1000本突破
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採用難の今だからこそ、あえて構造化面接の導入をはじめてみた

くま

LIGのくまこと久松です。

ITエンジニアの採用は10年目に突入したものの、総合職採用は稀に手伝っていたくらいで素人です。最近になって営業職やブリッジディレクターなどの総合職新卒・中途採用に関わっているのですが、プログラマとは全く違う難しさがありますね。

特に新卒採用は面接件数も多く、面接のドタキャンも多いので面接の現場から悲鳴が聞こえてきます。とはいえ、採用予定人数を鑑みると採用専任を置くのも予算的に難しいのが悩ましいところです。

そこで思い立ったのが構造化面接です。数年前に話題になりましたが中小企業での導入は難しい気がしていました。しかし、現在は再度構造化面接と向き合い、導入に向けて動いている次第です。

構造化面接を導入したい! と思った経緯と、非専門職採用の難しさ

ITエンジニアのような専門職採用では、スキルだったり未経験の場合も素養を推し量ることで受け入れられるかどうかのアタリをつけることができます。

一方、営業職やブリッジディレクターのようなポジションではコミュニケーションや、ポテンシャルが漠然と求められます。企業としては下記のような苦悩を抱えがちです。

  • 一次面接
    • 漠然と書類OKを出すと一次面接数が増える(人事採用工数の問題)
    • 通過基準が揃えられないため一次面接官を分散できず属人化し、特定の人の業務時間が面接で圧迫される(選考精度の問題)
  • 集団面接
    • 集団面接を組むには母集団形成が心もとない(企業の知名度に対して施策がオーバースペック)
    • 集団面接を組むための日程調整リソースがない(人事採用工数の問題)
  • 二次面接(現場面接)
    • 「なんとなく良さそうです」と二次面接に上げてしまうことでの現場との温度差(社内の意識合わせの問題)
    • 面接数が増えることによる業務の圧迫(現場工数の問題)

また、候補者、特に新卒採用では下記のような事象が発生します。

  • 対象業界を絞りきれていないことによる散弾銃のような「取りあえずのエントリー」
  • 就活シーズン後半に見られる「藁をも掴むエントリー」
  • 露骨な滑り止め応募・練習としての応募

さらにコロナ禍でリモート面接が一般化したことにより、例年に比べて「カジュアルなドタキャン」が自社他社問わずに増えているようです。

結果、入社数には期待できないものの、設定される面接数は増えることに繋がります。母集団形成を工夫するなどもありますが、一つは面接官をスケールさせることが考えられるでしょう。

面接官による評価のばらつきを防ぐ構造化面接とは?

構造化面接法は「あらかじめ評価基準や質問項目を決めておき、手順通りに実施していく」というシンプルなものです。臨床心理学におけるアセスメントの一種といわれています。

構造化面接法のポイント

例えばGoogleの場合、下記のようなアプローチを行っています。

  • 職務に関連性のある、吟味された質の高い質問をする(難問奇問をしない)
  • 評価担当者が簡単に回答を審査できるように、応募者の回答に対する総合的なフィードバックを文書にする
  • 優れた回答、凡庸な回答、劣った回答がどのようなものかについて、すべての評価担当者が共通の認識を持てるように、標準化されたプロセスで採点する
  • 面接担当者が自信を持って一貫性のある評価を行えるように、面接担当者へのトレーニングを提供し、調整を図る

引用:構造化面接を実施する

以前の職場で、下記の昇級のためのアセスメントを実施していましたが、ポイントとしては共通したものがあります。

  • 自社の評価制度を根拠にした項目別の30程度の質問
  • フィードバックの文書化と、アセッサー(面接官)によるすり合わせ会の実施
  • 事前の評価研修

面接に関して考えると、1番目の「職務に関連のある質問」はミッション・ビジョンなどに当てはめると良いでしょう。自社の価値観に賛同してくれるかどうかというのはわかりやすい指標です。

PBI Performance Based Interviewing

3点目の「回答の良い・悪いについて共通の認識を持てるようにプロセスを標準化する」が難しいところです。

これは、私もこれまでのITエンジニア採用で苦労していたポイントであり、厳しい事例だと人事採用担当から「面白そうな人です」「かわいげがある」などと上がってきたときに苦労していました。情に流されるのは採用担当の人間性としては良さそうに思えるものの、組織としてはドライに見ないと受け入れ責任の問題に繋がります。面接で何を聞き、どう評価するべきかがポイントになってきます。

