デザイナーの転職に有効なポートフォリオとは?プロが徹底討論!

デザイナーの転職に有効なポートフォリオとは?プロが徹底討論!

Jumpei Hayashi

Jumpei Hayashi

Webデザインスクール「デジタルハリウッドSTUDIO by LIG(通称:デジLIG)」運営スタッフの林です。

クリエイターの転職活動に必須のポートフォリオ。当スクールの受講生さんからもよくご相談いただくトピックです。

「質と量、どっちを優先する?」「作品はいくつ載せたら良いの?」これらには明確な正解がないからこそ、余計にみなさんを悩ませているのではないでしょうか。

そこで今回は、多くのクリエイターのポートフォリオを見てきたプロのみなさんを呼んで、「Webデザイナー向け・採用されるポートフォリオ」をテーマに対談をおこないました!

Webデザイナーへの転職を目指している初学者の方はもちろん、転職を考えるすべてのクリエイターに役立てていただけるような内容になっています。ぜひ最後までご覧ください!

▼「転職のプロ」紹介
転職エージェント「レバテックキャリア」の石井さん、青木さんをゲストに迎えています。お二人は、企業と転職者の間に立ち双方の支援を行ってきた、いわば転職のプロ! 数々の成功例や失敗例から導き出した「採用されやすいポートフォリオ」について伺います。

ico レバテック株式会社 ITリクルーティング事業部 石井椋 氏法人営業チーム・グループリーダー。レバテックキャリアのクリエイターに特化した営業チームの立ち上げを主導し、クリエイターの年間支援数はトップ。クリエイターに特化したリクルーティングアドバイザー、キャリアアドバイザーを経て、現在は法人営業チームの複数のリーダーを兼任している。
ico レバテック株式会社 ITリクルーティング事業部 青木周 氏法人営業チーム・クリエイター部門のリーダー。レバテックキャリアのクリエイターに特化したチームの運営を行い、チーム支援数は過去最大支援数を更新中。主にスタートアップとメガベンチャーを担当し、エンジニアやデザイナーなどクリエイターを中心とした幅広い領域で支援を行っている。
▼「現場のプロ」紹介
現場のプロとして参加するのは、LIGデザイナーの花ちゃん。制作会社のデザイナーとして現場の第一線で活躍しているだけでなく、ジュニアデザイナーの教育や採用にも携わっています。今回は「現場目線で採用したくなるポートフォリオ」について深堀りしました。

ico 株式会社LIG デザイナー 花ちゃん大学院修了後、ゲーム制作会社に新卒入社し、IPものを扱ったゲームや新規開発チームでゼロベースからのUI設計・デザインを経験。LIGにジョイン後はLIGブログや外部メディアのアイキャッチ・記事内画像の作成を担当。現在は企業やサービスだけでなく、地方創生に関わるロゴ制作やサイト制作を積極的に行う。

たくさんのポートフォリオを見てきた「転職アドバイザー」と「現場のデザイナー」。それぞれの立場が考える「採用されるポートフォリオ」について紐解いていきます!

プロにポートフォリオを見てほしい時は
「デジタルハリウッドSTUDIO by LIG」では未経験から6ヶ月で「現場レベルの」Webデザイナーを目指せます。働きながら学ぶ社会人も多数!
現役で活躍するプロから学べ、ポートフォリオ対策や就職斡旋など永続的な支援も受けることができます。
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採用現場はここを見ている! ポートフォリオの最適な構成を紐解く

多くの求職者がいて時間も限られている中で、現場ではポートフォリオのどこを見ているのでしょうか? 力をいれるべきポイントを探ります。

Q. どの部分を重点的に見ている?

ico案件の目的や課題に対して、どんなアプローチをして、どんな効果が出たのかを見ています。
icoポートフォリオの構成が目的や意図を持って作られているかを見ています。

現場サイドの花ちゃんは、作品のビジュアルはもちろん、案件の目的や課題に対しての取り組みやその結果を必ず見ているそうです。それもひと目見てわかるような工夫がされていると嬉しいとのこと。忙しいであろう読み手のことを考えた構成にするのも大切ですね。

一方で青木さんは、フォントや色彩感覚は前提として、構成にその方なりのオリジナリティが出ているかを見ているとのことでした。テンプレートを濫用せず、細部までこだわって制作しましょう。

現場サイドも転職のプロも、作品のクオリティは前提として、ポートフォリオそのものの構成力をひとつのポイントにしているようでした。いかに必要情報をわかりやすくまとめられるかの、情報設計力が求められますね……!

