前回、LIGブログを使いWeb制作のお問い合わせを増やすため、Webサイトの解析レポートを自動生成する「KOBIT」を使い、コンバージョン改善企画を立ち上げました。
「Web制作のお問い合わせを増やしたい(前編)」では、Webアナリストの小川氏、KOBITを開発・提供するクリエイターズネクスト代表の窪田氏を迎えて、改善施策を提案いただきました。後編となる今回は、実際に約1カ月施策を実施してみた結果を開示しながら、再びお二人に解説とアドバイスをいただきます。
<前回のおさらい>
前回はありがとうございました。まず結果からいいますと……。Web制作のお問い合わせは施策実施前の32件から、66件になりました。
ひとまず、よかったよかった(笑)
総セッション数は、Beforeが306万・Afterが247万でした。セッション数は下がったけど、お問い合わせは増えたので、割合で考えると2倍以上と言ってもいいかもしれません。
KOBITの自動解析レポートでの数値
では、KOBITでCVを「問い合わせフォーム着地」にして分析したレポートを見てましょう。
9月の総PVは前月比で8%減。日別、曜日、時間別のアクセス解析の観点では、曜日別の変動は少ないですが木曜がピークで、時間だと16-17時がピークでした。
ユーザーの利用デバイスをみてみます。PCとスマホだと、CVに4倍の差がついていました。着地していないということなので、スマホから問い合わせページが探しづらい課題がやはりあるのかなと。
前回、スマホで見ると問い合わせまでの距離が遠いと分かって改善することになったところですよね。前回は問い合わせ完了CVしか見てなかったけど、その手前のフォームにすらたどり着いていない、と。
▲前回、スマートフォンからお問い合わせフォームまでの距離が遠いことが指摘されていた
そうですね。前回での仮説だと、問い合わせ完了していないよねということでしたが、おっしゃるとおりフォームがそもそも見つけづらいと分かってきました。
流入元の分析を見ると、この中でCVが高いのが、ディスプレイ広告ですね。1918セッションなので、全体から比べると低いですが、0.21%でオーガニックの約4倍のCVRです。これは何か、心当たりはありますか?
うーん、ディスプレイ広告を出している記憶がない(笑)。
これGoogle アナリティクスから引っ張っているから、何かが分類されちゃってるんですよ。ちょっとGoogle アナリティクスに戻っても原因が分からなさそうなので、ここでは深堀できないけど、こんなふうに皆さんが「あれっ?」と思うところを可視化するのは意味があるかも。
そうですね。こういう状況になっていること自体、レポートを出して初めて僕らも知ったことなので、レポートを出すひとつの価値なのかなと思いますね。
新しい発見に結びつくケースは非常に多いですね。今までスルーしていてまとめる意味もないと思っていたページだったけど、意外とここにCVのヒントが隠されていたことに気付いて、改善してみたら実際にCVが上がったケースもけっこうあります。
自分たちで出せなくもないけど、すごく時間がかかるからそもそも出そうと思わない。そこはラクだし、レポートならではですね。毎月見ていれば、なんかヘンみたいなのも見つけやすい。
次はLP分析です。やはりトップページのエンゲージメントが高いので、セッション数、平均セッション時間、CV数とも高かったです。この傾向は、問い合わせ完了をCVとしたときと同様ですね。なので、トップページにいかに来てもらうかが重要だと思います。
