9,000人超企業の人事の思考 LIG x SHIFTが語る、事業変革における採用・組織づくり

9,000人超企業の人事の思考 LIG x SHIFTが語る、事業変革における採用・組織づくり

Yu Mochizuki

Yu Mochizuki

2022年のLIGは、CIの刷新やWebサイトのリニューアルを通じて、変化を続けています。
DX推進企業として、LIGブログでもDXにまつわるさまざまな情報を発信しています。

そして、この度、LIGの代表 大山智弘がナビゲーターとなり、業界のオピニオンリーダーと対談を繰り広げる連載企画がスタート! DXやデザイン、コンサルティング、テクノロジー、メディアなど、LIGにまつわるトピックスを切り口に、さまざまな企業の取り組みやノウハウに迫っていきます!

第1回目は、大山とも親交の深い株式会社SHIFTの菅原 要介さんが登場。「DXと採用・組織づくり」をテーマにお話を伺いました。

菅原 要介さん
上席執行役員 兼 人事本部 本部長
株式会社インクスに新卒入社し製造業コンサルティングを経験後、2008年SHIFTに参画。品質保証事業を本格化する折に、大手Web制作会社QA部隊の組織化コンサルを手がける。その後、新規事業の立ち上げを経て、ビジネストランスフォーメーション事業本部全体の統轄に加え、採用・人事施策・人材マネジメントなど、SHIFTグループ全体の人事領域を管掌している。

株式会社SHIFT
2005年9月創業。ソフトウェアの品質保証を軸に、上流域のコンサルティングから企画、開発、テストまで「売れるサービスづくり」を全方位で支援。「ヒンシツ大学(教育事業)」「CAT(ソフトウェアテスト管理ツール)」も提供。
https://www.shiftinc.jp/

10年間で従業員数45倍へ!? 業界の変革に賛同し集う仲間たち

大山:本日はよろしくお願いします。菅原さんとは、いつもゴルフを一緒に楽しんだり、プライベートでお話をすることも多いですが、今日は真剣に仕事のお話ができればと思います! 改めて、菅原さん自身のSHIFTさんでの歩みを教えてもらえますか?

菅原 要介さん(以下、菅原):よろしくお願いします。私は、2008年にSHIFTに入社し、当初はコンサルタントとして現場のプロジェクト推進などに関わり、その後、事業本部全体を統括する立場となりました。その後、事業の拡大に伴って2016年頃からは人事・採用領域の推進に注力し、2020年からはSHIFTグループ全体の人事・採用を統括する立場となっています。

大山:資料を見てみると、2013年のSHIFTさんは、ちょうど今のLIGぐらいの規模感(2022年4月現在の従業員数:273名)の会社だったんだなと。それが、今ではグループ企業全体で、9,000人に迫ろうとしているんですね! この数年間で組織が大きく成長してきましたが、どんな採用施策を実施してきたのですか?

菅原:2016年からの取り組みが大きく影響しています。当時、SHIFTは、新たにエンタープライズ領域に事業を注力させようとしており、そのために必要な人材を積極的に採用しはじめました。それまでは、Web業界やエンタメ業界出身者を中心に採用していましたが、金融系などエンタープライズ出身者の採用に力を入れていくようになりました。その結果、事業領域が一気に拡大していきましたね。

その後、一時的に落ち着くタイミングもありましたが、プロセスの改善を繰り返しながら、採用を拡大。近年はIT未経験者の採用や教育なども積極的に行っています。また、今期(2022年8月期)は、グループ全体で約2,400名規模の採用を見込んでいます。

大山:なるほど。新しい風を吹き込む人材を積極的に採用しはじめ、近年は人材要件をさらに広げたんですね。従業員数が増えてくると、管理者不足になってくると思いますが、どのように対応していますか?

