みんなに届け!労働者を守り助ける、出産・育児に関する法律や制度【第1回】

みんなに届け!労働者を守り助ける、出産・育児に関する法律や制度【第1回】

らら

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こんにちは、経営企画室のららです。

いきなりですが、みなさんは出産や育児に関する法律や、自治体・保険・会社の制度ってどれぐらいご存知ですか?

出産を経験された方や妊娠を希望されているご夫婦であれば詳しい方も多いかと思いますが、まだ出産や育児を経験したことのない方の場合、それほど知識を持っていないのではないでしょうか。

かく言う私も出産未経験者であり、LIGで出産・育児に関する制度を整備するまで、ほとんど知りませんでした。

しかし会社で出産・育児関連制度を整備していくにつれて、「日本って思っていたよりも頑張っているんだなぁ」と思うようになりました。

「保育園落ちた日本死ね!!!」という言葉が、2016年の新語・流行語大賞のトップ10に入ったのは記憶に新しいですよね。保育園問題や出産・育児と仕事を両立する難しさ、妊婦さんや乳幼児を連れているパパさんママさんへのキツい世間の風あたりなど、課題は非常に多くあると思います。

出産・育児関連制度について調べるまでは、ほとんど何も知らない状態でニュースや情報が先行して入ってきていたこともあり「日本は出産・育児に非協力的な国なんだ」と勝手に思っていました。でも調べてみると、出産・育児世帯を守る法律や助ける制度が意外にたくさんあることを知り、まさに目から鱗。

ぜひ、LIG社員はもちろんのこと、LIGブログ読者のみなさまにも、これらの情報を知った上で、自分に必要なものを選択し活用してほしい!

ということで、労働者が知っておくべき出産・育児に関する法律や制度について。そして、その上でLIGではどのように考え、対応しているのかを、全3回にわたってご紹介したいと思います。

第1回目の今回は、出産・育児に関する法律と制度についてです。
※本記事は2018年9月時点での情報をもとに執筆しております。

出産・育児に関する制度の仕組み

出産・育児に関する制度は、どのように定められているのでしょうか? みなさんがイメージしやすいよう図にしてみると、このような形になります。

ベースに法律があり、その法律に沿って健康保険や雇用保険、自治体で対応すべき必須の制度が整備されています。その上に、任意で各種保険や自治体での対応や制度があり、これらをすべて踏まえた上で、会社の制度があるのです。大きく捉えると、図のような三段構造のようになっています。

今回は、この図の赤枠で囲まれた「法律」の部分についてお話します。

労働者を守り助ける、出産・育児に関する法律について

私たちは普段なにげなく毎日を過ごしていますが、実は日本で働く人々はさまざまな法律で守られています。

ここからは「労働基準法」「男女雇用機会均等法」など私たち労働者に身近な法律、そして「育児・介護休業法」「児童手当法」などから、「出産(妊娠中を含む)」と「育児」に関わる条文をピックアップして、いくつかはシンプルな言い回しにしてみました。

それではさっそく見ていきましょう。

1. 労働基準法

産前産後期間の解雇禁止(労働基準法第19条)
事業主は、妊産婦が産前産後休業を取得している期間と取得後30日間の間、当該従業員を解雇しちゃダメ。

ものすごく大変なことが起きて事業を継続することが不可能な状況にならない限り、事業主は当該女性社員を解雇することはできません。

ちなみに「妊産婦(※1)」と指定しているのは、「産前産後休業」は妊産婦さんしか取得できない休業制度のためです。「産前産後休業」ってなに? という方はこちらをご覧ください。

(※1)妊産婦:妊娠中の女性と、産後1年経っていない女性のことを指します。

 

年次有給休暇と出産休暇(労働基準法第39条)
年次有給休暇の計算をする際に使われる「全労働日」のうち、妊産婦さんが産前産後休業で休んだ期間は“出勤した日”として換算する。

年次有給休暇は、付与条件のなかに「全労働日の8割以上出勤していること」という内容があります。通常、休暇を取ると出勤率が下がっていきますが、産前産後休業中は“出勤した”とみなされるため、年次有給休暇が付与されます! これで産前産後休業明けでも、気持ちに余裕を持って会社に戻ることができますね。

 

妊産婦等の危険有害業務の就業制限(労働基準法第64条の3)
事業主は、妊娠、出産、保育等をおこなうにあたって、有害とされる業務に妊産婦を就かせちゃダメ。

「有害とされる業務」とは重量物を取り扱う業務、有毒ガスを発散する場所での業務などとされています。具体的なNG業務の内容は女性労働規準規則の第二条第一項をご確認ください。

