長野の片隅からこんにちは! LIG野尻湖オフィスで働くディレクターのゆっちです。
長野県の北部、飯綱町(いいづなまち)。ここには、家族でのりんごジャムづくりからはじまり、今では年商100億規模までに成長した企業があります。
今回はそんな株式会社サンクゼールの久世良三会長に、ブランド構築の秘訣を伺ってきました!
株式会社 サンクゼール 久世 良三(くぜ りょうぞう)さん1982年に株式会社斑尾高原農場(現:株式会社サンクゼール)を設立。サンクゼールのジャムやワインなどの商品販売と、セレクトショップ「久世福商店」の店舗展開を行なっている。http://www.stcousair.co.jp/ |
手作りの「りんごジャム」が信州土産の定番に
づや・ゆっち:本日はお時間いただきありがとうございます。大型のショッピングモールでも見かけるサンクゼールさんのプロダクトブランドのお話を伺わせてください。
久世会長:わかりました。まずはサンクゼールの商品でもあり、飯綱町で採れたりんごを使用したシードルをご堪能ください。昔ながらのりんごを使いまして、独特な風味が特徴です。
▲「高坂りんごのシードル2017」飯綱町でしか栽培されていない天然記念物の和りんご「
▲インタビュアー:飯綱町のとなり信濃町出身のLIG CTOづやさん。シードルを楽しんでいます……!
づや:……おいしいです! さっそくなんですが、サンクゼールさんはどうやって誕生したのですか?
久世会長:この場所は、実は道路もまったくなかった荒野の丘でした。そこから、りんごの名産地でもあるフランス・ノルマンディーの原風景を再現したくて……スケッチを描いて構想を固めました。暮らしや土地の現状に満足していない人も少なからずいた中で、そういった方々からのご協力、そして行政にもご尽力いただき、できた場所です。
づや:大胆に土地づくりから進めていったんですね……! 反対する人はいなかったんですか?
久世会長:近隣の役場にジャム工場建設の話を持ちかけて断られたこともありますが、三水村(さみずむら、現:飯綱町)の村長さんはとても喜んでくれましたね。村が提案してくれた土地もありました。ですが、そのとき偶然にも遠くに美しいプロポーションの丘が目に入り、どうしても行ってみたくて、あたりを眺めながら歩いていたらその場所に一目惚れしてしまって。ここだったら自分の人生をかけられると思えるくらいの魅力を感じました。
づや:場所にまず、大きなインスピレーションを受けたのですね。サンクゼールさんの事業はジャムから始まったと聞いていますが、そのときのことをお教えいただけますか?
久世会長:はい。若いときは妻と斑尾高原でペンションを営んでいました。そのころ妻がペンションの朝食で焼きたてのパンと一緒に出していた、地元のおいしいりんごで手作りしたジャムが好評だったんです。最初はお土産として無料でプレゼントしていました。ジャムを製品として売りはじめ、そこから販売経路が拡大していきました。やがてスキー場などで取り扱ってもらうようにもなり、信州土産として定着しましたね。
▲現在でもジャムは主力商品。こだわりの素材を使った商品は、ソースや自家製のソーセージなどバラエティに富んでいる
「人脈社会」の世界で通用する会社に
ゆっち:そういったスタンダードで伝統のある商品がありつつも、さまざまな商品開発を手がけていらっしゃいます。ブランドを守りつつ、新しい取り組みをされる際、どういったことをされていますか?
久世会長:商品開発だけでなく、全国のおいしいものを集めた「久世福商店」というセレクトショップを行っております。バイヤー自ら足を運んでメーカーさんを訪問して、その土地に伝わる食文化や商品のおいしさやこだわりをまず体感します。そこで得た感動とともに、メーカーさんと一緒に商品開発をしています。海外のデザインセンスを取り入れつつ日本の良さを表現することで、ポテンシャルのある商品を海外の方に知ってもらいたくて。
ゆっち:久世福商店のデザインは洗練されていますよね……! 大切にしていることはありますか?
