デジタル化・DX人材の活用の鍵を握るT&O(Talent&Organization)って何?

デジタル化・DX人材の活用の鍵を握るT&O(Talent&Organization)って何?

くま

くま

LIG BiTT開発事業マネージャーのくま(@makaibito)です。

私たちの事業ではおもに開発を準委任で受けるのですが、商材開発の一環で組織改善のコンサルをお引き受けしたりもしています。

デジタル化・DXを達成するためにデジタル人材の受け入れは必須、と考える企業様は多いです。しかし売り手市場が極まって混沌としているのがデジタル人材なので、採用手法だけでなく受け入れる環境をつくるのがミッションとなります。

さて、このコンサルの活動を便宜上「組織改善コンサル」と呼んでいたある日のこと。弊社のメンバーでアクセンチュア出身のてっぺーさんに「くまさん、それはT&Oですよ」とお話しいただきました。

「ト……T&Oですか」

横文字多めなコンサルタントから教えてもらったT&O(ティーアンドオー)、もといTalent&Organization。今回はそんなT&Oについて私の見解も含めて取り上げていきます。

Talent&organization/human potential

T&Oの目的

DXを整理すると上記のような図になると考えています。みなさん自社の商品を担いで「企業のアップデート」を狙った結果、なんだか「いつかやりたいと思っていた残務がデラックスに積み上がった」のがDXなのではないかと解釈をしています。

人的な観点から言うと、デジタル化・DX化の推進エンジンたるITエンジニアという人材そのもののお話がまず一つ。そして全社的にITツールを使いこなし、学び直しを経て業務効率化を実現しながら業務に当たる非ITエンジニア職も含めた社員そのもののお話がもう一つの側面として存在します。これこそがT&O(人事組織コンサルタント)が指すものです。

DXから距離を置いていたはずが、DXビジネスの話に包囲されたので整理してみた話

先にご紹介したアクセンチュアのサイトを参考にT&Oを、さらに4つの観点から考えていきます。

経営のアップデート

リーダーシップ、人材、クラウドテクノロジー、行動変化を通じて経営をアップデートしようというものです。日本でいうところの「働き方改革」などもこの一角ではないかと考えています。

タレントエコシステムの構築

従来型組織がツリー型の組織統制によるマネジメントだとすると、タレントエコシステムとは、各人の個性と得意を持ち寄り、最終的な目標に向かって自律的にチームによってマネジメントするというものです。

私がよく引き合いに出すのは、終身雇用型とオンプレミスのサーバです。括弧内が人事のお話です。

  1. データセンター(終身雇用型の企業というしっかりと整った箱にまっさらなサーバ(スペック(地頭ベースで導入(採用し……
  2. クリーンインストールし(大学とか研究テーマとか無視して0から教育をし……
  3. 各種インストールや負荷試験(教育プロセスを経て晴れて1台(1人月としてサービスインをする。

こうすることで画一的な1人月を効率的に生み出してきたのが従来型の終身雇用・新卒一括採用でした。

しかし1992年に小学校の教育が「新学力観」に基づく個性尊重をはっきりと打ち出した指導要領が導入されます。これ以降、よく悪くも個人差が大きくなっていきます。画一的なレベルをそろえるのも難しく、また、そろえることを望まない人も多いなか、各個人の得意と不得意を把握しながら人員配置していくことが求められます。

どうしてこんなに人気なのか?未経験・微経験フリーランスエンジニアの増加の背景

将来に向けた組織の成長

テクノロジーとアナリティクスを活用し、包括的かつ多様な文化を前提とした組織運営モデルを構築することで、成長や柔軟性を確保しましょうというお話です。

「HRTech」などといわれますが、各種サーベイを実施することで、各人の得意・不得意だけでなくエンゲージメントを測ることを試みたり、チーム構成をする上での相性やイノベーションの可能性を加味する企業もあります。人事にデータアナリストを配属し、こうした分析を積極的に実施する企業もあったりします。

その一方でひたすら同じ質問をサーベイで一定間隔で実施(パルスサーベイ)することでマンネリ化し、精度が低下してしまうような事象もあります。これさえすればOKというものではなく、自社の将来像を描きつつ従業員にどのようなメッセージを出していくか、その前にはどのような形で情報を収集・分析すればよいかというところから考える必要があります。