産前産後休業(労働基準法第65条第1項、第2項)
▼産前休業
妊婦は、請求すれば産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)前から休業することができる(出産日は産前休業に含まる)。
▼産後休業
産婦は、出産翌日から8週間は就業することができない。

「産前休業」は本人が望んだ場合のみ適用される休業、「産後休業」は法律で決まっている強制的な休業です。出産のダメージは、たとえるならば交通事故並みとも言われていますから、妊産婦さんは大事をとってゆっくり休みましょう。

 

妊婦の軽易業務転換(労働基準法第65条第3項)
事業主は、妊婦が請求した場合には、身体に負担のない業務に転換させること。

たとえば、長時間の立ち作業や前屈み作業、排気ガスやキツイ臭いなど、妊婦さんは、よりいっそう辛く感じるものです。妊婦さんが望めば、業務内容の見直しや、外勤から内勤へ変更してもらうなど、会社側に対応してもらうことができます。

 

変形労働時間制の適用制限(労働基準法第66条第1項)
事業主は、妊産婦が請求した場合、変形労働制において、1日および1週間の法定労働時間を超えて労働させちゃダメ。

妊産婦さんが望めば、変形労働制(※2)の場合、法定労働時間を超えて働かないことを請求できます。

(※2)変形労働制:労働時間を月単位・年単位で調整することで、繁忙期等により勤務時間が増加しても時間外労働としての取扱いを不要とする労働時間制度のことです。

 

妊産婦に対する時間外労働、休日労働、深夜業、変形労働時間制の適用制限(労働基準法第66条第2項、第3項)
事業主は、妊産婦が請求した場合、時間外労働、休日労働または深夜業をさせちゃダメ。

妊産婦さんが望めば、残業や深夜残業、休日出勤について免除されます。

 

育児時間の確保(労働基準法第67条)
1歳未満の赤ちゃんを育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求することができる。

適用対象者が「女性」と限られているため授乳時間と思われるかもしれませんが、特に授乳に限定されているわけではありません。また2回に分けず、勤務時間の前後にまとめて1時間取ることも可能なため、保育園の送り迎えに利用される方も多いようです。

ちなみにこの「1日2回各々少なくとも30分の育児時間」というのは、8時間労働を想定して設定されているもので、労働時間が1日4時間を下回る場合には、1日1回で足りるとされています。
なお、この保育時間を有給とするか無給とするかは法律で定められていないため、会社によって異なります。

2. 男女雇用機会均等法

目的(男女雇用機会均等法第1条)
この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。※原文ママ

目的に「女性労働者の妊娠中と出産後の健康を確保しよう」という旨の一文が入っている心強さ……!

 

基本理念(男女雇用機会均等法第2条)
この法律においては、女性労働者が性別により差別されることなく、かつ母性を尊重されつつ充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本理念とする。※原文ママ

基本理念に「女性労働者が母親としての生活と、仕事人としての生活を両立できるよう応援していこう」という旨の一文が入っている心強さ……!

 

婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等(男女雇用機会均等法第8条)
事業主は、「女性労働者が婚姻や妊娠、出産した場合には退職する」といった旨を、あらかじめ就業規則や労働契約に定めたり、念書を交わすなどしてはならない。また、婚姻、妊娠、出産、それらに関わる休暇等の権利を行使したことを理由に解雇をしちゃダメ。

退職慣行や、事実上の運用実態がある場合もNGです。

ちなみに「不利益取り扱い」と「ハラスメント」は意味が異なります。「不利益取り扱い」は禁止されている行為を事業主が行うことで、「ハラスメント」は上司や同僚による就業環境を害する言動のことを指すそうです。

 

妊娠・出産等に関する会社の対応(男女雇用機会均等法第11条関係)
事業主は、妊娠・出産等に関わるもろもろの理由によって、該当する労働者の就業環境が害されないよう、相談に応じたり会社の体制整備を行うなど、必要な対応をとること。

不利益取り扱いを禁止することはもちろん、会社でマタニティーハラスメントなどが起こらないように、事業主は注意、対応していかなければならないということですね。

 

妊産婦の健康管理に関する措置(男女雇用機会均等法第12条)
事業主は、妊産婦が保健指導または健康診査を受診するために必要な時間を確保することができるようにすること。

