「オウンドメディアを使ってコンバージョンの数を増やしたい」
すべてに当てはまるものではありませんが、オウンドメディアを運用する会社は、なにかしらのコンバージョンを狙っているのではないでしょうか。今回は、Webサイトの解析レポートを自動で生成するツール「KOBIT」で出されたレポートを元に、LIGブログのリアルな数字を使って改善していく様子をお届けしていきます。
第一回目のテーマは、「Web制作のお問い合わせ数を増やしたい(前編)」です。
このテーマにとりかかっていただくメンバーには、Webアナリストの小川氏をゲストに迎え、クリエイターズネクスト代表の窪田氏、LIGからはイシケン、づやで取り組みます。前編である今回は、KOBITから出されたレポートをもとに、Webアナリストの小川さんが改善施策を。後編では改善した結果、お問い合わせの数がどうなったかをお届けする予定です。
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人物紹介:小川 卓 ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。 |
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人物紹介:窪田 望 株式会社クリエイターズネクスト代表取締役。アメリカ合衆国ニューヨーク州生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒業。上級ウェブ解析士。19歳で創業して15年目。はじめてWebサイトを作ったのは中学生の時。人類の進化を早めるためにKOBITを提供中。 |
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サイトの解析から改善提案までおこなってくれるKOBIT
▲今回、実際にKOBITが出したレポートがこちら。一部、PVなどにボカシを入れています。
KOBITとは、Googleアナリティクスと連動することで、サイトの解析レポートから改善提案まで自動でおこなってくれるツールです。KOBITから自動的に出る解析レポートは以下の11項目。このほか、サイトへ流入のあるキーワードをサーチコンソールから取得し、PCとスマホごとに評価したレポートも自動で出してくれます。
- <KOBITからレポートされる11の項目>
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- ユーザーの属性
- 日別、曜日別、時間別アクセス分析
- 参照元ランキング(アクセス数トップ10)
- ユーザーの閲覧地域
- 新規訪問と再訪問の比率
- ユーザーの利用しているデバイス
- 流入元分析
- ファネル分析「問い合わせ【新規制作】の場合」
- 売上計算シート
- 流入キーワード分析
- サイトの改善提案

KOBITのレポートの最後を見ていただくとわかるように、解析結果をもとにサイトの改善提案まで自動的にレポートしれくれるのがKOBITの強みです。今回、LIGブログを解析して出た改善案は大きく3つですね。
- <KOBITから提案された改善案>
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- スマホ向けのサイト改善
- コンバージョンへのボトルネック改善
- 記事下ページに誘導バナーの設置

本題に入る前に聞いておきたいんですが、こういった自動で解析レポートを出してくれるツールって、実際にマーケターの仕事とバッティングしませんか?

結論から言うとしないですね。KOBITで出せる解析は、Googleアナリティクスの解析です。ウェブ解析士は、事業や会社の文化を理解した上でのコンサルティングができます。KOBITが存在することで、ウェブ解析士は自分の時間を解析だけに使うことができますし、解析士がいることで、KOBITもよりその真価を発揮できます。というわけで、ウェブ解析士とは共存共栄できます。

なるほど。レポートを作ることに時間を使うのではなく、分析にする時間をもっと作ろうよってことですね。その手助けをしてくれるのがKOBITだと。
CVの前にもう一つ中間となるCVを

今日はよろしくお願いいたします。まず経緯をかんたんにお話ししますと、社内でもともとWeb制作のお問い合わせを増やすプロジェクトがありまして。その過程で、クリエイターズネクストさんにご協力いただけることになり、KOBITのアクセスレポートを使いながら、改善していきましょうとなったんですね。そこで今回、ウェブ解析士の小川さんにもご協力いただき、LIGブログのリアルな数字を見ながら、改善策を導きだせればなと。で、その改善した結果がどうなったかまでをそのまま記事にできたらと考えています。

目的は「web制作のお問い合わせを増やしたい」。上がる前提なんですよね。kobitの資料は目を通したのでデータ分析の観点で好き勝手喋りますね。どこまでぶった切っていいかなぁ(笑)

まず参照元からいきましょう。まずデータを分析するという観点で話すと、このCVの件数ではどのデータを元にどういう風に施策をすればいいのか判断できないです。なのでCVのお問い合わせとは別に、手前にひとつ指標を設定する必要がありますね。

