街の空きビルの新たな活用方法とは?地域コミュニティビル「める・びる」に行ってきた!

街の空きビルの新たな活用方法とは?地域コミュニティビル「める・びる」に行ってきた!

Haruna Okumura

Haruna Okumura

こんにちは、いいオフィス by LIGの管理人で、富山出身のはるちゃんです。

年に2回ほど帰省をしている私ですが、帰るたびに気になっていることがあります。それは、地元の駅前や商店街なんかにある「空きビル」です。暗い雰囲気が漂っており、人が少なくなって廃れてしまったなあ……という雰囲気を感じざるをえません。大好きな思い出の町がどんどん暗い雰囲気になっていくのは悲しいし、どうにか若い人の力で元気にできないか……そんなことを考えている方も多いのではないでしょうか?

そんな矢先、富山県小矢部市の商工会と地域おこし協力隊が、駅前の空きビルをリノベーションして上手に空間活用しているとの情報をキャッチ!

どのような場所があるのか、どうやって街のにぎわいをつくっているのかを取材するため、富山の最新コミュニティスポット、「める・びる」にお邪魔してきました!!

※ 本取材は、2020年3月に行われたものです。

「める・びる」について

住所 〒932-0053 富山県小矢部市石動町4-25
電話番号 0766-67-3910
営業時間 9:00~19:00
Facebookページ https://www.facebook.com/oyabemellbill/

「める・びる」のある小矢部市

石川県境に接する富山県西部の人口約3万人の街で、その昔、源平合戦のひとつ「倶利伽羅峠(くりからとうげ)の戦い」があった場所でもあります。

北陸地方を国道・鉄道・高速道路で繋ぐハブ都市で、北陸街道の宿場町として栄えた歴史ある街の機能を、今もなお果たしています。西は金沢市周辺・東は富山市周辺・南は飛騨地域・北は能登半島などへ、車で約1時間前後で行くことができます。

「める・びる」誕生のきっかけ

そんな小矢部市も時代の波にのまれ、近隣都市や首都圏へ若者が流出、やっていたお店はなくなり、車での移動が増えて街を歩く人々は姿を消しました。小矢部市唯一の駅である石動駅近く、かつてのこの地方の主要スポットであった石動町商店街の人々も、閑散とした街の未来をどうしていくか、にぎわいを作るにはどうしたらよいか日々頭を悩ませていたのです。

“なにかできないか? あの頃の小矢部の街のにぎわいをもう一度取り戻せる方法はないか?”

そんなとき、白羽の矢がたったのがある空きビルでした。

メインストリートである石動町商店街の角には、元電気屋さんで長らく空き店舗になっている4階建てのビルがありました。寂しげな様子はどこか街の見栄えにも影響していて、地元の方々もどうにかならないかと嘆いていたのです。そして小矢部市、小矢部市商工会、地域の方々が手を組み、ついに石動町商店街の空きビルはリノベーションされることとなりました。

「める・びる」の由来

名前は「める・びる」。市民の一般公募により、メルヘンの「める」、そして「ビル」を合わせて、「める・びる」と名付けられました。

メルヘンは、街の観光資源である「メルヘン建築」から来ています。小矢部市では、文化・教育施設などの多くを西洋建築のデザインで建設していた時期があり、当時の建築物を利用した観光PRを行なっています。

周辺の商店街の方々も待ち望んでいた交流拠点。地域の人だけでなく、市外や見学の人にもひらけている地域の公民館のようなコミュニティビルとなりました。

「める・びる」の案内人

今回「める・びる」を案内していただいたのは、小矢部市の地域おこし協力隊(2020年3月末日にて任期終了)の元井康平さんです。「める・びる」の企画コーディネートや施設管理などをされています。

ビル内の各フロアを案内していただいたあとに、元井さんの活動についてのお話も伺うことができました。


▲笑顔が素敵な元井さん

各フロアの紹介

1F:コミュニティカフェ、トイレ


▲大きな窓から光が入る、明るいカフェの店内

1Fのメインは「cafe Home Grown」です。関西から移住してきたオシャレなマスターが、おいしいコーヒーや名物のカレーランチ、さまざまなジャンルの本を販売しています。

マスターは現役の小矢部市地域おこし協力隊の方で、店内には地域の特産品も置いてあります。時には講演会などのイベントを開催することもあるそうです。お伺いした当日はオーナーの娘さんの卒業式のため臨時休業日でした(ほっこり)。次回帰省したときまで楽しみをとっておくことにします……!