タレント管理と教育・成長機会

たとえばITエンジニアの場合、渋谷六本木界隈の有名企業上位10社程度を除くと、どの会社の採用担当者も「ITエンジニアがいない」と漏らします。正しくは「即戦力となるITエンジニアがいない」となります。

昨今の事情からすると下記が主な原因です。

即戦力となるITエンジニア不足の原因
  • 少子化でそもそも人がいない
  • 0~3年の経験でのフリーランスに転向することがトレンドのため、若手正社員がいない
  • 未経験者が溢れており人事が疲弊している

とくに最後の未経験者は、一人あたり500~600社応募して1内定という状況といわれています。一方で、あまりに正社員候補がいない状態を悟った企業から順番に、未経験者の受け入れが進んでいます。2020年6月と比べ、2021年1〜3月の未経験可の求人案件の比率は、6.1ポイント増えたとのことです。ただ、未経験者を受け入れるにしても、彼らを教える人材を確保する必要があり、その人はどこにいるの? どうやって口説くの? という話は避けられません。

「未経験OK」求人増加 エン転職、4月は全体の6割

勢い「デジタル化、DX化を狙えるだけの人材」がそもそも存在しない日本では、下記の3点しかないと考えています。

人材不足を解決するには……

  • M&Aで企業統合を進める
  • いる人でベストを尽くす、いなくならないように繋ぎ止める
  • オフショアを含め、外部リソースを頼る

いずれもジョインする人材を念頭に置いた下記の施策が必要です。

そのために必要な施策

  • どういう人がいるのかタレントの把握
  • 最低ラインをそろえるための教育
  • 学び直し、キャリアチェンジ
  • タレントを加味した再配置
  • 何を社内に残し、何を社外に出すのかの経営判断

極端な例として、漫画 キングダムにおける蕞(さい)の戦いが至るところで起きると考えています。蕞では主力の兵士や将軍が函谷関に集まるなか、一般の民衆しかいないような城だったため、体力や能力に応じた配置をしながら叱咤激励しながら戦うというものです。現在社内にいてくれている人材に対し、教育・キャリアチェンジもしながらベストを尽くしていく。極めて現実的なデジタル化・DXであり、多くの企業で選択肢に入れる必要があると考えています。

T&Oとはどうあるべきか

私自身、IT企業の中でも営業組織が強い企業を2社渡り歩き、いずれもITエンジニア組織を作ってきました。そのノウハウを数社に展開しているのですが、重要視しているのは下記の3点であり、各社に合わせて提案を徹底的にカスタマイズします。

  1. 尊重:経営層のデジタル化に対する意気込みの確認
  2. 融和:社内政治力の強い他部署を意識した社内制度・現実解の提案
  3. 定着:IT人材・エンジニア風土・DXソリューションの社内定着

一時的にデジタル化・DX予算が大きく降りた場合、前者の理解を得なければ定着はしません。どんなに格好良い経営フレームワークも会社に合わなければ無駄です。何のために実施するのか。実施した先に各部署に何の益があるのか。とくにこのメッセージを社内政治力の強い部署に理解してもらわないと、いつの間にか先祖返りします。

8月にT&Oセミナー開催!

2021年8月5日(木)に、実際に私が手掛けた大手製造業における新卒ITエンジニア採用を中心としたT&Oセミナーを実施します。開催時期が近づきましたら、LIGのメルマガであらためてご案内いたしますので、ご興味のある方はぜひ下記よりご登録くださいませ。

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2000年より慶應義塾大学村井純教授に師事。動画転送、P2Pなどの基礎研究や受託開発に取り組みつつ大学教員を目指す。博士(政策・メディア)。2012年に予算都合で高学歴ワーキングプアを経て株式会社ネットマーケティング入社。Omiai SRE・リクルーター・情シス部長・上場などを担当。2018年レバレジーズ株式会社入社。開発部長、レバテック技術顧問としてITエンジニアのキャリアに向き合う。2020年より株式会社LIGに参画。エンジニア資源を最大化するために研究をしていたら教育システムに行き着く。noteも更新中。

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