例えば、お問い合わせにつながりやすいユーザーの行動って、記事を○ページ以上見ていただくとか、しきい値がなにかあるとか、訪問回数が○回を超えるとお問い合わせ率が上がりやすい、とかがあったとして。そこをCVとして設定して、手前に中間指標を設定します。その中間指標を目標とするのが理想だと思っています。

現在、LIGブログ全体のアクセス数は480万PVありますが、アクセスのほとんどがインフォメーションユーザーで、いきなりアクションしようというユーザーが少ないんです。例えばWebサイト制作のガイドラインとかホワイトペーパーのダウンロードを中間のCVに設定して、ステップメールでLIGさんのことを思い出してもらい、あとはタイミングが来たときにCVしてくれる流れが必要なのかなと思うんです。

そうですね。それはおっしゃるとおりですね。

ただ、メールアドレスの取得までいくと、そんなにCVはでてこないはずなので、理想はその前にひとつ置きたいですね。そういう意味で現時点で必ずしもメールアドレスを取る必要はないと思います。

その前にもですか?

もう少し母数がとれる指標で、たまったデータをみて、初めてどのキーワードが有効だったのか、どの集客が有効だったのか、データをみて証明していけばよいのかなと。

データを見てからだけど、繰り返して訪れるユーザーを増やす、お問い合わせとか資料のDLと相関性があるのであれば、どういう記事がリピートにつながりやすいのかって分析は可能かなと。今は、新規6割、リピート4割くらいなので、この辺は中間指標を設定したうえで、深堀する価値はあるのかなと思います。

仮にホワイトペーパーのダウンロードを指標にする場合、何件くらいあれば判定できるものなんですか?

ミニマム100~200の数字が欲しいですね。判定するってことを考えると。あとはどれくらいの期間でそれがたまるのかというところだと思います。

必要な数が溜まるまで時間がかかるのであれば、それなりに母数のある、お問い合わせトップまで行ってもらうことをCVにしてもらえばいいのかなと。1ヶ月1316件あれば、分析には耐えうる量なので、そこからどういうユーザーを集めていくのがいいのか逆算をしていきます。

集客だったり、記事のジャンルだったり。そこから相性の良さそうなところから、ホワイトペーパーとかの次の案内をだしていくとか、CVにきくジャンルとかテーマがあるなら、そこから案内の告知を記事の下で強めていくところが、やれそうなステップなのかなという気がしますね。

なるほど。ここまでの中間の流れがどうなっているのか、全部わかってくるってことですもんね。

なのでそこの母数が増えてくれば、さらに深掘っていきたいんですけど、順番としてはまずお問い合わせトップに連れてくることですね。そうすると、制作系の記事やページをみているとかの目標設定もできるようになってきますので。

ちなみに、今って記事のテーマによってURLを区別する方法ってありますか? あるいは変数で記事制作系ですよとか。

ないですね。全て番号のみを振ってしまっていて。ディレクトリでも切っていないですし。

カスタムディメンションは入れてるんですけどね。

カスタムディメンションだと目標設定に使えないという悩みが(笑)

(笑)

GAでの分析はできるかなって感じなので、施策としては、ホワイトペーパーのようなダウンロード系が一つと、CVしやすいジャンルに敢えて少し強めの告知を出してみるとかですかね。

カテゴリ的にもろWeb制作というカテゴリがあるので、それベースでとればいける気がしますね。

今だと、Web制作のカテゴリと、他のカテゴリの記事の出し方の違いとか、その後の告知の出し方とかの違いはありますか?

ほぼないですね

であれば、そこに差をだしてみるとか。シンプルに割り切るんだったら、いったんWeb制作のカテゴリからお問い合わせトップにいく割合は高いだろうという前提でやっちゃうとか。

確かにCTRは上がりそうですね。

お問い合わせトップに来た後、他のカテゴリから来るよりも離脱率が高いとわかれば、ちゃんと狙った人を連れて来ているということなので。

ただその辺りになってくると、kobitのレポートでは出せなくなってくるので、kobitの記事なのにどうしようみたいな(笑)
(笑)

Web制作のカテゴリに問い合わせボタンを置くんだったら、お問い合わせトップではなく、webのお問い合わせにいきなり飛ばしちゃうのはありですか?