通常、健康診査をおこない、その結果に基づいて保健指導がおこなわれるため、この健康診査と保健指導合わせて1回とカウントします。基本的には同じ日に実施されますが、もしも別々に実施することになった場合は、両日で1回とカウントすることになっています。つまり、2日間ともに対応時間を確保できるよう、会社は考慮しなければならない、ということです。

ただし、この対応時間を有給とするか無給とするかは法律で定められていないため、会社によって異なります。

ちなみに、受診のために確保しなければならない回数は下記の通りです。

▼妊娠中
妊娠23週     ・・・ 4週間に1回
妊娠24週〜35週 ・・・ 2週間に1回
妊娠36週〜出産  ・・・ 1週間に1回

▼産後
産後の経過が順調であれば産後4週間後に1回受診することになっていますが、各産婦の状況によるため、出産後1年以内は必要に応じて時間を確保しなければいけません。

 

医師等の指導に対応する措置(男女雇用機会均等法第13条関係)
妊産婦が健康診査等を受け、医師等から指導を受けた場合は、その妊産婦が指導を守ることができるように、事業主は勤務時間の変更や勤務内容/量の軽減等の措置をとること。

医師からの指導により、必要に応じて「作業内容の制限」「勤務時間の短縮」「休業」「作業環境の変更」などに対応してもらえます。

たとえば妊婦が医師から通勤緩和の指導を受け、それを妊婦が事業主に申し出た場合、事業主は妊娠中の通勤時間帯や通勤経路が混雑と重ならないよう、通勤緩和の措置をとらなければなりません。

また同じように、医師から休憩に関する指導を受け、それを妊婦が事業主に申し出た場合には、妊婦が適宜休息を取ることができるよう、休憩時間の延長や回数を増やすといった措置をとる必要があります。

3. 育児・介護休業法

目的(育児・介護休業法第1条)
この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇に関する制度を設けるとともに、子の養育及び家族の介護を容易にするため勤務時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り、もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて、これらの者の福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資することを目的とする。※原文ママ

「労働者が職業生活と家庭生活の両立がしやすいよう、企業は時短勤務や業務内容の検討など、支援措置を行うこと」という旨の一文が入っている心強さ……!

 

基本理念(育児・介護休業法第3条)
この法律の規定による子の養育又は家族の介護を行う労働者等の福祉の増進は、これ等の者がそれぞれ職業生活の全期間を通じてその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むとともに、育児又は介護について家族の一員としての役割を円滑に果たすことができるようにすることをその本旨とする。
子の養育又は家族の介護を行うための休業をする労働者は、その休業後における就業を円滑に行うことができるよう必要な努力をするようにしなければならない。※原文ママ

労働者が職業生活と家庭生活の両立ができるよう、会社も頑張るし、もちろん労働者も頑張りましょうね! ということです。

 

育児休業(育児・介護休業法第5条~第9条)
労働者が申し出の時点で下記条件を満たしている場合、子が1歳に達するまでの間、もしくは一定の場合は子が1歳6か月または2歳に達するまでの間、育児休業を取ることができる。

<一定条件>
1)申出時点で1年以上継続して、同事業者に雇用されている。
2)子が1歳6ヶ月(2歳までの育児休業の場合は2歳)に達する日(誕生日の前日)を超えて雇用されることが見込まれている。

男女関係なく、条件を満たす労働者は全員育児休業を取得することができます。

最近は女性だけでなく、男性の取得率もあがってきました。とはいうものの、まだまだ低いというのが実際のところ。男性が育児休業を取得することで、

  • 育児、家事への理解が深まり、夫婦での家事分担がしやすくなる
  • 集中的に子供と過ごす時間を持つことで、絆が深まる
  • 仕事面では、業務の引き継ぎや棚卸しをおこなうため、個人への業務依存の解消や効率化を図る機会になる

といったメリットがあります。

パパが2回育児休業を取得できたり、夫婦で育児休業を取得すると休業可能期間が延長される「パパ・ママ育休プラス」という制度もあるので、男性にもぜひ積極的に活用いただきたいですね!