Work Rules!』を執筆されたLaszlo Bock氏はこの面接質問内容としてUnited States Department of Veterans Affairsの面接対策質問表の利用を示しています。92項目ほど事例があり、マインドなどではなく、過去の振る舞いや実績に基づいた質問集となっています。いくつかピックアップしてみます。

  • 創造的思考:過去に上司に行った提案を2つ教えてください。その提案はどうやって思いつきましたか? また、どうなりましたか? その結果についてどう思っていますか?
  • 創造的思考:業務効率化のためのアプローチについて説明してください。どのように問題を特定するか、どのように問題の影響を調査するか、どのように問題に対処するか、どのように効果測定をするかを具体的に説明してください。問題の特定から解決に至るまでの具体的な話を教えてください。
  • 顧客志向:職場にて助けが必要な人に気づいたことについて教えてください。助けが必要なことについてどのように気付き、何をしましたか? どのような結果になりましたか?
  • 柔軟性:この2-3年に発生した変化を余儀なくされたことを教えてください。変化についてどのように感じ、何をしましたか。今はその変化をどのように感じていますか?
  • 対人関係:他人とのコミュニケーションでうまくいかなかったと感じた場面について教えてください。あなたはどのように対処しましたか?
  • 組織的役割:サポートが得られない状態で仕事をした経験と、どのようになったかを教えてください。
  • 組織的役割:組織目標を達成するために、チームの一員として働いた経験を教えてください。チームはどのように協力してくれましたか?結果はどうなりましたか?
  • 専門性:情報分析の上で提案をしなければならなかったことを教えてください。どのような思考プロセスを経ましたか?どんな理由で決断しましたか?
  • システム思考:職場や組織のパフォーマンスを自ら責任を持って進めたことについて教えてください。どのようにアイディアを思いつき、どのように実行を移し、どのようにメンバーが変化に対応し、どのように効果測定をしましたか? 振り返ってみて今ならどのようなポイントを変えてみたいですか?

参考:PBI Performance Based Interviewing

中途のリーダー採用でも良さそうな内容が混じっていますが、授業のグループワークや部活などでも回答できる方は居るかと思います。「ここまでどうやって来ましたか?」「あなたを虫に例えると?」みたいなトリッキーな質問より生産性が高いですね。

どこで構造化面接を使うと良さそうか?

構造化面接はかなり機械的な印象を与えてしまうので、候補者の感情設計に基づいて判断する必要があるでしょう。会社説明会やカジュアル面談をして興味を持ってもらったあとに一度だけ挟むのが良いのではと考えています。

評価のばらつきをなくすには?

上記のような質問に対しての評価が課題です。例えば「感動した!」みたいな面接官の感情が入ってしまうと評価のばらつきになってしまいます。内容についての良し悪しを決めるのは構造化面接とはいえないのではないかと考えるに至りました。

自社のミッション・ビジョンに基づき、概ね方向性があっている方を次に進めるのが一次面接の役割と考え、下記のような評価軸を検証しています。

  • 5点:回答があった。内容について納得感がある。
  • 3点:回答があった。
  • 1点:無回答。
  • 0点:嘘をついているようだ。

この評価軸を各質問に照らし合わせながら計算していく方式です。計算式や点数の傾斜については母集団によって変えることになるでしょう。

不景気下の就活では、内定を得るために多少の嘘は必要であると思っている方が一定数出てきます。一次面接では採用強者の企業であれば5点を集めることになりますが、そうでない場合は0点をを回避しながらいかに自社で活躍してくれそうな人材を次のステップに繋げるかが重要であると考えます。

構造化面接は必要悪

構造化面接はあくまでも多くの候補者から効率的に自社で活躍できるフィルタリングの考え方です。大手マッチングサービスの元関係者としては、就職活動という慣習は何とも不格好で無駄の多いものであろうかと感じてしまいます。

1/1に近いマッチングができるような仕組みづくりがないものかと思案しながら、そして一時的な施策としての構造化面接であることを願いながら業務に当たっている次第です。