全然ありだと思いますよ。やっぱりWeb制作に興味関心の高いところに対して、当てた方がよくて。

あとデータの観点で補足すると、Web制作からお問い合わせトップに来ている人が、実際にその後どこを押しているのか見てみるのもありですね。本当にWeb制作のお問い合わせを押している人が多いと数字ででるなら、直接Web制作のお問い合わせページに飛ばしちゃった方がいいです。

これを実際やるとなると、やり方と記事をいくつかピックアップして、Web制作のカテゴリでアクセス数の多い記事とか、新規の記事に関しては入れてみるだとか。あとは入れてる記事と入れていない記事を比較するアプローチか、ABテストをしちゃうかのどちらかですね。

ABテストは同じ記事ですか?

そうですね。Google optimizeとか、なにかしらの仕組みを使うとか。できればABテストの方がベストなんですが、記事を分けるからPVを溜める時間がかかっちゃうので。Web制作のカテゴリの記事をまるっとやれるのであればいいかもしれませんね。

母数ってどれくらい必要ですか?

たぶん100件くらいあれば評価できるって感じですね。ただ、いまお問い合わせにきてる1316件のうち、どれくらいWeb制作に興味を持って訪れているのかがわからないので、そこの数字次第ですね。

それに補足をすると、信頼区間という考え方があります。例えば、コンバージョン率が上がったときに、それが偶然なのか、必然なのかを知りたいですよね。そうじゃないと、本質的な改善はなされていないのだけれど、サンプルのパフォーマンスが偶然高かっただけのものに対して大きな投資をしてしまい、損をすることがあります。「今回の施策による改善はどのくらい正確なのか」を考えるとき、「施策後のコンバージョン率は90%の確率で1.3%〜1.7%の間にあります」みたいなことが言えた方が良いでしょう。そこで、ABテスト開始からのコンバージョン率をdailyで測り、この区間内に施策後の(真の)コンバージョン率がありそうだ、ということを求めます。
サンプルサイズが少ないと、「施策後のコンバージョン率は0.5%から76%の間です」みたいなよくわからないデータになってしまいますが、サンプルサイズを大きくすればするほど「真の値は1.3%から1.7%の間で、中央値が1.4%です」みたいな「信頼できそうなデータ」になっていきます。
Google Optimizeでは、この信頼区間を見るページが用意されていますし、それとは別に、施策前と施策後のどちらが優れているか、Probability to be Best(最適である確率)という言葉で表現されています。施策後のProbability to be Bestを見て、90%を超えていれば、施策には効果があった、と考えていいのではないでしょうか。

便利な機能ですよね。でもこれやったら全5回くらいの連載になってしまいそう。Google オプティマイズを設定しましょう! みたいな(笑)

(笑)

で、やるならPCに絞った方がいい気もするけどどうなんでしょうね。いまスマホでのお問い合わせって多いですか?

こちらを見ていただきたいんですが、今はPCの比率が48%で、スマホが49%なんですけど、CVはほとんどないんですよ。数が少なすぎて省略されているという(笑)

(笑)。ハンバーガーメニューを押して一番下にお問い合わせの導線があるので、全然わからないんですよ。ここが原因じゃないかなと思っているんですが……。

実はスマホでWeb制作のお問い合わせするやつなんかいねーだろ! って思ってました(笑)

いましたよ犯人が(笑)

あーなるほど。じゃあそこを分かりやすくする観点でテストするのはありかもしれませんね。

まずそこを改善してみて、そこでデータが取れたら、そこから本当のテストができる状態になるのかなと。

じゃあそこは両方やりましょうか。改善率で言えばスマホの方が高くでるかもしれませんね。

どこまでいくかって話ではあるけど、まずお問い合わせへの入り口が2~3倍になってくれればベストかなと。記事観点で言えば悪くなりようがない施策なので、あとはそれが数字となって現れてくれるかどうか……。可能性としては横ばいのままっていう可能性もありますね。記事的にはきついけど(笑)
入力フォームへの入力が面倒くさいという人たちをどうサポートするか