 

不利益取り扱いの禁止(育児・介護休業法第10条)
事業主は、労働者が育児休業の申し出をし、または育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしちゃダメ。

むしろ事業主は、従業員の育児休業の取得を推進していかなければならない立場ですね。

 

子の看護休暇(育児・介護休業法第16条第2項、第3項)
小学校就学前の子を養育する労働者は、会社に申し出ることにより、年次有給休暇とは別に子が1人の場合は1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで、病気・けがをした子の看護または子に予防接種、健康診断を受けさせるための休暇を1日または半日単位で取得することができる。

ただし、休暇を有給とするか無給とするかは法律で定められていないため、会社によって異なります。

また、この前の部分でもすでに出ていますが、「会社として従業員に、対応時間の確保や休暇をとらせなければならない。けれど、その時間が有給か無給かは法律では定められていないため、会社次第」という内容がちょくちょく見られます。

「休んでいいけど無給の場合は給料は出ないよって、それは単純に欠勤じゃない? ルールとして定める必要ってあるの?」と思いませんか? 私は思っていました。

しかし、この「会社が認める休暇(たとえ無給だとしても)」と、「欠勤」には大きな違いがあります。それは「評価や査定に影響するか否か」です。会社によって評価や査定のやり方はさまざまかと思いますが、法的ルールとしてあるのが「会社が認める休暇を取得した際に、それが理由でマイナス評価や査定をしてはならない」ということです。

ものすごく極端なことを言うと、たとえば産後1年未満の育児中の勤怠で、1ヶ月の間に

  • 有給休暇 10日
  • 子の看護休暇 5日
  • 産後の健康管理通院 半日
  • 慶弔休暇 3日
  • 保育園お迎えのための時短勤務

をまとめて取得しなければならないような事態になり、ほぼ1ヶ月間会社に出勤できないとなったとしても、これは評価に一切影響しない、ということです。

 

育児のための所定外労働の制限(育児・介護休業法第16条第8項)
3歳までの子を養育する労働者が請求すれば、所定外労働を制限できる。

小さなお子様を養育するパパ・ママは、残業せずに早く帰って家族の時間を取ることも可能です。

 

育児のための時間外労働・深夜業の制限(育児・介護休業法第17条、第19条)
事業主は、小学校就学前の子を養育する一定の労働者から請求があった場合には、1ヶ月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせちゃダメだし、深夜(午後10時から午前5時まで)においても労働させちゃダメ。

残業と同様ですね。ちなみに、「所定外労働時間」と「時間(法定)外労働時間」の違いは下記の通りです。

▼所定労働時間
就業規則による労働時間を超過した時間のことを指す。たとえば、10時から19時が勤務時間と就業規則で定められている会社では、19時以降に労働した時間を「所定外労働時間」と呼ぶ。

▼時間(法定)外労働時間
労働基準法第32条で制定されている、「1日8時間以上の労働」もしくは「1週間に40時間以上の労働」を超過した労働時間のことを指す。法定外労働時間となるため、割増賃金の対象となる。

 

出産、育児に関する制度の周知(育児・介護休業法第21条)
事業主は、働く女性や働く男性の配偶者が妊娠・出産したことなどを知った場合は、その方に個別に育児休業等に関する制度(育児休業中・休業後の待遇や賃金、労働条件等)を明示するよう努力しよう。

知った場合はもちろんのこと、知る(情報が集まるようにするための仕組みをつくる)努力も必要だなと最近感じています。女性は妊娠や出産をするとなると、会社の協力も必要となるため、比較的情報が入ってきやすいです。しかし、男性の場合はお子さまが生まれるまで報告がなかった、というケースも過去にあったため、このあたりのサポートの必要性を感じています。

 

育児のための短時間勤務(育児・介護休業23条)
事業者は、3歳に満たない子を養育する労働者に関して、1日の所定労働時間を原則として6時間とする短時間勤務制度を設けなけなきゃダメ。

希望すれば、所定外労働時間の制限だけでなく、所定労働時間の短縮もできます。ただし、当然のことながら不就労時間に対する部分は無給となります。

 

育児目的休暇制度 (育児・介護休業法第24条第1項)※努力義務
事業者は、小学校就学前の子の育児に関する目的で利用できる休暇制度(配偶者出産休暇や入園式等の行事参加のための休暇等)を設けるよう努力しよう。

出産立会い休暇については、導入している企業もかなり多くなってきたのではないでしょうか。とはいうものの、この制度はあくまで「努力義務」であり、有給か無給かも会社によります。

4. 児童手当法

児童手当法は、子供を養育している保護者に児童手当を支給することによって、子供の健康と健全な育成をおこなうことを目的に制定されたものです。この「児童手当」は、自治体に認定請求書を提出すれば、下記内容で毎月支給されます。

対象 1人あたりの支給額(月額)
0歳〜3歳未満 15,000円(一律)
3歳~小学校修了前 10,000円(第3子以降は15,000円)
中学生 10,000円(一律)

