Web事業部_クリエイティブ
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2018.12.05

進化する伝統工芸にこれまでの概念を変える未来のフォント?もっとデザインが好きになる「CREATIVE X」第2弾に行ってきました!

ゆうこ

はじめまして、デザイナーのゆうこです。LIGでわくわくするために広島からやってきました。

先日10月21日(土)六本木にあるDMM本社で行われた「Creative X #2 デザインに化学反応は起きるのか。」というイベントにお手伝いとして参加してきました。

今回は「デザインに化学反応は起きるのか。」というテーマをもとに、建築や飲料メーカーなど、さまざまな業界の方に登壇していただきました。

デザイナーだけでなくクリエイティブな仕事に関わるすべての方の刺激になるイベントだったので、そのときの様子をお届けしたいと思います!

Session1.「CREATIVE X 新規事業」

登壇者
  • 宮下 洋輔(朝日新聞メディアラボ デザイナー)
  • タイスケ(LIG Web事業部長付特命担当)

一つ目のセッションは「新規事業」をテーマに、朝日新聞の宮下さんとLIGのタイスケさんで行われました。

宮下さんは朝日新聞社メディアラボのデザイナーで、新聞に入るグラフや表などのグラフィック類を制作する部署を経て、現在は新規事業の「moovoo」という動画メディアのクリエイティブを担当されています。タイスケさんはLIGメンバーの一員らしいですが、LIG社内ですらほとんどその存在を知る人がいない人物のようです。わたしも今回はじめてお会いしました。

デザイナーの立ち位置について

このセッションで興味深かったのは「デザイナーは事業の核メンバーになりにくい」ということでした。

デザイナーは社内外問わず「なんかさぁ、かっこいいロゴ作ってよ」というように、丸投げをされやすいポジションです。宮下さんはそういった発注と受注だけの関係にならないようにするために、以下の点に気をつけているそうです。

  • 会社がどう動いているかを把握する。
  • コンセプトや企画段階から参加する。
  • デザイナー以外の人にもデザインのプロセスを知ってもらう。
  • 一緒に考えてもらえる方向に持っていく。

デザイナー自らが動いて事業と関係のある人たちとコミュニケーションを取り、知見を広げていくことが大切だそうです。自分が働きやすい環境は自分で作っていかなければならないということですね。

新規事業と既存事業との違い

このセッションのテーマである新規事業と既存事業との違いについて、話していただいたメリットとデメリットをまとめました。

メリット デメリット
既存事業
  • 表現を突き詰められる
  • 自分を磨くことに集中できる
  • 仲間がいる
  • 相談がすぐにできる
  • 発注と受注の関係になりやすい
  • デザイナーに権限がないことが多い
新規事業
  • 事業立ち上げの一員になれる
  • 戦略に携われる
  • プロダクトに対しての責任が生まれる
  • 目標が明確になる
  • デザイナーが自分ひとりだけ
  • 人数が少ない

新規事業に携わる際にデザイナーに必要なスキルはさまざまな分野を行き来することで、デザインをデザイナーだけのものにしないよう、さまざまな分野の人と携わり協力することが大切になってきます。

また社内でもデザイナーは謎の存在になりがちなので、専門用語はできるだけ使わずにわかりやすく話すよう心がけているそうです。デザインをひとりで行う場合であっても、コミュニケーションを取ることで、仕事を円滑に進められるようになるそうですよ。

Session2.「CREATIVE X 体験」

登壇者
  • 反中 望(株式会社リクルートテクノロジーズ UXデザイナー)
  • 川口 貴仁(アーキテクト)

反中さんはゼクシィ、カーセンサー、タウンワーク、SUUMOなどを担当するUXデザイナーです。川口さんは住宅建築、公共建築、商業建築の建築デザインに携わっています。

建築デザインとWebデザインの違いとは

このセッションで面白かったことは、建築は「歴史的思想で考える」ということでした。

非デジタルの建築は、永続的に使われる可能性があることに対して、デジタルのWebは数年でリニューアルされたりなくなってしまう点で違いがあります。そのため建築家の名前は残るけど、Webは建築ほど名前が残ることはありません。

また建築は一度もの作りを始めると、お金もかかるし後戻りできないので、失敗しないようどうデザインするか仮説検証を行うそうです。Webは建築と比べると大きな失敗は発生しづらいかもしれませんが、この仮説検証はWebでも応用できそうですね。

もし仮に建築で失敗があったとしても、失敗を失敗として捉えずコントロールし、経験として価値があるものに変えているそうです。この点はWebにも共通しています。

建築はこうだけどデジタルはこう、といつもと違う視点で考えることができて貴重な経験になりました。

Session3.「CREATIVE X 差別化」

登壇者
  • 菊地 あかね(AKANE KIKUCHI DESIGN アートディレクター)
  • 玉木 穣太(DPDC 代表、MITAS Medical クリエイティブディレクター兼ストラテジスト、Libertypool クリエイティブディレクター)

