こんにちは、Webディレクターの内藤です。
「デザインコンセプト」という言葉を聞いたことはありますか?
たとえばサイト制作では、エンジニアにとって要件定義書が必要になるように、デザイナーにとってはデザインコンセプトがとても重要です。
今回は、同じデザインチームのMiyaさんにも力を借りつつ、デザインコンセプトとはなんなのか、役割や作り方についてまとめてみました。
目次
デザインコンセプトとは?
デザインコンセプトとは、一言でいうと「プロジェクト全体のデザインについて定めた方針」のことです。
ここでいうプロジェクトとは、ブランド全体、プロダクト全体と広義の場合もあれば、特定のメディアや商品サイトといった狭義の場合もあり、クライアントのニーズによって範囲は異なります。
デザインの領域では、ブランドシンボルやロゴデザインのフォントや色、扱いなどについて定めた「VI(ビジュアルアイデンティティ)」というものもありますが、デザインコンセプトはひとつの制作物のデザインに影響するものではなく、より上流工程の概念といえます。
デザインコンセプトとテーマの違い
デザインコンセプトと混同されやすいのが「テーマ」です。両者の違いを理解しておくことで、より明確なデザインコンセプトを作ることができます。
テーマとは、お題や主題のことを指します。一方、コンセプトとは、そのテーマを解決・表現するための具体的な方法や方針です。
たとえば、テーマが「クリスマス」であれば、コンセプトとして以下のようなものが考えられます。
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- 赤と緑を中心にデザインを構成する
- クリスマスツリーのイラストを使う
- ゴールドを使ってきらびやかな雰囲気を演出する
つまり、1つのテーマに対して、複数のコンセプトを作ることができるのです。デザインコンセプトは、テーマを表現するための手段と言い換えることもできます。
デザインコンセプトの役割
デザイナーは、決められたデザインコンセプトに沿ってデザインを設計していくことが理想的ですが、コンセプトを決めずに制作に入っているケースもあるのではないでしょうか。
なぜデザインコンセプトが重要なのか、その役割やメリットは大きく4つあります。

①デザインを検討するうえでの共通認識になる
デザインコンセプトは、クライアントや制作会社など、デザイン制作に関わる全員の「共通認識」になります。
プロジェクト内で活発にコミュニケーションをとっていても、立場の違いや個人のセンスによって思い描くデザインのイメージは異なり、認識がズレてしまうことも少なくありません。
デザインコンセプトを定めておくことで、それを軸に会話ができ、クライアントが意図する最適なデザインをカタチにすることができます。
また、制作側がクライアントにデザインのプレゼンをする際の根拠としても役立ちます。
②デザインを検討するうえでの判断基準になる
デザインの制作を進めるうえで、イメージが言語化されたデザインコンセプトは迷ったときに立ち戻ることのできる判断基準になります。
一度つくったデザインを変更する場合や、担当者が変わった場合でも、デザインコンセプトがあれば軸をブラさずに新たなデザインを生み出すことができます。
③デザインの発想が豊かになる
デザインコンセプトは発想を制限するものではなく、むしろ豊かにするものです。
プロジェクトの目標と、それを達成するためのデザインが明確になっていれば、それをどんなアプローチでカタチにするかはデザイナーのスキルや個性が光るところです。
④ブランディングが向上する
デザインコンセプトを設計することは制作側の目線で多くのメリットがありますが、企業側の目線でも「ブランディングの向上」という点で大きな意味があります。
デザインコンセプトに基づいてつくられたコンテンツは、ブランドの理念や個性が反映され、ユーザーに対して魅力をダイレクトに伝えることができます。
デザインコンセプトの作り方
ここからは、デザインコンセプトを作る手順や、最終的なアウトプットについてステップごとに解説していきます。
ステップ1. ペルソナを設定する
デザインコンセプトを作る前に、まずペルソナを設定しましょう。
すべての商品やサービスは、究極的には「誰の困りごとを」「どのように解決するのか」ということに尽きます。その「誰か」が曖昧なままコンセプトを作ってしまうと、コンセプト自体がぼやけてしまい、最もサービスを届けたいターゲットに刺さらないデザインになってしまいます。
ペルソナ設定では、以下のような項目を具体的に設定します。
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- 基本属性:年齢、性別、職業、家族構成、住まい
- 悩み・課題:抱えている問題、解決したいこと
- 行動:日々の行動パターン、情報収集方法
- ゴール:サービスを通じて達成したいこと
ペルソナが明確になることで、次のステップでのキーワード抽出やデザインの方向性がブレずに進められます。
ステップ2. デザインで「できること」を整理してすり合わせる
クライアントからサイト制作などのプロジェクトを依頼されたら、デザインコンセプトの制作を始める前にやらなければならないことがあります。
それは、デザインで解決する「課題」を整理してすり合わせること。これがとても大切です。
たとえば、「サイトをリニューアルしてブランドの認知を広めたい! 売上を上げたい!」という依頼があったとします。しかし、デザインの変更のみでサイトへの流入を増やすことは容易ではありません。サイト内の回遊率UP、導線整備、CV率のUPといったことはできますが、それ以前の集客として広告・販促・SEO対策といった施策も必要になります。
この場合、Webデザインでおこなうべきは、
- ブランディングの質を向上させる
- サイト内でのUI/UXを改善し、CVにつなげる
といった役割になります。この認識をすり合わせておかないと、「サイトをリニューアルしても期待した効果が出ず、デザインに原因があると思って修正を繰り返す」という状況に陥ってしまう可能性も……。
クライアントの期待値を確認・調整するために、「何が解決すべきポイントなのか?」を最初にしっかりとすり合わせする必要があります。
ステップ3. 競合調査
クライアントの認識を確認できたら、デザインコンセプトを作っていきます。
最初におこなうのが競合調査です。競合のユーザーの傾向やサイトのPV数などを調べたうえで、業界のなかでどんな位置を狙っていくのかをクライアントと一緒に考えていきます。
デザインを強化する経営的な観点での目的は、ビジネスにおいて「勝つ」ということ。そのためにも戦略的に検討していく必要があります。
ステップ4. キーワードの洗い出し