また、そのユーザーはLIGを知っていて来ている可能性が高いので、ロイヤリティがすでに高いことも想定されますし、離脱してもいかにまた戻ってきてもらうかを考えることが重要になってくると思います。
この分析表だと、下から4つ目の記事のCVが21件ありますね。これはタンブラーの記事ですが、コンテンツの下に「LIGにWeb制作の相談をする」というボタンがある。これが効いているんだろうなという感じがしますね。
Tumblr(タンブラー)の使い方まとめ!【カスタマイズサイト】
これがまさに、今回やった施策です。
ほかのWeb制作系の記事にもボタンが入っているから、このタンブラーの記事が特にWeb制作依頼をしそうなBtoBユーザーの興味を引いたってことですよね。逆にいうと、割と個人に寄った記事から直接CVを狙うのは、やはりつらい。記事を見て、トップに戻るとか会社概要を見るとか、間をはさむのが前提でしょうね。
そうですね。CVを「問い合わせフォーム着地」とした場合の分析は、以上です。あと、電話番号クリックをCVとした分析に少し触れると、流入元分析だとやはりオーガニックがいちばん多い結果になりました。
Google アナリティクスでは分からないし、そもそもBtoBの問い合わせをスマホでしようとはあまり思わないので、ここは実際に電話が増えたとか、皆さんの実感値を補足してみる必要があると思います。
KOBITを踏まえGoogle アナリティクスでの解析
ではこのレポートを踏まえてGoogle アナリティクスをみていきましょう。今回の施策は8月から実施した施策なので、8~9月と6~7月で比べます。
まず見たいのが、Web制作カテゴリの記事すべてに問い合わせフォームへのボタンを設置したことで、単純に問い合わせフォームへのアクセスが増えているか。
すると問い合わせフォーム自体のPVは2613件から3405件に増えていて、2カ月近くで約3割ほど増えています。
この中で問い合わせボタンを設置した記事から来たものが、今回の施策によって増えた件数になるわけですね。その記事にはパラメーターが入っているから、記事ごとにURLに振られている数字から追えばいい。ここでもやっぱり、さっきのタンブラーの記事が人気があるみたいですね。
で、記事からの着地の件数は9件から1211件になので、単純に記事経由で1202件を増やせたことになります。ただ、トータルだと3405から2613を引いてプラス792件。この差分は、トップからの流入が減ってしまっていることによりますね。なので、まずは記事に問い合わせフォームへのボタンを入れることでしっかり流入を増やすことはできたといえます。
あとは実際の問い合わせが完了しているかですね。thankyouというパラメーターが入ってるのがそれかな?
そうですね。
それでみると、記事経由で着地して問い合わせ完了までいったのは2件。だから、フォームに連れてくることはできているけど、問い合わせ完了までは非常に少ない。
電話は、スマホでタップするのではなく単純に電話番号を見て電話をした件数はここには入ってこないので、実際どうだったかを聞きたいんですが、どうでした?
それでいうと、普段電話をとってくれる部門から「電話番号の案内を外してくれ」というクレームがきたくらい、電話は増えましたね。
それは!
そもそも電話受付を積極的にしていなかったので、今回の施策の件を社内に周知しきれていなくて。
なるほど。このKOBITのレポートに表れている9件は、多分全部スマホでしょうね。その部署からのクレームは、単に大変だったということ? それとも、電話は増えたけど見込みが低いとか?
