【プロゲーマーインタビュー第1回】プロゲーマーはいくら稼いでるの?日本のe-sportsを牽引するチョコ&ももちに聞いてみた

【プロゲーマーインタビュー第1回】プロゲーマーはいくら稼いでるの?日本のe-sportsを牽引するチョコ&ももちに聞いてみた

しょごたん

しょごたん

こんにちは、しょご(@shogo_drumer)です。

突然ですが、プロゲーマーってめちゃくちゃ夢がある職業だと思うんです。
毎日ゲームをやって、大会賞金を稼いで。しかも、いまは “e-sports” としてゲームがスポーツとして認知されはじめており、プロ野球選手を目指すのと同じくらい、プロゲーマーを目指すのが一般的になる時代が今後やってくる……!

とはいえ、もちろんプロゲーマーもラクな仕事ではないはず。
そこで今回、プロゲーマー夫婦として注目を集めるももちさんとチョコさんに、実際どれくらい稼いでいるのか、またどうやってプロゲーマーになったのか、今後の展望など、根堀り葉掘り聞いてきました!

ももちさんprofile 人物紹介:百地(ももち)
世界最大級の北米プロゲーム団体『Evil Geniuses』(Team EG)所属のプロ格ゲーマー。2014年ウルトラストリートファイターⅣ公式世界大会で優勝し、世界王者の称号を獲得。 さらにEVO2015で優勝し、世界大会2連続優勝を果たす。
Twitter:@momochi212
チョコさんprofile 人物紹介:チョコブランカ
世界最大級の北米プロゲーム団体『Evil Geniuses』所属プロゲーマー。日本人女性初のプロ格闘ゲーマーである。ももちと共に活動し、世界初のプロ格闘ゲーマー夫婦。
Twitter:@chocoblanka

(※2017年2月17日追記:お2人とも現在は、「Evil Geniuses」から海外e-Sports団体の「Echo Fox」へと移籍をしています)

ホテルマンからプロゲーマーへ。自費で海外大会に参加していたアマチュア時代

ももちさん
― そもそも、プロゲーマーを目指すキッカケはなんでしたか?

ももち:もともとすごくゲームが好きで、国内の全国大会に出て優勝を目指して活動をしていたんです。そのときは海外の大会とかは夢にも思っていなかったですし、プロゲーマーというのが存在することすら知らなかったんですよ。それが梅原大吾さんという方が初めてプロゲーマーというものになり、「プロゲーマーって職業があるんだ」と気づき、自分も目指してみようと思いました。

 
― チョコさんはどういったキッカケだったのでしょう。

チョコブランカ(以下、チョコ):私は目指してたというより、梅原さんがプロになられて、「もしかしたら、ももちもプロになれるんじゃないかな」と思い、彼をプロゲーマーにしたいという思いでサポートしていたら、一緒に声がかかって。私はビックリという感じです(笑)

 
― なるほど。ちなみにボクからしたら「実際になろう!」と思っても何から始めればいいか分からないですし、調べても分からない。どうやってプロゲーマーを目指せばいいんですか?

ももち:そうですね、今でこそ格闘ゲームのプロゲーマーというのが国内でも増えてきているんですけど、僕らがプロになったときは梅原さんと数名しかいなかった。なので、「大会で結果をだすぞ!」「注目してもらうぞ!」というのしか策は思いつかなかったんです。
しかも、当時はアマチュアなので自分の自費で海外の大会に参加していたので、声をかけてもらう前に、ひたすら大会に出る、活躍する、ということだけでしたね。

 
― 世界の大会ってどれくらいあるんですか? 海外で有名な大会だとEvolution(通称EVO)くらいは知っているのですが。

ももち:ヨーロッパでもありますし、アジアでもシンガポールや中国とたくさん開催されています。プロを目指すぞって思ってからは、韓国やオーストラリアの大会に行ってました。Evolutionに参加して注目を集めようと思っていたのですが、直前に開催されたオーストラリアの大会で活躍することができ、声をかけていただけました。

 
ももち&チョコブランカ2

― プロになると決意して、実際に声がかかるまでどれくらいの期間だったのですか?

ももち:1年くらいですね。その1年間は自腹で海外に行っては大会に出場するというのを繰り返してました。旅費はもうほんと生活費からというか、自分の貯蓄からですね。

 
― そのときのお金は、どう工面されてたのでしょう。

ももち:普通の仕事をしていました。専業プロゲーマーになるまでは4、5年ホテルマンをやっていて。そして休みの日に大会に出たり、有給を使って一週間くらい海外の大会に参加するという流れでした。
ずっと名古屋で活動していたのですが、一昨年に東京にきて、そこからプロゲーマー1本で活動を開始した形です。普通に仕事をするような感じで、何時間もゲームをする生活を送っています。

 
― いまはプロゲーマーとして相当稼がれているんじゃないでしょうか? 差し支えなければ、2015年ってどれくらい稼がれたんですか?

