LIGブログ編集長のMakoです。
弊社が運営するWebクリエイタースクール「デジタルハリウッドSTUDIO by LIG」(通称デジLIG)は、2023年3月に「リーダーズ講座」を開講しました。
- リーダーズ講座とは
- 本気でクリエイターを目指すみなさんの学びを支援すべく、業界歴10年以上のトップクリエイターを講師に迎えお届けするデジLIGだけの特別講座。詳細はこちら
大好評につき、このたび新たに2名の講師をお招きして第2クールをスタートします!
新講師の2人目は、株式会社グッドパッチでソフトウェアデザイナーとして活躍する丸さん(@usagimaruma)。UIデザインにご興味のあるみなさん、ぜひご覧ください。
講師:株式会社グッドパッチ ソフトウェアデザイナー / アーキテクト / デベロッパー 丸 怜里氏iPhone 3GSの登場を機にiOSデベロッパーとしてのキャリアをスタート。2016年にグッドパッチに入社。その後ソフトウェアデザイナーに転向し、UIデザインにおける情報設計の担い手としてさまざまなクライアントワークに従事。現在はDesignOps活動に励む傍ら、デザインツールソフトウェアの研究開発、セミナー講師、イベント登壇などを手がける。 |
聞き手:株式会社LIG Digital Education部マネージャー 林 隼平日本大学芸術学部卒業後、テレビ、ラジオ、Webメディア、プロスポーツイベントなど、複数の媒体にてディレクター職を経験。2018年9月からLIGにセールスメンバーとして入社し、教育事業部に配属(現デジタルエデュケーション部)。自身のクリエイターとしての経験を生かし、現在はマネージャーとしてWebクリエイタースクール事業「デジタルハリウッドSTUDO by LIG」の事業企画、運営を行い、クリエイター育成をミッションとしている。 |
「Apple好き」が高じてUIの世界へ
林:はじめに、丸さんが「UI」に興味を持ったきっかけをぜひ教えてください。
丸:学生時代、「Macのような、手触り感があって美しいインターフェイスを自分でも作ってみたい」と思ったことがきっかけです。
もともとはMacの世界で趣味の開発をおこなっていたのですが、しばらくしてiPhone 3GSが日本でも発売され、iPhoneに目を向けるようになりました。中の技術には同じものが使われているので、Macのアプリ開発技術をそのまま応用してiPhoneアプリを作れたんですね。当時はまだモバイルのアプリ開発を体系的に学べる環境はほとんどなく、私のようなMacからiPhoneにやってきた一部の人たちが積極的に開発技術の情報発信をおこなっており、彼らをフォローしながら、私も技術を学んでいきました。
こうした経験を評価してもらい、新卒ではシステム開発会社に入社しています。いま思うと良い修行の機会であり、当時の環境には感謝しているのですが、ただこのままエンジニアリングの経験だけを積んでいても「UI」に帰結しなさそうだなと思い、転職を決意しました。私の興味関心の中心はエンジニアリングではなく、あくまで「UI」だったんです。
現職のグッドパッチに入社した理由は、「iOSデベロッパー」として自分が好きなiOSの仕事に専念できるから。もう一つは、当時の事業部長と面接で意気投合したからでした。キャリアやスキルの話は一切なく、任天堂「Wii」のUIについてひたすら語り合ったんですよ(笑)。こんな環境なら、自分も長く働けそうだと思いました。
林:UIデザインの第一人者であるグッドパッチさんらしいエピソードですね!
地道な情報発信でポジションを確立
林:「iOSデベロッパー」から「ソフトウェアデザイナー」に転向したのは、どういった背景があったのでしょうか?
