こんにちは。アートディレクターのぺちこです。
今回、これからWebデザイナーを目指す人、またWebデザインへの興味を深めたい人に向けた内容を、私の経験を通してお届けしようと思います。
はじめに
タイトルに「まわり道」とあるとおり、私がデザイナーになるまでの道は一直線ではありませんでした。美大にも専門学校にも通えず、半ば諦めながらぐねぐねと歩いてきました。
でも別にそのこと自体はどうでもよくて、「普通に就職したけど今からデザイナーを目指したいんだ」とか「デザイナーになるには絶対美大を出ないといけないんだろうか」とか「今からじゃ手遅れなんじゃないか」など、学生時代に私が漠然と抱えていた不安と同じような悩みをもつ人たちの背中を、少しでも後押しできると良いなと思っています。
私自身は大それたデザイナーではないですし、どれだけの説得力があるかは分かりませんが、「よし、頑張ろう!」と思うきっかけのひとつになれば嬉しいです。
きっかけとはじめの一歩
子どもの頃に「Web」に触れた経験
家にPCがやってきたのが小学6年生の頃、当時インターネットにそこそこハマっていた同世代女子のあいだでは「キラキラサイトづくり」が空前のブームでした。ここについて語るとブログ一本書けるので、検索中に偶然見つけたnoteの記事をそっと置いておきます。
- 平成3年生まれのインターネットメモリアル(ホームページ作成編)
https://note.mu/misakichie19/n/n65698ff3ae65
見よう見まね、htmlを理解するということはすっ飛ばして「とりあえずいろいろ作っていた」時代。2年ほどで離れていきましたが、10年後に「Webをやりたい」と思った原点は、ここにありました。
ものの本質をどう見るのかを考えた「デッサン」の経験
ざっくりと「デザイナーになろう」と思ったのは高校生の頃でした。「Web」がどうというよりも、単純に「美術が好きだったから」、そして「好きなことを仕事にするならデザイナーかな?」と思っただけ。
でも、ならば「美大に行こう!」と決め、部活もやめて予備校に通い始めました。
予備校に通ったのは一年間。基礎科クラスでひたすらデッサンをしていました。目の前にあるものを、どうすればより現実的に描くことができるのか。初めてのデッサンは、四角いものを四角く、丸いものを丸く、ただその形のことだけを考えて描いていたと思います。
1年間で学んだことは「ものの見方」。ものがそこで静止している状況を作り出す空気や重力、色がその色に見えるための光、固いものが固そうに見えるためにはどう描けばいいのか。
当時はデッサンを上達させることに必死でしたが、この見方や考え方を学んだことは、今もなお、私のなかでとても活きています。
「デザイナーに向いていないって気づいたときにどうするの?」視野の狭さに気づいたひと言
今デザイナーになろうと考えている人も、きっと当時の私と同じように「芸大・美大・専門を出ないとデザイナーにはなれない」と思っている人は多いでしょう。だからこそ私も予備校へ飛びつきました。
そんな最中に言われた言葉に、ハッとしました。
「美大に行きたい気持ちは分かるし、専門で学びたいのも分かる。でもデザイナーに向いてないって気づいたときに、そこに”違う道”の選択肢はあるの? もっといろんなことを学んで知識をつけて、それでもデザイナーになりたいと思ってから進むんじゃダメなの?」
この言葉は「美大に行くんだ!」と必死になっている当時の私にとっては残酷な言葉でもありました。
けれども同時に、「美大」も「専門学校」の実態も知らず、「デザイナー」が何をしている人なのか、何に魅力を感じているのか、それすらもはっきりとわかっていないことに気づかされた言葉でした。
ここから、私のまわり道デザイナー人生が始まったような気がします。
デザイナーとして就職するまでの道
結局、普通の四大に進学したものの、そう簡単に諦められるものでもなく……。そこからは「何でもいいからチャンスがあったら飛びついていこう」という姿勢に変わりました。
そんな中で、「デザイナーとしての就職」に大きく関係していたことと、そこで学んだことをご紹介します。
デザインサークル時代
- なんでもいいから「なにかを作る場」をつくる
- 「なにかを作っている人」を知る
- 「作ったものが誰かに見られる」ことを経験する
アルバイト時代
- 「デザイナーになりたい」ということを誰かに伝える
- やりたいことと実際のギャップを「学び」に変える
