こんにちは、いいオフィス広報部です。
もともとは、LIGが運営するコワーキングスペースとしてスタートした「いいオフィス」。2018年より法人化し、2021年4月時点では500店舗(契約済み件数含む)と、店舗数日本一のコワーキングスペースとなりました。
しかし、いいオフィスが目指すのは2032年までに世界10万店舗出店。さらにコワーキングスペース事業だけでなく、今後別事業も展開していく予定です。
そうした展開の根源にあるのは、いいオフィスの「どこでもいい世界」という理念です。そこで今回、いいオフィス代表を務める龍﨑コウにインタビュー。10万店舗出店ですら通過点でしかないと語る理由、また「どこでもいい世界」という理念に込めた想いについて、語っていただきました。
29歳で年商数十億円。しかしフィリピンのスラム街で生まれていたら、どんなに這い上がっても実現できていなかった
——あらためて龍﨑さんがこれまでどういったことをされてきたのか、教えてください。
私は2014年にLIGに参画、副社長としていいオフィス事業を推進し、2018年には株式会社いいオフィスとして独立させ、2027年までに1万店舗の出店を目指していま動いています。
LIGへ参画する前は、ホテル業をメインとした運営管理・所有・コンサルティングをしていました。24歳で起業して、29歳のときには年商数十億円を超えるなど、順調にビジネスとしては成長させていました。しかし徐々に自分のビジネスに対する考え方に疑問を持つようになりました。
——なぜご自身の考え方に疑問を持つようになったのでしょうか?
1つは、子どもが生まれたことがキッカケでした。お金を生み出すというのは非常におもしろかったのですが、30歳のときに子どもが生まれて、ふと「この事業を子どもに継がせたいか」と考えたときに、継がせたいとは思えなかったんです。
それからは子どもが自ら「一緒に働きたい、入社したい」と思える会社はどんな会社だろうと考えるようになり、働く人にとっての成長環境があって、社会的意義のある事業をつくっていきたいと思うようになりました。ちょうどそのタイミングでたまたまLIG代表の吉原から声がかかり、新たな可能性を求めてLIGに参画しました。
そしてLIGではフィリピンに支社を設立し、オフショア開発事業がスタート。私自身もフィリピンに何度も足を運び、事業開発を進めてきました。そしてあるときフィリピン・マニラのスラム街を訪れる機会があったのですが、そこで暮らす子どもたちの姿をみたときに「いったい、自分はどんな希望を彼らに与えられるのだろうか」と愕然として。
その経験が、自身のビジネスに対する考え方に大きな変化をもたらした、2つめのキッカケでした。
——フィリピンのスラム街での光景を目の当たりにして、どのように考え方が変化していったのでしょうか?
私自身はさまざまな事業を成功へ導くことができると思っていましたが、それは日本という恵まれた環境に生まれたから。もし自分がこのスラム街に生まれていたら、そういった環境から抜け出し、這い上がっていけるだろうかと考えたときに、どんなに考えても這い上がっていくための方法がわからなかったんです。
また、住む場所によってもらえるお金が違うということにも違和感があって。オフショア開発の現場でも、フィリピン人は英語も話せるし、考え方によっては日本人よりも優秀と判断できる人も多いのに、 “フィリピン人だから” という理由だけで給与が安くなるのはおかしいなと。
それは日本国内でも同じで、地方在住者は東京に住む人よりも単価がどうしても安くなってしまう。当時LIGでは地方創生事業も展開していたのですが、東京と同じ単価感で地方に仕事をつくろうとしても、なかなか難しいんですよね。それで地方の人は高い単価感の仕事を求めて東京に来たりしますが、結局それって出稼ぎと同じ。中には地元に家族を残してきたり、理想のライフスタイルを捨てて東京にきている方もいるでしょう。
しかし、もし地方でも東京と同じ単価感で仕事を受けれるのであれば、東京に移住する必要はないですし、そういった仕組みがあればフィリピン人も日本人と同じ単価感、もしくはそれ以上を稼げるようになるかもしれない。
そんな仕組みがあれば、スラム街の子どもたちもより豊かな生活を送れるようになるだろうと思い、そういった世界同一職種同一賃金を実現できる仕組みをつくることが、自分の人生をかけてでもやりたいことだと思えました。そして、そのとき手掛けていたいいオフィス事業がその仕組みになるのでは、と感じ、コワーキングスペース事業だけで終わらない、1万店舗、10万店舗と店舗数を増やしていくことで実現できるさらなる展開を構想していきました。