 

▲カラフルでかわいいチラシもいっぱい!

また、入り口近くにある大きな掲示板には、たくさんのチラシが貼られていました!

元井さんいわく、「繋がりづくりやイベント広報を行う際には、多くの人に見てもらわないと情報が届かない。でも、地方で人が集まる場所というと、役所・スーパー・駅などが頼みの綱。これは地方あるあるだけど、それらの場所は、一見さんお断りだったり、利害関係が気になるあまり面倒に思われたりすることが多いので、イベントのチラシなどを置けないところが多い」とのこと。

そんななか、「める・びる」は誰でもチラシを貼れるので、ライブ・イベント・エステ・タロットなどバリエーション豊かな情報がたくさん集まってきます。


▲素敵な色合いの子供用トイレ

エントランス近くには、地域の人が気軽に立ち寄れる場所として真新しい「みんなのトイレ」を設置されたそうです。通常のトイレに加え、子ども用や多目的トイレも設置されています。

たしかにトイレの綺麗なビルって好印象ですよね! 個人的には盲点でした……!

2F:多世代交流スペース「める・座」

※ 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年4月14日(火)〜5月6日(水)まで休館。


▲写真左下にいるのは、小矢部市のキャラクター、メルギューくんとメルモモちゃん

2019年5月18日のオープン当初は、このフロアは椅子と机のみが設置されたシンプルなフローリング空間だったそうです。

しかし、設計段階で子育て世代のママや学生や子どもたちにも来てほしいとの意見が多く出ていたため、「める・びる」スタッフ側の判断でマットを敷くことにしたのだそう。それをきっかけに通ってくれるママさんが増え、おもちゃや本や雑誌を置いたりと地域の人の声を反映しながら空間をどんどんアップデートしています。

スペースの管理は、「める・びる」オープン以前まで近くで「ふれあいサロン」という、にぎわいスペースを管理していた女将さんが務められています。地域のお年寄りが世間話をしにきたり、中学生が遊びに来たり、高校生が受験勉強しにきたり、ママが子どもを連れてやってきたり……まるで、屋根付きの公園のような場所だそう。私がお伺いしたときは、地域のおじいちゃんおばあちゃんが集まって、わきあいあいと富山出身の新大関・朝乃山の話をしていました(笑)。

市観光協会が設置したカプセルトイ(ガチャポン)などもあり、初めての人も、常連さんも楽しめる空間です。

3F:文化交流サロン「める・カルチャー」

※ 新型コロナウイルス感染拡大防止のため2020年4月14日(火)〜5月6日(水)まで休館。


▲個室は4つ

なんとこちらの4つの個室は、それぞれ1時間500円で借りられます!! 安い!! 畳の部屋もあり、イベントや会議、食事会、ときには学生のたまり場としても利用されるそうです。

最近は、新たに机・椅子が追加されたり、当初なかったプロジェクター・音響機器が増えたりと、備品が充実してきているそうです。

4F:める・シェアオフィス


▲天気のいいときは立山連峰が見えるそう!

月額15,000円で借りられるこちらのシェアオフィスは、ロッカーや複合機、ポストなどがあります。起業をしたい人にぴったりの場所ですね。壁はホワイトボードになっていて、会議にも活用できます。地方でのオンラインイベントやミーティングにも役立ちそう。

現在入居者募集中だそうなので、富山に拠点が欲しい方はぜひ問い合わせしてみてください!

元井さんにインタビューをしました!

僕の生まれ故郷の街に住んでみたい。それが協力隊になったきっかけ

はる:富山県小矢部市の地域おこし協力隊として働くきっかけは何だったんですか?

