労働基準法とは?休憩時間・みなし残業や育児・産休について社労士に聞いてみた

労働基準法とは?休憩時間・みなし残業や育児・産休について社労士に聞いてみた

Yurie Sasaki

Yurie Sasaki

こんにちは、管理部のゆりえです。

突然ですが、みなさん労働基準法が定めている事柄について、どのくらい知っていますか? 労働者と使用者のどちらもが守るべき大切な法律ですよね。
今回は意外と知らない労働基準法の基礎知識について、勤怠管理システム「インターネットタイムレコーダー」さんのご紹介で、社労士の勝山竜矢さんにお話を伺いました。

勝山さん 人物紹介:勝山竜矢

企業の総務部人事課、営業で実際の現場を経験したのち、社労士として独立。長年現場で培った経験と実績を強みとして、“日本一お客様に愛される社会保険労務士事務所”をめざし、中小企業の経営者の立場に立ったサポートを行なっている。

使用者も労働者も、気持ちよく働ける環境づくりのために見直しておきましょう。

労働基準法とは

そもそも、労働基準法ってどのような法律なのでしょうか?

労働基準法とは、使用者と労働者が結ぶ労働条件の最低基準を定めた代表的な法律で、1947年に制定され、これまで幾度となく改正されてきました。
民法上、契約の自由は保障されているものの、実際の社会的な立場などから見て使用者より契約締結にあたって立場の弱い労働者が、対等な立場で契約を結ぶことができるように労働者の保護を主旨とした法律であり、労働条件の最低基準を定めているものです。

労働契約・賃金・労働時間・安全と衛生・災害補償・就業規則など、労働条件の基準を定めた法律。一九四七年(昭和二)制定。労基法。

引用元:大辞林
https://kotobank.jp/word/労働基準法-10005

前述したとおり労働条件における最低基準を定めたものですから、労働者と使用者の間で締結される「労働条件」が労働基準法に反していれば、それらは最低条件を下回っている部分に関しては全て無効となります。

労働基準法の適用範囲は?

この労働条件の最低基準というのは、日本国内にある事業のみに適用され、職種や国籍を問わずすべての事業者に適用されます。
つまり、日本国内にある外国人の経営する会社や外国人労働者にも、日本人労働者と変わりなく、原則として、労働基準法が適用されます。
これは意外と知らない人もいるので、押さえておきたいポイントですね!

労働時間にはどんな決まりがあるの?

それでは具体的に労働基準法はどのように労働者を守っているのでしょうか。
まずは一番気になる労働時間について、詳しくみていきましょう。

労働時間には種類がある!

実は、ひとくちに「労働時間」と言っても、法律上では「法定労働時間」と「所定労働時間」の2種類に分けて考えることができます。

  • 法定労働時間:労働基準法で定められている(制限されている)、使用者が労働者を労働させることができる時間。
  • 所定労働時間:法定労働時間内で使用者が労働者に対して設定している労働時間。

ちょっとよくわかりませんね。ひとつずつ見ていきましょう。

法定労働時間

休憩時間を除いて、

  • 1週間に40時間
  • 1日に8時間

使用者はこの時間を超える労働をさせてはいけません。
労働基準法では、法定労働時間を超えて労働者を労働させると罰則(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)の適用があります。

でも、残業って一般的に行われているのに、世の事業者で罰せられている人の話を聞くことってあまりありませんよね?
それは、労働基準法第36条に規定されている協定(時間外・休日労働に関する協定:俗に36協定と言う)を使用者が労働者の代表者と締結することで、免罰されているからです。
36協定は、とても大事な協定なんですね。

所定労働時間

使用者が法定労働時間内の範囲で労働者に設定する労働時間です。
朝9時00分始業で17時30分に終業、休憩は1時間、といった雇用契約上の時間のことですね。
使用者と労働者の間で法定労働時間を超える所定労働時間の雇用契約が交わされても、その超えた分は無効となります。

さまざまな働き方に合わせた労働時間制

所定労働時間を決めても、繁忙期はどうしても帰りが遅くなってしまったり、外回りが多く労働時間が計りにくかったりする場合もあるのではないでしょうか。
そうした場合に臨機応変に対応できる「変形労働時間制」という制度をご説明します。

変形労働時間制

変形労働時間制とは、あらかじめ定めた一定期間内(1ヶ月や1年などの単位)で1週間の「平均労働時間」が40時間を超えなければ、法定労働時間を超えて所定労働時間を設定できるという制度です。

A企業では、時期によって繁閑があります。
ですから、閑散期には所定労働時間を短縮し、その浮いた時間を繁忙期の労働時間で充てています。
 
620
 
上・中旬は労働時間を7時間にすることで、月末の週にその労働時間を充てることができます。
この制度によって、総労働時間を抑える効果が期待でき、結果として使用者が支払う残業代を少なく抑える可能性が増大します。