ただ、店舗数を増やすというのは非常に莫大な資金が必要になります。LIGの一事業として展開していたいいオフィスでしたが、LIGの存亡にも影響を与えかねないため、いいオフィスの分社化を決断します。また、人生をかけてでもやりたいと思えたからこそ、私自身がこれまで築いてきた私財、そして自宅をも売却して自らの資産を投入。それでも足りなければ、別で私が所有している会社の株式を売却してでも資金をつぎ込もうと考え、それで失敗すれば破産は免れない——しかし、やろうとしていることは多くの人を幸せにする意義あることだからこそ、自らリスクを取って進めようと決断しました。
いいオフィスが100年企業を目指すのではなく、100年以内に潰れる会社を目指す理由
——いいオフィスが目指す「世界同一職種同一賃金」の仕組みとはいったいどんなものですか?
まず、いいオフィスはシェアオフィスではなく、コワーキングスペースであるということが重要です。開かれた空間があることによって、そこにコミュニティが生まれてくるからです。実際、コミュニティが各店舗で生まれていて、仕事を依頼し合うような繋がりが生まれています。
そのコミュニティの輪をより広げ、会員同士で仕事を依頼したり、仕事を生み出していくような “つながり” を世界規模でつくるべく、次に展開するのがグローバルコミュニティ事業です。自分たちのプロジェクトに最適なパートナーが見つかる会員ネットワークを構築し、国内外の会員に案件を依頼する場合は手数料をいいオフィスがいただき、仕事を発注できるモデルです。
はじめは物価(3倍以上)や賃金格差があるため、オフショア開発同様、海外に発注するほうが圧倒的に安くなるんですね。しかし、海外であろうと、優秀な会員であれば仕事がどんどん集まり、徐々に単価を上げていくことができます。そしてどこかのタイミングで、同一職種で同じスキルレベルの会員が国内と海外にいた場合、海外の会員へ発注するほうが高くなることも出てくるでしょう。そうなったとき、グローバルコミュニティ事業のサービスを利用しての受発注が選ばれなくなるかもしれません。
しかし、それは日本国内と新興国内で同じ金額感での発注ができるようになっている証拠。つまり、世界同一職種同一賃金が実現できている状態だなと思っています。
——その場合、いいオフィスとしての収益はどうなるのでしょうか?
グローバルコミュニティ事業においては手数料をいただく設計となっていますが、世界同一職種同一賃金が実現していけばいくほど、いいオフィスの利益は減っていくでしょう。しかし、いいオフィスが目指すべきは100年企業をつくることではなく、100年以内に潰れる会社を目指すことだと考えています。
なぜなら、いいオフィスでは「どこでもいい世界」という理念を掲げており、場所に関係なく世界同一職種同一賃金で働くといったどこでもいい世界が実現し、世界の人がハッピーな状態になっていれば、いいオフィスの役目は終了なわけです。
もちろん、どこでもいい世界を実現するためには、仕事だけでなく、住む場所やライフプランを実現するためのソリューションも必要です。そこでグローバルコミュニティ事業だけでなく、その次に生活サービスを利用できる「ライフスタイルプラットフォーム事業」、またいいオフィスに蓄積された個人の実績や評価を活かした保証システムや金融サービスを提供する「スコアリングソリューション事業」を展開していく予定(別ページ参照)です。
現在、いいオフィスの会員費は月額22,000円(税込)で、全国380店舗以上あるいいオフィスを使い放題で利用できますが、今後グローバルコミュニティ事業含め、さまざまなサービスが増えていくことで、 “2万円で利用できるサービスの1つがコワーキングスペース” という世界観を目指しています。その結果、どこでもいい「働きかた」を実現できて、どこでもいい「しごと」をして、さらにはどこでもいい「暮らし」や「未来」をつくっていく——それがいいオフィスが目指す「どこでもいい世界」です。
目標は2032年までに世界10万店舗。大企業の社員ですらも最寄りのいいオフィスで働く世界観をつくっていく
——「どこでもいい世界」を実現していくうえで、いいオフィスがまず達成しなければいけないことはなんですか?