あと、クリックした後なんですけど、お問い合わせフォームのなかも上げていかなければいけないのかなと思っていまして。

パッと見て問題かな? って思ったのは確認画面があることなんですけど、これは失くしたいなと思ってまして。

あ〜〜どうかな。入れないと厳しいかなぁ。これはもう会社のポリシーだと思うのでLIGさんでご判断いただければと思います。

ここに関しては、入力フォームを入力するのが面倒くさいという人たちをどうサポートするだけだと思います。特にスマホ。

やっぱり電話番号をお問い合わせページの上部に入れるのが鉄板なんですよね。

確かに、それはお問い合わせがきそうですね。

特にスマホは入力が面倒くさいし、タップで電話をかけられるので、スマホの場合そっちの方がコンバージョン上がるかもしれないですね。

ただ、それを社内のサポートとして、受け入れられるかどうかは確認しておく必要があるかなと。あとGoogleアナリティクス側ではでてこないので、後でお問い合わせがきた件数を足すっていうフローも必要ですね。

イベントトラッキングだととれませんか?

あれは本当に電話をかけたかどうか分からないんですよ。タップしたって数は取れるんですけど……。あと入れる場合はぜったい営業時間を入れてください。電話する方がけっこう遠慮しちゃうんですよ。いま17時だけど電話していいのかなみたいな。

なるほど。

でもフォーム自体は、そこまで致命的なものはない気がするので、来ている方の温度感が低いのかもしれないですね。

あと、お問い合わせフォームからの離脱がめちゃくちゃ高いんですが……。

あれ? なんでこんなに低いんだ?

かなり低いですよね。97%くらい離脱しちゃってるんですよ。通常、問い合わせのフォームからCVする率ってもう少しありますよね?

ジャンルによりますけど、だいたい3割くらいですかね。ここに来てる人は分かってボタンを押しているはずなんですけどね。

あとは、この中で制作の費用や納期を確認するところがあるんですけど、ここを見て費用感や納期が合わないから離脱している人もいるかもしれないですね。

であれば、Web制作のところを中心にアピールしていって、最終的な質はみなさんに判断してもらわなくてはいけないと思うんですが、その実感値がもてるかどうかだとは思うんですが。

ただバランスだとは思っていて、数増えれば増えるほど、率はともかく母数が増えるのは間違いないので。負担にならない程度に数が増える、逆に負担になるくらい数が増えたらWebの施策としては成功なんですが(笑)。そのあとみなさんが大変なので、結果としてどうなのかって話ではありますよね。

改めまして、今回おこなう施策を整理すると以下のような内容ですね。
- 今回おこなう施策
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- Web制作のお問い合わせトップへの流入を増やす。
1. GAのCVの設定をWeb制作記事フォームへ変更
2. WEB制作カテゴリ配下にある記事の末尾に問い合わせリンクを設置する
3. Web制作カテゴリのお問い合わせリンクの飛び先は、Web制作のお問い合わせトップまで直接飛ばす
4. スマホのCV動線は確実に変える
- お問い合わせ自体の件数を増やす
5. 電話番号を入れる(お問い合わせトップにも入れる)
- Web制作のお問い合わせトップへの流入を増やす。

現在は、KOBITのレポートで中間CVが取れないのですが、LIGブログを改善した結果を出すタイミングのころには、KOBIT自体の機能を拡張して、中間CVもレポートで出せるようになっているので楽しみにしていてください。

結論だけをみると、KOBITで提示された改善策と、小川さんからいただいた改善策は似ているんですが、小川さんとこれだけ話したあとでKOBITから出されたレポートを見ると、答えに対する納得感がぜんぜん変わりますね。そういう意味で冒頭で窪田さんが仰っていたように、ウェブ解析士と共存共栄できるツールだという意味が改めて理解できました。

そうなんです。繰り返しになりますが、KOBITはマーケターとケンカをするツールではありません。KOBITを使ってもっと分析に時間を割けるようになればいいなと思っているので。あとは、今回の施策でコンバージョンが上がってくれれば最高なんですが(笑)
今回、ご協力いただいたクリエイターズネクストさんのサイトでは、たくさんのホワイトペーパーがダウンロードできます。そのなかでも、「GoogleAnalytics完全ガイド(全121ページ)」「CRO(コンバージョン率最適化)を実現する54のテクニック」は、解析の勉強をしたい方におすすめです。ぜひダウンロードしてみてください。
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そして、今回の議論の元となった、KOBITのレポートはこちらから使うことができます。なお、登録は無料です。こちらもチェックしてみてくださいね。
※ 今回改善した内容を8/1~8/31の間で計測し、その結果をもとにまた議論を行います。その模様は後編でお届けする予定です。