菅原:そうですね、そのためにハイレイヤーの採用・育成も同時進行で強化していきました。やはり、入社し在籍し続けてもらうには、事業そのものがおもしろくなければいけません。そのために、まずは「業界を変えるぞ!」という新しいメッセージを打ち出すようにしました。

大山:事業の独自性やおもしろさって重要ですよね。我々も、今までLIGブログを通じて会社の魅力を発信し、そこに惹かれて入社していただく方もいました。現在は、DX推進企業として事業方針を転換しているタイミングであり、改めて、独自性を発信していっています。当時のSHIFTさんは具体的に、どうやって業界の変革を目指していましたか?

菅原:2009年からソフトウェアのテスト事業をスタートし、以降は「SHIFT=テストの会社」というイメージが強くなっていきました。そこで、専門人材の採用を強化しながら、コンサル・開発・セキュリティなどサービスラインナップを増加させていきました。

また、SHIFTとは異なる領域の専門性の高い技術や人材を有する企業とのM&Aにより、現在は30社を超える企業から成るグループへ拡大。お客様の困りごとや課題に対して、一部の工程に携わるのではなく、ビジネス全体に伴走していくことで、事業の成功にコミットしていくことを目指しています。それがDX支援へとつながっています。

大山:まさに我々が目指している姿と重なります。LIGは、もともとWeb制作会社からスタートし、昨年コンサル部門が立ち上がり、現在は一気通貫でお客様の課題解決をサポートしています。ちなみに、事業が急速に拡大していくと、採用だけでは対応しきれないこともあると思いますが、そこはM&Aを行なっていったのですか?

菅原:そうです。DXを推進していくなかで、我々では対応できない領域も出てきます。そのため、特定の領域が得意な会社さんに参画いただくことで、支援できる事業を拡大。同時に、私たちはテスト事業を通じて、多くのお客様とのつながりがあったので、既存顧客様に、M&Aを通じて得たサービスを提案することでリレーション強化へつなげていきました。

大山:組織強化を行いながら、DX推進の土台づくりを行っていったと。新たな領域に挑戦していく際、案件創出に合わせて必要な人材を採用し組織を作っていく手法もあると思います。SHIFTさんの場合は、先行して組織をつくり、事業を拡大していったのですね。

菅原:新たな領域を切り拓くための先行投資ですから、業績にも一時的には影響をおよぼす可能性はあります。しかし代表の丹下が強い思いを持って決断をし、その後、優秀な人材が新事業を引っ張っていってくれたので、新たな分野の開拓につながっていきましたね。

企業と社員が相互理解を深めることで、組織が成長する

大山:ここまでのSHIFTさんの組織の変遷をたどってきましたが、組織づくりについて深掘りしていきたいと思います。現在、SHIFTさんの従業員は、9,000人に迫ろうとしていますが、評価はどうやって行っていますか?

菅原:組織が拡大し、従業員数が増えてくると、個に対しての評価が難しくなってきますが、私たちは、『ヒトログ』というタレントマネジメントシステムを独自開発し、活用しています。


タレントマネジメントシステム『ヒトログ』 の管理画面

『ヒトログ』には、従業員のさまざまな情報が集約されています。例えば、仕事のスタンスの変化やメンタル状態、本人の心身のコンディションに関わる社内やプライベートにおける人間関係、今の業務が本当にフィットしているのかなど、あらゆることを把握することができます。

それらの情報をもとに、各部門の上長は各メンバーの成果や提示したい給与、今後のキャリアプランなどを半期に一度の評価会議内でプレゼンします。丹下自身も、一定ライン以上、1,000名ほどのメンバーの評価を自身で決めています。

大山:代表自身が1,000人分もの評価を決めているとは、すごいですね!

菅原:評価期間は社内でとても大切にしている行事であり、そのために日頃からみんなが『ヒトログ』を活用しています。『ヒトログ』は社内のエンジニアが1から開発し、日々自社内で運用・管理され、長い時間をかけてブラッシュアップされてきました。たとえ評価期間中でも「評価方法を変えたい」となったらすぐに修正しています。

大山:タレントマネジメントシステムを通じて、日頃からメンバー管理を徹底的に行なっていることで、評価が正しく行われるのですね。デザイナーやエンジニアなど、特定のスキルを持った従業員への評価について、どのようにして評価項目を作っていますか?