着物姿が美しい菊地あかねさんは、HIPHOPに憧れがあり、ニューヨークの大学に留学されたそうです。グラフィティ(壁に絵を描くこと)やデザインを学び、帰国後は表現者として日本の良さを知るために、探究心から芸者に弟子入りをしています。その後デイリーフレッシュでのチーフデザイナーを経て、アートディレクターとしてコンテンツやプロダクト開発、企業のブランディングなど、幅広い分野で活躍されています。伝統色を使ったキャンペーンのプロモーションで監修するなど、和や伝統のカテゴリーを正しく新しく扱えるアートディレクターです。

玉木さんは眼科の遠隔診断のスタートアップをグロースさせるビジネスデザイン、FinTech企業OLTAのコーポレートリブランディング、島根県邑南町で「イワミクラフト」というオリジナルチョコレートの生産を行うなど、菊地さんと同様に幅広い仕事に携わっています。

伝統工芸に新しい価値を

「清濁併せ持つ」姿勢を大切にする菊地さんのプロジェクトの数々は、企業のブランディングやキャンペーン制作など一般的なデザイン事務所としてのアウトプットだけではなく、伝統や文化にスパイスをプラスして、付加価値を与えることが特徴です。

たとえば、江戸小紋という昔ながらの染めの手法に着想を得て、樹脂を重ねて着物の凹凸を出し、江戸から伝わる伝統的な文様の「格子柄」を再変換して模様を作り出すなど、ご自身の知見や既存の概念にとらわれないものづくりをされています。

菊地さんはこれまでの仕事や表現そのものを通じて、他者との差別化に自然と繋がったのだそうです。最近では和に気軽に出会うためのコミュニティ、Wacaiを立ち上げたりと、ご自身ならではの温故知新かつオンリーワンな発想を大切し、クライアントやチームへいいエネルギーを与えられる存在でありたいとのことでした。

ものの見方を変えながら情報を理解する

DPDCで代表を務める玉木さんは、ご自身のことを「どのプロジェクトを請けるかは、金銭的な評価軸だけでは決めないタイプ」だとおっしゃっていました。

玉木さんを動かす軸は「知覚」「情報社会」「信念」

いつでも自分の信念やアイデンティティを大切して「みんながいいと思うものならきっといいはずだ」と流されず、自分が考えた上で、さらに人の脳に備わっている知覚という標準的な基準目線で良いかどうか判断をしているそうです。

決壊したダムのように多くの情報をインプットする私たちが、それらにいちいち反応していくには、反応瞬発力を上げるか、反応内容を簡略化するかのどちらかです。たいていは簡略化するしかなく、それに慣れてしまうと、何に対して反応しているのか判らない状況に陥ってしまいます。

たとえばそれは人にいいねをしてるのか、コンテンツにいいねをしているのか、情報社会だからこそ情報を正しく理解することが必要だそうです。嫌いな人がなにかを言っていても、もしかしたら正しいことを言っているかもしれないと、いい意味でドライになって柔軟な姿勢を保っていきたいと話されていました。

Session4.「CREATIVE X ブランディング」

登壇者
  • 古庄 章子(サントリーコミュニケーションズ株式会社 デザイン部 課長 クリエイティブディレクター)
  • タカハシトモヨシ(T&T TOKYO コピーライター)

サントリーの古庄さんは、主にプレミアムウイスキーを担当しているクリエイティブディレクターです。

広島出身のタカハシさんは、自身が立ち上げた会社で NIKE、adidas、PUMAなどスポーツメーカーのコピーライターをされています。ちなみにカープファンなので赤い服を着てこられたそうです。

このセッションでは「企業のブランディング」と「プロダクトのブランディング」について具体例を挙げながら掘り下げていきました。

企業のブランディング

みなさんはスニーカーを買うならどこのブランドのものを選びますか? なんとなくNIKEが王道だと思いませんか? 実はこのように「なんとなく王道」だと思われることがブランディングの成功といえるのだそうです。

「JUST DO IT.」を指針とするNIKEのキャッチコピーのひとつに「Yesterday You Said Tomorrow(昨日、明日やるって言ったよな)」というものがあります。「怒ってるの?」と心配になりますが、「挑戦的、クール、生意気」のブランドトーンにしっかりと沿った、素敵なキャッチコピーです。

プロダクトのブランディング

このセッションで出てきた「響」というプロダクトのブランディングの具体例を見てみましょう。「響」は「人と自然と響き合う」というサントリーの企業理念のもと、創業90周年を記念して誕生しました。

「響」の筆文字は、書家の荻野丹雪さんが書かれたそうです。強さだけではなく、ブランドが本来持っている柔らかさを見事に表現しています。

1989年の「響」誕生から現在まで、リニューアルを行ったのは大きく3回だけだそうです。

響-サントリーブレンデッドウイスキーの最高峰 | サントリー

缶コーヒーボスのブランディングについてもお話ししていただきました。ボスのコンセプトは「働く男の相棒」で、「働く男を応援する、永く付き合える相棒のような存在であってほしい」という想いが込められているそうです。

ボスの缶コーヒーは現在300種類以上あるそうです。もともとあるコンセプトは変えず、かつそれぞれの商品に、時代によって変化している人々の働き方や相棒感を落とし込んでいます。たとえば新商品のボスは「自由で新しい働き方を応援するボス」がコンセプトになっています。

ちなみに古庄さんおすすめのレストランは銀座にある「日比谷Bar WHISKY-S」だそうです。ウイスキーにも料理にもとことんこだわったお店らしいので、気になる方はぜひ!