ちなみに、児童手当には下記内容で所得制限があります。

扶養親族の数 年所得額(単位:万円) 年収入額(単位:万円)
0 622 833.3
1 660 875.6
2 698 917.8
3 736 960
4 774 833.3

この児童手当金は、申請した翌月から支給対象となります。たとえば4月に出産し同4月中に申請をすれば、5月分から支給対象になり、6月に5月分が振り込まれます。その後は4ヶ月分が5ヶ月目にまとめて支払われる、という流れを繰り返します。

ただし、月末の出産・災害・引越しなど、やむを得ない事情で手続きができなかった場合、「出産翌日から15日以内に申請すればOK」という特例もあるので、自治体に確認してみてください。

注意点としては、児童手当金は子どもが生まれたあと、いつでも申請できます。が、過去に遡って手当を受け取ることはできません。よって、生まれたら早急に手続きを済ませるのが良いでしょう。また、毎年「現状届」の提出が必要です。この届けを忘れると手当が受け取れませんので、こちらも併せてご注意ください。

5. 保険関連の法律

健康保険法

■出産育児一時金(健康保険法第101条

会社の健康保険や公務員の共済組合などの、被保険者および被扶養者の出産時に支払われる費用のことです。

支給額 子供一人の出産につき42万円が支給される。
※多胎児を出産した場合は、胎児数分支給される。
※在胎週数が22週未満の分娩の場合、または産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は、支給額が40万4,000円となる。

公益社団法人 国民健康保険中央会が出している、都道府県別に算出されている正常分娩の平均的な出産費用(平成28年度)情報によると、東京都の出産平均費用は621,814円だそうです。出産育児一時金の42万円があれば、自己負担の実費は約20万円になります。出産ってかなり費用がかかるので、一時金の存在はかなりありがたいですね。

ちなみに、出産費用の平均額が一番安かったのは鳥取県の396,331円。出産育児一時金で約2万円のおつりが返ってきますね。都道府県によってこんなに出産費用に差があるのか……。(出産費用が出産育児一時金を下回った場合、所定の手続きを取れば、余ったお金を受け取ることができます)

 

■出産手当金(健康保険法第102条)

女性労働者が出産のために会社を休む間、給与が受け取れない場合において、その休み(産前産後休業)の期間を対象に、健康保険から支払われる手当金のことです。

対象 会社の健康保険、公務員等の共済組合に加入している本人
支給額 産休に入る前日から12ヶ月間の標準報酬額月額を30で割った金額(=日給)の3分の2の金額を1日あたりの支給額とする。
対象期間 産前42日(多胎妊娠は98日)・産後56日間の間、労務に服さなかった期間について支給される。

出産が予定日よりも遅れた場合、その遅れた期間についても支払われます。

 

■健康保険料の免除(健康保険法第159条)

産前産後休業中、育児休業中の健康保険料の支払いは、会社から健康保険組合に申し出ることで、本人負担分、会社負担分ともに免除されます。

 

雇用保険法

■育児休業給付金(雇用保険法第61条第4項)

育児休業を取得する労働者のうち、一定条件を満たす方が、その育児休業取得中に労務に服さなかった期間について、雇用保険から支払われる給付金のことです。

対象 ・1歳(または1歳2ヶ月、条件にあてはまる場合は1歳6ヶ月または2歳)に満たない子を養育するために育児休業を取得する一般被雇用保険者
・育児休業取得前の2年間で、1ヶ月に11日以上働いた月が12ヶ月以上ある。
支給額 育児休業開始から180日目までは月給の67%、180日目以降は50%が支給される。
対象期間 育児休業取得の間、労務に服さなかった期間について支給される。

 

■雇用保険料の免除

こちらは制度ではありませんが、産前産後休業中、育児休業中に、会社から給与の支払いがない場合は、雇用保険の支払い義務はありません。

 

厚生年金保険

■厚生年金保険料の免除(厚生年金保険法第81条)

産前産後休業中と育児休業中の厚生年金保険料の支払いは、会社から年金事務所に申し出ることで、本人負担分、会社負担分ともに免除されます。

まとめ

文章にするとかなりボリュームがありましたね……。その他にもあるにはありますが、妊娠・出産・育児に関して労働者を守り、助ける法律はこのあたりかと思います。よりわかりやすくするために、図にまとめてみました。

実際には……?

いかがでしたか? 冒頭にも記載したとおり、私は初めて出産・育児に関する法律の内容を知ったとき、「国、けっこう寄り添ってくれている……! 」と驚きました。

では実際の現場(職場環境)はどうでしょうか?

