LIGとデジタルハリウッドがコラボしたスクール「デジLIG」運営スタッフの天(@10TEN10TAN10)です!
\スクールを卒業後、Webデザイナーに転職!/
いつもはそんな卒業直後のスタートラインに立ったばかりのクリエイターさんのお話をお届けしていますが、今回は卒業から数年経ったあとの話、さらなるキャリアアップを遂げている卒業生さんにフォーカス。
いまから6年前にデジタルハリウッドSTUDIO福岡を卒業し、現在はデザイン会社スタンスを経営されている智原さんにお話を伺いました!
クリエイターとして羽ばたいたその先には、どんな巡り会いがあって、どんな可能性が待っているのでしょうか……?
- ▼こんなお話が聞けました
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- 「課題解決」を第一に考えるためのデザイン勉強法
- フリーランス必見! クラウドソーシング完全攻略法
- デザイナーと経営者、それぞれの立場で見ている景色
- デザイナーのあるべき姿、求められるスキル
株式会社スタンス 代表取締役:智原 北斗さんブランド設計・CI策定・クリエイティブディレクションを担当。デジタルハリウッドSTUDIO福岡を卒業後、デザイナー・エンジニアとして制作会社勤務とフリーランスを経験。2017年に株式会社スタンスに入社し、2021年に同社の代表取締役に就任。福岡県出身の1992年生まれ。 |
※本記事は、2022年8月23日(火)におこなわれたトークイベントのレポートです。
デザインで力をつけて何者かになりたかった
――いろいろなお仕事がある中で、なぜデザイナーを選ばれたのでしょうか?
まわりに流されて進学や就職をしてきた自分にとって、はじめて自分でたどり着いたのがデザイナーでした。学校や企業のネームバリューとは関係なく、純粋な努力や実力だけで高みに行ける仕事だと思ったんです。とにかく自分で力をつけて何者かになりたいという思いがありました。
――その後デジタルハリウッドSTUDIO福岡に通われたんですね。半年間という短い受講期間のなかで、どのようなことを心がけて学ばれていましたか?
全体像を掴んだあとに個別のスキルを伸ばしていくほうが学べることが多いと思ったので、インプットのフェーズである動画コンテンツの視聴は早々に終わらせました。
とにかくアウトプットに時間をかけて、トレーナーさんや同期の受講生から客観的な意見をたくさんもらうようにしていました。スクールに通う一番の理由が「実務者からのフィードバックを直接受けられる」という点だったこともあります。
あとは、ビジュアルデザインのインプットばかりをしないということも心がけていました。
――意外な勉強術ですね。詳しく教えてください。
以前はイケてるギャラリーサイトなんかを見て、色使いやレイアウトだったりビジュアル面のインプットを中心におこなっていました。ところがいざ制作してみると、自分の作ったものがギャラリーサイトで見ている作品たちとあまりにも乖離していたんです。
ギャップが生まれる原因はなんだろうと考えた結果、ただ表面的なイメージを落とし込むだけのデザインに価値提供ができるのか、という問いに気づけました。そこからは、「いいデザインだな」と思って眺めるだけじゃなくて、「この導線ってこういうふうに進んでほしいから設計されてるんだろうな」、「ライティングがあるだけで印象が変わるな」みたいなことを考えながらインプットができるようになりました。
――カリキュラム最後の卒業制作ではどういったサイトを作られたんですか?
卒業制作ではWebデザインのギャラリーサイトを作りました。ひとつのデザインを深堀りする勉強法をしていたので、ただデザインを並べるだけでなく、デザイン意図の予想などの私見も添えていました。その後の就活では、イチから制作したサイトということが評価されて採用に至りました。
月間受注ランキング1位まで上り詰めた、クラウドソーシング攻略法!
――就職されるまでにフリーランスのご経験もされていますが、どのように活動されていたのですか?