Session5.「CREATIVE X 文字と構成」

登壇者
  • 北本 浩之(株式会社日本デザインセンター アートディレクター)
  • 富田 哲良(株式会社モリサワ ディレクター)

この日最後のセッションは株式会社日本デザインセンターのアートディレクター北本さんと、株式会社モリサワのディレクター富田さんです。

北本さんは断捨離大好きなミニマリストで、ニュートラルな気持ちで向き合うため、余計な情報を視界に入れないようにしているそうです。

フォント選びで大切にしていること

北本さんがフォントを擬人化で例えてくれました。わかりやすくて素敵な表現だったので紹介したいと思います。

  • どんな人が → 書体
  • どんな声の大きさで → サイズ
  • どんな気持ちで → 文字組

そんな北本さんが開発したテキストエディタ「stone」を紹介してくれました。日本語を書くことに主軸を置いた文章作成アプリケーションで、誰が使ってもデザイナーが組んだような美しいものが作れるエディタだそうです。

Webだと文字組もパラパラ感が出てしまいますが、このエディタを使うとちゃんと詰まるようです。詰めすぎても読みづらくなるし、微妙なところで改行されてしまう問題も、stoneを使えば美しさを保ちつつ適切な位置で自動的に改行されるとか。フォントもゴシック(游ゴシック体+Helvetica)か、明朝(游明朝体+Times New Roman)のセンスの良い組み合わせから選ぶことができます。

書く気分を高めるテキストエディタ「stone」

モリサワフォントができるまで

デザインの仕事に携わっている人なら誰でも知っているモリサワフォントは、どの書体も一から作られているそうです。ひとつの書体につき23,000字を4人がかりで2年かけてつくるそうです。これに太さも入ると4~5年かかるとか……。62.5mmの中に手書きで定規等を使いながら文字を書いていくんだそうです。昔は写真で撮ってトレースしていたというから驚き。

入社してすぐはフォント作成には入らず、練習を重ねて何も見ずにリュウミンが書けるようになってから、やっとフォント作成の仕事をさせてもらえるらしいです。

これまで当たり前にモリサワフォントを使用していましたが、この話を聞いてありがたみが増しました。

最近は「しまなみ」や「かもめ龍爪」のようなカーブのある古めかしい書体が流行っているそうです。

また、UD新ゴに合う「Clarimo UDシリーズ」も紹介していただきました。こちらのフォントは、ハングルや中国語、アジア圏の言語、アラビックなどの言語も入っているそうです。ウエイトもExtraLightからUltraまで8ウエイトと幅広いので、空港のサインや多言語コンテンツなど、さまざまな媒体で用途を問わず使用することができます。

フォントを統一すればデザイン上は良さそうに感じますが、読み手の言語文化についても考える必要があります。たとえば先が細くなっているフォントに見慣れているアラビア語圏の人にとっては、先が四角くなっているゴシックだと読みにくいかもしれません。フォントは、見た目の美しさだけでなく、読みやすさなどの機能面についても頭に入れておかなければいけません。

2018 モリサワ新書体 | 株式会社モリサワ

フォントの未来について

フォントの未来について、Apple、Google、Microsoft、Adobeが共同で開発した「バリアブルフォント」のお話もしてくれました。このフォントすごいです。恐らく、これまでのフォントの概念を大きく変えるであろうすごいフォントでした。

バリアブルフォントとは、ひとつのファイルでありながら複数のフォントのように動作させることが可能なフォントで、太さやコントラストを「Medium」や「Bold」のような選択肢から選ぶのではなく、100通りの数値から設定できるそうです。「ゴシック」から「明朝体」の間のトーンも同様に可変になるようです。

「Mediumだと細いけど、Boldだと太すぎる……」といった悩みはこれから先なくなるかもしれません。

おまけ

ちなみに今回のケータリングはLIGが運営する「鯛茶STAND」の手まりおにぎりや和風ピンチョス。大規模イベントでのケータリングでしたが、彩り豊かでみなさんに大変好評でした!

また、各ブースのノベルティーも実用的でとっても魅力があるものたちばかりでした。

今回、馴染みのある企業や自分の知らない分野の方のお話が聞けて、とても貴重な経験になりました。登壇者の方全員に共通して言えることは、業界は違えどそれぞれ信念を持って、よりよいものづくりを追求していることだと思いました。

登壇者のみなさま、ありがとうございました!