記憶に新しい話題だと、東京医科大学が入学試験において、女子受験生を一律減点していたという事件がありました。この件に関しては、「結婚や出産で離職する可能性のある女性医師が増えると、将来的に医師不足になりかねない」といった意見もあります。

この事件には、女性差別や医療現場のマタハラ、労働環境問題など、複数の課題が含まれています。国(法律)は「労働者が職業生活と家庭生活の両立がしやすいようにする」としているものの、現実のほうは昔の慣習の影響がまだまだ強いのかもしれません。

また、他社に勤めていた私の知人女性の話ですが、彼女はつい先日、妊娠出産をきっかけに会社を退職してしまいました。

昨年、産前産後休業と育児休業を取得して無事子どもを出産し、今年の4月より職場復帰をしました。「子どもも生まれたことだし、一生懸命働きたい!」と話していた彼女でしたが、退職の約1週間前に上長に呼び出され、「無理に働かず、子どもの傍にいてあげたほうがいいんじゃない? 」という旨の話をされ、そして翌週には退職したとのことです。

彼女は身体が強いほうではなかったため、産後も体調を崩しがちでした。また子どもも熱を出しがちで、そのため彼女は会社を休んだり早退したりしがちだったと言います。

会社を休むたびに、複数の関係者に謝罪のため直接頭を下げにまわり、仕事上関わっていない人にも「どうして私たちには謝罪しないの? 」と言われていたそうです。後輩にも、言葉では「大丈夫ですよ」と言われながらも、子どもが熱を出して早退するたびに目の前でため息をつかれたり、できなかった仕事を引き継ぐたびに嫌な顔をされていたとのこと。

「働きたい気持ちはあるけれど、会社側としては、勤務が安定しない私にルーティン作業を振ることも、重要な仕事を回すこともできず、すごく仕事を任せづらかったと思う。経営が厳しい状況のなか、会社の戦力になれない私は、正直迷惑な存在だったはず」

「法律的には、上長に促されたかたちでの退職なので“会社都合の退職”になるが、人間関係あっての仕事。人間関係が悪くなってしまい、会社に迷惑をかけながら、自分にとって辛い状況で働き続けることもできないので、会社が要望するとおり“自己都合の退職”にした」

と話していました。妊娠、出産前は会社に貢献し、社長や従業員からの信頼も厚かった彼女が、復帰半年の間で退職となってしまったことに、私はただただ衝撃を受け、「人間関係あっての仕事」という一言を重く受け止めざるをえませんでした。

このエピソードに、「こんなことは許されない」、そう深くお怒りになる方も、きっとたくさんいらっしゃるでしょう。私も深くそう思う一方で、こういうことが「現実」となってしまっていることもまた、認めたくない状況として、今も日本のどこかで起こっているのだと思います。

そして、彼女の勤めていた会社が困っていた状況も、まったく1%も理解できないわけではありません。

国の法律と現場の対応には、大きなズレがあるのだと感じました。

しっかりと出産、育児関連に向き合っている会社はたくさんあるでしょう。でも、十分に対応できていない会社もまた非常に多いと思います。

そんな世の中だからこそ、まず自分自身がどれだけ知識をつけ、どう対応していくかが重要だと思います。そしてそのような従業員に対し、会社としてはどんなサポートができるのか、互いに考え話し合い、擦り合わせていく必要があるのではないでしょうか。

もしも、サポートしてくれる会社にお勤めのあなた、素晴らしい会社を選ばれたんですね。

これは、私からの個人的なお願いなのですが……もしよければ、会社(役員)と担当者に、ひとことだけでも労いの言葉をかけていただけたらいいな、と思います。たとえそれが法律で定まっていて、対応して当然のことで、あなたの権利であったとしても、おそらく役員と担当者は、制度の維持向上のために見えないところで頑張っていらっしゃっていて……そのひとことで彼ら、彼女らの頑張りが報われるのであれば、それはとても素敵なことだと思うのです。

ちょっと重い締めくくりになりましたが、まずは出産・育児に関するベース(法律)を知っていただきたく長々と執筆しました。次回は、法律で定められている最低限の内容にプラスアルファで、保険組合や各自治体が頑張っている取り組みをご紹介します! これは知って損なしですよ。お楽しみに!

以上、ららでした。

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星のステッキでお菓子を出すことができるのはリトルツインスターズのララちゃんで、私は出せません。 ちなみにキキくんではありませんが、双子の片割れはいます。街で見かけても間違えないでね。

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