ももち:たぶん大会賞金だけで、1000万弱くらいですかね。

 
― 1000万! 夢ありますねえ。失礼ですが、賞金で買った一番高いものは?

ももち:生活感でてしまうのですが、洗濯機とか冷蔵庫とか。

チョコ:ちょうど引越しのタイミングだったので、10年ずっと使っていたのを買い換えた感じです(笑)
あとは、ゲームに必要な新しい機材を揃えたりですね。いま自分たちのゲーム動画を配信しているんですが、機材が一つひとつ高いので。

「結果を出す」と覚悟を決めて上京。仕事としてゲームして、息抜きとしてゲームをする生活

ももち&チョコブランカ5

― プロゲーマーになられて、一番苦労したことはなんですか?

ももち:やはり、結果がでないときというのが一番つらかったですね。ホントに練習したくないってときもあるんですよ。今日はゲームやりたくないなって。仕事と一緒です。やりたくないけど、やらないとダメって時がある。そこはプロになる前と後で違うところですね。プロになる前だとそこまで苦しい思いをしてなかったので。

 
― チョコさんはそばでももちさんを見ていて、どういう思いでしたか?

チョコ:いやあ、もう東京に出てくるまではなかなか結果が出なかった。名古屋だったので、活躍の場もなくて、「どうしよう、どうしよう」みたいな。応援してても結果が出ないというのは私もつらかったですし、私自身もプロ辞めようかなって何度も思ってました。
そして、「このままやり続けていいんだろうか」とすごい悩んだんですけど、覚悟を決めて東京に出てきた感じです。

 
チョコさん

― 結果が出たから東京ではなく、とりあえず覚悟を決めて東京へと。

ももち:そうですね、結果を出すために東京に来ました。

 
― ゲームを嫌いになったことはありますか?

チョコ:あるんですけど、時間が経つとゲームをやろうとしてる自分がいるんですよ。

ももち:大会に負けた瞬間とかもう触りたくもないし見たくもない。ホテルの部屋に練習用ゲーム機を持っていってるんですけど、大会終わったあととか部屋に練習用のゲーム機が置いてあるのを見て「はぁ……」となります。ですが、1時間くらいすると次の大会に向けて練習をしてたり。嫌になる瞬間はあるけど、気付いたらやってる。息抜きでもゲームをするという(笑)

 
― ゲームが仕事じゃないですか、本当に何も予定がないときは何をしているんですか?

ももち:ゲーム練習の合間にゲームをしてます(笑) 違うゲームをしたり、最近だとスマホゲームとか、気楽にできるものをプレイしてますね。

「格ゲーには若いトッププレイヤーがいない」忍ismが日本のe-sportsを変える

ももち&チョコブランカmain

― 少しずつe-sportsが注目されていますが、まだまだ日本では認知が弱いですよね。おふたりは株式会社 忍ism(シノビズム)を立ち上げて、今後どういう風にe-sportsを盛り上げていきたいですか?

ももち:e-sportsとなるとかなり広いジャンルがあるのですが、ぼくらは格闘ゲームがメインなので、まずは格闘ゲームに特化してアクションをしていこうと思ってます。
格闘ゲームって高齢化が進んでいて。ぼくも今年で30歳ですし、梅原さんも34歳。トッププレイヤーといわれる層が30を超えているんですよ。他のジャンルのゲームだと10代〜20代前半のトッププレイヤーがすごく活躍している。なので格闘ゲームにも若手がどんどん出てきてほしいので、育成やイベントなどがいま忍ismでやろうとしていることです。

 
― 具体的には?

ももち:今年やろうとしてることは、20歳以下のプレイヤーを募集して育成していくというのをやろうとしています。
ぼくらの世代ってゲームセンターが当たり前のようにあって、ゲームセンターにいったら年上の人たちが教えてくれたんですね。「一緒にやろうぜ!」みたいな感じだった。でも、いまってゲームセンターが潰れていってまして、若手の子たちのリアルな場がない。

 
しょご

― たしかに、ゲームセンター減りましたねえ。

ももち:そうなんですよ。ネットで話して対戦とかもあるんですけど、どうしても輪が広がりづらい。だから、ぼくらが育成するのもそうですし、イベントという場をつくってあげて、そこでみんなが集まるような機会をつくっていく。
イベントには幅広い年代の方がきてくれてるので、それこそ自分たちと同じ年代の方も来てくれますし、10代、20代前半の若手も来ていただいてるので、参加者同士で交流して輪が広げていくというのが、いまやっていることですね。

 
― 日本のe-sportsを盛り上げるために必要なもの、また課題に感じていることってどういったものでしょうか?