菅原:それぞれの職種に対して、必要な評価軸は可視化できると思っています。デザイナーやエンジニアのトップが経営の視点を考慮しながら、項目出しをしています。もちろん、企業や事業、状況によって、評価に必要なパラメータ・見るべきポイントは変わってくるので、ロジックをはじめにしっかり決めて、当面の評価として示していますね。その後は、都度チューニングしていくことが大切です。

大山:各職種のトップが項目を出すというのは、言われてみれば当たり前ですができていない企業も多いように感じます。経営トップや人事がそれぞれの職種の知識・スキルなどの情報を常に最新にアップデートするのは簡単ではないので、専門職のみなさんと一緒に人事制度を作り上げていくことが必要だと感じました。

加えて、給与ステージや昇給基準を明確にするなど、評価者と被評価者が共通の指標を持つことで、不透明さがなくなっていきますよね。

菅原:そうですね。会社として「こういう評価にするんだ」ということを見える化することは大切です。はじめは、社内で反発が生まれることもありますが、続けることで正常化していきますし、「これだけやれば、いくらもらえる」という指針ができ、従業員のやる気UPにつながりますから。

大山:そのほかに、プロジェクトの難易度や成果と担当メンバーのスキルの関係性をどう評価するか、は議論になりやすいと思います。 成果が出ているプロジェクトに携わっていても、担当者に高度なスキルがあるとは限らない。優秀な人でも難しいプロジェクトだから成果が出にくいとか。SHIFTさんでは、どのような考えで評価していますか?

菅原:プロジェクト内容と本人のスキルとの間に乖離はあるかもしれませんが、現状担当している案件で結果を出せているのであれば、フラットに評価をするようにしています。

一方で、過大評価をしすぎてしまうと、本人もそのバリューを出そうと辛くなってしまうので、しっかり個人と対話をしながら評価をするようにしています。

大山:個人との対話には『ヒトログ』が重要な役割を果たしていますね。専門職、プロジェクト、それぞれの評価を聞きましたが、最後に管理職への評価はどのように工夫していますか?

菅原:仕事の成果はもちろんですが、管理職としての人格を大切にしており、上長と各メンバーの関係値をはかるようにしています。

評価面談では、最終的に、上長からメンバーへ評価結果をフィードバックします。その際、メンバー自身が評価に対して納得できたか、というポイントも計測しており、複数メンバーからの点数が低い場合は、人事から上長へ注意が入るケースもあります。評価に対して、受ける側も説明に対して評価する。もちろん相性もありますが、世の中の期待値を踏まえた市場価値などと合わせてフィードバックし、本人の納得を得ることも重要です。

大山メンバーとの関係構築が管理職の評価にもつながってくると。評価時の納得度はその後のリテンション(人材流出の防止)にも大きく関わってくると思うので、我々も参考にしたいと思います。

ここまで人事評価の工夫をさまざまな観点から聞いてきましたが、その評価結果を資料で見て驚きました! 従業員の年間昇給率は平均10%UPしている。すごいですね!

菅原:お客様からの評価と従業員のスキルアップ(評価)を考慮した結果、近年は平均10%UPが続いていますね。

我々は常に、お客様に対して付加価値の高い仕事ができているか、そのためにスキルアップを行っているか、そして仕事の単価があがっているか、を指標としています。それらを総じて上げていき、正当に評価した結果なんです。見方を変えれば、それらが下がっていることは、従業員の成長やお客様への提案力が弱っているなど、アラートにもなってきます。

効率よく採用し生産性を高める、採用・人事のDX

大山:ここからは、DXにまつわるお話を聞きたいと思っています。大きな組織ゆえにさまざまな工夫を行っていると思いますが、DXの観点における取り組みはありますか?

