こんにちは、Webディレクターのイナッチです。
今回は企業様がWebサイトを導入したあとに発生するランニングコスト(保守運用費)をご紹介します。
皆さんはWebサイトの新規立ち上げやリニューアルをプランニングするにあたって、導入時に発生するコストだけでなく、導入後に発生するランニングコストについてもきちんと考えることができていますでしょうか?
Webサイトは作ってからが本番です。
導入だけにもまとまったコストがかかるため、Web制作前はついついそちらの金額にばかり目がいってしまいますが、ランニングコストを想定してプランニングしておかないと、せっかく導入したWebサイトを期待したほどうまく活用できない未来が待っているかもしれません。
むしろWebサイトのプランニングや設計においては、「ランニングコストをこのくらいかけられる(あるいはこのくらいに抑えたい)からこそ、こんな作りにする」というアプローチは、はずせない観点の1つです。
「どんなところにコストが発生するか?」については、Webサイトの目的・特性や、企業様のポリシーによって異なりますが、今回は、これまで70以上の企業様のWebプロジェクトに関わった経験をもとに、「どんなWebサイトでもこれだけは確認してほしい」というランニングコストをピックアップしました。
具体的な金額はピンキリなのでご紹介できませんが、「どんなコストを見積もっておくべきか?」という観点でご参考にしていただけるのではと思います。
Webサイトのプランニング・要件定義・設計に関わるWeb担当者・プロジェクトマネージャー・ディレクターの方々は、ぜひご確認ください!
目次
ランニングコストの定義
本題に入る前に、本記事において何をランニングコストとするかをご説明いたします。
重要なのは、「Web制作会社にいくら支払うか」ではないということです。例えば、Webサイトを所有する企業内の広報担当者様が何らかの作業を行う場合であっても、ここではコストと捉えます。
つまり、Webサイトに対して何らかのやるべきこと・課題があって、それに対して誰かが少しでも手を動かしたり、頭を使って考えたりするのであれば、それは人件費というコストがかかるという考え方です。そして、その業務を外部にWeb制作会社等に委託するのであれば、人件費の代わりに外注費が発生します。
さらに、もしやるべきこと・課題に対してマンパワーを使わずに仕組み(設備)で解決するのであれば、その仕組みを維持するためのコストが掛かります。例えば、Webサーバーの月額費用はこの代表例です(Webサーバーとは、「自動で情報を配信してくれる仕組み(設備)」と捉えることができます)。
ここでお伝えしたいのは、コストがかかるということはつまり、その背景に何らかのやるべきこと・課題が存在するということです。
やるべきこと・課題に対して、人手で解決するのか、仕組み(設備)で解決するのかを選択し、そのうえで内部で処理するのか外部に委託するのかの選択肢があります。このうちどの選択肢を選ぶかにかかわらず、ここではコストと捉えます。多くの場合、いずれかの選択肢がもっともコストパフォーマンスが良いと判断され、選ばれることになるでしょう。
この記事では、Webサイト運用中に発生するやるべきこと・課題=人や設備が稼働するコストと捉え、これをランニングコストと定義します。
ランニングコスト① コンテンツ面
Webサイトを公開したまま、掲載コンテンツを一切更新しない、というケースは非常に稀ではないでしょうか。
オウンドメディアサイトのように頻繁にコンテンツを発信するサイトであれば、コンテンツ制作に多くのコストをかけていくことになるでしょう。
プロダクトサイトやECサイトであれば、商品の改廃や在庫状況に応じて掲載内容を更新する必要があると想定されます。また、プロモーションのためのランディングページ(チラシの役割をするページ)も断続的に制作することになるでしょう。
ほとんど固定の情報を掲載しているコーポレートサイトであっても、最低限のお知らせの更新や、定期的な会社概要更新(たとえば従業員数の更新など)などが発生するでしょう。
こういったコンテンツ面のコストは主に、コンテンツを用意するための費用とコンテンツをWebサイトに反映するための費用に分けられます。それぞれブレイクダウンします。
コンテンツを用意するための費用