フリーランス時代の仕事は、クラウドソーシング一本勝負でした。受注成績が0件だと依頼もこないだろうと、一件目は最低価格を提示して確実に案件を獲得しました。
――苦しいタイミングもあったのでしょうか。
1万円でWebサイトを作るとか、当時の自分が生きていくためにはそうするしかなかったです。実家に住んでいたので、食べるものには困らないっていうのもありましたが。
――地元での活動ならではのメリットですね。結果的に月間受注ランキング1位にまでなったわけですが、どうやって上り詰めていったのでしょうか?
クライアント側がどういうふうにシステムを使っているかを想像しながら、自分の応募を組み立てていくのが重要だと思います。
- クライアントに選んでもらうための応募術
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- 価格の安さをアピール
- 案件概要を読み込んでいることがわかる一文を加える
- 依頼内容を読み解いてこちらからご提案する
初期は入り口の価格の安さで選んでいただいて、交渉に至ったときの対応の丁寧さ、レスの速さを心がけていました。
受注が決まったあとはとにかくベストを尽くして、一件一件地道に実績を積み重ねていきました。実績を積めれば、徐々に案件のレベルや価格を上げていきましたし、リピートでお仕事をご依頼いただくことも増えていきました。
――まさに攻略という感じですね……!
「目的にかない 美しいもの」をつくる
――ここからはいまの職場についてのお話を聞かせてください。代表をされている株式会社スタンスさんはどんな会社なのでしょうか?
メインの事業は大きく分けて二つあります。
▲クリエイティブ受託制作事業
一つは、Webサイト、ロゴデザイン、グラフィックデザイン、映像など、幅広い範囲でのクリエイティブ制作事業です。直近では企業のブランディングやマーケティングから携わっていて、ビジュアルデザインの前提になる設計段階を重視した制作をおこなっています。
▲福岡県にある宮地浜海水浴場に借りた土地。昨年はバーベキュー施設として営業した。
もう一つは、店舗の立ち上げ運営などの自社事業です。カフェを作ったり、海辺に土地を借りてさまざまなコンテンツを企画運営したりしています。
――さまざまな事業を展開されているなかで、デザイナーさんのお仕事範囲を教えてください。
Webや紙問わずデザインに関するあらゆる業務を任せています。肩書を「デザイナー」で統一しているのもそのためです。
スタンスでは、デザイナーの役割をデザインデータを作ることよりも広く捉えています。デザインのその先、エンドユーザーにどんなふうに届いてどんな成果を上げたのか、そこまで責任を持って欲しいと考えています。
デザイナーが経営者に。自社事業を作ろうと思ったきっかけ
――クリエイティブ事業と自社事業。それぞれ違う考え方が必要になりそうですが、なぜ事業作りをしようと思ったのですか?
単純にやりたかった、というのもありますが、事業作りもクリエイティブに生きると思ったためです。自ら事業運営を経験することで、クライアントワークでの説得力も上がるだろうし、自分たちがご提案できる範囲も拡大できると考えました。
クライアントの経営に深く関わるご提案をすればするほど、「果たして自分たちの提案は本当に合っているのだろうか……」と疑問を持つようになったんです。日々どんなお客さんと向き合って、どんなコミュニケーションをしているのか、実体験として得るためには、自分たちでお店を持つしかないんじゃないかっていうのがそもそもの発端です。
▲海辺のコンテナ改装のため、エンジニアがペンキを塗っている様子(左)。店舗の撮影担当はデザイナーである智原さん(右)。
実際にお店を作るとなれば、空間デザインから広告運用まで経験できるので、実績にもなりますしノウハウの提供もできるようになると考えました。
――智原さんはもともと社員として入社されていますが、どういうきっかけで代表になられたのでしょうか。自ら手を挙げたとか?
いえ、もともと起業や経営には興味はありませんでした。ただ創業者が「クリエイティブをわかっている人間がトップにいたほうが会社として成長できる。クリエイターの可能性を広げるためにも、智原くんに代表として外に出てほしい」ということで、やる形になったんです。
――実際に経営者になってみていかがでしょうか?