菅原:弊社では、ソフトウェアテストの事業開始当初から『CAT検定』という試験を行っています。

『CAT検定』は、候補者が持っている業務に対する素養や資質を測ることができる試験。弊社は、IT未経験者の採用も積極的に行っており、そのような方々でも『CAT検定』で素養の有無を判定できる試験になっています。

採用では、面談を繰り返し、スキルを把握していても、実際に活躍できるか否かは実際に働いてみなければわかりません。そこで、まずは、この試験を受けてもらい、見極めることができるため、採用のミスマッチをなくすことにつながっています。

そのほかにも、セキュリティ、プロジェクトマネジメント、営業など、事業部に特化した検定を行い、『CAT検定』を開発・運用していく専門の部署によって、ブラッシュアップが続けられています。

菅原:そして、弊社が開発しているソフトウェアテスト管理ツール『CAT』もポイントになっています。『CAT』はテスト工程の進捗を自動集計し、リアルタイムに可視化ができ、プロジェクトを一元管理できるツール。加えて、給与システムやスキル管理、社内ポータルなどと連動することで、ローコストオペレーションの徹底した生産管理体制が確立していくのです。

『CAT検定』『CAT』『ヒトログ』は、選考から採用までのスピードUP、生産性を高めるための工夫につながり、結果、採用・人事業務におけるDXの1つになっています。

大山:創業当初からのさまざまな取組みが蓄積し、他のソリューションと連携していくことで、事業成長につながっていったのですね。

菅原:そのほかにも、私たちは、コロナ以前からオンライン面接を実施し、その様子を録画して複数の事業部とも共有することで、スピーディーかつ効率的な採用につながっていました。事前に、見るべきポイントを各事業部と決めておくことで、面接を重ねることなく、また、必要な人材を取りこぼすことなく採用できています。

大山:現在は、Zoomでの採用面接が一般的になっているので、そのような工夫は他の企業もすぐに取り入れることができますね。SHIFTさんの採用プロセスは、他社よりも早く・効率的なので、人材紹介会社やヘッドハンティング会社が積極的に候補者を紹介してくれそうですね!

今こそ、「働きたい」と思える環境づくりを

大山:SHIFTさんは、事業成長とともに、自然と社内外へ向けたDX推進のかたちが出来上がってきていたんですね。今後、より組織を拡大していくようですが、どのような戦略を考えていますか?

菅原:今後は、日本のなかでも特に地方での採用を強化していきます。地方での採用は、都心とは手法が異なり、まだまだ接点を持てていない人が多い。そこで、人事担当者と各事業部の担当者がタッグを組んで、地方拠点を設置し、採用強化を進めています。現在は、在宅を中心にリモートで業務を行える環境も整っているため、日本全国37都道府県に従業員がいます。

大山:地方に目を向けているんですね。我々は、フィリピンとベトナムに開発拠点があり、海外人材の採用を積極的に行なっています。出会いを求めてどうアクションしていくかが鍵になってきますよね。

菅原:日本のIT人材は約100万人と言われています。DXが全盛になっていくことを考えると、今後はもっと増やしていかなくてはいけない。一方で、IT業界から離れていく人がいることも事実です。そのため、この業界で働く環境づくりがとても大切だと思っています。やりがいや仲間とのつながりなど、エンゲージメントを高めることは率先して行なっていきたいですね。

大山:仲間とのつながりは本当に大切ですよね。LIGは、DX企業として事業転換を行なっていますが、以前から「Build Team Together」をスローガンに、チームで仕事をすることはずっと大切にしてきました。企業は違えど、同じ業界に属する「働きたい!」と思える環境づくりを行っていきましょう。本日はありがとうございました!

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アパレル企業にて販売員を経験後、編集プロダクションにて、エディターとしてのキャリアをスタート。雑誌編集、アパレルブランドや商業施設の販促物・Webコンテンツ・店頭装飾物・ビジュアル制作などに関わる。2020年7月にLIGに入社し、さまざまな企業のオウンドメディア支援に携わる。2022年7月より広報チーム所属。

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