コンテンツ制作にかかる費用は、Webに限らずどんなメディアでも同じようにかかるため、普段から広告に関わる方なら想像しやすいのではないでしょうか。
- 題材を用意するための取材費用
- 文章やキャッチコピーを書くためのライター・編集費用
- 写真を撮影・加工するためのフォトグラファー費用
- 動画を撮影・編集するための動画制作費用
- 人物や物を撮影するためのモデル費用・スタジオ費用
- イラストを制作するためのイラストレーター費用
- 既存の写真やイラストの利用するためのライセンス費用
- バナーを制作するためのデザイナー費用
- コンテンツの品質をチェックするための確認費用(法務チェックなど)
コンテンツをWebサイトに反映するための費用
Webサイト上のコンテンツを更新する作業費は、以下の2種類が考えられます。
- HTML/CSS/SFTP接続などの専門技術を用いた更新作業費用(専門知識を要す)
- CMSなどのシステムからの編集作業費用(多くの場合、専門知識を要さない)
後者のほうが専門スキルを要さない分、作業費としてコストを抑えられることが多いですが、前提としてCMSなどのシステムが導入されている必要があるため、導入費用やサービス利用費が別途かかります。
ランニングコスト② アプリケーション面
Webサイトに何らかのアプリケーションを導入している場合、安心して利用し続けるための費用がかかります。
Webサイトによく導入されるアプリケーションとして代表的なものは以下のとおりです。
- CMS (WordPress、Drupalなどが有名)
- EC (Magento、EC-CUBEなどが有名)
- CRM/SFA (Salesforce、kintoneなどが有名)
- MA (Marketo、SATORI、b→dashなどが有名)
いずれも、クラウドサービス(SaaS)を契約してあらかじめ完成したサービスを利用している場合と、オープンソースなどを用いながらWebサーバー上に独自開発したプログラムを稼働させている場合とで、費用のかかり方が異なります。
クラウドサービスを利用している場合にかかる費用
サービスに応じて月額・年額もしくは従量課金制のサービス利用費がかかります。住居にたとえると、賃貸契約をするイメージに似ています。
- サービス利用費(月額、年額、従量課金など)
導入費用だけ見た場合アプリケーションを独自構築するよりもクラウドサービスを利用するほうが安くつくことが多くなりますが、クラウドサービスはあらかじめ提供されている機能しか利用できないため、独自の機能がある企業様は独自構築をおすすめします。
Webサーバー上で独自構築したプログラムを稼動させている場合にかかる費用
アプリケーションを独自構築することを住居に例えると、賃貸ではなく注文住宅を建てるようなイメージです。完全に制約が取り払われるわけではないですが、ニーズに合わせた自由度の高いシステムを構築可能です。
ランニングコストとしては、賃貸における家賃のような利用費は発生しませんが、持ち家における保険・定期点検・アフターサポート、老朽化や使い方の変化に伴うリフォーム工事に当たるような費用が発生します。
- アプリケーション保守費(保険・定期点検・アフターサポート窓口などのイメージ)
- アプリケーション改修費(老朽化や使い方の変化に伴うリフォーム工事のイメージ)
保守費がベースとして継続的にかかってくるの一方で、改修費は必要に応じて断続的に発生します。
改修費が発生するきっかけとしてよくあるケースは以下のとおりです。
- 利用しているパッケージ・オープンソースソフトウェア・フレームワーク・ライブラリなどのアップデート(老朽化防止のイメージ)
- 使い方の変化や、使ってみたら使いにくいなどの課題解決
- マーケティング施策などに伴う新たな機能の必要性
- 脆弱性等の欠陥が指摘された場合の改善
こうした保守や改修の業務は一般的に、もともとアプリケーションを構築した担当者・業者に依頼すると、構造を深く理解しているという点で安心です。A社で建てた家をB社でアフターサポートする、C社の車をD社が修理する、ということは、一般的にあまり考えにくいことです。アプリケーションでも同じことがいえます。アプリケーションの構築を依頼する業者には、必ず保守体制についても確認するようにしましょう。