続いておこなうのがキーワードの洗い出しです。
この工程はプロジェクトの担当者だけでなく、経営陣や中間層、中間管理職、現場担当者など、多くの方に参加してもらうことがポイントです。ヒアリングやブレスト、ワークショップといった形式で、課題に沿ったテーマを設定して、できるだけたくさんの議論を重ね、意見を出してもらいます。
たとえば、以下のようなテーマが考えられます。
- 自社の理念に込められた想いとは?(コーポレートリニューアル)
- 業界のなかでの自社の強みとは?(サービスサイト)
- 自社が採用で重視する価値観とは?(採用サイト)
- 自社が収益化を考えるときに得意とすることは?(メディアサイト)
などなど……。この工程では、本質的な議論に向き合うことを怖がらずに進めていくことを意識しています。そうすることで、クライアントのなかにある価値感を徹底的に言葉として洗い出していきます。
💡 キーワード洗い出しに役立つフレームワーク
キーワードを洗い出す際には、以下のようなフレームワークを活用すると効率的です。
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- ペルソナ分析:ターゲットユーザーの人物像を明確化
- カスタマージャーニーマップ:購買行動を視覚化
- バリュープロポジション:顧客に提供する独自の価値を明確化
- ポジショニングマップ:競合との差別化ポイントを探る
- ムードボード:抽象的なイメージを視覚化
これらのフレームワークを活用することで、より的確なキーワードを抽出し、説得力のあるデザインコンセプトを作ることができます。
▼コンセプト設計に役立つフレームワークの詳細はこちら コンセプト設計のためのフレームワーク12選【実施事例もご紹介】
ステップ5. キーワードの絞り込み
洗い出したたくさんのキーワードをグルーピングしたり、件数が多い順番で優先度をつけたりしながら整理・濾過していきます。
ここで競合調査によって戦略的に導き出したブランディングの方向性も踏まえて考え、3つほどのキーワードに落とし込みます。
ポイントは、物事を説明するような具体的な言葉にするのではなく、“デザイン的”な言葉を紡ぐということです。
これは、デザインキーワードなどと呼んでいますが、具体的には、以下のような特徴を考えています。
- 端的であること
- 他と差別化して表現できていること
- 魅力や発想の広がりを感じること
ステップ6. デザインコンセプトとしてアウトプットする
最終ステップとして、厳選したキーワードをさらにブレイクダウンし、1つのワードをデザインコンセプトとしてアウトプットします。
アウトプットしたデザインコンセプトはPDFなどでまとめておくことでプレゼン用の資料にもなり、確定したものはそのまま多くの人に共有できます。資料にはデザインコンセプトを決めるまでの経緯や、コンセプトに基づいた書体やフォント、色の使い方といった詳細な内容まで記載する場合もあります。
また、「ムードボード」で、すでに世の中にあるサイトやプロダクト、商品のデザインを例に、具体的なビジュアルに落とし込んだときのイメージを伝える場合もあります。
▼ムードボードについてはこちらの記事もご覧ください デザインの齟齬を防ぐためにやっている7つのこと
また、デザインコンセプトはブランディング全体の一部として位置づけられます。
▼ブランディングの全体像や進め方について理解を深めたい方は、以下の記事も参考にしてください。 ブランディングの進め方をデザイナーが解説。全体の流れやポイントをおさえよう!
LIGの事例を紹介

https://liginc.co.jp/works/detail/red-green-co-ltd/
最後にひとつ、LIGがサイト制作をお手伝いした事例についてご紹介します。
アパレルブランド「RED AND GREEN CO.,LTD」さまのサイトリニューアルでは、デザインコンセプトとして「R&G it’s UNUSUAL but SINCERE」という言葉が生まれ、それがそのままブランド全体のキャッチコピーとして起用されました。
ブランドの特徴を的確に捉えたデザインコンセプトが、そのままブランドの顔となり、アウトプットとしてデザインに落とし込まれた好事例です。
まとめ
サイト制作などのプロジェクトを進行するうえで、デザインコンセプトがどれくらい重要になるのか、また、どうやって作っていくのか、おわかりいただけたでしょうか。
LIGはデザインコンセプトだけでなく、戦略策定や要件定義といった上流工程に強みをもっている会社で、豊富な実績とノウハウがあります。
デザインやブランディングで課題を課題を感じている担当者さまは、ぜひ一度LIGにお問い合わせください!