やってみて、とても楽しいことと、大変な辛さ、両方経験しています。
代表という肩書きがあれば、いろいろな方が代表としてお話をしてくださいます。一デザイナーのときよりも深いことが聞けたり、自分自身の体験として身を持って共感しながら聞けたりするのが、楽しいですね。
一方で、代表になると責任が計り知れなく大きくなります。たとえばクライアントワークで問題が発生したときも、どんなケースであれ最終的には僕の責任になります。やりがいでもありますが、辛さも感じます。
デザインの持つ力。デザイナーに求められるあり方とは?
――フリーランスや制作会社などデザイナーとしてさまざまな経験をされていますが、デザイナーの醍醐味ってなんでしょうか?
企業の部長や社長クラスの方とフラットに話をして、意思決定に大きく関わることができることが、デザイナーの醍醐味の一つだと思います。
デザイナーは日々多くの商品やサービスに触れて、「ユーザーはなにを感じ、どんな行動を取るだろうか」みたいなことを考えている人種なので、気づくことが多々あると思うんですよね。大きな企業の部長さんや社長さんが、デザイナーの話を一消費者の意見として無条件に聞いてくれるケースは、いままでの経験からも多くありました。
その気づきをちゃんと伝えることが、デザイナーに求められるあり方であり、最大の醍醐味だと思っています。たまに怒られることもありますが(笑)。
――デザイナーのあり方のお話が出てきましたが、スキル面ではどんなものが必要になってきますか?
デザイナーに求められるスキルは、一言で言うと「総合力」です。
デザインツールをスムーズに触ることができてデザインを作れる、というだけでは足りなくて、ビジネスの課題を理解してその改善策をビジュアルで提案できる、ユーザーに伝わるコンテンツや言葉も考えることができる、商品やサービスそのものの課題を見つけ改善することができるなど、いろいろな角度の力が求められてくると思います。
――ありがとうございます。総合力を鍛えるためにできることはありますか?
デジLIGの中外で学んだり、いろいろな人の話を聞いたりすることは重要です。そしてデザイナーとしてのキャリアをスタートさせてからは、与えられた業務の範囲内だけではなく、解像度を高く見るようにしてください。
ディレクターから与えられたバイヤーをただビジュアルに落とし込むのではなく、「なんでこのバイヤーこうなってるんだろう」「どういうビジネスでどういうユーザーが見るんだろう」みたいなことを考えるようにしていけば、総合力が鍛えられていくと思います。
――これからデザインを学ぶみなさんにメッセージをお願いします!
日々、デザインやデザイナーが持つ可能性は本当に大きいなと体感しています。
デザインには、クライアントのビジネスを成功に導いたり、人の感情や行動を動かしたり、企業の大きな意思決定をも動かしてしまう力があると思っています。
これからデザインを学んでいくみなさんには、バナー一つであっても、Webのページデザイン一枚であっても、一箇所のレイアウトであっても、自分が作るデザインが良くも悪くも大きな力を持ってしまうことを自覚していただきたいです。その上で、志高いデザイナーとして振舞っていただきたいなと思っています。
僕自身も未熟なデザイナーの一人なので、世の中をより良くしていく素敵なデザインを一緒に生み出していけるデザイナーが増えていくことを願っています。
――ありがとうございます! わたしもデジLIGの運営として、より一層クリエイターさんの支援に力をいれていきます!
さいごに
智原さんのお話はとても論理的でわかりやすく、デザイナーとしての言語化能力やクリエイティブの説得力みたいなものに繋がっているのだと感じました。
このほかにも、フリーランスを経験してのメリットやデメリットなどさまざまなお話を聞くことができました。すべてをお伝えできず残念ですが、今後も機会があればぜひまたお話伺えたらと思います!
今回の智原さんのトークイベントをはじめ、デジLIGでは定期的に外部からクリエイターをお呼びして、Webデザインを勉強中のみなさんに役立つ授業を開催しています。
少しでも気になった方は、ぜひ個別説明会へお越しください!