- 消極的にならないことがチャンスをつくる
なんでもいいから「なにかを作る場」をつくる
大学ではとにかく「デザイン」と銘打ったサークルに入り、そこで初めて「Illustrator」「Photoshop」「Dreamweaver」を知りました。この3つ、今振り返ってもWebデザインを始めるのには大事なソフトですね。
アルファベットの「R」をなぞってベジェ曲線を学ぶところから始まり、年に数回の展示会に向けて作品を作ったり、部員同士で年賀状をつくって送り合う文化もありました。
美大に通っていない人が圧倒的に足りていないことは、知識はもとより「なにかを作る経験」です。自主制作 / 課題問わず、絶えず何かをつくる環境にある人とそうでない人では雲泥の差。迷っている時間があるならば、とりあえず手を動かしてみてください。
「なにかを作っている人」を知る
私の場合、サークルというひとつの組織にいることによって、周りには自然と「なにかを作っている人」がいました。自分でモクモクと作るだけでなく、時には誰かの作品を見て刺激を受けたり、自分にはできないことをやってのける人を見て悔しいと感じる経験をすることはとても大切です。
ライバルがいたほうが燃えるし伸びる。ありきたりですが、そういうことです。そのために専門学校のような場所に行くこともひとつの手だと思います。
そして、尊敬する誰かをもつことも大事ですね。急に手の届かない大御所を見て「私なんかにできる気がしない」と思ってしまうならば、もっと身近な場所に「追いつきたい」と思う人を探してみましょう。
私はここでWebをつくっている先輩たちを見て、小学生の頃のWebに触れた経験を思い出しました。それをきっかけに「デザイナーになる」という漠然とした夢から「Webデザイナーになる」という具体的な夢へと変化しました。
「作ったものが誰かに見られる」ことを経験する
さきほど「展示会に向けて作品を……」という話をしましたが、(今思えば見るのもツライような)作品をつくって不特定多数が見れる場所に展示することもありました。クオリティ? そんなものはどうでもいいのです(笑)。
いろんな人の作品が横に並び、それをまったく知らない人たちが目にする。知らない人たちがそれをみてメッセージを残してくれたり、見学にきてくれたりする。そんな風に「自分たちの作ったものが次のアクションに繋がる」という経験は、とても貴重なものです。
デザイナーの仕事は、形はさまざまですが、世の中の多くの人の目にふれるものです。学生の戯れだと言わずに、どうぞぜひ、仕事にする前にそんな経験をしてみてください。その経験を「楽しい」と思えたり「次はこうしよう!」と前向きに思えるのならば、きっとデザイナーに向いてるんじゃないでしょうか。
「デザイナーになりたい」ということを誰かに伝える
これもありきたりですが、「やりたいこと」を誰かに伝えつづけていると、その誰かがきっかけを運んできてくれることもあります。
私の場合は、高校時代に一緒に美大を目指していた友人から「Illustratorを使った仕事なんだけど」とアルバイトを紹介してもらいました。そんなバイト、求人サイトじゃ見たことありませんでした。
やりたいことと現実とのギャップを「学び」に変える
とはいえ、「Illustratorを使った仕事」が「Webデザイナーになる」ことに直結しているようには思えませんよね。実際、当時の仕事は以下のような、教科書によくありそうな図形をパスで描くという仕事でした。
確かに地道で、夢見ているようなデザインとは遠いどころか、Webですらありません。けれども、そこで「私のやりたいことはこれじゃない!」と投げ出してしまうのは自分の学びのチャンスを自ら潰してしまうことと同じです。
この地道な作業のおかげもあってか、今となってはIllustratorでアイコンなどをぽちぽち作るのに苦労をすることはありません。「操作に慣れる」ということも、ひとつ大切な学びです。
今後デザイナーとして就職をしていくと、「あれをやりたいのに、いつもこんな仕事ばっかりだ」と思うような小さな仕事が長く続くようなこともあるでしょう。でもそれは、将来大きく羽ばたくために必要不可欠な学びを与えてくれます。「いやだな」とうんざりする前に、そこにどんな学びがあるのかを模索しましょう。
消極的にならないことがチャンスをつくる
美大も出ていない、実務で何かをした経験なんてもちろんない。そんな自分はデザイナーになんてなれない。そんな風に自分から消極的になって諦めていたりしませんか?