1週間や1ヶ月、1年など期間によってそれぞれ規定が定められています。今回は詳述を割愛させていただきますが、気になる方は下記の参照ページをご覧ください。

参照ページ:Q3.変形労働時間制とは何ですか。|労働政策研究・研修機構(JILPT)

事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間とは、出張時や在宅勤務などで労働者が業務の全部または一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督がおよばないために、当該業務にかかる労働時間を算定するのが困難な場合、就業規則もしくは労使協定(8時間を超える時間を定める場合は必須)で定めた特定の時間について労働したとみなす制度のことです。

B企業では出張時や在宅勤務をする際、事業場外みなし労働時間制を導入しています。事業場外みなし労働時間制での労働時間の扱われ方を2パターンほど見てみましょう。
 

  1. 終日出張の場合
  2. 在宅勤務の場合

 
解説

  1. 終日出張の場合
  2. 終日、出張などにて使用者が労働者の労働時間を算定することが困難な状況であれば、就業規則などで定めた特定の時間について働いていたものとみなします。なお、たとえ事業場外であっても、上司が同行しているなどして実際の労働時間を把握できる場合は、通常通り所定労働時間を超えた労働時間は、残業時間となります。
     

  3. 在宅勤務の場合
  4. 在宅勤務であれば、常に事業場外みなし労働時間制が適用できるかというとそうではなく、下記にある一定の要件をクリアする必要があります。

  • その業務が起居寝食など私生活を営む自宅で行われていること
  • その業務に用いる通信機器が「使用者の指示命令により常時通信可能な状態におくこと」とされていないこと
  • その業務が随時使用者の具体的な指示に基いて行われていないこと

いずれの要件も満たす場合に、在宅勤務における事業場外みなし労働時間制が適用されます。

例からわかるとおり、事業場外みなし労働時間制を導入しても残業代の支払いが必要なケースも存在します。
営業職だから、直帰だからというだけで、事業場外労働時間制を適用されている事業者さんは、労務リスクの実態把握として、今一度、現状を調査されると良いかもしれませんね。

参照ページ:第三十八条の二(時間計算) – 法令データ提供システム|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

休憩時間は労働から離れることを保障された時間

待ちに待った休憩時間。休憩時間は「労働時間の途中で労働から離れることを保障された自由な時間」とされていて、使用者には労働者に休憩時間を与えなければいけないという義務があります。

労働時間が6時間を超え8時間以内の場合は少なくても45分、8時間を超える場合は少なくても1時間の休憩時間をとる必要があります。
では、休憩時間として計算されがちですが実は当てはまらない、誤解のしやすい例を見てみましょう。

  1. 休憩時間中に電話対応すること
  2. 来客対応のため休憩時間中に、オフィスで待機すること

 
解説

  1. 電話対応は労働時間にあたりますので、休憩時間として計算されません。ですから、別途休憩時間をとる必要があります。
  2. 来客の場合すぐに対応できるための時間、つまりすぐに仕事に取り掛かれるようにしている時間を「手待ち時間」と呼びます。手待ち時間は労働時間として計算されます。もちろん、来客対応をした場合も労働時間として計算されます。

サービス残業とみなし(固定)残業制度の違いとは?

先ほど法定労働時間と所定労働時間についてお話いたしましたが、残業時間とは「法定労働時間を超越して労働していた時間」にあたります。
また、法定外労働時間分(残業時間分)は、2割5分以上5割以下の範囲内で割増賃金を支払う必要があります。

残業については下記の2つの言葉をよく耳にするのではないでしょうか。

  • サービス残業
  • みなし(固定)残業

1つずつ見ていきましょう。

サービス残業とは

サービス残業とは、法律上の定義があるわけではなく、一般に労働者が“使用者に対して労働を(残業代を請求せずに)サービスで行っている”ということが由来で、残業時間分の賃金が支払われていないことを指します。

サービス残業は労働基準法の違反となるので、使用者も労働者も気をつけなければなりませんね。
また、残業代は1分から請求が可能となっているため、日ごとに残業時間を切り捨てて計上することも違法にあたります。

参照ページ:労基法三十七条(時間外、休日及び深夜の割増賃金) – 法令データ提供システム|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

みなし(固定)残業

みなし(固定)残業とは実際の残業の有無に関わらず、雇用契約上、一定額の残業時間分の残業代をあらかじめ給与(手当など)にて支給する契約をしていることです。
給与に含まれているのは一定額の残業代ですから、それ以上の残業があった場合は、当然その分の残業代が支払われなければなりません。

そもそも法律上でみなし(固定)残業というものは定められていないのですが、給与に含まれる一定額の残業代を固定化して手当などで支給している場合、労働基準法で定められた割増賃金以上の額であれば、問題はありません。
しかし、下記のような例は違法となります。

残業が多かった月に定額の残業代を超えた分を支払わず、残業が少なかった月に支払われたものとする。
 
(3)みなし残業の例_03_new (1)
 
解説

その月の中で給与に含まれている残業代以上の残業があった場合、超過した残業時間分の残業代が支払われなければならない。

このように、みなし残業の制度が労使ともに正しい認識がされず、サービス残業を生んでしまうケースがあり、近年問題となっています。

休暇にはどんな種類があるの?