💡ポートフォリオ作成のヒント
(結果について数字で示せる場合には)案件ごとにビフォーアフターがひと目でわかるよう、統一したフォーマットで数字情報をまとめるのがおすすめ(by 花ちゃん)

Q. はじめに見たい情報は? どんな順番がよい?

ico作品のビジュアル、目的、結果、あとは担当範囲があると嬉しいですね。
ico志望する企業に近いテイストの作品など、評価されやすいものを上部に持ってくると良いと思います。

両者ともまず見たいのは作品情報のようです。デザイナーの花ちゃんは、たとえばイラストを使ったデザインを載せている場合、素材なのかその方が描いたものなのかが気になるそうです。デザイナーならではの視点ですね。担当範囲は明確に!

石井さんからは作品の掲載順に関するアドバイスをいただきました。青木さんは、わかりやすいポートフォリオの共通項として、伝えたいことを最初に持ってきているということを挙げていました。まず重要情報(サービス内容、メンバー構成、自身の役割、取り組みなど)をまとめて、その後詳細情報に進む、というように順番にも意図を持たせると良いそうですよ。

💡ポートフォリオ作成のヒント
  • 両者まず見たいのは作品! 順番的にも作品情報をはじめに持ってくると◎
  • 伝えたい情報や重要情報を最初にまとめて、その後詳細を記載していく。

こんなポートフォリオ、あり? なし?

続いてのトークテーマは、ポートフォリオのケース別のありなし談義。受講生さんだけでなく、相談を受ける私たちでさえも回答に悩んでしまう話題ばかりです!

Q. ポートフォリオサービスやノーコードツールを使ったポートフォリオはあり?

icoノーコードだから不採用ということはありませんが、イチからサイト構築していると最初の印象としてはよいですね。ただしサイトの設計部分も評価対象になります。「デザインはいいのに……」となってしまうこともあるので注意が必要です。
ico企業様によりけりですが、制作会社はそこまで気にしていないという印象があります。ただしUIUXデザイナーを志望するのであれば、ノーコード・ローコードでの作成はマイナスポイントに。

イチから構築されたサイトの場合、どうしても情報設計部分に目がいってしまうという花ちゃん。少しでも使いづらいと思われてしまうと、かえってマイナス評価になる可能性もあるということですね。時間的な余裕がなく作り込めない場合などは、無理せずノーコード・ローコードを使ったサイト作りを選択するのが良いのかもしれません。

青木さんによると、やはりローコード・ノーコードによるサイトはある程度決まったフォーマットを使うため、情報設計能力を重視する企業や、UIUXデザイナーを志望する場合には、マイナスな印象を与えかねないということでした。

ご自身の得意分野が生きる、かつ企業のニーズを考えた選択を取るのが良さそうです!

💡ポートフォリオ作成のヒント
  • 作品のデザインに自信がある方や時間的な余裕がない方は、無理をしてまでサイト構築をする必要はない。
  • UIUXデザイナーなどを目指す場合は、サイト構築で情報設計力をアピールすべき。

Q. 架空のバナーやサイトだけ、というのはあり?

ico架空サイトの多くが、LIGの案件とのギャップがあります。志望度を示すためにも、実案件を経験していてほしいです。
ico架空の制作を載せるのはやめたほうが良いです。実務経験をアピールできる作品が望ましいですね。

両者とも架空サイトはマイナスの印象。

LIGの場合はコーポレートサイトやサービスサイトなどToBの案件を担当するため、どうしてもギャップを感じるとのことでした。たしかに架空のサイトというと、カフェや美容室のようなToCの業態が多くなりがちですよね。最低限お客様とのやりとりを経験していることは求めてしまうそうです。

青木さんは、架空の制作物は目的や意図が「なんでもあり状態」になってしまうので、せめて実在するものをテーマにするべきということでした。

初学者が実案件を経験するのはなかなか難しいことですが、逆に経験していることで自ら案件を取りに行く姿勢や行動力を示せるアドバンテージとなります。クラウドソーシングなどを活用した実績作りに取り組みましょう。

💡ポートフォリオ作成のヒント
  • 架空のものをテーマにした作品は非推奨。せめて実在するサービスを。
  • ポテンシャル採用ではやる気を見せるのも大切。クラウドソーシングを活用してクライアントを見つけよう!

Q. デザインカンプだけ、というのはあり?

ico載せていただいて大丈夫です。その代わり、リリースした状態と担当範囲をあわせて記載して欲しいです。
icoデザインカンプだけでも問題ないと思いますが、コーディングができる方の場合は載せたほうが良いと思います。

LIGの場合はデザインカンプのみで問題ないそうです。ただし、コーディングしたあとのリリースした状態も、(許可をとったうえで)掲載して欲しいそう。この場合も、担当範囲を明確に記載しておく必要がありますね。

青木さんも同様、コーディングスキルを求めない企業であれば、まったく問題ないとのことでした。ただし全体の傾向として、Webデザイナーにコーディングスキルを求める企業は多いそう。選択肢を広げるという意味でも、コーディングができる方は載せたほうが良いということですね。

💡ポートフォリオ作成のヒント
コーディングスキルのニーズがある企業は多いので、スキルがある場合は載せたほうがよい。

ポートフォリオのコンテンツは無駄なく掲載すべし!