元井さん(以下「もと」:)僕は小矢部市生まれではあるのですが、両親の仕事の都合で30年弱愛知で過ごしました。富山には祖父母がいるので、帰省先として年に数回訪れていた程度です。

今33歳ですが、20代はずっと愛知で演劇や歴史観光PRの「おもてなし武将隊」などイベント関係の仕事をやっていました。30代を迎えるときに「自分の中で方向転換をしたい、表現の活動を続けるために知恵をもっとつけたい」と思ったんです。そこで次の活動の場として、「北陸に住むのもいいな……!」と移住を決意しました。祖父母の「帰ってこい〜」という引力が強かったのも、ちょっとありましたね(笑)。

それが3年前のこと。「僕の生まれ故郷の街に住んでみたい」と移住を決意してからその数ヶ月後には小矢部市の協力隊になっていました。

 
はる:「める・びる」には、協力隊の任務として関わられたのですか?

もと:2016年の着任当初は別のミッションを担当していたのですが、「める・びる」オープン準備のタイミングの2019年2月あたりに、市観光商工課の課長さんとお話しする機会があったんです。そのときに、自分から「地域コーディネーターのような活動が自分に合いそうなんですが、どうしょうか?」と提案して、結果「める・びる」のコーディネーターになれました。

最初は「シェアオフィスを作るから入居する人を募集しないといけない、そしてそのお世話や管理をする人を入れたい」ということで、このビルに関わり始めました。ただ意外とシェアオフィスは順調に入居が増えたので、「める・びる」自体を活用した企画ディレクター的な動きが中心になってきました。これまで演劇や観光PR、イベント企画に深く関わってきた経験が生きたんだと思います。

はる:元井さんにぴったりのお仕事だったんですね!

もと:僕みたいな変な人間がソフトとして箱モノのハード(建物)に入ることにより、地方で企画制作やプロモーションができたので、相性が良かったですね。

あとは、富山に移住してみて、会いたい人には自分から行かないと会えなかったし、なかなか人と繋がる機会や楽しいイベントも少ないので、「こっちおいでよ! やろうよ!」と言える場所が欲しかったんです。「持ち寄りでパーティーしようよ!」「東京からミュージシャンが来るから、演奏してもらおうよ!」と、どんどん人を連れてきました。なんだか楽しそうなことやってるビルだな〜と思っている人も多いと思います(笑)。


▲1Fの「cafe Home Grown」でのイベントの様子

移住者として、自分の経験を活かせる場所が「める・びる」だった

はる:イベントを生み出すのって、慣れていないと難しいですよね。

もと:そうなんですよね。地方のよくあるイベントって、規模が小さくても年に1回ペースでしか開催されないものが多い。イベント準備のためだけに予定を合わせて何回も会議をしている印象もあります。参加人数も多いので合意形成が難しいのは仕方ないと思います。

でもたとえば、準備のための集まりをぜんぶイベントにしてしまえるスピード感があってもいいんじゃないか、小回りの効くような発想や少人数チームが増えてもいいんじゃないかと僕は考えています。

はる:たしかに! 「める・びる」さんのイベントは、いろいろな方とコラボレーションしたものが多いですよね。

もと:そうですね。もしこのビルが面白そうだなと興味を持ってくれる人がふらっと来て我々に声をかけてくれたときに、「それはここと担当が違うからあっちいってね」と非協力的な、たらい回しのような態度を取ってしまったら、そのコラボも生まれなかったかもしれない。

さまざまな声を拾いあげる現場の人たち(カフェマスター、女将さん、コーディネーター)がいるかどうかで、ハード(建物)が生きるか死ぬかが分かれる、ということを理解しました。

よく関係者の方から「東京とめる・びるで連携したい」といった要望をいただくのですが、具体的なアイディアがなかったり、ものすごいお金がかかる夢構想だったりで、けっきょく大きな話にならないケースも多いです(笑)。でも、ここからなにか始まってほしいと、若い世代や新しい風に期待してくださっているんだなあと嬉しく思っています。お金をかけずにできることもたくさんあるし、こんな田舎でありえないことを起こせるんだと信じて、小さなことをコツコツと実現させるというのも移住者の役割ですかね。

人をコンテンツにしてにぎわいをつくる

はる:にぎわいをつくるために取り組まれていることはありますか?

もと:モチベーションが高い方を主役にして、人自体をコンテンツにすることです。たとえば、起業をしたママさんを講師にしてイベントにするとか。

この人だったら力になってくれそうだなという人に協力をしてもらって、その人が看板になるようにイベントを立てる。たくさんお金をかけて呼んでこちらの枠にはめるのではなく、「める・びる」に興味を持ってきましたという人と同じ小さなチームになって、協力して仕事を作り上げていっています。


▲実際のママイベントの様子

「める・びる」をもっと、みんなの場所にするために

はる:もうすぐ任期を終えられる元井さんですが、「める・びる」コーディネーターとしての1年はいかがでしたか?