丸:弊社には「領域を超えよう」というコアバリューがありまして、私はiOSデベロッパーでありながら、UIデザイナーが作ったデザインによくフィードバックしていました。おそらく「デベロッパーなのにデザインに対していろいろ言ってくる、ちょっと面倒くさいやつ」だったと思います(苦笑)。それならいっそ肩書きを変えようと、2017年ごろから「ソフトウェアデザイナー」を名乗るようになりました。
それに当時、社内に「UIデザイナー」はたくさんいたものの「情報設計」を得意とするデザイナーが不在だったんですよ。だからこそ自分がその役割を担おうと考えました。情報設計にはエンジニアリングに近い発想が求められるので、自分に向いているのではないかと思いましたね。
ただ最初は情報設計の担い手が自分しかおらず、周りに評価してくれる人もいなくて孤独でした。ブログを書いたり勉強会を開いたりしながら「情報設計」のノウハウを地道に社内へ発信した結果、徐々に理解者を増やすことができました。
林:丸さんの得意な「情報発信」で、社内理解を促していったんですね。
丸:情報発信はもともと好きなほうですね。学生時代に先生から教わった「エンジニアは学んだことや取り組んだことをすべてドキュメントに残すべき」という一言にも強く影響を受けています。
エンジニアの仕事は基本的に一人で完結しないため、「このコードはなんのためにあるのか」を誰もがわかる形で残さなければなりません。私自身一週間もすれば忘れてしまうので、言葉で残す習慣は大切だと感じています。
複雑で難解なソフトウェアと人の接点を作る
林:続いて、ソフトウェアデザイナーとして働くおもしろさをぜひ教えていただけますか。
丸:ソフトウェアって、人類史上もっとも複雑で難解な人工物の一つだと思います。そのためどんなに新しく秀逸なソフトウェアを作ったとしても、使いにくいUIではその価値を発揮できません。使いやすさを設計することで、ソフトウェアの価値を最大化できることが仕事のおもしろさだと思いますね。
林:逆に、大変なのはどんなところですか?
丸:「見かけ」だけでなく、「ソフトウェアの仕組み」についても理解しなければならないことでしょうか。「エンジニアリングはデザイナーに関係ないよね」と考える方もたくさんいらっしゃいますが、最低限の知識はもっておくべきだと思います。
なぜなら、車の知識をまったく持っていない人が、いい車をデザインすることはできません。自動車の仕組みや道路交通法をわかっているからこそ、きちんとデザインできるんです。
林:たしかにおっしゃる通りですね。エンジニアリングに対して苦手意識が強い受講生も多いのですが、改めて技術を学ぶ必要性を感じました。
結局、好きな人には勝てない
林:近年はAIによるデザインの自動化も進んでいますが、今後「デザイナー」という仕事の需要はどう変化していくと思われますか?
丸:カテゴリによって需要の浮き沈みはあると思いますが、デザイナー全体の需要はなくならないと思います。たとえば、「Flashデザイナー」の需要は「Flash」の流行り廃りとともに急激に伸び、そしてなくなりました。しかしFlashデザイナーがそのまま職を失ってしまったかと言えば、そうではありません。多くの方がいまでもデザイナーとして活躍しています。
つまり、デザイナーとしてのコアスキルを培っていれば、流行が変わっても応用できるし、食いっぱぐれることはないということです。
ただし「デザイナーは食いっぱぐれない」というモチベーションでデザインを学ぶのはあまりおすすめしません。一時的には稼げるかもしれませんが、結局ものづくりが好きな人には勝てませんから。逆にものづくりが好きであれば、汎用性のあるコアスキルを突き詰められるはずです。
林:スクールとしては、流行り廃りのある「ツールの使い方」ではなく、「デザインの考え方」をしっかり教えていきたいと感じました。貴重なご意見をありがとうございます! 最後に、デザイナーを目指しているみなさんへメッセージをお願いします。
丸:まずは食わず嫌いすることなく、いろいろな制作に関わってみてください。なかには苦手な分野もあるでしょうし、ツラい時期もあるかもしれません。しかし「どんな分野が苦手なのか」を知ることは、得意な分野を知るのと同じくらい大切です。苦手な分野がわかっていれば対策もできますし、「どんな人とチームを組めば自分の力を発揮できるか」もわかるのではないでしょうか。
私が担当する講座では、「ソフトウェアデザイナー」「UIデザイナー」の仕事をより具体的に紹介できればと考えています。私のようにイラストやグラフィックを作るのが苦手な人であっても、デザイナーとして活躍できる領域です。キャリアの選択肢の一つとして考えるきっかけになると嬉しいですね。
林:「UI」をテーマにした唯一の講座ということで、非常に楽しみです。本番もどうぞよろしくお願いいたします!
さいごに
私たちデジLIGは、「スクールを卒業してデザイナーになること」がゴールではなく、5年後10年後に「クリエイターとして良いキャリアを築くこと」を本気で支援したいと考えています。
丸さんの初回授業は2023年8月に開催予定。本気でクリエイターを目指すみなさん、デジLIGにてお待ちしております!