ポートフォリオになにを載せるべきか、情報の取捨選択は悩むポイントのひとつだと思います。ここからは載せるべきコンテンツをテーマに、具体的な判断基準について伺いました。

Q. ポートフォリオの作品数はいくつがよい?

ico具体的にいくつというのはないですが、デザインの幅を知りたいのでできればいろいろなテイストを、かつ自信のある作品に絞っていただけるとすべての作品に目を通せると思います。
ico数ではないと思います。同じようなデザインフォーマット10件よりも、ちゃんと意図が伝わる1〜2件のほうが良い、という話はよく聞きますね。

LIGのように制作会社の場合は、どんなデザインにも対応できるかという点を重視しているところも多いと思います。同じようなテイストばかりが並んでしまうと、デザインの幅がないと思われてしまいかねません。また数が多すぎると、見るほうのモチベーションもだんだん下がってきてしまいます。自分が採用する立場だったら……を考えてみることも大切ですね。

石井さん、青木さんサイドは、数ではなく中身を重視するそうです。実際に1〜2年目の若手デザイナーの場合は実績も少ないと思うので、経験した案件を丁寧に説明すればよく、無理に数を増やす必要はないとのことでした。

💡ポートフォリオ作成のヒント
  • いろいろなテイストかつ自信のある作品に絞る。
  • どうしても載せたい場合は、自信のある作品は詳細に、そうでない作品はさらっとというように、情報量に差をつける。
  • 作品数が少ない場合でも多い場合でも、全体の情報量は同じくらいに調整する。見る人のことを考えよう!

Q. Webサイト以外の実績も載せてよいのか?

icoLIGの場合は、バナー、イラスト、チラシ(グラフィック)、ロゴデザインなどのスキルはプラスになります。
ico情報量的に、Webサイトの作品よりも多くなってしまう場合は調整いただくこともあります。

花ちゃんは「Webデザイン×〇〇」というように、掛け合わせて強みになるものであればぜひ、ということです。撮影スキルについての話も出ましたが、通常カメラマンさんをアサインするのでそこまで求めてはいないとのこと。

一方で映像も扱うような制作会社の場合は、撮影スキルが重宝されることもある、と石井さん。プラスアルファのスキルについては、企業が求めるスキルはなにか、を軸にして判断するとよさそうですね!

結論:未経験でも採用したくなる、理想のポートフォリオとは

いよいよ結論です。それぞれの立場で目に留まるポイントや、未経験ならではの評価ポイントについて伺いました。「採用されるポートフォリオ」とは一体?

Q. これまで見た中で「良いな」と思ったポートフォリオは?

ico絵をもたせる工夫をしているような、見せ方が上手な作品が印象的でした。また作品自体にコンセプトがあるとワクワクします。
icoビジネスサイドのことがしっかり考えられているポートフォリオに魅力を感じます。

花ちゃんは、複数のデザインカンプを一面に並べたポートフォリオが印象に残っているそうです。画面が埋まっていることで絵がもって、作品一つひとつのクオリティも高く見えるそう。あとはポートフォリオ自体にコンセプトがあるのも、「良いな」ポイントだそうです!

一方で青木さんは、ビジュアル的な華やかさや見やすさにも目が惹かれるが、ユーザーの心理状態などの課題感がきっちり分析されていると、「考えられていて良いな」と思うそうです。

デザインサイド、ビジネスサイドでそれぞれが良いと思うポイントが分かれました。花ちゃんはやはり同業者として、デザインの「巧みさ」やコンセプトの「ワクワク感」などクリエイティビティに目がいくのかもしれません。青木さん石井さんは、企業によって評価が分かれないであろう、ビジネス的な視点を重視しているようでした。どちらも重要なポイントですね。

Q. 未経験でも採用したくなるポートフォリオとは?

ico自らクライアントを見つけて最後まで完遂できるような「行動力」が見えるポートフォリオがいいです。
ico短い時間でどれだけ勉強してきたかの「行動量」を示せるといいと思います。

未経験で、という文脈では双方「Webデザイナーを目指してどんな活動をしてきたのか」が見せられるようなポートフォリオが良いという結論に。

成長の度合いを示すために、学び始めと直近で同じ作品を作ってみる、というアドバイスは花ちゃんからいただきました。たしかにパッと見て成長を示せるのでとても良いアイデアですね! またクライアントの声を反映していると、ちゃんと最後までやりきっていることがわかるので良いとのこと。

ほかにも、行動力や行動量示すには「note」を使った作品紹介など、自己発信も効果的という意見が出ていました。

💡ポートフォリオ作成のヒント
  • 同じ作品を2回作って成長度合いをアピール!
  • クライアントの声を載せて、案件への姿勢をアピール!
  • noteで情報発信をして、これまでの行動をアピール!