もと:もう協力隊も終わるし、「める・びる」との今後の関わりはどうなるのかなあと考えていたなか、商工会事務局さんや「める・びる」役員さんに「来年もぜひ」と言っていただけたときは、やってよかったなあと思いました。ただ、4月からは芸能や舞台のお仕事中心に動くので、任期終了後のビルの常駐管理・運営については、誰かに助けを出さないといけなかったんです。

そこで見つかったのが、地域のママさん。ママイベントも企画してくださっていて、「める・びる」関係者にも評判が良かった方でした。お声がけしたところ、管理補助役の「める・びるサポーター」として働いていただけることになったんです。このビルが好きで、小矢部のためになにかしたいと思っている方に仕事として関わり合いをもってもらう、というところまでいけたのがよかったです。ビルの管理面だけでなく、ママイベント企画もその方に安心してお任せできそうです(笑)。

 
はる:今後の「める・びる」に期待していることはありますか?

もと:今後もイベンター・外部コーディネーターとして「める・びる」とは関わり続けていきます。来年の周年イベントや季節のイベント計画も進めているところです。

あとは地域の人に「どんどん使ってください! みなさんの場所なんで!」と言い続けていきたいです。「あいつ(元井)に任せておけば大丈夫」じゃなくて、「みんなでやらんなん!」というムードになっていけたらと思います。みんながプレイヤーになるような場所にしていきたいです。

 
はる:「今後地域でにぎわいを作りたい!」という方にメッセージやアドバイスをお願いします!

もと:モチベーションが高い人とチームになる、というのが重要です。波長が会う人とチームを作って、仕事を振っていくとスムーズに企画が回りはじめます!

小矢部みたいにシャイな土地柄のなかで、「ここでなんかやろう、発信しよう」という発想が生まれる拠点ができただけでミラクルだし、それが価値だと思っています。地元の方の利用はじわじわ広がっていますし、利用者にはエネルギー溢れる金沢・南砺・高岡など市外の人も多くいます。「める・びる」は、地元だけでなく周辺地域の交流のハブになりつつあるのです。

にぎわいを作ることもそうですが、なにかを新しくはじめる際には、難しく考えたり、不安だったり、ネガティブな要素が頭に浮かんで、なかなか一歩目を踏み出せない人も多いかもしれない。でも、やっぱり楽しいことをやっていたらみんな喜ぶし、振り切ってやってみるのが大事です!

はる:お時間いただきありがとうございました! 今後の元井さんの挑戦も応援しています!


▲「める・びる」スタッフのみなさん

さいごに

地域ににぎわいを取り戻すためには、コミュニティスペースとなる空間と、エネルギーのあるコミュニケーターが大事な要素になってくるのかもしれません。

私が働く「いいオフィス」は全国に店舗を展開しているので、地元の人だけでなく、遠く離れた地域とのコミュニケーションやコラボレーションが生まれる可能性があると思いました。これからも「いいオフィス」を起点に、自らコミュニケーターとなって、利用者さんや地元のみなさんと一緒に地域を盛り上げていきたいです!

そんな「いいオフィス」は今後も全国にどんどん拡大中です! あなたの空きビルをコミュニティスペースに変える、コワーキングスペース「いいオフィス」をはじめてみませんか?

いいオフィスの空間活用について知りたい!

ここまでお読みいただきありがとうございました。富山の注目スポットがあれば、ぜひ私にも教えてくださいね!

それではまた、はるちゃんでした!

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Haruna Okumura
Haruna Okumura Digital Education / School Operator / 奥村 春菜

1995年生まれ。大学卒業後、シェアハウスを扱う不動産会社の海外事業部で賃貸営業を経験。その後学生時代にアルバイトをしていた縁でLIGのコワーキングスペース「いいオフィス」に出戻りし、運営・管理業務に従事。現在は「デジタルハリウッドSTUDIO by LIG」で受講生の入学後のサポートを行う。コミュニティ運営が大好きで、話しかけやすいオーラを出すのが得意。

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