チョコ:やっぱりスポンサーの問題は一つあると思います。結構いろんな大会でスポンサーをしてくれている会社さんとかもいらっしゃるんですけど、ゲーミングPC会社とかパソコン周辺機器とか、まだゲーム周辺の企業だけで。もっとそれ以外の、食品メーカーさんだったり、ゲームと関係ないところからも注目していただいてスポンサーしていただけるといいなと。

あと、やっぱり「ゲーム=悪」みたいなイメージがまだまだ根強いので、そういうところを少しずつ変えていけたらなと思います。

 
― 親に「あんた、いつまでゲームやってんのよ!」ってよく怒られましたからね……。e-sportsでこういうのがあるんだっていうのを広めていければ希望は見えますね。

「強いだけではダメ」プロゲーマーに求められるのは人間性とモチベーション

ももち&チョコブランカ3

― プロゲーマーになるために必要なものはなんでしょう?

ももち:強いだけじゃダメなんですよね。かといって強くないとダメなんですが。
やっぱりプロというものは、憧れの存在であるべきなんです。「その人みたいになりたい」「その人がやってるから、そのゲームやってみよう」「その人が使ってるコントローラーを自分も使いたいな」みたいに思われる存在を目指さないといけない。なので、強さもそうですし人間性も大事ですね。

チョコ:あとはモチベーションコントロールも大事ですね。いかにモチベーションが保てるか。本当に心折れそうになる時があるんで、練習をやっててもつらいときはありますし、練習をすごい頑張ったからといって結果がでないときもあるので、それでもやるぞっていうモチベーションコントロール。
めちゃくちゃゲームが好きというモチベーションでもいいですし、これは仕事だと割りきってプロゲーマーとしてのプライドを持つでもいいですし、優勝して賞金を稼ぐぞというのをモチベーションにしてもいいので、ブレない心を持つことが大事です。

 
ももち&チョコブランカ4

― ぼくがイチからプロゲーマーを目指します!となった場合、何から始めたらいいでしょうか?

ももち:まず仲間を絶対つくったほうがいいです。一人でやるってなるとすごい敷居が高いですし、モチベーションを保つためには相当な意思がないと難しい。同じくらいの強さの人や、師匠みたいな人に教えてもらいながら上達していくのが一番速いし、モチベーションを保ちながら楽しめるのかなと思います。
なのでLIGさんにはゲームスペースがあるってすごくいいなと思いますよ。あそこでワイワイすることでゲーム以外でも繋がりができたりするのは大事だなって。

 
― さいごに、ストリートファイターでオススメのキャラクターってありますか?

ももち:リュウはすごくオススメです。やっぱりリュウってストリートファイターの基本が詰まってるので。ズルじゃないですけど、他のキャラクターだと強力な技があったり、強力な投げ技があって、それをやっていれば勝ちやすいとかがあるんですが、リュウだと格上のプレイヤーに勝ちづらいんですよね。ちゃんと実力がないと勝てない。なので基本をしっかり身につけた上で他のキャラクターを使うと上達しやすいです。

ちなみにプロゲーマーだと、結構イメージが大事なので、必ずしも強さでキャラクターを選んではいないんですよ。梅原さんですとリュウですし、ぼくだとケンを使ってますし。
強さでキャラを選んだら大会で結果は出せるかもしれないけど、プレイヤーや周りの観客の支持は得られなかったりするんですよね。「あのキャラクターでがんばってほしかったなあ」ってファンもいるので。結果を出すのか人気を取るのかのバランスが難しいんですけどね(笑)

おわりに

e-sportsと呼ばれるように、プロゲーマーはスポーツ選手と同様、夢を見せる仕事でもあります。おふたりのお話の中でも、「強いだけではダメ」というのが特に印象的なインタビューでした。

海外では、学校の授業にe-sportsが取り入れられるほど。忍ismとして、ももちさん、チョコさんが日本のe-sportsを今後盛り上げてくれることに期待です! 

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しょごたん
しょごたん バックエンドエンジニア / 徳山 翔悟

エンジニアのしょごです。昼はシステム開発に奮闘し、夜は女冒険者として剣とか魔法とか扱ったり、たまにバンドでライブとか、イベントでコスプレしたりしてます。

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