私も同じでした。サークルで作ったものが、どうWebデザイナーと結びつくのか分からなかったですし、所属していたゼミのWebサイトなど、時々機会があって作ることもありましたが、世の中で見るようなサイトに比べたら目も当てられません(笑)。
それでも、頑張ってなにかを作ってきたならば、そしてデザイナーになりたい気持ちが十分にあるのならば、とりあえずかき集めて挑戦してみてください。急に正社員で挑むのが不安であれば、まずはアルバイトをさせてもらえそうな場所を自ら探して応募してみてください。
「実際に仕事にする」ことで、今まで以上の経験と学びが待っています。
「仕事にする」ことで広がるスキル
その後、図形制作のアルバイトを経て、Web制作・開発会社にインターンとして拾ってもらうことになりました(そしてそのまま就職しました)。そこではとにかく必死に、実務で先輩に教えられながら学んでいったので、ここで上手く話せるような「勉強のしかた」みたいなのは正直あまりありません……。
けれど、ひとつ言えるのは、とにかく新しい経験の場がたくさんあるということです。
ひとりで個人的に作っているだけでは、なかなか知識の幅も広がりません。仕事になって、分からないことが出てきて、解決するために勉強をする。デザイン以外の職能の経験だけでなく、いろんな職種の人とコミュニケーションをとったり、お客さんと対話をしたり、刺激を受ける場面がそこかしこに転がっています。
分かりやすく職能で言うと、デザイン・コーディング・CMS組み込み・ディレクター業務。チームの売上をみることもありました。「デザイナーとしてバリバリやっていきたい!」という思いからすると、それ以外の仕事も多くて煩わしいと思うことがなかったわけではありません。
けれども、違う職域のことを知る・やる、お金のことを考えるということは、例えばいつかデザイナーとして一人立ちすることがあったときに必要とされること。
そんな風にひとつずつ、大小さまざまな経験を重ねる機会を、なるべく逃さないでください。
現在の仕事と今も大切にしていること
この記事の中で、恥晒しのように昔作っていたものもお見せしてきましたが、あんなものしか作れなかった私も、今はどうにかWebデザイナーとしてお仕事をしています。LIGではこれまでに、いろんなサイトの制作に携わらせていただきました。
まだまだ足りないと思うものばかりですが、美大に行っていないことを後悔はしていませんし、今となっては未練もありません。専門性の高い学校に行くか行かないかということを、良し悪しや正解不正解で語るつもりもありません。行っていないからこそやるべきこともあると思うし、行っていなくても強みになることもあるはずです。
大事なのは、自分の現状にちゃんと向き合って、必要なことを実行にうつすことです。
「つくる」ことを繰り返す
前述したように、美大や専門学校で学んできた人たちと圧倒的に違うのは、ものづくりにかけてきた時間だと思っています。体系的に学びながら実際にものをつくってきた人たちと大きく乖離していることは、変えられない事実です。
だからこそ、就職してデザイナーになったからといって、「仕事だけ」になってはいけないと思っています。
仕事ではできないようなことをやるも良し、仕事とは趣向の違うものづくりをするも良し。私も「なにかを作って誰かに見られる」という経験を繰り返しながら、自分の足りないものに気づくこともあります。
「次になにをしたいのか」を常にもつ
今、目の前にある仕事しか見えていないと「なんでこんなことやってるんだろう」と思ってしまうし、漠然と自分の将来が不安になってしまうこともあります。
そうならない為にも、次(半年後、1年後、5年後……)はなにをしたいのか、をなるべく考えるようにしています。「デザイナーとして」もそうですし、もっと長く人生の流れのなかで考えるのも良いと思います。
ふと振り返ると、Webデザイナーを志したものの、私の根っこには「デザイナーになる」というもっと大きなものがあったはずだ、と思い出すときもあります。自分のなりたい姿を思い描いて、次は何をすべきか考える。そうすると、今やっていることも、大きな目標に対しての「まわり道」だなと感じます。
まわり道しながら “ 自分らしい ” デザイナーに
一本道ではなかったことで諦めかけるときもありましたが、今ではそんなまわり道が自分らしい歩き方だなと思っています。
「普通に就職したけど今からデザイナーを目指したいんだ」「今からじゃ手遅れなんじゃないか」と思っている方に、簡単になれるよ! と安い言葉をかけるつもりはありませんが、デザイナーが「デザインのことだけできればいい」わけではない場面は結構あります。普通に就職してひととおりの経験をしたのならば、それを活かせるデザイナーを目指すまでです。
「デザイナーになるには絶対美大を出ないといけないんだろうか」と思っている方、そこは必ずしもイコールではないです。だから、自分の境遇ゆえに諦めるなんてもったいないことはしないでください! きっと、経験に応じて活躍の場は違ってくるはずなので、これから進学するのであれば、よくよく考えて、選んでみてください。
おわりに
長々と熱く書いてしまいました……。デザイナーデザイナーと連呼しているけれど、私の課題はまだ「Webデザイナー」の域を脱しきれていないことです。少しずつお仕事でも、Web以外のことをやるようになってきましたが、大部分はWebが占めています。
Webのお仕事は大好きです。インターネット環境さえあれば世界中の人が見れるという特殊な場であることもすごく魅力的です。でも、「デザイナーです」と言えるようになるまでまだ長い道のりがありそうです。
デザイナーになりたいと漠然と思っているみなさんも、まわり道しながらでも、少しずつ「なりたい姿」に近づけるように、一歩、踏み出してみてください。
それでは、また!
キャリアアップ
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