まずコワーキングスペースという観点では、2027年までに1万店舗というのを達成する必要があります。というのも、自宅の近くや打ち合わせ先、また出張先などでコンビニのようにどこへいってもいいオフィスがあるという状態をつくることでユーザーメリットが生まれるラインが、1万店舗だと考えているからです。
また、グローバルコミュニティ事業を軌道に乗せるためにも、全国に多くの会員がいる状態をつくらなければ価値あるネットワークとはいえません。そこで働く場所の流動性を上げ、世の中の働きかたをアップデートするためには、2032年までに日本国内で2万店舗、世界で10万店舗という規模感を目指していくつもりです。
この数字を聞いて、無謀な目標だと思われる方もいるでしょう。実際、2018年にLIGからいいオフィスを切り離し、会社化したタイミングでは5店舗しかない状況で、その当時に「1年で100店舗出店を目指す」と言っても誰も信じてくれませんでした。
出資者から売上推移のイメージを求められたりもしますが、そもそも誰もやったことがないビジネスモデルなので、現実的な数字なんか誰も出せないんですよね。大企業の社員もフリーランスも、自宅の最寄りのいいオフィスで働ける、といった世界観、もともとない新しい社会をつくろうとしているわけですから、非常に難しいチャレンジです。
しかし、2027年までに1万店舗というのも遠い夢のように思えますが、すでにコワーキングスペースを展開されている企業や有効活用できていない不動産を所有する企業などにフランチャイジーとして参加いただき、2021年4月時点ですでに契約ベースでは500店舗まで拡大しています。
また、一般的なフランチャイズ(以下、FC)展開であれば、近隣エリアに他のFC店舗があると顧客の奪い合いになってしまいますが、いいオフィスはFC店舗同士で会員を “共有する” という考え方。そのため、自店舗で会員獲得するだけでなく、他店舗の会員が利用することでも売上配分が得られるようになっており、店舗が増え、会員も増えていき、会員の働く場所の流動性が上がれば上がるほど、各店舗も収益拡大が見込めるモデルです。
しかも、500店舗あれば500人の経営者がいる状態。いいオフィスはプラットフォームであり、そこで何をするかはオーナーの自由だと考えているため、オーナー同士でのコラボレーションや、新たなビジネス展開もオーナーにお任せ。実際に二社が合同事業を立ち上げるケースもすでにあります。そうした経営者オーナーの集合体で、どこでもいい世界を実現すればするほど各店舗も儲かる仕組みだからこそ、どこでもいい世界の実現が今後より加速すると考えています。
——最後にあらためて、「どこでもいい世界」に込めた想いについて教えて下さい。
昔は子どもに自分のビジネスを継いでほしいと思ってはいませんでしたが、いまは子どもに働いてほしいと思えるくらい、いいオフィスよりもいい理念の会社はないのでは、と思っています。
そして今後、コワーキングスペース事業、グローバルコミュニティ事業、ライフスタイルプラットフォーム事業、スコアリングソリューション事業と4つのフェーズにわけて事業展開をしていくわけですが、これら1つだけでも大成功のレベルなのに、いいオフィスはこれら4つすべてに挑戦していきます。
こうした事業を世界展開して成功している企業がまだないからこそ、人生をかけてでも取り組みたいチャレンジ。みんなが想像できないことをつくっていくのは大変だからこそ、非常におもしろいなと。その結果、10年後、20年後に私が見たマニラのスラム街含め、世界の姿が変わっていたらとても嬉しいですし、関わってくださる人たちが「いいオフィスがあってよかったよね」と思ってもらえるサービスにしていきたいと考えています。
取材・執筆はLIG OBのナッツが担当しました。いますぐいいオフィスの会員になろうと思います