未経験者の転職について、ポートフォリオ以外にも話は及びました。

花ちゃんは、とくに未経験者はスキル面よりもLIGのカルチャーにマッチしているかを重視するそうです。実際に話をしてみて、この先デザインを勉強し続けられそうかどうか、LIGでその方のやりたいことが実現できるかどうか、を見ているそう。スキルは後からついてきますが、入社後にミスマッチが起こって辞めてしまうほうがお互いに不幸ですよね。

そして石井さんも、教育コストがかかるという意味で、長期就業ができるかどうかは企業にとって大切なポイントだとおっしゃっていました。カルチャーのマッチ度合い、これまでどんな働き方をしてきたか、志望度の高さは、職種問わず未経験者の転職市場では大切な要素のようです。

未経験の場合は、ポートフォリオだけでなく、その方の働き方や人柄を重視しているということですね!

さいごに

今回のお話を聞いて、作品のクオリティは前提に、ポートフォリオそのものの設計力が求められていることがわかりました。また見る側のニーズや状況を考慮するというのも忘れてはいけないポイントですね。

少しでもお役に立てたでしょうか? ここまで見てくれた方のポートフォリオが、少しでも「採用」に近づきますように。石井さん、青木さん、花ちゃん、お時間いただきありがとうございました!

さいごに、私たちが運営するWebクリエイタースクール「デジLIG」では、クリエイターを目指す方の支援をおこなっております。未経験からWebデザイナーを目指すたくさんの方をお手伝いしてきた私たちスクールスタッフをはじめ、現場で活躍するデザイナーたちが、みなさんのキャリアチェンジを全力でサポートいたします!

ポートフォリオや作品のフィードバックが受けたい方や、実績作りのサポートを受けたい方、転職についてお悩みの方は、ぜひお気軽に個別説明会へお越しください!

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オマケ:ポートフォリオお悩み相談室

本編には入れられなかったけど、これもみなさんに届けたい……! というテーマをFAQとしてまとめました。ぜひご覧ください!

Q. 並行して複数の企業を受ける場合、紙のポートフォリオだと受ける会社によって修正もしやすいが、サイトの場合も何かできることはあるか?

PDF化する、URLを別で作るという方法をご案内していますね。(石井さん)

Q. 編集、ライティング、広報などデザイン以外の経験があることをアピールしたい場合、どのような構成がよいのか?

作品情報の後ろ、情報量にも差分を見せたほうが良いと思います。(青木さん)/これまでの経歴説明ということになるので、職務経歴書内に記載をすればよいのかなと思います(石井さん)/デザイン的な話になりますが、たとえばポートフォリオに紹介ページを設けて、真ん中に自分がいてその周りに自分を形成する要素として吹き出しを配置する、みたいなこともできると思います!(花ちゃん)

Q. 裏側のコードを見ていたりするのか? 基本的なコードばかりだと質が低いと思われないか?

LIGの場合は見ていないです。その企業さんの求める職務範囲によるのかなと思います。(花ちゃん)/将来的にコーディングもしたいというような思いがあるのであれば、アピールポイントとして整えておくことは必須だと思います。(青木さん)/フロントエンドの場合は必ず見ていると思いますね。ポートフォリオ上ですぐに見れる状態にしておくことが条件だったりします。(石井さん)

Q. (自主制作で)テーマ決めやターゲット設定に時間がかかりすぎてしまうときはどうしたらよい?

大きなことをする必要はなくて、身近なサービスや実店舗をピックアップして検証してみるということからはじめてみてはいかがでしょうか。(青木さん)

Q. 採用関係なく、個人的に刺さるポートフォリオを教えて!

僕たちは「好き嫌い」では絶対判断しません(笑)。そのうえでお答えすると、その方のミッションやビジョンが書いてあるものは、人となりがわかるのでエモくて好きですね!(石井さん)

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日本大学芸術学部卒業後、テレビ、ラジオ、Webメディア、プロスポーツイベント等、複数の媒体にてディレクター職を経験。2018年9月からLIGにセールスメンバーとして入社し、教育事業部に配属(現デジタルエデュケーション部)。自身がクリエイターを行なっていた経験を生かし、現在は部長としてWebクリエイタースクール事業「デジタルハリウッドSTUDIO by LIG」の事業企画、運営を行い、クリエイター育成をミッションとしている。

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