さらにオプションとして、1つの業者だけに品質管理を任せることが不安である場合は、「第三者検証」サービスを用いて、定期的に客観的な評価を取得する取り組みがおすすめです。
- 定期的な第三者検証費(脆弱性診断、スマホの新機種・バージョン対応確認など)
ランニングコスト③ プラットフォーム・インフラ面
これは端的に言えば、Webサーバーの利用費・保守費です。利用費は家賃のイメージ、保守費は正常な状態を維持するための定期点検・メンテナンスのイメージです。運用費はリソース調整が柔軟に可能なAWS等のクラウドサービスを用いる場合に、その利点を活かすオペレーションです。
- PaaS, Iaasプラットフォーム利用費(月額、従量課金費用など)
- プラットフォーム保守費(365日24時間機械監視、有人監視、障害発生時一次対応など)
- プラットフォーム運用費(利用状況や計画に応じてサーバー台数・リソースなどを変えるオペレーションなど)
こちらはアプリケーションと同様、インフラを構築した業者に依頼することがもっとも安全です。また、オプションとして「第三者検証」サービスを用いて、定期的に客観的な評価を反映することも可能です。
たとえばキャンペーン期間中に突発的にアクセスが上昇するなど、ユーザーの利用状況が頻繁に変化するサイトにおいては、いわゆるサーバーダウンを防ぐために運用体制をきちんとしておくことがおすすめです。
また、個人情報などの重要なデータをサーバー上で管理するようなプロジェクトでは、WAFやIDS/IPSなどのセキュリティ製品も導入して運用することになるでしょう。
ランニングコスト④ 事務局面
Webサイトが顧客とのコミュニケーションや取引をする役割を持っている場合、ユーザーから見てWebサイトの向こう側に顧客対応窓口が必要となります。
代表的な業務としては以下のとおりです。
- お問い合わせの窓口業務(お問い合わせフォーム、チャットツールなどに対して)
- キャンペーン事務局業務(抽選、当選通知、景品発送、お問い合わせ窓口など)
- EC事務局業務(受注管理、顧客管理、発送管理、お問い合わせ窓口など)
- SNSの運用業務(いわゆる中の人)
基本的に個人情報を取り扱うことが多いため、外部委託する場合は(Pマークを取得しているなど)信頼できる企業に委託することがおすすめです。
ランニングコスト⑤ マーケティング面
Webサイトを用いてビジネスを最大化するためには、Webサイトから取得できる様々なデータを活用・分析し、次の施策をプランニングする活動が必要です。
Google アナリティクスなどのWeb解析ツールや、EC・CRM/SFA・MAなどのマーケティングツールを導入している場合、さまざまな数字を収集することができますが、数字を見ながら次のアプローチを考えるには、まだまだ人の力必要です。
- 数字を管理・分析し、施策をプランニングするプランナー・マーケター費用
また、プランナー・マーケターが掲げた施策実行にあたって、コンテンツの制作や更新が必要である場合、①のコンテンツ面のランニングコストが断続的に発生することになります。
ランニングコスト⑥ マネジメント面
ここまでにご説明したさまざまな「コストのかかる課題」を洗い出して分析し、優先順位をつけてコストを投じていくマネジメントを、統括的に行う業務が必要となります。これがプロジェクトマネジメントと呼ばれる業務です。
- さまざまな課題を統括的に整理・分析し、適切にコストを投じていくプロジェクトマネジメント費用
Webサイトのプロジェクトマネージャー(PM)ってどんなことをしているの? と思われがちですが、ここまでにご説明したあらゆる課題(コスト)を俯瞰して把握しながら、Webサイトが期待通りの効果を発揮できるよう、さまざまなタイミングで舵を切るポジションになります。
私がWebディレクターとして取り組んでいるのが、まさにこのプロジェクトマネジメント業務になります。
まとめ
Webサイトは導入後も、さまざまな側面でコストが発生することがおわかりいただけたのではないかと思います。だからこそ、コストに見合った成果を挙げられるようなWebサイトを設計し、しっかりした運用体制を構築したいですよね。
弊社では、Webサイト導入時に、導入後の保守運用プランも合わせてご提案させていただきます。気になった方はぜひご相談ください。
それではまた!
LIGはWebサイト制作を支援しています。ご興味のある方は事業ぺージをぜひご覧ください。