制作の問い合わせってけっこうヒアリングしないといけなくて、直接制作の部署に回すことになるので、そこが急に増えたことで慌ただしくなったんですね。で、制作につないだところで、窓口になるディレクターがいつも社内にいるわけじゃないので、エンジニアが対応せざるを得なくなってそこにも混乱が……。普段は「窓口がいないのでフォームから入れてもらえませんか」と案内していたので。
もちろん、ありがたい話ではあるんですが、そこまで増えると思っていなかったので、そのへんの社内の整理が全然追いつかなかったんです。
体制面の課題が浮上した、と。
かなり増えましたよね。LIGさんが制作をやっていることを知らなかったお客さんもいると思うので、問い合わせフォームに着地する人が増えると、そこで止めた人が記事を回遊してまた戻ってくるとか、そういえばやってるんだよなと思い出してどこかのタイミングでリピートしてCVすることも十分考えられるので、ボタンを設置することが制作をしていることのアピールにつながっていると思います。
そうですね。さっきの「記事経由の問い合わせCVが2件」というのも、記事からフォームに着地してどこへも行かずにそのまま進んだ件数で、フォームに来たけどいったん外れて会社概要やほかの記事とかを見るとパラメーターが外れるので検出されなくなる。
全体のアクセスが減っているのに問い合わせ完了のCVが34件増えて、記事経由のフォーム着地が1202件増えているのは、この人たちが最終的に戻ってきていると考えられますね。BtoBだと、お問い合わせする前に必ず会社概要は見るでしょうし。
ファネル分析で確認すると、9月の数字は会社概要ページのPVが8463件、そこから問い合わせフォームにいっているのは101件でCVRだと1.2%。問い合わせフォーム全体のPVは6789件で、会社概要からの遷移より圧倒的に多いので、ここの遷移はもう少し増やせると思います。
課題は電話対応とスマホの動線
今後どうしていけばいいかってことなんですけど。まず記事からの問い合わせフォーム着地が相当数ありながら、さっきのタンブラーの記事のように効果が高いものとそうでないものが分かれているので、フォーム着地の反応がよさそうな記事を増やしていくのはひとつ手なのかな、と。
そうですそうです。
あとは、電話のところですね。記事には電話番号への誘導をしませんでしたが、入れていたらもっと増えそう。ただ、体制の問題はすぐに解決できないので、そこと相談でおいおい……。あとは先ほど窪田さんがいわれた、会社概要からの問い合わせフォームへの誘導はもっと増やせそうですね。現状、ページのかなり下にボタンがあるので。
ちょっと遠いですよね。人がどこを見ているかの分析は、KOBITではできないので、他社ツールですがヒートマップとかを導入すると効果的な位置にボタンをつけられると思います。会社まで道順を案内する動画あたりで離脱する気がするので、そのあたりに置くとCVが上がるかもしれないです。
あとはまだ着手できていない、スマホのUI改善ですね。今回の施策で分かったのは、問い合わせフォームにすらいってない、ということだったんで。
そうですね。ただ、スマホからBtoBの問い合わせをするかなんですけどね。それはやってみないと分からない。PCサイトはヘッダーに問い合わせボタンがあるけど、スマホだとないので、このハンバーガーメニューの横でしょうね、置くなら。
前回も出ていたアイデアですが、ホワイトペーパーを用意してDLしてもらうとか。その時点ではメールアドレスと名前だけいただいて、ステップメールで都度思い出してもらってタイミングがきたら問い合わせCVへ、という流れをつくるのは手だと思います。
そうですね。ありがとうございます。今回は期間の比較を小川さんに手動でやっていただきましたが、これってKOBITに実装されるんですか?
はい、2018年1月ごろには。前月比較、前年同月比、期間指定比較なども対応します。
それがパッとできるとすごくラクですね。僕のような仕事をしていると、スタートが早い。また、知識のない方でも前月比などを定期的に見ていくと、見る目が養われると思います。
ファネル分析のところも、僕らや解析士が手動で表をつくろうと思ったらつくれますけど、相当時間がかかりますよね。
そうそう、すごく手間です。だからKOBITでデータをまず俯瞰して、気になったところをピンポイントでGoogle アナリティクスを見るとか。今回で言うと、タンブラーの記事の反応がすごくいいから深堀りしてみよう、みたいな。深堀りするためのヒントを見つけるのに、すごく役立つと思います。
そういった意味でKOBITは、「健康診断」をしっかり行ってくれるサービスだなと今回感じました。自分でどういった数値を見るか考えてデータを出しても、初めての方だと何を出せばよいかわからなくなってしまう。あるいはGoogle アナリティクスをよく使っている方は、逆に自分の経験でレポートを出してしまうため決まった項目しか見ないかもしれない。自ら健康診断するより、KOBITという「お医者さん」にしてもらう方が発見は多いのではないでしょうか。
今回使用したアクセス解析レポート
KOBITのレポートは下記のリンク先から利用できます。なお、登録は無料です。ぜひチェックしてみてくださいね。
また、今回の解析に使用したレポートはSlideShareにもアップしています。合わせてチェックしてみてください。