さまざまな事情で休暇が必要なときってありますよね。
会社によっては誕生日休暇や結婚記念日休暇などがあるところもありますが、労働関連諸法令で定められている休暇(法定休暇)には、次のようなものがあります。

  • 年次有給休暇
  • 産前産後休暇(産前休業/産後休業)
  • 育児休業・介護休業
  • 生理休暇
  • 母性健康管理のための休暇
  • 子の看護休暇
  • 介護休暇
  • 裁判員休暇

ここでは、いくつかの休暇について見てみましょう。

年次有給休暇

いわゆる、“ゆうきゅう”です。
労働基準法38条では、下記のように定めています。

雇入(やとい)れの日から数えて6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続または分割した10日間の有給休暇を与えなければならない。

雇入れとは、入社のことになります。
そして、年次有給休暇の日数は年を追うごとに変化していきます。下図は、一般(所定労働時間が30時間以上)のものです。

継続勤務年 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5
年次有給休暇の付与日数 10 11 12 14 16 18 20

所定労働時間によって年次有給休暇の付与日数が異なりますので、下記ページを参照にしてください。

参照ページ:労基法三十九条(年次有給休暇) – 法令データ提供システム|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

1年の中で使えなかった年次有給休暇は翌年に繰り越すことができますが、時効が2年と決まっています。「使ってないのに消えている……!」なんてことにならないよう、時効にも注意をしておきたいですね。

産休(産前休業/産後休業)

産休には、「産前休暇」と「産後休暇」の2種類があります。
いずれも賃金の支払いに関しての定めはなく、企業の就業規則や労働協約などで決定されているため、企業ごとに支払いが異なります。
また、この産休中は有給の日数を算定する際に労働日として数えられるので、心に留めておきましょう。

産前休業と産後休業は休業の期間が異なるだけではなく、取得のフローにも違いがあります。それぞれ見ていきましょう。

産前休業

産前休暇とは、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産を予定している女性の労働者から申請があった場合、使用者は労働者を働かせてはいけないというもの。
逆に、労働者本人の希望で産前休暇の申請がない場合は、出産前日までの労働が可能となっています。

産後休業

産前休業が本人の希望であるものに対し、産後休暇とは、“使用者は産後の労働者を、出産の翌日から数えて8週間労働させてはいけない”という使用者の義務になっています。
つまり、労働者本人による希望があっても働くことはできません。

参照ページ:労基法六十五条(産前産後) – 法令データ提供システム|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

育児時間

育児時間について、労働基準法67条では下記のように定められています。

生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求できる。使用者は、その育児時間中その女性を使用してはならない。

また、育児時間中の賃金の支払いに関しては、産休と同じで法律で定めているものはなく、企業ごとに異なります。

参照ページ:労基法六十七条(育児時間) – 法令データ提供システム|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

育児に関して、代表的なもので育児休業に関しては、労働基準法だけでなく育児・介護休業法で詳しく定めています。近年、改正の多い法律でもありますね。

参照ページ:育児・介護休業法 – 法令データ提供システム|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

まとめ

労働基準法について最低限知っておきたいことをまとめてみました。

今回ご協力いただいた社労士の勝山竜矢さんは、勤怠管理システム「インターネットタイムレコーダー」で専任の社労士としてサポートをしている方です。

勤怠管理システム「インターネットタイムレコーダー」

勤怠管理システムのインターネットタイムレコーダー|bit drive

「インターネットタイムレコーダー」は10年の歴史を持つ勤怠管理システムです。
今回の勝山さんのように専任の社労士によるサポートもあり、社労士のセカンドオピニオンとしても活用できます。日頃の悩みを専任の社労士さんに相談できるのは、とっても心強いですね。

インターネットタイムレコーダーの嬉しい特徴

  • タイムカードがデジタル化されるので集計作業が不要
  • スピーディな導入で、工事やメンテナンスも不要
  • 電話やメールでの手厚いサポートで、サポートの満足度が96.8%

インターネットを利用したクラウドサービスのため、安価かつ短期間で導入ができ、管理コストを最小限に抑えた運用が期待できます。

>>他にはどんなことができるの?<<

社員全員が同じ目的を持ち、一丸となって仕事に取り組めるといいですよね。そのためにも、まずは労働時間の管理を見直してみてはいかがでしょうか。

 

【関連リンク】

この記事のシェア数

千葉大学を卒業後、広告のコンサルティング企業にて広告システムの開発、新規事業の立ち上げ、メディアのディレクションなどを経て、2015年にLIGに入社。人事部の発足や、経理・総務・秘書などバックオフィス全般を担いながら、数々の新規事業の立ち上げに助力。現在は経営企画として、スムーズな経営活動がおこなえる環境づくりを目指している。

このメンバーの記事をもっと読む