぐことができます。

また、固有名詞に入るスペースが半角なのか全角なのか、といった非常に細かい部分も重要なので気をつけてチェックしてください。

3-3 数字の確認

数字も絶対に間違ってはいけません。年齢、年号、売上、数量、電話番号などなど、ありとあらゆるところに数字が出てきます。

電話番号なんて、ひとつ数字が違うだけで大変なことになりますからね。03-xxxx-yyyyという番号があったら、まずは最初から0・3・x・x……と確認し、次に最後からy・y・y・y……と確認するなど、間違ったら本当にヤバい数字はそれくらい慎重に確認しましょう。

3-4 その他事実確認

ここまでに書いたこと以外にも、すべて事実確認をします。

たとえば、誰かの発言についての文章があったら、本当にその人はそのような言い方をしたのかを確認。「確かそう言っていた」なんていう記憶だけでは危険です。しっかり裏を取る必要がありますし、資料で裏を取るのであれば、必ず一次資料をあたりましょう。一次資料以外は別の視点が入ってしまう可能性もあります。

また、引用があったら、正しく引用されているかどうか。引用は自分の主張を裏付けるために、他の文献などの一部を自分の文章などに取り入れることですが、たまに見かける間違いとしては、引用文を改変してしまうということがあります。

引用とは、引用元の文章をそのまま取り入れるからこそ引用なのです。ですが、まれに引用元の文章が間違っていたりすると、それを修正して自分の文章に取り入れてしまったりすることがあります。引用元が間違っていたとしても、それをそのまま取り入れなければなりません。そういった誤りがないかどうか、引用元とまったく同じかどうかを確認する必要があります。

他にも細かい点を出すとキリがないのですが、校正・校閲の手順としてはこんなところです。

校正・校閲をするにあたって大切な手順とは

今回の記事を書くにあたって、校正・校閲について書いてある記事をいくつか読みました。しかし、冒頭でも書いた通り、自分が大切だと思っている校正の「手順」「流れ」について書いてある記事は見つからなかったのです。

これ、重要ですよ。

自分としては、今回書いた順番で校正・校閲を進めるのがよいと思っているのですが、もっと重要なことは、それぞれの手順だけで記事を最初から最後まで確認すること。

たとえば、まず誤字脱字の確認だけで、記事の最初から最後まで確認します。その後、表現の誤りの確認だけで、記事の最初から最後まで確認。その後、用字用語の確認だけで、記事の最初から最後まで確認……という手順を踏んでください。

これらを一度にやろうとすると、必ず何かが抜け落ちます。それぞれの手順だけで最初から最後まで記事を確認するようにしてください。なので、今回紹介した手順では、誤字脱字の確認から数えると最低8回は記事を最初から最後まで確認することになります。

さらに欲を言えば、3-4まで終わった後に、もう一度素読みからざっと確認したいところですね。3-4までに修正を何度か入れることで、新たな誤字脱字や用語の不統一、矛盾の発生などが考えられるからです。

とはいえ、時間的な制約があったりしてそこまで確認できないこともあると思います。その場合は、ある程度優先順位をつけてもいいかもしれません。しかし、基本的には確認作業をまとめない、ということを覚えておいてください。

「神は細部に宿る」といいますが、ほんの小さな間違いがその記事すべてを台なしにしてしまう場合があります。その細部まで注意を払ってこそ、いい記事ができあがるのだと思っています。

……あ、この記事の神様は探さないでくださいね。

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ずっとオールドメディアで編集・ライターをやってきました。今は世の中の流れについていこうと必死に生きています。とりあえずは、おいしいビールを飲んでいれば幸せ。基本的に性格はネガティブなのですが、ビジネスポジティブで頑張ります。人生楽しく。

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