久世会長:私が感動したフランスのノルマンディーやカリフォルニアのナパバレーなどに時々社員を案内し、「本物」「歴史のあるもの」に触れる機会を作っています。良いものをたくさん見て、そのエッセンスを取り入れ、自分たちで磨き上げる……その積み重ねが大切だと思います。感度の良い人は美しいもの(デザイン)に囲まれたいですよね。そういう人が満足できるものを提供するようにしています。
海外での笑顔あふれるホスピタリティーや美しいランドスケープデザイン、センスのあるショップ、自らがワイン用ぶどうを育て醸造するワイン。それらは世界基準でないとお客様には満足していただけないと思っています。
づや:長野から世界を見すえている企業なんですね。
久世会長:世界の方がよりオーガニック志向が強いので、原料からこだわる必要があるんですよ。オレゴン州に生産拠点を造ったのは、品質の良いオーガニック果実などの原料に恵まれていたからです。
働く人が守られる会社づくり
づや:企業内部のコミュニケーションについて質問です。これだけ事業が大きくなりスタッフが増えていくと、たとえば理念を伝えるのが難しくなりませんか?
久世会長:社内報や夕礼、情報ツールを通して、できるだけオープンにして情報を共有しています。
サンクゼールで働くスタッフの8割近くは女性なので、女性が働きやすいような環境を整えています。子育てをするお母さんたちにも長く働いてもらえるように将来は保育園を作りたいと考えています。第一線で活躍しながら、アウトドアライフを楽しむ女性スタッフがサンクゼールには多くいます。「損得より善悪」そして「スタッフの幸せを願う気持ち」を大切にしています。態度を一貫するからこそ、信頼が生まれると思っています。
一貫した態度でいれば信頼に繋がりますし、意識や目線が合ってくると、お互いに良い仕事ができますよね。
夢は語ることが大事
づや:最後に今後のビジョンを教えてください。
久世会長:隣町の信濃町には私たちが「サンクゼールの森」と呼んでいるオフィスがあります。信濃町はぶどう作りが難しい気候といわれていますが、試行錯誤しながら商品発表までいけるように研究しています。地域の経済資源にもなりますので、注力していきたいですね。
また、信濃町にはC.W.ニコルさんが理事長を勤められている「一般財団法人 C.W.二コル・アファンの森財団」があります。サンクゼールもアファンの森が行なっている森の再生活動に協賛し、ぶどう畑での馬耕もスタートしたいと思っています。
あとは、森と畑の開発です。歩いて楽しい場所を信濃町につくり、国際的なリゾート地にしたい。世界に誇れる信濃町であってほしいですし、信州を美しくする義務があると思っています。
理想が高ければ高いほど、必ず応援してくれる人がでてくる。夢を語り続けて周りをまきこんでいくことを大事にしていますよ。
▲「サンクゼールの森プロジェクト@信濃町」 森に囲まれた広大な敷地にはショップや工場だけでなく、保育園や庭園などの癒しの要素が満載(久世会長のスケッチ図)
まとめ
人を大切にし、夢を語る姿勢に、心が熱くなるひとときでした! 壮大なプロジェクトや多彩なプロダクトの展開。それを動かす力の源は、何よりも一本スジが通っている想いでした。ビジョンに向かって突き進むことの大切さを感じました。
私も、今取り組んでいることにこだわりを持ちながら、夢を語っていくことで、いつしか誰かの心に響き、協力してくれる人が現れたら素敵だな! と思いました。
▲ワイン工場では日々、商品開発がされていました。食品と合わせてワインに合うかもチェックしているそう
▲開発中のハムとドーナッツ。厳選・こだわりの素材から作られており、安心して美味しくいただけます
▲飯綱町にある本店は、デリカテッセン、レストラン、ショップ、チャペルとさまざまな体験ができます
づやさんの笑顔でさようなら! 以上、ゆっちでした。
▼第1回「長野のくらしをハイブランドにする話」
ブランドづくりの話をしよう#1「長野のくらしをハイブランドにする話」
▼第2回「愛され続ける長野のお茶の話」
ブランドづくりの話をしよう#2「愛され続ける長野のお茶の話」
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